ソードアート・オンライン〜真実を知る者〜   作:夜明けを齎す竜

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千景ゲット回です。この後は74階話とクラディール?回、旅館話、とSAO最終と続ける予定です


9話 人狩り鴉と地獄の王子

〜ラフコフ討伐から約1カ月後〜

 

「早い!さすがに早いわ!」

 

「アンタから連絡したんだろうが!それに答えてここに来たのがそんなに悪いかよ!あ〜ん⁉︎」

 

「五月蝿いわ!こちとら『先輩』じゃ!」

 

「ンだとォ!」

 

PoHに連絡をし、第50層のある家に呼び出した。この間、討伐戦があったというのに油断しすぎではないのか?呼んだのは俺だからそれに怒るのは筋違いなわけだが……

 

「で、呼び出した理由はなんだ?」

 

「お前には俺とある場所に行くのにパーティーを組んでほしい。ボス戦も含めてな」

 

「は?」

 

理由はこうだ。現在、第70層まで攻略が進んでいるのだが、以前に第1層まで降りた時にあの『栗頭』ことキバオウと会話をする機会があった。昔と変わらず、イライラするやつではあったが中々に弄りがいのある憎めないやつというのがわかった。そこであるダンジョン『黒鉄宮』の情報を知った。どうやらこの第1層の地下にはダンジョンが存在していて、階層が攻略されるごとに新たに広がっていく特殊なダンジョンだそうだ。キバオウがそのダンジョンの攻略を依頼して来たからそれを受けただけなのだが、ムラマサとの約束を破ることになるのは容認できないし、受けた依頼はやり遂げるのが信条な俺はPoHと一緒に行って、せめてでも死なないようにしたくての行動である。

 

カクカク、シカジカ

 

「Ha Ha Ha!アンタが狂っているのは今更な話だが、もっと狂ってきたんじゃないか?俺と同類だなw」

 

「元々、俺とお前は同じだろ。ただの殺し屋だ。で、組んでくれるのかくれないのか、どっちだ?」

「組むよ。アンタの矛盾は俺とは少し違うかもしれないが、アンタといれば退屈しなさそうだ」

 

「意外にあっさりだな。もっとしぶると思っていたが……」

 

「『人狩り鴉』様といれば退屈はしないだろうし、殺しが認められるからな!Ha Ha Ha Ha !」

 

「……無駄な殺しは無しだぞ。他プレイヤーが襲って来たら、問答無用でブッ殺せ」

 

「へいへい」

 

〜第1層『黒蠍宮』〜

 

「では、武運を祈ります。」

 

「シンカーも大変だな。キバオウのせいでこんなやつの世話までしなきゃならないんだから」

 

「いえいえ、僕が力不足なだけですよ。それにあなたが悪い人ではないのは知っています」

 

こいつはシンカー。元々は小さなギルドのリーダーだったがのちに『アインクラッド解放軍』の長になったものの、その座は実質的にキバオウに取って代わられた不憫なやつ。たまに下に来た時に会う仲のいい?プレイヤーだ

 

「そちらの方に会うのは初めてですが、あなたは?」

 

「こいつは俺とパーティーを組んでもらってる俺のダチだ。現実でも仕事を一緒にしてたことがある。信用できる」

 

PoHが喋り出す前に手で退ける。余計なこと喋り出す前に止めなきゃどうなるか分かったものではない!前もって話しとけ!っていうもんではあるが

 

「それでは改めて、ご武運を」

 

しばらくしてーー

 

「ほとんど何にもいねぇじゃん!」

 

モンスターを切りながら叫ぶPoH

 

「モンスターはいるだろうが!むしろ、襲われないほうが都合よくていいんだよ!!」

 

俺も『アサシン ブレード』と『無銘・黒』でモンスターたちを刺していく

 

「人を殺せるからって付いて来たのに、なんなんだよ!」

 

「知るか!」

 

会話しながらもモンスターの群れを蹴散らしていく俺たち。PoHのやつめ、人殺し以外も上手いじゃねぇか。心配して損したぜ

 

「ここらへん一帯のモンスターは倒したな。ポップする前に進むぞ」

 

「チッ」

 

