ソードアート・オンライン〜真実を知る者〜 作:夜明けを齎す竜
久しぶりのアサクリ要素w
昨日の今日で俺はマサムネと二人で食材調達に第57層に来ていた。主街区の『マーテン』は前々から気になっていた仕入れ関係の店が多く、観光目的の為に訪れるプレイヤーたちが少なくない。通称『圏内事件』というややこしいモンがあったが解決した後は以前の活気を取り戻していた。『アルゲート』のごちゃごちゃした雰囲気よりもこっちの方が過ごしやすいと思う。
「で、親父はどんな食材を仕入れにいくんで?」
「団体様の予約があったからな。いい肉探しだよ。専属の卸業者でもいたらいいんだけど、エギルじゃあな……」
「ハハw エギルさんが聞いたら怒りますよw」
「シー!喋ったら承知しねぇぞw」
「へいへい。………ん?あの人はKOBの……誰でしたっけ?」
「あれは……クラディールか?アスナの付き人だった気がするが、一人で何してんだ?」
クラディール。アスナの付き人であり、監視役としても働いているやつ。ちょいとばかし強引で『団長命令だから』とストーカー紛いの行為さえもする危ない男だが……なぜ一人で?
「ちょっと尾行してみるか?」
「いいんすか⁈そんなことしたとムラマサさんが知ったら『また危ないことして!』って怒られますよ!」
「追いかけるだけだよ。戦闘になったら全力で離脱する。俺たちは肉の為にこの階層に来たんだ。先方には一応、遅れるかもって連絡してあるしいいだろう?」
「俺は嫌っすよ。親方に怒られるならまだボス戦のほうがマシっす。そういうワケなんで俺は先に行って待ってます。」
「おう。よろしく」
マサムネは早速その店に向かっていった。俺は好奇心に勝てず、クラディールを尾行することにした。
「つっても、なんでこんな人気の少ないところを歩くかね?」
かつかつかつ
俺は路地を作っている建物の上から下の方を歩くクラディールを見下ろす。うん、こういうのが『アサシン』だよな。気配を消してタイミングを伺うことこそ暗殺の基礎ってね
「おっとっと」
建物の間にまたがる縄をつたる。少々バランスを崩しかけるが、気づかれるほどではない。危ない危ない
ガチャ
「ここか……」
クラディールはある一軒の家に入っていった。辺りの家々となんの変わりどころのない普通のやつだ。誰かと待ち合わせでもしていたのだろうか、中からクラディールと誰かの会話が聞こえる。ついこの前まで聞いていたような声なんだが、誰だ?
屋根にいたのでは誰なのかまでは判別出来ない。あいつらは1階にいるみたいだし、幸いにもこいつには2階があるようだ。侵入しますかねっと……
スッ
「不用心だぜ、まったく。窓を開けたままにしてたら『どうぞ入ってください』って言ってるようなもんだ。現役のころを思い出す……。『あの日』もこうやって入って殺したっけ…」
最後の復讐を成し遂げた日もこんな暢気なやつの家だったな
「はてさてクラディールくんは誰とお話してるのかなぁ?」
床に耳をつけて……
ーーー
「なぁ、クラディールさんよ。本当にやるか?」
「当たり前です。俺をコケにしたアイツらには後悔して死んでもらう。そのために俺はこのギルドに入ったんだ。」
「Ha Ha Ha !いい心意気だねぇ!俺はあんたのその思いを高く買うぜ?」
ーーー
なんちゅう物騒な話し合いだよ。しかもあの馬鹿たれが関わっているとは……これは多少の仕置きが必要かな?
「とりあえずは強襲するのが面白い気がするねぇ。煙幕かなんかなかったかな?」
アイテムポーチを探って目くらましになる物を見つけようとすると……
「お!これがあったか」
ニヤァ
「それじゃ、行きましょか」
ーーー
ピカッ!キィィン!
「What ⁈ なんだこりゃあ⁉︎」
「グワッ!」
強烈な閃光と音で一時的に平衡感覚を失わせるスタングレネード。それを結晶で再現したレアアイテム。本来ならちゃんとした依頼のときに使うつもりだったけど、もういいよな?
