「いやー!しっかし企画バンドの話も纏まって良かったよな!」
「英治。テメェが何をもって良かったと言っているのかわからねぇ。俺は暴君晴香と一緒にやらされるんだぞ?」
「まさか理奈も有希も承諾してくれるとはな。何にしても良かったわ。…ん?良かった?いや、あんま良くねぇか。俺にはBlaze Futureもあるわけだし…」
「あはは、でもあの頃のはーちゃんの曲がまた聴けるってのは俺は嬉しいよ」
俺の名前は佐藤 トシキ。
15年前までBREEZEっていうバンドでギタリストをしていた。
そのBREEZEのボーカリストだった葉川 貴。
ベーシストの宮野 拓斗。
ドラマーの中原 英治。
その4人でSCARLETの企画バンドの会議を終えて帰っているところだ。
15年前、俺達は別にメジャーデビューを目指していた訳じゃない。
みんなの前で俺達の好きな音楽を演奏出来るって事が、楽しくて嬉しくて、誇りみたいなものを持ってバンドをやっていた。
もちろん大変な事も辛いと思った事もあったけど、昔のどんな想い出よりもかけがえがないくらいの大切な俺の軌跡。
クリムゾンミュージックという大きな音楽会社が、パーフェクトスコアという音楽を携えて、自由な音楽をやるバンドマンに……
「って訳でよ!今日は初音を俺の親父の家にお泊まりに行かせててよ!久しぶりに俺達4人揃ってるし今から飲みに行かねぇか?」
ちょ、えーちゃん…。
今は俺のモノローグ中だからさ?
「タカもトシキも三咲と飲むとか久しぶりだろ?拓斗はまぁアレだったけどよ?」
「あ?英治。俺がアレだったって何だ?
今日は日曜だぞ?タカもトシキも明日は仕事もあんし、俺も夕方からだが仕事だ。テメェみたいに気分で休みをコロコロ変えられる身分じゃねぇんだよ」
三咲ちゃん。
三咲ちゃんっていうのは、えーちゃんの奥さんの事だけど。
俺もここ数年は三咲ちゃんと飲みに行くとかなかったし、久しぶりに飲みにでも行ってゆっくり話したい気持ちはあるけど、明日は仕事もあるしね。
「トシキと拓斗の言う通りだな。久しぶりに三咲と飲みたいとは思うが明日は仕事だからな。僕帰ってお風呂入って寝るの。あ、寝る前に歯磨きしなきゃ」
待ってはーちゃん。
俺と宮ちゃんの言う通りって何?
俺何も言ってないよ?
「そう言うなよ。仕事なんていつでも出来るじゃねーか!でも三咲と飲みに行けるとか今日くらいしか無いかもだぜ?」
「英治、テメェ一般常識ってのが欠落してんのか?仕事なんていつでも出来るって何だ?お前はアホなのか?」
「待て拓斗。英治の言いたい事はわかった。
こいつ雇われ業の俺達をバカにしてんだわ。よし、英治今から殴るから歯を食いしばって祈れ」
「タカも拓斗もよく聞け。さっき俺は初音を親父の家にお泊まりに行かせていると言っただろ?つまり本当なら今日は俺は三咲と2人きりでデートを出来てた訳だ。初音がずっと欲しがっていた弟か妹を…ゴニョゴニョ出来る予定だった訳だ。わかるな?」
えーちゃん…俺達のこの歳になってゴニョゴニョって…。
「は?英治。テメェは何が言いてぇんだ?」
「落ち着け拓斗。英治の言いたい事はわかった。
こいつまだ未婚の俺達をバカにしてんだわ。よし、英治今から本気で殴るから遺言でも辞世の句で好きな方を言え」
「俺を殴るなら殴ればいい。だがな、今日BREEZEで飲みに行こうと企画したのは三咲だ。この誘いは三咲の誘いだ。さぁタカ、俺は言いたい事は言った。好きなだけ殴れ」
「………久しぶりにみんなで飲むのも楽しそうだよな。トシキ、拓斗、俺は英治と飲みに行く事にする」
「三咲ちゃんの誘いなら…行かない訳にはいかないでしょ」
「俺も帰ってきた事だしな。お前らと飲みてぇと思ってたところだ。もちろん俺も参加させてもらうぜ」
俺達ってどんだけ三咲ちゃんの事怖いの?