そのまま奥に進むがゴールらしきものや何かの宝物がある様子もなく、3時間が経過した

 

「なぁ、ルーキスさんよ。もう帰っていいんじゃねえか?飽きたんだが……」

 

「なんらかの証拠ぐらい持ち帰らないと報酬が貰えないだろうが!俺は昔から無駄な仕事はしないんだよ」

 

「はぁ……」

 

そんなこんなでモンスターを倒しながら数十分が過ぎて

 

「グァァ!」

 

「なんだこいつら⁈人型モンスターにしてはめちゃくちゃ人間味があるぞ⁉︎」

 

「プレイヤーじゃないのは不満だが、やっと殺せるZE!」

 

やけに人間の姿をしたモンスターたちが襲ってきた。ゾンビではないし、グール系でもない。なんだこいつら?まるで発狂した普通の人々って感じだが……?

 

「ん?なんだあの扉?」

 

襲ってきたやつらを殺しながら遠くに薄い光を放つ気味の悪い大きな扉があった

 

「は?どれだよ?どこに見えるんだ?」

 

「あぁ。これはスキルだ。【鷹の目】っていう索敵系のやつでな、この『アサシン ブレード』を手に入れた後に習得したやつさ」

 

「?よくわからねぇけど、こいつらはその扉の方から来てるのか?じゃあ、向こうにはもっとこいつらがいるんだな!」

 

「可能性としてはな!こいつらを蹴散らして、殺りにいくぞ!」

 

「Ha Ha !そのつもりだ!」

 

こうでも言わないとこいつはマジで帰るタイプのやつだからな。一緒に仕事してる時にはなかったが、このゲームで変わったら、いや、化けの皮が剥がれたらこうなるのは少し予想より外れた結果だったが……

 

「開けるぞ」

 

大きな扉に両手をかける。ギィィィと音をたてて開くとそこには

 

「なんだここは?」

 

「Ha Ha Ha Ha !面白そうじゃねえか」

 

そこは森だった。辺りは暗く、夜なのだろうか?よくわからないモニュメントが所々に立ち、人気はなく、恐ろしさを十二分に感じられる空気だった。

 

「あ!」

 

後ろを確認した途端、開いた扉は一瞬にして霞のように消えた。

 

「なんだか帰れなくなったみたいだなww」

 

「笑い事ではないと思うぞ。」

 

PoHめ、真面目にやらなきゃ帰れなくなるのはお前もだぞ。殺しさえできなくなると困るのはお前だ

 

「まずは探索だ。帰る方法を探しつつ、攻略ってとこだな」

 

「ーーなぁ、あれに乗るんじゃないのか?」

 

「え?」

 

PoHの指差した先には馬車があった。どうみても怪しさ満点で……

 

「半透明!幽霊かよw」

 

怖さよりも急展開な状況に笑いが込み上げた。茅場のやつめ、凝ってんなぁww

 

「馭者もいねぇし、そういう設定のモンだろ」

 

「え!……お前よく『ぎょしゃ』なんて言葉知ってんな!スゲぇw」

 

「あのな!俺は別にバカじゃねぇんだよ。」

 

「はいはい。じゃあ乗るぞ」

 

馬車に乗り込むの馬が鳴き、進み出した。窓の外は相変わらずの恐ろしげな風景が続いた

 

ガラガラガラガラ、ガチャン

 

「着いたみたいだな」

 

「これは……城?」

 

馬車から降りるとそこには大きな城が建っていた。見た目からはとても豪勢な作りに感じられたが、どうやら既に廃城となっているようだった

 

「おい、これどうやったら引き返せるんだ?」

 

「俺がしるかよ。アンタに着いて来ただけだぞ」

 

馬車の方を振り返るとそこには崩れ去った橋があるだけだ。この城は切り立った崖の上にあり、その周りを海?のような水で囲まれている。ついでに雪が降り積もっていて寒い

 

「『廃城 カインハースト』それがここの名前らしい」

 

「ご丁寧に書かれてるな」

 

「PoH、城ってことは宝物があるのがお決まりなわけだが……どうしたい?」

 

「そんなもん、邪魔な奴らは殺し尽くして奪うだけだろ?」

 

