バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第25話 Episode of Phantomも途中なのに

…あたし達は今、教室という名のセット内でボケーっとしている。

 

あたし達というのは、Divalのギタリストで雨宮 志保であるあたし。

そして、Glitter Melodyのベースボーカルの佐倉 美緒。

FABULOUS PERFUMEのベーシスト、ナギこと茅野 双葉先輩。

FABULOUS PERFUMEのドラムス、イオリこと小松 栞。

Lazy Windのキーボード担当観月 明日香。

この5人である。

 

「やはり音楽以外のトークと言えば、ラーメンの事しかないでしょう。だけど、栞はあんまりラーメン食べないってこないだ言ってたしね。好きな麺類の話にしようか?」

 

「ボクは確かにあんまりラーメン食べないけど、何で麺類の話?でも麺類ならボクはパスタかな?カルボナーラが好きだよ」

 

「音楽以外の話ってなるとあたしは話題が見つからないや。でも、何で麺類なの?美緒ってそんな麺類好きなの?あたしはうどん派かなぁ?」

 

「栞も志保も美緒の麺類談義にしっかり乗っかってるじゃない。私は早く帰れるなら何のトークでもいいけど…。ちなみに私はマカロニとか好きかな?麺類って感じじゃないとは思うけど…」

 

「わ、みんなバラバラだね。私はお蕎麦かな?こないだ遊園地で食べたお蕎麦がすっごく美味しくて」

 

茅野先輩は遊園地でお蕎麦食べたの?

あ、もしかして秦野のやつが言ってた蕎麦の会かな?

 

あたし達は今は企画バンドの番組撮影をしているのだ。

 

 

 

「しかし、さっきの澄香さんの放送は何だったんだろ?スクールラブって言いたかったのかな?」

 

美緒!?麺類の話をしようって言い出したの美緒でしょ!?何でさっきの澄香さんの放送を話題にするの?

 

「美緒?何でいきなり…。このまま麺類の話でいいんじゃない?スクールラブとか、クリムゾンと戦ってきた私には縁のない話題だし」

 

「そうだよ。明日香の言う通り。ボクもスクールラブとか無縁だよ?」

 

「いや、みんな好きな麺類がバラバラだったし。

ウドゥン?とか?オソヴァ?とか?ペァスタァ?……私にはわからないもので…」

 

「「「「え?」」」」

 

うどんとお蕎麦とパスタがわからない!?

 

「あ、あはは、美緒ちゃん、冗談…だよね?」

 

「ええ、さすがに冗談です」

 

「び、びっくりしたじゃんか!美緒はラーメンしか本当に食べないのかな?とか思っちゃったよ!」

 

あたしもびっくりしたわ。

 

「まぁ、さすがに冗談だよ。ただ、明日香の好きな人ってのがちょっと…気になってるっちゃ気になってるから…」

 

「は?私の好きな人?

さっきも言ったけど私はスクールラブとか縁がないって…」

 

「特別編の第40話で架純さんに『私の好きな人はー』とか言って話を締めてたでしょ?結局、明日香の好きな人って誰なのかな?ってずっと気になってて」

 

「え?特別編の…?」

 

ちょ、ちょっと待って美緒!

何なの!?それってめちゃくちゃメタ発言じゃん!

あの場には明日香と架純さんしかいなかったから、明日香も正直に話して……って感じで締め括られた話でしょ?

 

「あ、あはは~…美緒ちゃんは何を言ってるのかな?特別編?第40話?えっと…あんまりそういう話はするものじゃないよ?」

 

「双葉さん?特別編の第40話って覚えてませんか?

あの時です。双葉さんと松岡さんが弘美さんのメイドカフェでデートしてて、一瀬さんと夏野さんが邪魔しに来た回の事ですよ?」

 

「は、春太と結衣に邪魔されたって…。ち、違うし!あの日は別に冬馬とデ、デートしてた訳じゃなくて、ちょっと…っていうか…

だ、だからそんな話をするものじゃないってば…!」

 

ぷふふ、茅野先輩もテンパってるなぁ~。

しかし、まさか美緒がメタ発言しちゃうなんてね。さすが3周年記念回。いや、もうとっくに3周年過ぎちゃってるし、さっさと本編を更新しろって話だけどさ。

 

「あ~、ボクと遊ちゃんでラーメン屋探してて、美緒と美来と一緒に食べた日だよね?ボクもあの日から明日香の好きな人って誰なのか気になってたんだよね~」

 

「栞!?あんたまで何言ってんの!?わ、私には何の事だかさっぱりなんだけど!?」

 

栞も参戦か…。メタ発言のオンパレードだね。

ま、あたしも明日香の好きな人って誰なのか気になってたっちゃ気になってたし、楽しいからいいけどさ。

 

 

あたしも参戦して明日香の好きな人を聞き出そうかな?