まぁ、俺も飲みに行くけどさ。怖いし。
「いやー!良かったぜ!早速三咲に連絡するな!お前らに断られたら俺の誘い方が悪かったとかでしばかれるところだったわ!…………よし、全員参加って連絡したからな。もうお前ら逃げられねぇからな?」
そうして俺達はそよ風に向かう事になった。
今日は晴香ちゃんも宮ちゃんも休みだけど、他の従業員さんのおかげで店は開けてるみたいだし。
「おら、タカ!そんな嫌そうな顔すんなよ!」
「は?嫌そうな顔とかしてませんけど?久しぶりに三咲と飲めるとか楽しみしかありませんけど?てか、逃げたりしないんで肩を組んでくるのとか止めてくれません?」
そう言ってえーちゃんは、はーちゃんを連れて歩いて行った。
「ハァ…しゃあねぇ…俺達も行くか。ま、トシキにも聞いておきたい事があったしよ。ちょうどいいか」
「え?宮ちゃんが俺に聞きたい事?何それ?正直嫌なんだけど」
「何でだよ…!」
宮ちゃんが俺に聞きたい事?
う~ん…宮ちゃんが俺に頼るとか、はーちゃんが怒りそうな事絡みか、梓ちゃん絡みの事ばっかりだったしなぁ…。
「あ、そういや今もちょうどいいな。タカも英治も離れてんし。今ならあいつらにも聞こえねぇだろ」
「え?だから俺、さっき嫌だって言ったじゃん?てか、はーちゃんに聞かれたくないって事はやっぱりはーちゃん絡み?知ってると思うけどはーちゃん地獄耳だよ?」
「あ?ああ、今回はタカの悪口とかあいつが怒り……まぁ怒るかも知んねぇが、俺ってよりはお前が関係してる話だからな。大丈夫だろ」
はーちゃんが怒りそうだけど俺が関係してる話?
一体何の事だろう?そもそも俺ははーちゃんが怒るような事はしないけど?
「拓実達から聞いたんだが、お前、ファントムの奴らにBREEZEん時の話をしてやるんだってな?」
拓実くん達から聞いた?BREEZEの時の話をみんなに?
それって南国DEギグの時に言ってた話かな?
「うん、まぁみんなに話してもいいかな?って思ってね。あ、だからはーちゃんに聞かれたくなかったの?はーちゃんは恥ずかしがりそうだもんね」
「チ、やっぱりマジだったのか。いくらお前でもその…大丈夫なのか?」
ん?大丈夫なのか?ってどういう事?
「BREEZEの結成から解散までの赤裸々で詳細な話や、クリムゾンとの戦い、アルテミスの矢の事やArtemisとの事、更には俺達がどんなライブをやってきたのかとか、日常的な話まで『全米が泣いた』ってキャッチが付きそうなくらいの壮大な話をやるつもりらしいじゃねぇか」
え?待って何それ?
BREEZEはどんな風に結成したのか、どんなライブをやってきたのかって話だけじゃないの?
「更にはタカの恋話や英治のアレな話。氷川さんとの事やONLY BLOODの事、雨宮さんや浅井さんの事やetc.etc.…」
ちょ、ちょっとマジで待って!
はーちゃんの恋話って何!?それはいくら何でもしばかれるだけじゃすまないでしょ!?