「分かってるじゃないか。そんじゃ、行くぞ。久方ぶりのツーマンセルだ、足引っぱるなよ」

 

「こっちのセリフだぜ」

 

早速、ぼんやりと浮かぶ灯りを辿り城内へ侵入する。

 

「キモッ!怖っ!」

 

「オッさんが何言ってんだ、気持ち悪いのはアンタだ!」

 

モンスターが襲ってくるのは予想通りだが、こいつら幽霊じゃん!『廃城の幽霊』なのに実体があるのってどうなんだ⁈

 

「首のないやつもいるし、なんなんだ!」

 

「文句ばっかり五月蝿ぇな!昔と何にも変わってねぇのはアンタじゃないのか?」

 

「ええぃ!PoH、20秒稼げ!」

 

「は?クソッ!」

 

PoHがヘイトをとってる間にウィンドを開いて、『アレ』を装備する。幸か不幸か、幽霊たちは人型モンスターだ。だったらコイツの方が良く効く

 

「スイッチ!!」

 

PoHの合図と同時に交代する。ふん、相変わらずの戦闘センスだこと

 

「ーー『秘剣 燕返し』!」

 

目の前の首なし幽霊を切り裂く。そのままの勢いで残りのやつらも切ってやった

 

「ふい〜〜。危ない、危ない」

 

「おい、その長い刀なんだ?どこで手に入れた?」

 

「どこでとは言わないけど、これは『物干し竿』。ある人型エネミーを倒したときにドロップした武器だ。お前の『友切包丁』と似てるな。コイツの場合、魔剣レベルではないんだけどな」

 

「じゃあ、今のソードスキルはなんなんだよ。明らかに対人戦を想定した動きだった。だが、ラフコフにもそんなスキルを使えるやつはいなかったぞ」

 

「そこは俺の知るところではないな。だが、よく対人用って分かったな。」

 

「速すぎてよく見えなかったが、三本の剣筋で相手を取り囲むようにするモンってのはわかる」

 

スゲぇ……この剣を読めたのかよ…天才的な目してるぜ

 

「『燕返し』。曰く、偶さか燕を切ろうと思い、その為に作られたって設定のソードスキルだ。一本では避けられる。だが、それが三本となれば話は別だ。逃れられないように囲んで切るのがこの剣技。」

 

「ふ〜〜ん、まだ聞きたりないが、先に進むのが優先だ。行くぞ」

 

「お、おう…」

 

急に真面目になりやがった。どうしたんだコイツ?俺を殺す算段でも考えてるんじゃないだろな

 

そのまま進むと銅像が乱立する場所に出た。これ、絶対動くぞ。俺ならそう作る

 

「ガァァ!」

 

「ほら、みたことか!そうくると思ってかよっ!」

 

動いた銅像、『ガーゴイル』を蹴り飛ばし、その隙に『物干し竿』を構える

 

「おい、PoH!シャキッとしろ、シャキッと!」

 

「予想してたんなら俺にも教えろ!この老害が!」

 

「誰が老害だ!お前よりはゲームは上手くやれるわ!」

 

「現実の『仕事』は俺の方が上さ」

 

「んだと?クソガキめ」

 

お互いを貶しながらもモンスターたちをボコボコにしていく。グギャァとけガオォやらとモンスターたちは叫ぶが俺たちには関係ない

 

ガーゴイルたちを倒し、2階に上がると図書室のような部屋に入ることができた

 

「ん?」

 

「どうした?何かあるのか?」

 

「お前は聞き耳スキルを鍛えてないのか?明らかにさっきの幽霊の声がするぞ。それに混じって違うやつもいるようだ。本棚の向こうに敵が見える」

 

「鍛えてないわけじゃねぇ。そんなに高くないだけだ。あんたが鍛え過ぎてるだけだよ。それに『見える』ってなんだよ?そんな透視できるスキルなんてあったか?」

 

「あるんだよ。【鷹の目】っていう索敵系のな。ーーー来るぞ!」

 

幽霊たちが襲ってきた。その中に『カインの召使い』とかいう面倒くささ満点のやつもいる

 

「なんでここのモンスターは人型が多いんだ?しかも、狂ったみたいに暴走してるし」

 

「あんまり人を殺してる感じがしねぇ。楽しみにしてたのにぃ!」

 

喋りながらでも相手がいる以上はやるしかない。たとえつまらなくてもな!