 

 

そんな事を考えていた時だった。

 

 

 

 

「ガラガラガラ!ゲスト様参上!!」

 

 

 

施錠されたはずの扉が開き、そこからゲストが入って来た。

 

「さっち?な、何でここに…?」

 

「紗智!?あ、あんた日奈子さんの企画バンドでしょ!?」

 

ゲストとして登場したのはevokeのドラマー河野 鳴海の妹であり、Ailes Flammeのチューナーであり、日奈子さんのアイドルグループの河野 紗智だった。

 

「私は今日は志保ちゃん達のバンド番組のゲストだよ。

ねぇねぇ、それよりこの制服可愛いね?誰のデザイン?澄香さん?貴さん?」

 

教室に入ってきたさっちは、あたし達の前でクルクルと回転しながら言った。

 

「あ、私も座らせてもらうね。よいしょっと」

 

さっちはそのまま回転しながらあたし達に近付いて来たかと思うと、あたしの隣の席に座った。

華麗に回転しながら近付いて来たなぁ~。

 

「さて、明日香ちゃん」

 

「な、何よ…?」

 

さっちは明日香の方を見て…

 

「私も明日香ちゃんの好きな人って誰なのか気になってたんだよね~。せっかくのこんな場なんだしさ?スパッと私達にも教えちゃってよ」

 

「は!?はぁ!?紗智!あんたバカだバカだと思ってたけどやっぱりバカだよね!?そんなのこんな所で言える訳ないでしょ!?そ、それに私には好きな人なんかいないし!何の事だかさっぱりだしっ!」

 

「えぇ~!?何でよ~?いいじゃ~ん、教えてよ明日香ちゃ~ん」

 

「だ、だからそんな人いないって…」

 

「本当に?信じていい?私はあの日…私の好きな人…みんなにバレちゃったからさ…もし…明日香ちゃんの好きな人…が…」

 

さっち…。

さっちはそう言ってうつむき、スカートの裾をギュッと握りしめた。

あたしもさっちの好きな人って、ずっと秦野だと思ってたからびっくりしたけど…。

 

って、ちょっと待ってよ、さっち!

みんなにバレちゃったって、さっちは誰にも好きな人の名前出してないじゃん!モノローグの中でしか言ってないでしょ!?

いや、まぁ、みんなメタな事言ってるし、あたしも知っちゃってるからあんま強く言えないけどっ!

 

「紗智…。だ、だけど…。だからこそ言えないんじゃない(ボソッ」

 

ヤバい。ヤバいよ明日香。その反応はものすごくヤバい。

この話の中では特別編第40話のモノローグも会話もバレちゃってんだよ?メタ発言もバレバレなんだよ?

そんなボソッと言ったような台詞でもみんなに聞こえちゃってるよ?あたしにもバッチリ聞こえてたし。

 

「フッ、フッフッフ」

 

「さ、紗智…?」

 

「やっぱりだー!明日香ちゃんの好きな人ってやっぱり江口くんなんだね!」

 

え!?さっち!?言っちゃうの!?

 

「なぁ!?な、何言ってくれちゃってんのよ!

渉の事なんか好きな訳ないでしょ!?」

 

「え?だって私の好きな人も江口くんだよ?『だからこそ言えない』って事は、明日香ちゃんの好きな人も江口くんだから私の前では言えないって事だったんでしょ?」

 

さ、さっち…?普通に自分の好きな人も暴露しちゃうの?