「宮ちゃんちょっと待ってよ。恋話とかもだけどさ?氷川さん達の事までとは俺は言ってないよ?BREEZEがどうやって結成されたか、俺達がBREEZEとしてどんな音楽をやってきたのか。そんな話だけのはずだよ?」
「あ?そうなのか?拓実がそんな話をAiles Flammeの連中と俺に言ってきて、たまたま近くにいた冬馬達のCanoro Feliceも話に加わってきて……」
それから聞かされた宮ちゃんの話はこんな感じだった。
・
・
・
『それは本当ですの!?まさか澄香さんの昔のお話が聞ける機会がこんなに早くやってこようとは!』
『へぇ~。たぁくん達の昔のお話かぁ~。それは面白そうかも!架純も同じLazy Windだしたっくんの聞きたいよね?』
『結衣?同じLazy Wind…って事はたっくんってのは拓斗さんの事かな?拓斗さんの事なんか興味無いよ?あ、でもタカさんの昔のお話なら…』
『あははは、タカさんの昔のお話とか、もしかしたら元カノさんとか恋話とかも聞けるかもなぁ?架純もタカさんの好みのタイプとか気になるやろし聞きたいやろ?』
『ちょ…ケホッケホッ、聡美は何を言ってるの?ケホッ、タカさんの好みのタイプとか…その…ケホッ』
『あら?何を話しているのかしら?タカさんの元カノの話?タカさんに元カノなんている訳がないじゃない』
『理奈もそう思うよね?タカに元カノとか…マジうける』
『ちょっと、理奈ち?志保?Ailes FlammeとCanoro FeliceとLazy Windの話が気になったからって、いきなり話に加わるのはやめよ?まずはちゃんと挨拶からしよ?』
『いやいやいや!香菜さん甘いです!タカさんの元カノの話ですよ?あたし達Glitter Melodyもそれは気になりますよ!ね?美緒?……ありゃ?美緒どこ行ったの?』
『麻衣ちゃん、美緒ちゃんならバイトに戻ったよ?タカさんの元カノのお話とか…美緒ちゃんには辛いんじゃないかな?』
『え?何でタカさんの元カノの話が美緒には辛いの?あ、奈緒さんの事があるから?』
『あはは~、睦月ちゃん?私の事があるから貴の元カノのお話が辛いとか何ですかね?貴に元カノとかいた所で私には何とも想う所もないんですけど?』
『奈緒、無理すんなって…。タカに元カノなんていないから。梓さんは違ってたんだしさ』
『まどか。まどかも無理してるんじゃない?貴兄の情事とか…聞きたくないよね?ほら、花音も言ってあげて』
『綾乃さんの言う通りだよ。奈緒、そりゃ想いの人の元カノとか、元カノとの情事とか聞きたくないだろけどさ?…って待って綾乃さん、もしかしてまどかさんも貴さんの事を?』
『葉川の元カノの話かぁ~、私は聞いた事ないかも?フラれた話とかは職場の飲み会で聞いた事はあるけど……達也は何か知ってる?』
『いえ、僕もタカさんの元カノとかの話は聞いた事ないですよ。でもBREEZEの話ってのは、僕の知らない事もあるでしょうし気になりますね。それより真希さんもタカさんがフラれた話とか気軽に言わない方がいいですよ?この場は危険ですから…』
『俺は雨宮 大志の話が気になるぜ。昔の音楽はどんな音を奏でてたのかって事とかな』
『結弦は雨宮 大志の事ばかりだな。だが、BREEZEの話となると雨宮 大志の話もあるだろうな』
『俺もその話は気になるかも~。寝ずに聞いてみたい話ではあるかな?』
『俺も気になるぜ。宮野さんには晴香さんって妹が居るしな。英治さんにも妹が居ると聞いている。同じ妹を持つ兄としてバンドマンとしての心構えを聞いてみたいぜ』
『あたしは九頭龍から色々話は聞かされてるしBREEZEの事には興味無いかな。でも、有希は興味あるんじゃない?タカくんの元カノとか元カノとか元カノとか』
『美来、お前はクリムゾンに長く居すぎたせいでアホになったのかね?私もボスに昔の話は聞いているしな。特に興味は無いよ。ただ、タカの元カノか…私のママになったかも知れない人…(ボソッ』
『ね、ねぇ、みんな何の話してるの…?タカ兄に元カノ?天変地異が起きるの?ボクまだ生きたいよ』
『栞、安心しなさい。葉川くんに元カノなんて居る訳無いわ。あの人はチキンなのよ?』
『葉川さんに元カノかぁ?元カレとか言われた方がピンとくるよな?な、双葉?』
『いくらタカくんでもそれは無いんじゃない?でもタカくんに元カレかぁ~…創作意欲がわいてくるよ!』
『なんか今日のファントムは大盛況だね!これは大儲け出来るかも!』
『初音はブレないね~。あたしはおかーさんにも色々聞いてるしな~。でもBREEZEの昔のお話か~。あ、お腹空いたかも~?そろそろまかないの時間かなぁ~?』
『盛夏さんもブレないじゃないですか。お義兄さんの元カノってのもお姉ちゃんの為に気になるのは気になりますが、昔のお話なら理奈さんのお父さ…お義父さんのお話もあるでしょうし、同じベーシストとして気になりますね。
拓斗さん、そのお話はお義父さんのお話もありますか?』
『美緒、まずタカはお前のお義兄さんじゃねぇ。それに氷川さんの話も俺達には欠かせない話だし、あるとは思うがお前、お父さんをお義父さんって呼び直さなかったか?』
・
・
・
「ってな事があってな。その後もみんな聞きたい事とか色々リクエストとかもしてきてよ?」
ちょっと待って!その話ファントムのバンドほとんどのメンバーが出てきてない!?