 

「あれだな。まるで『獣』みてぇだ。元人間ってとこなのか?」

 

『獣』か……ジュノーとかいうやつも俺を『獣』とか言ってたな。さすがに俺はコイツらみたいにはなってないと思うが…

 

あらかたの敵を倒し、図書室内を散策したがその先に進む道は見つからなかった。

 

「なぁ、もう行き止まりじゃね?もう帰っていいか?」

 

「んなワケに行くか!…………クソ、『外』しかないか。」

 

「『外』?」

 

ーーー

 

「なぁ、本当にこの道でいいのか?」

 

「行けるなら行く。それしか残ってないだろ」

 

俺たちは図書室の窓を出て、城壁にせり出た小さな縁を歩いている。下はそれほど高くないが、キモいモンスターが見えるのがデカい

 

「さっき、あんなやつらいたか?」

 

「いなかったと思うぜ。いたら俺らはここにいないだろ」

 

「それもそうだな。」

 

「それはそうと、さっきから気になってたんだけどよソレなんだ?なんでそんな伝い方なんだ?」

 

「質問が多いな…。これもスキルだ、ス・キ・ル!……スキルなんだが、俺的には何かの状態、若しくは常時発動型の能力って感じだ」

 

「???」

 

「よくわからないのは俺のほうだ。……それより、落ちるなよ」

 

「いちいち心配しなくてもわかってるわ!」

 

「ふぅ〜。ん?ここか?オラァ!」

 

バリィィィーン

 

壁の出っ張りを掴んだまま身体を振り子のようにし、別の窓を蹴り破る

 

「ホイっと。ここには何があるのかなぁ〜?……これかな?」

 

いかにも動きそうな棒が伸びていた。根元には歯車があったので何かの仕掛けのスイッチと思い、そいつを倒すと

 

ゴゴゴゴゴ

 

「どっか動いたみたいだな。引き返すのか?」

 

「それしかないだろうな。ここからは別の場所に行けるようだが、行き止まりだった図書室のほうがギミックありの可能性が高い。戻ろう」

 

再び壁の外を伝って図書室に戻る。そして動いたであろう場所を探すと、本棚が動き、上へのハシゴが現れていた

 

「もうそろそろボス戦あるだろえけど、アンタ、ここまでのマッピングはしてるのか?」

 

「してねぇよ。する気もない。二度と来るつもりもないし、他のプレイヤーが来れるとも思えない。そもそものここは第1層のダンジョンの奥だぞ。難易度から考えたら、最初の扉まで来ることのできるやつなんて数えるくらいしか知らねぇよ。そんな少数のために金にならない仕事なんてできるか!」

 

「やっぱり、オッさんだな。現金なやつめ」

 

ハシゴを登ると通路があり、その道を進むと屋根に出ることができた

 

「おい、宝物なんでどこにあるんだよ」

 

「まだないと決まってはない。ボス戦があるとしたら、その後だろう?あっちの屋根のとこが拓けている。あそこにボスが登場するのは可能性としてアリじゃないかね、PoH?」

 

「わかった、わかった。最後までついて行きますよ。これは貸しだからな。いつかツケとして返してもらう」

 

ちょっとイラついた顔のPoH。こんな顔のときが一番キレる手前ってのは昔からの経験でわかってる。『仕事』の最中にキレたときはターゲットの判別ができないくらいに暴れて、手がつけられなかった。俺の中ではあれは怖いを通り越してトラウマものだ。何が原因かはイマイチ不明だが、積もり積もった結果としたら納得がいく。このくらいで止しておこう……

 

屋根から塔、繋がった通路のようなもの、ハシゴと続けて進むと先程見えていた拓けた場所に辿り着いた

 

「不自然なまでのモンスターの少なさ、構造的におかしな場所にある奥の扉、攻略開始からの経過時間。ボス戦は間違いないな」

 

「現れないのはエリアの真ん中まで進んでないからって言うんだろ?それじゃ、遠慮なく……」

 

「PoH!上だ!」

 

歩き出した途端、上空から大きな影が降りてきた

 

人間より3回りほど大きな長躯、亡霊のようなマントを覆い、頭には冠を身につけた人型のモンスター。長い時を生きて死んでしまった求道者を思わせる佇まい。トドメにその身体と同じ大きな程の大鎌を携えた虚ろな老人が現れた。次々とその頭上に表示されるHPバーとその名前は……?