 

「あ、あの…河野さん?それ暴露しちゃって大丈夫なのですか?明日香の好きな人の話題を出した私が言うのもなんですけど」

 

「美緒ちゃん?大丈夫だよ大丈夫。それより麺類の話から上手く恋話に誘導してくれたね!グッジョブだよ!」

 

「グッジョブ?いや、麺類の話題を出したのも私だけど…」

 

「ちょ、ちょっと!紗智!話はまだ終わってな…」

 

「あ!やっぱり大丈夫じゃないかも!私の好きな人が江口くんだってお兄ちゃんにもバレちゃったら、江口くん(の命)が大変な事になっちゃう!」

 

江口(の命)が大変な事にって…。

その( )の中身も筒抜けだよ、さっち。

まぁ、あたしは江口がどうなろうと知ったこっちゃないけど。

 

「まぁ、それはそれとして!

明日香ちゃんの好きな人もわかった事だし、次は小松さんかな?茅野先輩の好きな人は松岡さんだってわかってるし」

 

「こ、河野さん!?わ、私の好きな人が冬馬って…!ちがっ、違うから!違うからね!」

 

いや、茅野先輩。バレバレですから。

まぁ、バレバレって言ったら栞もなんだけど…。

てか、さっち。あんた江口の事好きなんだよね?

お兄さんに知られちゃったら江口が危ないんでしょ?それはそれとしてって軽いノリでいいの?

 

「ボクの好きな人?ボクは双葉が大好きだよ!

沙織も弘美も、おっちゃんもたか兄もトシ兄も、まどか姉も…みんな大好きだよ!」

 

ま、眩しい!栞の無邪気な『私はみんなが大好きだよ』攻撃が眩しい!

普段、恋愛絡みとか渚とか理奈とか奈緒を見てきてるからなぁ。黒い陰謀めいた事とか目の当たりにしてるし、無邪気な栞が眩し過ぎるよ。

 

『ピンポンパンポ~ン。志保、後で話があるわ。収録が終わったらゆっくり話しましょう』

 

怖っ!?

理奈まだ帰ってなかったの!?

てか、あたしらの話をちゃっかり聞いてるの!?

あたしらの話っていうかあたしのはモノローグだけど!

 

ああ…、さっきまで早く収録を終わらせて帰りたいと思ってたけど、今はこの収録が永遠に続けばいいと思えるようになったよ。

 

「志保いいなぁ。収録終わったら理奈さんとゆっくりお話出来るなんて」

 

「美緒、代われるものなら代わってほしいくらいだよ」

 

…ん?美緒?

美緒はあたしをずっと見ている。

 

どうしたんだろ?

さっきのは美緒もさすがに理奈の『あなたをしばくわ』宣言だってわかってるよね?

……もしかしてわかってない?本当に代わってほしいの?

 

「志保は意外と能天気なのかもね」

 

は!?

美緒!?今何て言った!?あたしの事を能天気と言ったの!?

あ、更には美緒は自分の頭を指でコツコツ叩き出した。

あたし知ってるよ。それ『あなた頭は大丈夫?』ってサインでしょ!?

 

てか、いつまでもいつまでもそんなサインをあたしに…。

……サイン?

 

…あたしは美緒をジッと見ている。

それでも美緒は頭をコツコツするのを止めていない。

頭に何かあるの?

考えてみたら美緒とはそんな長い付き合いをした仲じゃないけど、美緒は人を小馬鹿にしたようなそんな事をするような子じゃない。

 

もしかして…何かあたしに伝えたい事がある?

のかな?

 

「志保は本当にダメダメだよね。理奈さんと2人きりになれると言うのに何をそんなに嫌そうな顔を…」

 

次に美緒は頭にやっていた指を離し、両手の指で✕印を作った。

✕…?バツ…?ダメって事?

 

美緒はそんな不思議に思っているあたしを見ながら、チラチラとさっちを見てい……

 

そうか。そういう事なんだね。

だったらあたしはどうしたらいいか…。

 

「美緒。それってあたしに対して超失礼だからね」

 

この回答はどう?

 

………わかったよ。美緒。

 

 

あたしは…

 

 

あたしは……

 

 

やっぱり理奈は貴の事がめっちゃ好きだと思う!

もう本当は結婚したいとか思ってんじゃないかな!?

お父さんもきっと許してくれるだろうしね。ぷくく。

 

 

『ピンポンパンポ~ン。志保、後でのお話の事だけど、とてもとても長くなりそうだわ。覚悟していなさい』

 

 

怖っ!?

長くなりそうだわ。って、長くなるだけだよね?

あたしの命は保証されてるよね!?