てか、リクエストとかもしてきたって宮ちゃんはそのリクエストに応えるって言ったの?それ俺は関係無いじゃん!宮ちゃんのせいじゃん!
って何で美来ちゃんもそこに居るの!?有希ちゃんと一緒にファントムに来るくらい仲良くなってるの!?
はーちゃんと渚ちゃんは、会社の部署飲みとかでたまたまファントムには居なかったらしいけど…。
「トシキ…相変わらずテメェは怖い事がな…い…あいつら何やってんだ?」
宮ちゃんが俺に謂れのない事を言って来ている途中、宮ちゃんははーちゃんとえーちゃんの方を見て話を打ち切り立ち止まった。
俺もはーちゃんとえーちゃんの方へと目を向けると、2人は立ち止まったまま動いていなかった。
どうしたんだろう?
「はーちゃんとえーちゃん、どうかしたのかな?」
「どうせどっちかが犬のう○こでも踏んで動けねぇとかじゃねぇか?とりあえず俺達も行くか」
俺と宮ちゃんが、はーちゃんとえーちゃんの近くまで行った時、俺は何があったのか全てわかった。
はーちゃんとえーちゃんの前には彼が居た。
15年前、俺達BREEZEとライバルのように戦ってきた…
「ま、まずいぞタカ。こ、こ、こ、この人はほんまもんのマジもんだ。お、俺…もう全部ちびってしまった」
「落ち着け英治。目を合わせるな。なにも無かったかのように過ごせ。あ、やばい。俺も足が震えて1歩も歩けないんですけど」
…また俺のモノローグはえーちゃん達に邪魔されちゃった。
ってか、はーちゃんもえーちゃんも何をビビってるの?
「ま、まずいぞトシキ。こいつらを見捨てて逃げるべきだった。タカも英治も何でこんな怖い人に絡まれてんの?俺もうお家帰りたい」
え?宮ちゃんもビビってるの?
「フン、佐藤と宮野も一緒に居たか。オメェらも久しぶりだな」
うん、本当に久しぶりだ。
「ヤバいよ英治。このお方はトシキと拓斗の事も知ってる感じだよ。どうにか逃げる方法無いかな?」
「お、お、お、落ち着けタカ。こういう時は石だ。石になりきるんだ。俺は無機物…俺は無機物…」
「何で俺の事までバレてんだ?俺はクリムゾンと戦っては来たが借金もしてないし真っ当生きて来たハズだぞ?何で?何でこんな怖い人が俺の名前を知ってんの?」
はーちゃんもえーちゃんも宮ちゃんも…。
本気っぽいな。本気でコイツが誰だかわかってない感じだね。
俺達BREEZEのチキンっぷりをこんな所で発揮させなくてもいいのに…。
「フッ、オメェらみんなだんまりか。わざわざ俺様がオメェらと話をする為に出てきてやったのによ」
俺達と話をする為に…?
「英治…これ絶対ヤバいって。俺達に話があるとか言ってるもん。もう逃げ場は無いんじゃないか?渉、亮、拓実くん、シフォン、ごめんな。もっとお前らに音楽を教えてやれば良かったな。奈緒、盛夏、まどか…すまん、後は頼んだ」
「三咲…初音…お前らにもっと家族サービスってヤツをやってやってれば良かった…。俺の事は少しだけでもいいから覚えててくれな。そして、幸せになってくれ…」
「晴香…明日のバイトには行けそうもねぇ。何年も音信不通になってて本当にすまなかった。フッ、兄としてもバイトとしても俺はダメだったな。明日香、聡美、架純、強く生きろよ…」
はーちゃんもえーちゃんも宮ちゃんも何の覚悟をしてるの?