 

「HPは5本……。『殉教者 ローゲリウス』ね…フフ、俺好みの敵じゃねえか」

 

「あんたに好みもクソもないだろう。邪魔なやつは殺してでも排除するのが『人狩り鴉』なんだろ?」

 

「気合い入れてんの!お前の方こそ超近距離攻撃しか手段なんてないだろが。気合いでなんとかしろ、気合いで!」

 

グワァァァ!ブンッッ!

 

ローゲリウスが大鎌を振りながら突っ込んできた。降り積もる雪を撒き散らして視界を遮るコレはいいモーションと思いながら後ろに跳んで避ける

 

「危な!俺がタゲをとってる隙にどうにか腱でもなんでも切れ!」

 

「どんなオーダーだ、それ!!」

 

ブンッ、ブンッ、ブンッ!!

 

連続での振り回し攻撃。予想できる行動ではあるが、まだ様子見する必要があるな。どんなアルゴリズムで動いてんだ?

 

「脇が空いてるよ!」

 

ズバッッ

 

「Ha Ha Ha ! オラオラ、どしたどした!」

 

ザンッ、ザンッ!

 

鎌を振り上げたローゲリウスの脇腹を切り裂いて、後ろに抜ける。PoHも背後から脚を切りつける。ローゲリウスは怯みもしないが、そんなのは想定内だがそのまま鎌を振り下ろす姿には呆れてしまう……なんか反応ないのかね?小さな呻きぐらいじゃ、なんかなぁ

 

「Hey ルーキスよ!こいつノロマだぞ、簡単にイケるぜ!」

 

「調子乗ると足元掬われるぞ」

 

テンション上がってきたな。口調が『PoH』らしくなってきたなヴァサゴ…!

 

ザンッッ!

 

ローゲリウスが鎌を屋根に突き立てるる。赤黒いモヤモヤとしたオーラが身体に集まり始める

 

「大技っぽいのくるぞ!離れとけ!」

 

PoHはバク転でエリアの外側まで、俺はただのダッシュで数本ある柱の後ろに隠れる。だが、オーラは怨霊のようなものと形作られ、鎌を頭上に振り上げると俺たちの方に向かって飛んでくる

 

「遠距離攻撃もありかよ!しかも、追尾タイプときたもんだ!」

 

「Ha Ha !まだまだ楽しめそうだな」

 

凶悪な笑みを浮かべるPoH。退屈してないみたいで良かったが、実際、どう対処したものか………

 

ドォォン!

 

「爆発すんのかよ⁈いやらしいなぁ、オイ!」

 

怨霊攻撃を避けて、それが雪に着弾すると大きな爆発が起こった。あれか?発射された時にいた場所に飛んでくるタイプか?追尾じゃなくて座標か!

 

「オラオラァ!」

 

いつのまにかPoHは怨霊を避け、ローゲリウスの背後から切りつけようと『友切包丁』を振り下ろす。が……

 

「ガハッッッ」

 

グワッ

 

ローゲリウスば急にバックステップをかまし、PoHの方を振り返る。PoHはバックステップのせいで軽く吹き飛ばされる

 

ブワァァ!

 

ほとんどノーモーションでゼロ距離からの怨霊を放った!!そのまま食らってしまうPoH!

 

「この馬鹿!不用意に近づくんじゃねぇよ!!死ぬ気か!」

 

パリィィン

 

全力で駆け寄り、回復結晶を使う。ポーションを飲ませている暇はない、クソッ!

 

「あらら?やっちまったのは間違いだったかな?」

 

「まだ死なせはしねぇよ。お前はまだ殺したりてないんだろ?じゃあ、生きなきゃな!」

 

「ルーキス!後ろ!」

 

その声で後ろを見ると、またローゲリウスは怨霊を放つ溜めモーションをしていた

 

「さっきと少し違うな…。最大限に注意しとけ!」

 

ブワァァァン!!