 

だったら次は…

 

「長くなる話ってなんだろ?

(でもあたしも理奈には負けてないからね。あたしは貴の事を超愛してるし!大好きだし!もう抱かれたいまである!)」

 

 

あたしの台詞から少しの間。

理奈からも誰からも放送は無い。

なるほどね。

 

 

「(さっきのは嘘だから。ただのテストだからね!貴を愛してるとか無いよ!)ニコッ」

 

「え?どうしたの志保。何で急に笑ったの?」

 

「(美緒の指は○の形をしている。つまりあたしのこの考えは正解という事なんだろう)ニコッ」

 

「え?いや、マジで怖いんだけど…」

 

「(怖いとか言わないでよ!あたしも必死なんだから!

…さっき、美緒がさっちをチラチラ見ていた時、さっちも栞と話しながらもあたしの方を見て頭をコツコツ叩いていた。頭に何かあるのかと思ったけど、あたしはひとつの仮説に辿り着いた。今、この場ではあたしの、あたし達の考えているモノローグと会話はプロデューサーに筒抜けであるという事。理奈も含む)ニコッ」

 

「え?また笑うだけ?」

 

「(色々考えながら何か言うのって難しいんだよ!

あたし達のモノローグは全て筒抜け。発言する言葉も。

だからあたしはモノローグで語るのを止めて、台詞内で考えている風を装った。正直意味がわかんないんだけど)

笑いたい時もあるよ。あはは」

 

「志保は…笑顔下手くそ」

 

人の笑顔を下手くそとか言わないでくれる!?

 

「(…おっと、またモノローグで語っちゃった。あたし達の語りは周りに筒抜け。だから、あたしは考えているという形式ならどうだろうか?と、貴の事を大好きだという嘘っぱちを考えてみた。本当に嘘っぱちだからね?)

笑顔下手くそとか言われたの初めてだよ」

 

「私も言うの初めてだよ。もう今後言う事無いだろうけど」

 

「(美緒はまた指で○の形を作った。台詞の中での思考は周りに読まれない。それはさっきの嘘に理奈や澄香さんが反応しない事で確証を得た。これから大事な話はモノローグじゃなくて、こっちの形式でやっていけばいいんだね)ニコッ」

 

「いや、だから下手くそ…」

 

 

 

 

それから少しの時間。

この部屋では栞の好きな人は本当は誰なんだろう?

とかな話でキャッキャウフフしていた。

 

「(と、言うのが表向きな状況。栞の好きな人なんて遊太だってわかりきってるでしょうに…。おっと、あたしは今はこんな事を考えている場合じゃない。この不可思議な撮影をサッサと終わらせて帰れるようにしなきゃ)ニコニコ」

 

「志保ちゃんはさっきからずっと笑ってばっかりだよね」

 

「まぁ、志保ですし」

 

「紗智も美緒ももう志保に期待するだけ無駄だよ」

 

「ちょっと明日香!期待するだけ無駄って何よ!?

(さっきからあたしはみんなの会話、挙動をしっかり見ながら考えていた。今、この不可思議な撮影に対して何か抵抗しようとしているのは、さっちと美緒と恐らく茅野先輩の3人。明日香は少し微妙な感じかな?わかって言ってるのか、わからずに素でいるのか…。栞は完全に素だね)」

 

「ボ、ボクの事より志保と美緒はどうなのさ!?誰か好きな人いるんじゃないの!?」

 

「は?栞、私の好きな人は理奈さんですよ?まだわかって頂けてはいませんか?」

 

「今は志保ちゃんとか佐倉さんより小松さんの恋話かな!」

 

「あたしも好きな人とか考えた事無いなぁ~

(やっぱり栞はわかってないみたいだね。理奈や澄香さん、他のもう1人謎のメンバーが聞いてるかも知れない中で、美緒とあたしの好きな人を暴くとかありえないからね)」

 

……

………ありえないって何よ!?

べ、別にあたしの好きな人も美緒の好きな人も貴ってバレた訳じゃないし!ってか、バレたとか語弊あるね!うん!

あたし達別に貴の事好きって訳じゃないし!ここで話題が出てもおかしくは無いし!!

 

「し、志保…?」

 

ん?どうしたの美緒?

 

「志保ちゃん…あのね…」

 

さっち?さっちもどうしたの?あたし何かおかしかった?