ああ、このままじゃ話が進みそうにないね。
みんなわかってるのかな?この後、三咲ちゃんと待ち合わせしてるんだよ?遅れたりしたらそれこそ本当に怖い事になるよ?
「あ?オメェら何を言ってやがんだ?」
「はーちゃんとえーちゃんと宮ちゃんの事は放っておいていいよ。俺達も今はあんまり時間無いしね。話って何かな?波瀬 源二郎」
「「「何!?波瀬!?波瀬 源二郎だと!?」」」
俺ははーちゃんとえーちゃんと宮ちゃんにもわかるように、目の前にいる男の名前をフルネームで呼んだ。
俺達と戦ってきたONLY BLOODの3代目のボーカル。
今は4代目ONLY BLOODのプロデューサーをやっているんだったかな。
ふぅ、やっとさっきのモノローグの続きを言えた。
「オメェら程じゃないかも知れねぇが俺も時間があるって訳じゃねぇしな。じゃあ、早速話を…」
「テメェ、波瀬か?何でこんな所で俺らを待ち伏せしてやがんだ?何でこんな夜に黒スーツにサングラスなんかつけてんだ?俺らをビビらせた罪は重い。歯を食いしばって祈れ」
「波瀬。お前の話ってのが何なのか知らねぇがお前の話なんか聞いてやる義理はねぇ。どうしても話がしたいなら取り敢えずコンビニでパンツ買ってこい。Lサイズな」
えーちゃん…コンビニでパンツを買ってこいって…。
さっきの全部ちびってしまったっていうのはマジなの…?
「パンツ?何でそんなもん俺が買って来なきゃなんねーんだ?
まぁいい。早速話させてもらうぜ」
「あ?だから話を聞いてやるからパンツを…」
「うるせぇよ中原。俺を誰だと思ってんだ?
俺はONLY BLOODの波瀬だぜ?」
懐かしいなぁ。波瀬のこの台詞…。
「葉川。おめぇBlaze Futureってバンドでまた歌い始めたらしいな。喉を壊しやがったくせにBREEZEでもないバンドでよ?」
あ、やっぱり波瀬もはーちゃんがまた歌い始めた事を知ってたんだ?
それで俺達に会いに来たのかな?
「は?俺がどこで何を歌おうが俺の自由ですけど?何か文句あんの?」
「おめぇ、まさかBlue Tearの事務所の敵討ちのつもりじゃねぇだろうな?」
「は?Blue Tear?何で?」
Blue Tearの事務所の…敵討ち…?
何ではーちゃんが?
結衣ちゃんや架純ちゃんの事…じゃないだろうな。
結衣ちゃんにしても架純ちゃんにしても、はーちゃんが出会ったのはBlaze Futureで歌い始めた後だ。
そういやえーちゃんがBlue Tearにハマってた時に、はーちゃんの推しは誰だか聞いたような気もするけど、それも関係無いだろうしな。
そもそもはーちゃんがまた歌い始めたのは、奈緒ちゃんに誘われたからだし。
「あん?ちげぇのか?」
「何でここでBlue Tearが出てく…」
「あっったり前だろうが!タカが敵討ちだの恨みだので歌う訳ねぇーだろうが!」
「ああ、何で波瀬がBlue Tearの敵討ちって思ったの知らねぇが。タカは同じバンドの女の子に惚れて一緒にバンドやろうって思っただけだ」
「バッ!た、拓斗!お前何を言ってんだ!?アホなのか!?俺が奈緒に惚れてバンドとか無いわ!アホか!」
「あ?俺は同じバンドの女の子って言っただけで奈緒とは言ってねぇぞ?」
「いや!バンドに誘われたのが奈緒だから奈緒だって思っただけだっつーの!まどかは俺が誘った訳だし、盛夏はバンドやろうぜ!ってなった後に知り合ったんだからね!」
はーちゃん必死だなぁ。
もしかして本当に奈緒ちゃんの事を好きになって?
そういや俺がバンドに誘われた時も恋の為とか言ってたっけ?