「お前風に言うなら『Well,well,well. 中々に面白そうなことしてんじゃねぇか!』ってとこか、PoH……。」
「……ッ!あんまし聞こえねぇけど、こんなことやらかしやがるのは1人だけだ。あんたか、ルーキス」
「ホイホイホイっと。クラディールは拘束させてもらうよ。大丈夫、すぐに解いてやる」
しばらくして
「さて、まずはクラディールに聞こうかな?お前が狙ってるのは誰だ?お前がラフコフのメンバーだってKOBの奴らは知ってるのか?」
「あんたにそれを言う義理はない。……ハッ!本当にあんたはコッチ側のプレイヤーだったのか。」
ブスッ
「ペナルティ1だ。今の立場は俺の方が上。質問に答えてないなら問いかけるごとにナイフ1本を刺していく。次はどこを刺すのか分からんぞ?」
「……なぜダメージが⁈」
「これは俺の特殊な仕様でね。たとえ圏内であっても俺の周りでは常にフィールドと同じ現象としてシステムが認識するようになっている。さぁ、答えろ。誰を狙っている?これを知っている者は他にいるのか?」
「……他に知っているやつはいない。俺とPoHさん、あんたの3人だけだ。」
「ほぅ!随分と綿密なことだな。で、ターゲットは誰だ?」
「…………あのビーター野郎だ。」
「………ちなみに万が一、それが俺に知れたとしてお前はどうするつもりだった?」
「KOBとは完全に縁を断ってラフコフとしてやっていくつもりだったさ。………クソッ、どうせ俺を殺すんだろ?なら、早くしろよ!ほらどうした!殺れよ!」
「勘違いしているようだから言うが、俺がお前を殺すつもりはない。今後もな。それに、お前がキリトを狙おうが俺はそれを阻止するつもりもない。」
「どうして?あんたとあのビーターには親交があるんだろ?なんであいつを殺そうとする俺を止めない?」
「確かにお前がキリトを殺そうとしていることに怒りを抱いているのは事実だ。だがな、仮にキリトが本当に殺されない限りは俺はこれを知らないままだった。ま、そのあとお前を殺すとは思うぜ?それに………」
「俺が関係してるからって言うんだろ?」
沈黙していたPoHが口を開く
「ああ。お前が『黒の剣士』をみすみす他人に殺されるような下手はしないだろうさ。今のお前にどんな目論見があるかは分からないがな。」
「では、俺を見逃すのか?」
「そうさ。お前は明日にでもあいつを殺しに行けばいい。まぁ、それで殺されるようなキリトではないがな」
シュルシュルシュル
「縄は解いた。さぁ、行きな。」
「ルーキス。あんたは狂ってる。目の前に友達を殺そうとしているやつがいるのにそれを止めないなんて。しかもあんたは『人狩り鴉』だろ?」
「もうその名はいらない。昨日で『人狩り鴉』は引退した。今の俺はただのルーキスだよ」
ガチャ
「…………今のは本当か?引退したって?」
「マジだよ。もうこのゲームで殺しはしない。そう決めた。」
「そうかよ。じゃあ…」
シュッ!
「当たる訳ないだろうが?殺さないからって殺されることにはならんだろう?」
「つまらねぇな。じゃあな」
「行くのか?あの隠れ家へ?」
「そんなのもうあんたには関係ない」
ーーー
「遅いっすよ、親父」
「すまん、すまん。クラディールに挨拶した後にちょっとした知り合いに会ってな、久しぶりで長くなった」
「もう肉の仕入れは終わりましたぜ?早く帰らないと夕食の仕込みが間に合わねぇ」
「はいはい」
ーーー
クラディールの裏切りの発覚から何日か経った後、アスナがKOBを抜けるという話を聞いた。先日のボス戦のあとに決めたらしいのだが………
「それで、なんでキリトとヒースクリフがバトることになるんだ?」
なんでもアスナの脱隊に関し、その是非をデュエルで決めるらしい。しかも大々的に宣伝し、デッカいコロッセオに観客を呼び込んでの開催と言っていた。
「知らないよ、そんなの。アタシはキリトくんの剣よりもヒースクリフさんの『神聖剣』の武器が見たいだけだし……」
「あいつの剣はそれほど魔剣クラスでもないぞ、多分。……しかし、特等席にご招待とは粋なもんだ。もう部外者なのに」
俺たち2人はその試合のが行われるコロッセオの野球場で言えば砂かぶり席みたいな場所へ招待されていた。マサムネたちは一般席のチケットを買って観戦するらしい
「お!ちゃんと来てくれたんかいなぁ〜、ルーキスさん」
「久しいな、ダイゼン。このデュエルも商売人のお前さんが仕掛けたことなんだろ」
「へへっ。お察しの通りで」
ダイゼン。関西訛りの恰幅のいい中年男。このギルドの物資管理を一手に引き受けており、前線の攻略に出ることはあまりないやつだが、こと商売に関してはエギルよりも上と思う
「しっかしこんなに客が来てくれるんなら月1でやってくれへんかなぁ。」
「さすがにそれはないだろうw……そうそう!お前は初めて会うよな?これが俺の嫁さんのムラマサだ」
「いつも旦那がお世話になっております。」
ペコ
「これはこれは、ご丁寧にありがとうございます。ルーキスさんとは今後ともよろしくさせていただきます。………ほな、ここで」
外回りの営業マンのように去っていったダイゼン
「内心、飛び跳ねたくて仕方ないんじゃないか?あれは相当うれしいはずだ」
「それはそうとして、もうそろそろだよ」
キリトとヒースクリフ。攻略組でも両極端な2人だが、あれらの事を思うとなんとも言えないなぁ。手数ではキリトの方に旗が上がるが、堅すぎるヒースクリフに一撃入れるのは俺でも難しいぞ
ピ、ピ、ピ、ピーン
ガッ!!!