 

『ピンポンパンポ~ン、志保。あなたは…本当に…ブツッ』

 

え?理奈まで?

 

「へ、へぇ~…やっぱり志保ちゃんも美緒ちゃんもタカくんの事…」

 

へ?茅野先輩?何を言ってるの?

 

………

…………

 

「な、何の事でしゅかね?

(噛んだー!あたし噛んじゃったよ!てか、噛んだとかそんなの以前にあたし何をモノローグで語っちゃったの!?そうだよ、モノローグは筒抜けなんだよ!うっかりだよ!これ意外と難しいよ!)」

 

「あは、あはは、あはははははは」

 

「さ?さっち?

(さっちが急に笑い出した。もしかしてとうとう壊れちゃった?)」

 

「よ、よーし!ここにペンと紙が都合良く置いてあったよ!」

 

「(さっち?本当にどうしちゃったの?)

さっちはペンと紙を取り出して何かを書き始めた」

 

「志保?あんた何言ってんの?」

 

「(あ、ヤバ、思考と台詞が逆になってた。

だから難しいんだってこれ!明日香のツッコミが無かったらこのまま思考と台詞が逆になったまま語っちゃてたかもだよ…)

いや、何となく?」

 

その後、さっちが何かを書いた紙で紙飛行機を折って、窓へと近付いて行った。

 

そして…

 

「私の想い!紙飛行機に乗って飛んでけ~!」

 

そう言って紙飛行機を窓から飛ばした。

 

「(と、ここまではモノローグで言えって事だよね?あたしは美緒とさっちに目をやった。

美緒は指を○の形にしている。そしてさっちは何故が机にバンバンと頭を打ち付けていた)

私の想い、紙飛行機に乗って飛んでけ。か…」

 

「言わないで、志保ちゃん」

 

「(机に頭を打ち付けていたさっちは頭から血を垂れ流していた。え?本当に大丈夫?)ニコッ」

 

「頭から血を垂れ流してる河野さんを見て微笑むなんて…志保は猟奇的だね…」

 

「(違うよ!)ニコニコ」

 

「あっれぇ~?みんなまだ帰ってなかったんだ?もしかして恋話?あたしも混ぜてよ~」

 

え?香菜?

 

頭から血を垂れ流しながら、香菜が窓から教室に戻ってきた。

何なのこの教室。流血してるJKが2人もいるんだけど?

 

「か、香菜姉、大丈夫なの?」

 

「心配してくれてありがとね栞。でも大丈夫だよ。流血沙汰には馴れてるから♪」

 

流血沙汰には馴れてるバンドストーリーって…。

 

「さて、さっちちゃん紙飛行機でのお手紙ありがとね。おかげで何となく今の状況が把握出来たよ」

 

「ゆ、雪村さん!?」

 

「香菜さん!?」

 

「(え?香菜は何を言ってるの?それモノローグでもなく普通の台詞じゃん!)きゃな!!?」

 

あ、噛んじゃった。

 

「大丈夫大丈夫~。みんな心配し過ぎだって~。それにほら、さっさとこの茶番劇も終わらせて本編に戻った方がいいじゃん?ただでさえあたしらバンド活動少ないんだし」

 

い、いや、確かにあたしら全然バンドやってる感無いし、早く本編に戻りたいけどさ?

 

「さて、じゃあここからは解決編!大船に乗った気持ちであたしに任せちゃいな~」

 

香菜はそう言ってあたし達にピースサインをしてきた。

これまでのあたしらの事を思うと、香菜の船とかすぐ沈んじゃいそうなんだけど…。

 

「志保、わかってると思うんだけどさ~?今回のモノローグって全部筒抜けだからね~?」

 

あ、ヤバ、そうだった…。

 

「ま、いっか。とりあえず解決しちゃおうかな」

 

え?とりあえず解決?

そんな軽いノリで解決出来るお話だったの?

 

「今回のこのお話には梓さんは絡んでないね!梓さんだったらこんな回りくどい事せずに直接聞いてくると思うし!」

 

香菜はいきなりそんな事を叫んだ。

あ、確かにそっか。晴香さん達から聞いてる話だと梓さんってめちゃくちゃ強いんだよね?喧嘩が。

 

もしあたしらの中に貴の事を好きな人が居たとしても梓さんならこんな回りくどい事しなくても、邪魔者を排除するのはわけないよね。

 

あたしがそんな事をモノローグで思った時…

 

『あ、ほんまや!そういやそうやん!ちょっ、日奈子!あんた!』

 

お決まりの『ピンポンパンポ~ン』の音も無く、スピーカー内から澄香さんの声が聞こえた。何てご都合主義なの!?