「だからっ!それはキュアトロのマイリーの事だって言ってんだろうがっ!」
え?俺口に出してないよ?
「ぷっ、ククク…ふはっ、ハーハッハッハッハ!」
「あ?何笑ってやがんだテメェ!違うって言ってんだろ!しばくぞ!」
波瀬は耐えられなくなったように笑い出した。
「ふふ、はっはっは、いやー、おめぇら変わらねぇな。心底安心したぜ」
「あ?安心しただぁ?」
「テメェ、どういう事だよ?」
「いや!だから英治も拓斗も聞けよ!違うから!マジ違うから!」
「はーちゃんも落ち着いて…」
「おめぇらが相変わらずバカで良かったって事だ。なら、要件だけ伝えてサッサと帰るかな」
「あ?誰がバカだとこの野郎」
「こいつらはともかく俺もバカ呼ばわりとはなめてんのか?」
「いや!だから!本当聞いて!お願い!」
えーちゃんも宮ちゃんもはーちゃんも…。
この調子じゃ波瀬の要件聞くまでに時間掛かっちゃいそうだな…。
ごめんね、三咲ちゃん。しばらく待たせちゃうかも…。
『大丈夫だよ、トシキくん!いつまでも待ってるよ!』
ハッ!?
三咲ちゃん!?何で三咲ちゃんの声が!?
そういや雨宮さんとデュエルした時も、はーちゃんの声が聞こえたっけ。
どうなっちゃったんだろう俺の頭…。
俺の妄想とかそんなのかも知れないけど、三咲ちゃんも待ってるって言ってくれてるし、しばらくはみんなの様子を見ていよ……う…かな?
って思ったけど、ちょっと待って。
俺はいつから三咲ちゃんが大人しく待っててくれる女の子と錯覚していた?
確かにえーちゃんと結婚して初音ちゃんが生まれてからの三咲ちゃんは、人格を整形する魔法でもかけられたの?って思うくらい大人の女性になった。
これまでこの話の中で出てくる三咲ちゃんのシーンは、すごく大人の女性ってイメージの描写をされている。
だけど、それは初音ちゃんやファントムのバンドのみんなが居る前だけでの話だっ!
今、はーちゃんはいつものBlaze Futureの葉川 貴ではなく、俺達BREEZEと波瀬しか周りに居ないからか、15年前の葉川 貴の性格に戻りつつある。
いつものはーちゃんなら『しばくぞ』とか絶対言えないだろうしね。
まずいな…。三咲ちゃんもBREEZEのメンバーしか居ないからってあの頃の性格に戻っちゃったりしたら…。
えーちゃんはしょうがないとしても、このままじゃ俺とはーちゃんと宮ちゃんの命までも危うい…!
「はーちゃんもえーちゃんも宮ちゃんも今は黙ってて。波瀬、その要件って何かな?」
俺も自分の身がかわいいからね。
早く要件だけ聞いて三咲ちゃんの所に急がなきゃ。
「「「おい!トシキ!俺らに黙ってろってどういう…」」」
「だから、黙っててって言ってるでしょ?(ニコッ」
俺も悪いなぁとは思うよ?でもこの場を長引かせるのは俺達にとってはマイナスでしかないから…。
俺は今出来る限りの笑顔でみんなに声をかけた。
「おい、トシキのヤツまじで怒ってねぇ?」
「タカ、英治、俺達はとりあえず黙ってようぜ」
「ああ、こんなトシキ見るの15年振りだよな。あれかな?この場にはBREEZEしか居ないから昔に戻っちゃった的な?」
はーちゃん?宮ちゃん?えーちゃん?
「要件…か。そうだな。
葉川。悪りぃとは思ってる。けどよ、お前の
「あ?レガリア?」
レガリア…?
波瀬は…まだはーちゃんのレガリアを…?