 

飛ばした怨霊はローゲリウスを中心に扇型に広がっていく。柱の影に隠れようとするが……

 

「こっちが追尾型か!高度も低い、柱かエリアの端まで走れ!」

 

低く飛ぶが故に、屋根の上の斜めの地面が俺たちにとってはプラスになる

すると、ローゲリウスがトコトコと歩き始めた

 

「また近距離に移ったか?これくらいのバリエーションしかないなら、弱いなァ!!」

 

「あんたも調子出てきたじゃねぇか!オッさん!」

 

ケッ!若造がはしゃぎおってからに!フフ、楽しくなってきたねぇ!

 

ーーー

 

ローゲリウスの体力が7割をきったところで動きがあった。またまた溜めモーションをしているが、怨霊のオーラを全身を覆うように纏ったのだ。しかも、左手には剣を持って……

 

「Ha Ha Ha !ここからが本気ってかぁ? 」

 

「ラストスパートだろう、気ぃ引き締めろ!」

 

長いことやってる中でわかったのは、こいつの右側に入れば攻撃をする隙が生まれるってことだ。鎌を右手に持ってるから振り上げや振り下ろしのタイミングで空間があるのはありがたい

 

「遅いな」

 

ザンッ、バシュッ、ブシュッ!

 

「はぁっ!」

 

グサッ、バスッ、ズジャッ!

 

「おうおう!本気になってきたんじゃね?」

 

「当たり前だ!スイッチィィっ!」

 

PoHと入れ替わり、距離を取る。ふぅ、疲れるわい。ポーション飲んで……

 

「おい!気をつけろ!」

 

飲み終える瞬間、PoHが叫ぶ。ローゲリウスが地面に剣を突き立てる。すると、突き立てた場所には剣の残像が残り増え始めた

 

「増殖系トラップか!意外にトリッキーな技も持ちやがって!」

 

その間にもローゲリウスは鎌と剣の二刀流で襲いかかってくる。PoHはなんとか避けちゃいるが、なんか俺にヘイトが向いてねぇか⁈

 

「なんでおじさんばっか狙うんだよっ!」

 

ガンッ、キィン、キィィン

 

『物干し竿』で防いでも、二刀流の猛攻に隙は少ない……打ち合いだと身体デカいローゲリウスの方が上手だ。速度なら俺が上だが、膂力で負けちまうっ……!

 

ズジャッ!バシュッ!

防ぎきれない攻撃が俺の身体に当たる。赤い光のエフェクトが無数に飛び散る

 

「周りは剣の山、目の前は攻撃の嵐ときてる…………フ、フフフww。ハ、ハハハハwwーーーーー見せ所よなぁ!」

 

負けてたまるかよ。死んでたまるかよ。まだ終わらねぇ。終わるわけにはいかねぇ!

 

「システムに従うだけのプログラムが調子に乗ってんじゃねぇぞ?テメェより『翁』のほうが数段も強かった。『小次郎』の剣のほうが何倍も速かった…………俺の全てでテメェをぶっ殺してやるよ!勝負はこれからだ!」

 

「………久しぶりだな、『竜』さん……」

 

小さくPoHがそんなことを言ったようにも聞こえた気がしたが、どうでもよかった

 

ーーー『獣』よ。鴉の名を冠す者よ。その在り方を私は高く評価しよう。さぁ、その亡霊を倒し、『女王』の首を落とすのだーーー

 

久しぶりだな、ジュノー。心配するな

このクソ野郎は必ず倒すさ。いつのまにかPoHは周りの剣を壊してくれたらしい

 

「これでっ!」

 

右脚の蹴りでローゲリウスを仰け反らせる。呻き声とともにバックステップをして宙に浮かんだローゲリウス……

 

「これが最後か」

 

俺は『物干し竿』を構える。ローゲリウスも大鎌を両手で振りかざす

 

ガァァァァァ!!

 

「ーーー秘剣『燕返し』」

 

ドォォォォン!!