 

『ま、待って澄香ちゃん!ち、違うの!これは全部梓ちゃんの為に仕組んだ事であって…あ、違う。仕組んだとかないからいやまじで。あ、待って澄香ちゃん!痛い…それ痛いやつ…ちょっ、待っ……ブツッ』

 

梓さんの為に日奈子さんが仕組んだ…?

えっと、どういう事なんだろ?

 

「なるほど。つまり私達からファントムのメンバーの中で、お兄さんの事を好きな人が居るかどうかを日奈子さんは聞き出そうとした訳ですね」

 

「そうなんだよ~。私もアイドルやる為に日奈子さんにはちょっとした恩があったから断り辛くて~」

 

あ、さっちはやっぱり日奈子さんの仕込みだったんだ?

 

「でも河野さんは何とかしようとしたのでしょう?麻衣を通して私に別の台本を渡して来たくらいだし。私も麻衣から貰った台本読んでびっくりしたけど」

 

「さすが佐倉さんだよね!でもね、美緒さん、私も志保ちゃん達みたいに名前で呼び捨ててよ~。もう同じファントムの仲間なんだし~」

 

「え?えぇ~……わ、わかったよ。紗智」

 

「やったー!私も美緒ちゃんって呼ばせてもらうねー!」

 

そう言ってさっちは美緒に抱きついた。

 

いや、まぁ、うん。

何となく何でこんな不可思議な番組の撮影なんかやらされたのかと思ったし、無駄に長かったけど、解決はしたの…かな?

ぶっちゃけ被害はものすごい事になっちゃったと思うけど。

 

「志保の言う通りよ…紗智!」

 

あたしの言う通り?

明日香は何を言ってるの?あ、そっか。まだあたしのモノローグはみんなに筒抜けなのか。

 

「あんた!これが日奈子さんの訳のわからない策略で、そう言った意図があったんなら私にも学校で話せたでしょ!」

 

「え?だって明日香ちゃんお芝居下手そうだし。ほら、前回も冒頭は棒読みだったじゃない?」

 

「そ、それでもよ!おかげで私の好きな人が…その…渉…だって…(ボソッ」

 

「あははは、明日香ちゃん大火傷だよね」

 

「誰のせいで大火傷したと思ってんのよ!!」

 

あ~…明日香の好きな人がまさか江口だってのにはびっくりしたけど、大火傷したって言えばさっちもだし、茅野先輩も…。

 

「あ、そうだよね。双葉も好きな人は松岡 冬馬だってさりげに暴露されてたもんね。ボクは何か怪しいと思ってたし遊ちゃんの名前は出さなかったけどね」

 

「うん、まぁ、私の好きな人の事気付いてないのは冬馬本人だけだと思うしもういっかな?って。みんなにはさすがにバレバレでしょ?でも栞も良かったの?さっきまでは頑なに『みんなが好き』とか言ってたのに、とうとう遊太くんの名前出しちゃったよ?」

 

あー、栞はやっぱり遊太の事が好きなんだ?

何となくそうかなー?とは思ってたけど…。

 

「し、しまった…こんな全世界放送のネット番組の撮影で…。ち、違うし!遊ちゃんなんかどうでもいいしっ!」

 

そうだよ!忘れてた訳じゃないけど、これって全世界放送のネット番組の撮影じゃん!?

いいの?こんなグダっちゃって…。

 

「栞~。安心していいよ。これは撮影されたりなんかしてないから。でもやっぱり栞は遊太の事が好きだったんだね~。いや~、お姉さん何かドキドキしちゃうわ~」

 

「か、香菜姉は何を言ってるの!?

ってか、それより!撮影されてないってどういう事?」

 

撮影されてない?

いや、あたしらの教室のまわりにはスタッフさんも居るし、なんかカメラみたいなのもあるよ?

 

『ピンポンパンポ~ン。香菜の言う通りよ。心配しなくていいわ』

 

え?理奈?