「ふっ、安心しろ。昔は確かにONLY BLOODの2代目である大神さんから、3代目の俺じゃなく、お前にレガリアが託された事は我慢ならなくて、おめぇらにデュエルをふっかけてはいたけどよ」
射手座の宝玉。
あれは俺達がBREEZEを結成するよりもずっと前に、2代目のONLY BLOODのボーカル
レガリア戦争というデュエルギグによる戦いの渦中に居て、大神さんは身体を壊して歌えなくなった。
それから数年後に、ONLY BLOOD2代目の氷川さん…。
氷川さんというのは氷川 理奈ちゃんのお父さんの事なんだけど。
氷川さんと俺達はBREEZE結成した頃に出会い、バンドやライブ、音楽の事を教わって、俺達に…いや、はーちゃんに大神さんのレガリアは託された。
ま、この辺はまた今度、ファントムのみんなに話す外伝的な時に語られるかな。この小説そのものが『バンドやろうぜ!』の外伝的な話なのに…。
「お前…レガリアってな…」
「安心しろ。葉川。
今の俺なら何で大神さんや氷川さんが、おめぇにレガリアを託したのかよくわかる。いや、今になってやっとわかったって言うべきかもな」
「波瀬?お前…」
「だからこそだ。大神さんの意思と、昔のおめぇの意思を、引き継ぐボーカリストを…ONLY BLOODの俺が見つけてぇ。おめぇの事だからAiles FlammeやCanoro Felice、Divalといったファントムのバンドに託すなんて事はしねぇだろ。使う資格が奴らにあったとしてもな」
ああ、なるほどね。波瀬の気持ちもわかる。
大神さんから託されたレガリアは本当に大切なモノだ。
だからこそ、これからの世代にも音楽ってモノが何なのか。バンドというものが何なのか。
そんな想いを紡いでいく為にも、レガリアは次世代に託していかなきゃいけない。
それは、はーちゃんもよくわかってると思う。
だけど、俺達はその重さもよくわかってるし、レガリア戦争とか、昔のクリムゾンとの戦いの時のような、そんな音楽までもは継いでいきたくない。
だから、はーちゃんはレガリアを今まで誰にも託さず、使う事もせず、いつか全てが終わる時まで…
「いや、レガリアが欲しいならあげるけど?お前が使うんじゃないなら4代目の子が使うの?大丈夫?ん?待てよ…確かレガリアは…」
え?あげるの?
はーちゃん?レガリアって大切な…。
「ああ、おめぇもこないだの4代目のライブに来てたらしいな。だが、心配する事はねぇ。あいつらにも大神さんの戦いも、15年前の事も話してある。
さっきも言ったように、レガリアが俺じゃなくお前に託された事は今ではよくわかる。
だから、レガリアを受け継ぐ者はONLY BLOODで見つけてぇ。俺と4代目の奴らでな。
ONLY BLOODのバンドを引き継いだのは俺らだからよ」
「ん…そっか。別にお前らの4代目の奴らが使っても俺は別に…でも、実はレガリアはだな…」
「まぁ、俺は俺のガキに託せたらいいとは思っちゃいるが、あいつはまだ小学生だしな」
「!?…待て、波瀬。お前今何って言った?」
「あ?だからレガリアを受け継ぐ者は俺らONLY BLOODで…」
「ちっげぇよ!その後だ後!俺のガキにとか言わなかったかお前!」
ん?はーちゃん?どうしたの?
「あ?そっちかよ。まぁ俺のガキは野球だサッカーだとスポーツばっかで音楽には興味無さそうだけどよ。親としちゃやっぱいつかは…」
「こ!このドグサレ外道がぁぁぁぁ!!!!」
-ドカッ!!
「ブフォォォ!」
「「「タカ(はーちゃん)!?」」」
はーちゃんは何故かはわからないけど、いきなり波瀬を思いっきり殴り飛ばした。何で?
「テメェの事はバカだバカだとは思っちゃいたけど、まさかそこまでクソ野郎だったとはよ!」
そう言ってはーちゃんは倒れる波瀬の胸ぐらを掴んで無理矢理立たせていた。いや、本当に何で?
「は、葉川!おめぇいきなり何しやがる!」
「何しやがるだ?このクソ野郎。テメェ、今の話だとテメェには子供が居るって事だよな!?」
「は?は?当たり前だろうが!俺はおめぇと違って妄想癖はねぇんだよ!」
「こ、このクソ野郎が…開き直りやがって…!」
はーちゃんは本当にどうしたんだろう?ってか、何がしたいんだろう?
「テメェ!女の子を襲って無理矢理子供を産ませるようなクソ野郎だとは思ってもいなかったぜ!立てこの野郎!この場で俺が○してやる!!」
はーちゃん…。○してやるって何で伏せてんの?
