ソードアート・オンライン〜真実を知る者〜 作:夜明けを齎す竜
〜2024年10月18日〜
今日も今日とて第74層の迷宮区マッピングのお仕事中である。クウォーターポイントを控え、各攻略組ギルドがレベリングと備えに力を注いでいるというに【燈し火の家】は通常営業である。俺が旅館に顔を出すのは少なく、食材の調達とその調理が専らの役目ではあるのだが………ヒースクリフの依頼をやらないと経営が危ういのは承知の事実である以上は目下、マッピングはやらないといけないのです。
「しっかし、このデータを有効活用しているのか微妙だよなぁ……」
報酬が貰えるのだからやらないワケにはならないのだが実際はどうなのだろう?
「ん?」
前方から他プレイヤーの戦闘音が聞こえる。息の合った二人組みなのだろう、連携をとる声がよく交わされている。……って俺は変態か!そんなことに聞き耳スキルを使ってしまう自身にツッコんでみたり
「あれ?キリトとアスナか?」
ついつい【鷹の目】とその他諸々のスキルを使ってその姿を見る。いや、絶対あの2人だろ。ついに付き合い始めたのか⁉︎あれらは⁈いや〜めでたい!おじさん、嬉しいよ
「お〜〜い、キリト!アスナ!」
「あ!ルーキス!」
「お久しぶりです、ルーキスさん」
駆け寄ってくる2人。うん、いい感じに成長してる感じがするな
「久しぶりだな2人とも。今日はどんな風の吹き回しでパーティーを組んでるんだ?おじさん、気になるんだけどww」
「何ニヤケてるんだよ。アスナが俺にパーティーを組まないか?って言ってきたからさ」
「ええ。キリトくんの危なっかしさが気になって一度それを叩き直してあげようと」
「ハハハハハ!そいつはいいことだ、この『黒の剣士』さんは頑固者だからなぁ!ハハハ」
「笑うなよ」
それからは3人で行動した。丁度よく昼時だったので昼食にした。アスナがサンドイッチを作ってきていたらしくキリトはそれを美味いと言ってよく食べていた。それを見てアスナは満更でもない顔をしていて色々と察した。俺は朝飯の残りだった…。
シュイィィィン
「誰だ?」
団体様が転移してきたようだ。ん!見たことあるやつじゃん!
「ようキリト、ルーキス!久しぶりだな!」
現れたのはクラインとそのギルド【風林火山】のメンバーだった
「おっす!元気にしてたか?」
「久しぶりだな、クライン」
「当たり前よ!……ルーキスにはムラマサさんがいるから分かるが、何でキリトが女連れなんだ?」
「いつもキリトくんがお世話になってます」
「く、クライン!2●歳、独身、グァァァァ……」
クラインが自己紹介をしているところにキリトの腹パンが入る!いやいや、ここフィールドだから!加減してるだろうけど、危ないわ!!
「「「あ、アスナさんじゃないですか!」」」
吹っ飛んだクラインを無視し、風林火山のメンバーは『閃光』のアスナに駆け寄る。おいおい、リーダーの心配くらいしてやれよ
「へっ!相変わらずだな」
「お前もな!」
「フフ、懐かしいじゃねぇか」
男3人で肩を組んで無事の再会の喜ぶ。何度か会っちゃいるが、3人だけでのこういうのはなかったな
「おい、そこの貴様ら!」
上から目線で声をかけてきたのはアインクラッド解放軍だった。おいおい、攻略組から脱落した第1層のやつらが何で74層まで来てんだよ?キバオウの仕業か?
「私はアインクラッド解放軍のコーバッツ中佐だ。君達、この先の攻略はしているのかね?」
「ああ、ボス部屋までな」
ほえ〜!俺より先にボスまで辿り着いたのかよ!