 

「ね?ほら、理奈ちもそう言ってる」

 

「で、でもまわりにはスタッフさんもカメラも…」

 

『私達に撮影をしていると見せ掛ける為のダミーよ』

 

え!?ダミーなの!?

何でわざわざそんな事を!?

それが本当ならスタッフさんも本当に大変ですねっ!

 

「志保もそこまではわからなかったのかな?あたしも途中まではわからなかったけどさ?これは全部日奈子さんの仕込み。理奈ちも誰の仕込みか探る為にこの話に乗っかってって感じなんだよ」

 

誰の仕込みか探る為に?

 

『そうよ。黒幕が表に出て来るまでのお芝居。志保のモノローグを読んで、貴さんの事を好きな"フリ"をしていれば、黒幕も面白がって出て来ると思っていたのだけど…』

 

「きっと日奈子さんは理奈を警戒してたんだね。なかなか尻尾を出さなかったし、あたしが突き止めるまではね!」

 

香菜は自分がこの茶番の黒幕を突き止めたのがそんなに嬉しかったのかな?

 

ん?待ってよ。

って事は理奈が貴の事をあたかも好きですよみたいな放送をしてたのはダミーって事?

なら、あたしもこの後、理奈にしばかれるかもって危惧してたけどその心配も無いって事だよね?

 

『いえ、それは違うわ。後でちゃんとお話しましょうね(ニコッ』

 

あかん。ダメだ、終わった。

何が終わったってあたしの人生が…。

だって理奈の放送から「ニコッ」とか聞こえたもん。

わざわざ笑ってる演出を台詞でやってるもん。

もう泣きそうになってきた。

 

「ふぅん。なるほどね。だったらこのお話は前回も含めて全部日奈子さんのやらせだったんだ?」

 

「うん、全部そうだったみたいだよ。まったく…貴重な本編の更新を止めてまでこの作者は何をやってたんだか…」

 

栞と美緒がそう言った時だった。

 

-ビターン!

 

さっちがいきなり台本を床に叩きつけた。

意外と大きな音だったからちょっとびっくりした。

 

「そ、そそそそ、そそ!そう!そうなんだよ!

これはぜ~んぶ日奈子さんの台本なの!ね、明日香ちゃん!」

 

「は?紗智?あんた急にどうしたの?」

 

さっち?本当にどうしちゃったの?

 

「だ!だから!これは全部日奈子さんの台本なの!やらせの台本なの!だからごめんね江口くん!私が江口くんの事を好きって事はないの!もし、江口くんがこのお話を見て勘違いしちゃってたら本当にごめんね!」

 

え?さっち…?

いや、さっちは江口の事好きなんでしょ?

 

「そう!そうだよね、紗智!

渉!あんたこれ見てる?もしこのお話を読んで私と紗智があんたの事を好きなんだとか勘違いしてたらクラス中で笑い者にしてやるからっ!」

 

は?明日香も何を言ってるの?

明日香も江口が好きなんでしょ?

 

「だよね~、明日香ちゃん!私達が江口くんの事を好きな訳なんかないよね~」

 

「ほんとほんと、マジで無いから!日奈子さんの台本にそう書いてたから、嫌々そう言ってただけだし!」

 

「「ねー♪」」

 

あ~…そう言うこと?

確かにこれって江口も読みそうだよね。

なるほどね。全部日奈子さんの台本って事にして全てを終わらせるつもりか。

 

「な、何を言ってるの志保ちゃん!志保ちゃんは私の好きな人知ってるでしょ!?」

 

ああ。うん、江口って知ってる。

秦野はダミーだったって知ってる。

知ったの今日だけど。

 

「志保は知ってるでしょ。私はクリムゾンを倒すの!恋とかそんなのいらないの!」

 

うっわ~。クリムゾンを倒したいって事は知ってるけど、江口を好きな事バレたくないからってそれ出す?

 

「「な、何を言ってるの志保(ちゃん)!違うって言ってるでしょ!だ、大体志保(ちゃん)だって本当に貴さんの事が好……」」

 

 

 

 

 

 

ブツッ

 

 

 

 

 

ん?あれ?

 

ここは…?

どこ?

 

「志保?どうしたの?さっきから何も喋らないけど?」

 

「あ、もしかして~?渚は梓さんの事を待つみたいだし、帰っても1人だから怖いとか?」

 

理奈と…香菜…?