飛び込んできたローゲリウスに『燕返し』で迎え撃つ。辺りは積もった雪が舞い上がり視界が白くなる

 

「おい、オッさん!ルーキス!無事か!」

 

ヒューー

雪が風で飛ばされ、倒れた影と立っている影が現れる。勝者はもちろん……!

 

「………一念鬼神に通じる。人の身と侮ったな、ローゲリウス……」

 

ーーー人の身でその領域に踏み入るとは……。それは我らでさえ逃れられぬものであるというのにーーー

 

「うるさいぞ、ジュノー」

 

「あぁ?誰に話しかけてるんだ?」

 

「誰でもねぇよ。それよりPoH、どうだった?俺は」

 

「楽しそうでなによりだったぜ。」

 

「そうか。そうか………ん?これは?」

 

ローゲリウスが消えた跡に王冠らしきアイテムが落ちていた。あいつが頭につけていた物だろうか?

 

「なになに?【幻視の王冠】『ーーかつて幻を視るといわれた古い王の冠はまた秘密を隠す幻を破るカギでもあるーー』ほぅ!これで新たに何かが現れるってことか!」

 

「それこそあの奥の扉の向こう側がでるんだろうよ。さぁ、被れよ」

 

装備ウィンドから【幻視の王冠】を選択する。似合わないと思うんだけど、致し方なし

 

ブビョ〜〜〜

強い風が吹き、軽い吹雪となる。思わず目を閉じ、再び開けると

 

「デッケェな」

 

「BigってよりGorgeousだ」

 

これぞ宮殿であると言えるほどの大きな建物が其処にはあった

 

扉を通り、宮殿の中へと進む。

 

「こ、これは……」

 

「Wow ! こいつはスゲぇじゃねぇか!」

 

最も大きなその部屋は多くの像が立ち、宝が転がっていた。最奥に続く赤いカーペットの先には2席の玉座、その左に女王らしき人物がいた

 

「はっ!」

 

気づけば俺だけが部屋にいてPoHの姿は見えなかった。しかも、俺はその女王に跪いていた

 

「…貴公、訪問者…死の香りの狩人よ

私はアンナリーゼ。この城、カインハーストの女王

フフフ…

血族の長。すなわち教会の仇

しかし一族すべてを戮し、孤牢鉄面の虜としてなお

私に何用かな?」

 

「何用と申されましても、私めはただ好奇心でのみここまでやってまいりました。ある者からの依頼を受け、それに思わず首を振ってしまったのですが………まさか貴女のような高貴な方に謁見することになろうとは微塵も思っておりませでした。このご無礼を何卒、お許し下さい」

 

何つうプレッシャーだ……。恐怖ではなく、そのオーラだけで圧倒されてしまう……。これが本当にNPCなのか?戦闘にならない以上はそうなのだろうが……

 

「ほぅ。好奇心故にか。……フフフ、面白い男よな、貴公は。そうか頼まれ事に興味を抱いたからと申すなら、その証が必要なのではないかね?」

 

「証でございますか?……はい、頂けるのであればそれが何であろうとも受け取らせていただきます」

 

敬語ってこれでよかったっけ?

 

ーーー鴉よ、今です。その穢らわしき血族の女王を殺すのです。不死なるその女も『獣』のあなたならやれますーーー

 

「貴公。其方、憑かれているな?かの外なる者たちではなく、元来からこの大地にいる者に」

 

「ジュノーのことがわかるのですか⁉︎」

 

「姿は見えず、声も聞こえず、触れることさえ出来なくとも『見ている』のは分かる。やはり、貴公も『獣』か。だが、貴公は人として意思を保っている。狂信することもなくだ。」

 

ーーー穢らわしい女め。貴様などは人の世界にいらぬ存在。兎く失せよ。その身をその鴉に啄ままれるようにーーー

 

「貴公、証が欲しいと言ったな。ならば問おう。その神との繋がりを切り、我が穢れた血を啜り、血族となるか?」

 

「………ジュノー、お前は俺を勘違いしているみたいだ。俺は『獣』。血で喉を潤し、肉で満たされる『獣』だ。それは変わらない。が、俺はなにも『人類』が嫌だからそうしてるんじゃない。逆、まったくの逆だよ。俺は『人類』を好いている。愛しているんだよ。一個人も然り、俺はその全員を愛している。それがどんなに世界を滅ぼそうとしていても、繁栄させようとしていてもな。『しあわせ』になるための努力を怠るな、『しあわせ』になることを恐れるな。それが俺だよ」

 

ーーー鴉。貴様には失望した。世界の存亡よりも人類が世界を使い潰すしてでもその繁栄を願うか。やはり鴉より鷹に任せた方がよいか………。さらばだーーー

 

鷹ぁ?誰だそれ?そんな二つ名のプレイヤーなんていたか?