「そのマッピングデータを我々に渡しなさい」
「は?テメェ、何言ってんのか分かってるのか!」
クラインが吠える。そりゃそうだ。命懸けでゲームしてんだ、怒って当然だわな。ま、俺はそんなプライドは持ってないんだけど
幾らかの問答があり、キリトが『元々、データは無料で公開するつもりだった』とマッピングデータを提供したが俺はしない。するわけにはいかない
「まさかボスに挑戦するんじゃないだろな!やめておけ!あれはもっと大人数のレイドじゃないと……!」
昼飯の時の話によればヤギの顔を持った大型二足歩行モンスターだそうだ。その身体に見合う大剣を振り回すと予想できるとキリトは言っていたが、それが正しいならこの程度で挑めば全滅は免れないな
「俺からも止めろと進言させてもらおう。死ぬ覚悟があるなら俺の知ったところではないがね」
「我々には全てのプレイヤーの為にこのゲームを攻略する義務と責任がある。貴様は『人狩り鴉』だな……。貴様も皆のために犯罪者狩りを行っているではないか。なぜ我々の邪魔をする!」
「その意思の強さは認めるさ。だが、勇気と無謀は別物だぞ?お前は本当の意味での救済を求めるのだろう?ならば俺とは違うね。俺は自分に利益をもたらしてくれるだろう奴らを死なせないように、そいつらの幸福が俺にとっての愉悦になるから俺は戦ってるんだ。お前らとは違う」
「ならば!我々だけで進ませてもらう!全隊、進撃開始!!」
コーバッツは疲弊した部下に目もくれてやらずに先に行きやがった。馬鹿野郎どもめ、命を賭けるのは勝てると確信した時と相場が決まっておるだろうに……
「まさか本当にボスに挑む気じゃないよね?」
「いくらアイツらでもそれは……」
「……キリト、アスナ、【風林火山】の皆んな。どうする?あれらを様子見に行くか、行かないか……」
「…………万が一もある。様子を見に行こう」
キリトが少しの間の後にそう言ってこの場の全員に顔を向ける。いい男になったもんだ
ーーー
「グハァァァ!!」
野太い叫び声が聞こえてくる
「クソっ!」
キリトの声だけが俺の耳に刺さる。他のやつらは息を飲んだり、声にならない声を発する。このままボス戦突入か!あんまりこういうの思っちゃダメなんだが、ワクワクするねww
惨劇。地獄。そう例える以外にこれは言えんな。酷いもんだ。死にかけのプレイヤーたちと数人が死亡した痕跡と大きな悪魔がそこには居た
「結晶を使え!」
「それが出来ないんだ!何度もやろうとしたけど無理だった!!」
ほう、転移不可エリアか。そういえば聞いた事がある。なるほどね……って冷静に考えてる場合かよ!
「ッッッイヤ〜〜!」
「「アスナ!」」
アスナのやつ!飛び込んで行きやがった!ここまま死なせるかよ!
キリトと俺が同時に飛び出す
「こいよ、大悪魔。お前の侵入者を排除してやるっつ〜アルゴリズムと俺の友達を守りたいっていう半ば強迫観念となって決意……どっちが上か『殺り合』おうぜ!」
チャキ
『物干し竿』を構える。フフ、これがボスか!これが命懸けってやつか!……そして、これが俺の始まりだったな
ーーー
キィン、キィン、ギリィィィ
いくつもの火花が飛んだ。コーバッツは死に、俺たちは戦い続けた。終わりは見えず、疲弊するばかり……
だが、死ぬほどではないな!!!
「少し時間を稼いでくれ!」
キリトの声にクラインとアスナが応じる。ソロ過ぎるからかな?俺、全然声出ししてないぞ。それじゃあーー
「スイッチ!」
『千景』を腰から抜く。それをーー
グサッ、ズブッ
「ルーキス!何してんだ!」
「ッッッ!……意外に持ってかれるじゃねえか」
『千景』の固有能力はその刃に血を吸わせ攻撃力を上げるというもの。発動中は体力がスリップダメージで減り続けるというリスキーな代物ではあるが、俺好みでなによりさね!赤いダメージエフェクトが飛び散りまくるのも死の風情があってカッコいいじゃねぇか
「テメェのHPバー飛ばすにゃ、俺もそれ相応の手段でやらなきゃなぁ!!」
ズチャ、バスッ、グチャ
「オラオラ!そんなモンかよ、この大悪魔ちゃん!」
あれ?なんかハイになってきてるな俺。しかも、世界が遅く感じるぞ。なんだっけコレ?あれか『ゾーン』か。それとも死ぬ前の走馬灯的なやつ?まぁ、過去の振り返りはしてないんだけど……ん?俺、頭の回転が速くなってないか!
「ルーキス!スイッチ!」
「そらよ!」
バシュッ!
『千景』での居合で離脱の一撃をみまう。ソードスキルじゃなくて我流だからそれほどの速さじゃないが十分だろ!
「あれは!」
「………スターバーストストリーム!」
青白い16の光が悪魔を襲う。そうか、あれか『二刀流』か。フフフ、ハハハハハ、『物干し竿』でもあれを凌げるかな?切り合ってみたいものだ
「オラァァ」
「お、おい!」
キリトのやつ、HPが尽きかけてるぞ!必死すぎだ!お前に死んでもらうと困るんだよ!
バタッ
キリトが倒れた。HPは全損しちゃいないが気力がもたなかったか
グガァァァ!