え?あたし…。

 

「本当にどうしたのかしら?」

 

「いや、冗談だったんだけど…、本当に怖いとか?」

 

え?ここは…

渚のマンションの近くの道?

 

あたしは今、理奈と香菜と3人で歩いてる?

待って、さっきまで企画バンドの撮影って騙されて、SCARLETのスタジオに居たはずなのに。

 

頭が少しボ~っとしてる感覚はあるけど間違いない。

あたしは偽番組の撮影をしていたはず。

ちゃんと覚えてる。

 

だけど、あたしは今、澄香さんから企画バンドの話を聞いて、SCARLETを出て理奈と香菜と帰宅中である。

って事も理解している。

 

今さっきあった事は夢?

いや、夢にしてはハッキリ覚え過ぎてるんだけど…。

 

「企画バンドの事を聞いて現実が受け止められないのかしら?」

 

「いや、でもあたしらはそよ風で企画バンドの話も聞いてたし、そんな今更受け入れられないとかなくない?」

 

企画バンド…。

あたしって本当に歩きながら寝ちゃった?さっきまでのは夢…なのかな?

 

「あ、あたしこっちだから。でも本当に大丈夫?」

 

渚の家であるマンションと、理奈と香菜の家の方向である分かれ道。

うん、間違いない。こっちが現実。

 

「あ、あはは。ちょっと疲れただけかも。あたしは大丈夫だよ。それじゃまたね」

 

「う、うん、大丈夫ならいいけど…。じゃ、またね」

 

「気をつけて帰るのよ?」

 

そう言ってあたし達は別れた。

 

あたしは夜道を1人歩く。

ここら辺はこんな時間になっても、全然明るいから1人でも割と平気だ。

 

本当にさっきまでのは何だったんだろう?

ただの3周年記念にあたしがばかされただけ?

 

「志保?本当にどうしたのかしら?大丈夫なの?」

 

え?理奈?

 

「り、理奈こそどうしたの?理奈の家って香菜と同じ方向じゃん」

 

「何を言っているの?さっき後で話があると言ったじゃない」

 

さっき…?

 

「もしかしてなのだけれど、ずっと上の空で話をちゃんと聞いてなかったのかしら?」

 

「あ、あはは…ごめん、ちょっとボ~っとしてるみたいで…」

 

上の空って言うか、さっきまで夢の中なのか別の世界線なのか。

3周年記念で番組収録してたと思ってたのに、いつの間にか理奈と香菜と帰宅中って感じだし、本格的にあたしどうしちゃったんだろ。

 

「そうなのね。疲れてるのかしら?」

 

「あー、そうかも…あ、でももう大丈夫だよ。いつも通り元気だから」

 

「そう。なら安心したわ」

 

やっぱり疲れてるからかな?

あんま疲れてるって意識無いけど。

あ、さっきの収録はめちゃ疲れたけどさ。

 

「ゆっくり話したかったのだけど、疲れてるみたいだし今度の方がいいかしら?」

 

「ううん、大丈夫だよ。それって長くなりそうな話なの?」

 

「そうね。志保次第だとは思うのだけれど、とてもとても長くなる気がするわ」

 

あたし次第?何だろ?

新曲の話とかかな?

 

あたしはそこまで考えてハッとした。

 

 

『ピンポンパンポ~ン。志保、後で話があるわ。収録が終わったらゆっくり話しましょう』

 

 

『ピンポンパンポ~ン。志保、後でのお話の事だけど、とてもとても長くなりそうだわ。覚悟していなさい』

 

 

アノ時、アノ収録の時。

理奈は確かにそう言っていた。

そして今も、とてもとても長くなりそうって…。

 

すごく嫌な予感がする…。

 

「志保?」

 

ゴクリ

 

「理奈、その話ってさ…」

 

理奈にどう切り出せば…。

あんまり下手な事を言う訳には…。

あたしは次の言葉をどう繋ぐべきか考えていた。

 

「志保?本当に大丈夫なの?あなた…少しおかしいわよ?」

 

そう。そうだ。

おかしいのはあたしなんだ。

理奈は新曲の話をしたいのかも知れない。

 

さっきの収録を現実だと思っているあたしがおかしいんだ。

 

だってアレはあたしが見た…

 

 

 

 

 

 

「夢じゃないわよ?」

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