 

「ふむ、貴公には我が血を受け入れる覚悟があるとわかった。ならば、無為な夜にも倦んだというもの

貴公、我ら一族の呪いに列し、また異端として教会の仇となる

敢えてそれを望むのであれば

穢れた我が血を啜るがよい」

 

差し出されたその手を取る。細く白い蝋のような手だ。俺はその手に歯を突き立てる

 

ガブッ

 

「うむ

さあ、啜りたまえ

穢れた血だ。故に貴公に熱かろう

フフ…フフフフフ…

…これで、貴公は我が血族

今や私たち、たった2人ばかりだがな

貴公、また戻りたまえよ

カインハーストの名誉のあらんことを」

 

口に付いた血を拭う

 

「……….去る前に1つ申し出てよろしいでしょうか?」

 

「既に貴公は我が血族。なんとでも言うがよい」

 

「あの刀をいただけないでしょうか?」

 

部屋を守っていただろう騎士の死体を指差す。近衛兵なのか長い年月を経てはいるがその鎧は堅牢でその武器たる刀型のものは血生臭い色をしている

 

「『千景』か。貴公もその道を進むのか………決して呑まれぬというならばその剣、貴公に授けよう」

 

「ありがとうございます」

 

死体の刀をとる。薄く反ったその刀身には複雑な波紋が刻まれている。……これは血か?しかも人の……?

 

「その波紋に血を這わせることで、緋色の血刃を形作る。だがそれは、自らをも蝕む呪われた業である 」

 

「業……ですか…。そんなもの今更1つ増えたところで私にはなにも」

 

「であろうな。では貴公、またの帰還を私は望もう。……最後の血族よ、さらばだ」

 

その言葉を聞いたと思ったら、俺はいつのまにかローゲリウスと戦った屋根の上にいた

 

「遅かったじゃねぇか、女王サマと何話してたんだ?」

 

「………いや、こいつを貰ったんだよ」

 

『千景』をPoHに見せる。PoHめ、なんつーギラギラした目で見てるんだ。これはやらないぞ

 

「これはどうすんだ?」

 

「依頼主に渡すか、報酬としてそのまま俺のになるかだな。後者ならマッピングデータの要求は絶対あると思うぜ。…………なぁ、どのくらい俺はあの中に居たんだ?」

 

「あ?そうだな、俺が『もう宝ももらって帰ろうぜ』って言ってもあんたは無視しやがってから20分くらいは中にいたと思うぜ?それがどうしたんだ?」

 

「いや、なんでもない……」

 

「んじゃ、帰ろう。結晶はあるんだろ?早くしてくれ。……それとその王冠は似合わねぇよ」

 

「あ、ああ」

 

アイテムポーチから結晶を取り出し、王冠を外す。またワケの分からない現象が起きやがったな…システムの外を匂わせるような台詞がNPCの口から出るとは……?

 

「んじゃ」

 

パリィン

 

その後はシンカーとキバオウに帰還の報告をし、PoHを見送った。案の定、『千景』と引き換えにマッピングデータをキバオウにくれてやった。悪用だけはするなと忠告したが、どうなるか………

【燈し火の家】に帰ると皆んなは通常運転で少し悲しくなった。ムラマサだけは夜になると泣きついてきて、またやっちまったと後悔した。まぁ、翌日に『千景』を渡すと機嫌が良くなったので安心した。『終わり良ければ、全て良し』というやつだ

 

後日談だが、『アサシン ブレード』のときと同じく、ヒースクリフに問い詰めても『そんなのは知らない』の一点張りだったのは要らない話かな?

 





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