「なんでこれでやられないんだよ、お前は!クソ悪魔が!!」
俺もやるしかないか………
「これで終いにしようや……。『フィニッシュ・ディス・ネクロイド』」
赤黒い12の剣閃が『死』を悪魔にもたらす。これが俺の辿り着いた剣だよ、青い悪魔……
「おやすみ」
「起きてキリトくん!起きてよ!」
おやすみからの馬鹿を起こすときたもんだ。う〜ん、自分が非人間すぎて泣けるわ
「起きろキリト!アスナを泣かせてるんだぞ!死ぬな!」
ベタだがこれくらいしか俺の語彙力はない。言葉より気持ちだけどな
「…………っんぁ」
「キリトくん!」
「起きたかキリト………ヒヤヒヤさせんなよ」
ゆっくりと目を覚ますキリト。どうやら意識はハッキリしているみたいだ
「どのくらい寝てた?」
「ほんの数秒よ……。」
「あんまり強く抱きしめてるとキリトのHPが消えちゃうぞ?」
アスナはそれを聞こえていないかのようにキリトを抱きしめる。まったくまったく、いいカップルなんじゃねぇか
「なぁ、さっきのは何だったんだよ2人とも!」
「さっきのはエクストラスキルだよ。『二刀流』と『暗殺剣』。」
「ッ!!出現条件は⁈」
「知ってたら公表してるっての。俺もキリトも理由は分かんねぇんだよ」
「それじゃお前ら独自の『ユニークスキル』じゃねぇか!」
「そうなるよな……」
そのあと疲れた身体を引きずってギルドに帰った。マサムネは何処からか情報を手に入れていららしく、ムラマサも一緒に俺の救出を『血盟騎士団』に頼み込みに行こうと他メンバーと問答をしていた。心配かけてすまないという気持ちて心がかけそうになる……。あ……ちょっとヤバいな……意識が飛ぶ……死にかけたわけじゃないんだけど
ーーーー
俺は誰だ?何者なんだ?分からない…思い出せない…
最初の数ヶ月は廃人同様の生活を送っていた。全てにおいて力が入らず、食事さえも取れずにいた。その後、『復讐』を決意した。こんな状況になった元凶の野放しにはできない。それらが生きていることを容認できないと……
数年で俺を襲ったやつらを皆殺しにした。一人ひとりと殺る内に段々と気持ちよくなっていく自分がいた。途中で気付くと既に俺は殺し屋になっていた。それからは殺しを楽しむ自分と復讐を果たしたのだから『昔の自分』を知りたい・戻りたいと思うようになった。そんな時に日本での仕事をすることになり、その過程で茅場を思い出した。そこからは早かった。ヴァサゴと出会い、自分を取り戻した。そして足を洗い、重村教授のツテで講師となった
……でも結局は変わらなかった。むしろ、殺しへの渇望は猛り、同類との出会いに恵まれてたことは俺の奥底で燻り続けた。そう、このゲームが始まるまでは
ーーー
目を開けるとそこはいつもの天井だった。手足に痺れが残るものの身体を起こすことはできた。右にはつかれて寝てしまっただろうムラマサがいた。
「身体じゃなくて心が死にかけてたのか……『獣』ねぇ……本能のままに復讐し、ただ己がために人を喰らった鴉ってか?」
ムラマサの頭を撫でながら思う。もう自分ではどうすることもできないところまで来ているらしい。無意識のうちに自分の終わりを定めているのか?いや、違う。違うと信じたいが……この有様ではな……
ガバっ!
「起きたのか!よかった……」
「謝っても遅いよな。俺は馬鹿野郎で自分の家族に心配かけまくる男だ……」
「……お願い、もう行かないで。もう戦わないで。私たちを置いていかないで。このギルドに居て。お願い……」
もう限界なんてとっくに過ぎていたんだ。ムラマサは俺を好いてくれているが故に俺の自由にさせてくれていたのだ。少しメンヘラ感があるけど、それでも……
「わかった。明日、ヒースクリフに頼んでみる。俺にもう構うな、俺を自由にしてくれって…。一緒に来てくれるか?俺だけじゃあいつに勝てそうにないし……」
「わかった。アタシが付いていく。ルーキスが言い出さなかったら引きずってでも連れていくつもりだったしね」
「ありがとう。愛してる」
「愛してる」
〜次の日〜
「ってわけだ。そろそろ俺を野放しにしてもいいんじゃねぇか?」
「アタシからもお願いします」
「良いだろう、了解した。ただ今、この時点をもって『人狩り鴉』ルーキスへの全依頼を取り消し、今後一切の関わりをしないと約束しよう」
「意外にもあっさりしてるな、ヒースクリフ」
「ああ。他ならぬキミ自身の嘆願だ、断らないわけにはいかないさ。それと少し……」
手招くヒースクリフ。俺はムラマサの顔を見る。行っていいらしい
小声で
「まさかとは思うが、まだ俺に何かさせるんじゃないだろな?」
「させないさ。私と君の間に嘘があったことなど無いだろ?今後も君とは友でありたいからね。………これは忠告だ『君の後輩には気をつけておいた方がいい』……」
「は?」
「これで話は終わりだ。早々に立ち去るがいい」
追い出される形で本部を出た。あいつなりの気遣いだろうか?もう少し優しくしても威厳は保たれると思うんだけど……
「これからどうするの?」
「【燈し火の家】の板長に専念しようと思う。食材調達もするけどマサムネたちとパーティーを組んでならいいよね?」
「仕方ないか。うん、アタシはそれでいいよ!一人で行ったら許さないけどね♪」
「ありがとう。ふぅ〜、やっと静かにできるな。」
「マサムネたちにも言わなきゃね。これからが楽しみ」
なんとか抑えてはいるが『獣』がいつ空腹になるかは俺にもわからない。鴉は賢い。人間の世界に寄生しながらも野生を失わず、人の予測を上回る力を発揮することもある。
さぁ、命尽きるまで『殺り合おう』ぜ?可愛い可愛い鴉さんよ
はい、今回はここまでです。
クラディールってPoHといつ会ってたんでしょうか?とにかく、ラフコフって良いですよね