ってか、もしかしてはーちゃん…。
「おい、トシキ、英治。まさかとは思うがタカは波瀬が結婚した事を知らねぇんじゃねぇか?」
宮ちゃんが俺達に声を掛けてきた。
うん、やっぱりはーちゃんは、波瀬が結婚したって事を知らないんだろうなぁ…。
「あ、そっか。三咲と晴香は薫ちゃんに結婚式にお呼ばれしたから俺らは知ってるもんな」
薫ちゃん。旧姓
波瀬と同じ高校に通っていた波瀬の追っかけをやっていた女の子。その関係で俺達BREEZEや三咲ちゃん、晴香ちゃんとも仲が良かった。
波瀬が足立にデュエルで負けて少ししてから、正式に付き合い出して、そして結婚した。
って…、はーちゃんも知ってるものだと思ってたけど…。
「誰が無理矢理襲っただこの野郎!俺はおめぇと違ってモテんだよ!!」
あ、波瀬がはーちゃんを殴り返した。
「お、俺と違って…モテ…モテる…だと…!?ガハッ」
あ、はーちゃんが吐血した。
「あ!波瀬の野郎!タカが吐血する程殴りやがって!」
「安心していいよ、宮ちゃん」
「ああ、あれは殴られたダメージで吐血したんじゃなくて、モテるモテないって事で精神的にダメージ受けただけだろ」
「あ?精神的ダメージだ?
タカはモテモテじゃねぇか。梓や澄香も、今は渚や理奈や奈緒に盛夏や志保とか美緒とか架純とか…」
「いや~、それはーちゃんはどれも気付いてないし、ミュージシャンとして好かれてるって自覚はあるだろうけど…」
「そうだな。恋とは微塵も思ってないだろうな。そんな勘違いして自爆した過去も多いしな。てか、拓斗。今、お前架純ちゃんの名前出さなかったか?架純ちゃんもなのか?」
「だからなっ!俺はちゃんと結婚して!そんでガキが産まれたんだよっ!」
「バ、バかな…ガハッ…、お、お前が…結婚なんて出来る訳か…グフッ」
「タカ、現実を見ろ。波瀬が結婚したってのはマジだ」
「た、拓斗…?」
「そうだぜタカ。奇跡ってのは起きるもんなんだよ。てか、このままじゃ話が進まないだろ?三咲も待ってる事だしよ」
「え、英治まで何を…言って…」
「そうだよ、はーちゃん。波瀬の結婚相手は松田 薫ちゃん。はーちゃんも知ってるでしょ」
「松田さん!?こいつマジで松田さんと結婚したの!?」
「あ、改まっておめぇらに言われっとこっぱずかしいな…」
「マジなのか…。波瀬が結婚をなぁ…。松田さんとかぁ…高校の頃から波瀬のファンだとか好きだとか言ってて変な子だとは思ってたが…それなら納得か…」
まぁ、薫ちゃんはあの頃からずっと波瀬の追っかけやってたもんね。
「しかし…そのまま結婚までいけるとは…英治も結局三咲と結婚出来たもんな…何なのこいつら失恋って知らないの?」
そう言ってはーちゃんは宮ちゃんを見た。
「タカ、テメェ何俺を見てんだ?」
ま、宮ちゃんはね…。
「オ、俺の結婚の事なんかどうでもいいんだよ!
葉川!そんな事よりも射手座の宝玉を…」
「あ、ああ、そーだったそーだった。レガリアな。
別にお前がそういうつもりで欲しいってんなら、譲ってやってもいいんだけどよ。実は…」
「ちょっと待てタカてめぇ!!!!」
「うわっ、びっくりした。どした英治?」
はーちゃんが波瀬にレガリアを譲る。
もう一度そう言おうとした時、えーちゃんが大声をあげて、はーちゃんの話を遮った。
「タカ!レガリアを譲っていいってどういうつもりだ!?」
えーちゃん?
えーちゃんは本気で怒っているようだった。
だけど何をあんなに怒っているんだろう?
南国DEギグの時に宮ちゃん達のバンドとデュエルをした時のような…何かしょーもない感じを覚えながら、えーちゃんはを見ているしか出来なかった…。