「始まった!」
ーーー
キィン、ガン、ギリィィ!
うわっ!スゲェな。あの速さを防ぐのかよ。俺の方がAGIは上だが、キリトは二刀流だ。単純にHit数が2倍だぜ?大盾を持っててもあの技量で使えるかよ、普通⁈さすがは聖騎士さまだな…
作り手であることを除いてもあのプレイスキルには届かないだろうに
シュウィィィィン
「あれはボス戦のときの……!」
黒と翡翠の剣が青白く光る。確か、スターバーストストリームだったか?記憶では16連撃に見えたが、巷じゃ50連撃とか言われてたなw
ギリィィ!
「ま、ガードするしかないわな」
大盾でキリトの嵐の攻撃を防ぐヒースクリフ。技の終わりを狙っているのだろう。この距離でも目力がビシビシ伝わってくるぜ
ガンッッ!
キリトの野郎、弾きやがった!連撃の最後でヒースクリフを身体ごと仰け反らせるとは……。硬直時間を考えてもあれだけ飛ばせりゃキリトが一撃を入れられる!!
はずだった………
ズバッ!
「…………速すぎだ」
明らかに速い。反応しててもあのスピードでは動けないぞ。……システム補助を使ったのか?いや、いくらあいつでもそんなヘマをやらかすなんて……
キリトのHPが削られ、勝敗は決した。しかも負けたキリトはKoBに入ることになるというわけのわからない事態となった
それから更に数日が経ったある日
「クラディールが死んだか……」
「ええ。なんでもあのキリトを含めた3人でのパーティーで件のクラディールとゴドフリーって人が死んだらしいっす。クラディールがキリトとゴドフリーを襲って殺そうとしたのをアスナが助けてに来て、キリトがトドメをさしたって……」
ふん、そうなるわな。キリトがクラディールごときに殺されるはずなど無い。あれは宝石だ。まだ磨ききれていない宝石。PoHはその煌めきに魅せられてしまった。だからあれ程の執着を……
「ちょいとヒースクリフに会ってくるよ。ムラマサには早く戻ると伝えておいてくれ」
「分かりました。マジで早く帰って来てくれないと俺らがムラマサさんに怒られるんですからね⁈」
そうマサムネに告げ、KoB本部に急いだ。色々と聞きたいことが山ほどある。ヒースクリフとしてではなく、茅場としてのな……
ーーー
KoB本部の団長室の扉に手をかける。警備兵は俺の名前を出せば避けてくれた
ガチャ!
「ヒースクリフ!お前に話がある。他のやつらは合図するまで出ていてくれ!!」
「騒々しいな、ルーキス。もう来ないと言ったのは君だぞ?…………だが、どうやら緊急の用事みたいだね。いいだろう。他ならぬ君だ、他の者は部屋の外で待機していてくれ。聞き耳スキルは使わないように」
「俺の耳なら外の音くらい聞こえるぞ。下手にしてたら……分かるよな?」
サササササっと数名のプレイヤーが部屋を出る
「単刀直入に聞く。質問は3つ。1つ『アスナとキリトはどうなった?』2つ『キリトとの試合でお前はシステム的なブーストを使ったのか?』3つ『クラディールの件を前々から知っていたのか?』だ。」
「質問には答えるが、その順番はどうかと思うがね……。まずは1つ目、彼らはこのギルドを抜けることとなった。先の試合ではキリトくんの加入を決めるものであったが、今回のクラディールの件により、彼らの脱隊を認めたのだ。現在は第22層にて今後を過ごすと言っていたよ。」
「そうか、よかった……。2つ目は?」
「………あのデュエルの最後、私はシステムによるブーストを使用した。ついね。ああしてしまったのは私の過失だ。君以外には気づかれていないと私は考えているのだが…どうかな?」
「確信しているのは俺だけだろうさ。……ただ、キリト本人には何らかの違和感を覚えさせてしまった可能性はあるぜ。俺は以前、あいつとデュエルをしたことがあるが、あいつは別格だな。あれの戦闘センスは抜けている、反応スピードなら俺より速い」
「そうか……。では3つ目、私は彼の裏切りを知らなかったよ。但し、何かを企んでいるとは思っていた。アスナくんの付き人を辞めてからは単独行動が多く見られ始めたからね。多少の警戒はしていたつもりだったが、こうなるとは予想の範囲外であったよ」
「嘘を言っているようには見えないし、その言葉を信じよう。」
「それはよかった。………さて、これで終わりかな?できれば早々に立ち去ってくれると助かるのだが…」
「おう。邪魔者は消えるさ」
KoB本部を立ち去り、転移門へと向かう。しっかし、あれだな。俺は自分の欲求を止められないのをどうにかしないとダメだな……またやらかすことになる……行動力はあるって言われはするんだけどな……
『お前は飢えている。乾いている。望んでいる。歪んでいる。』
ふと、いつか誰かに言われた言葉を思い出した
書いてて納得のいかない所が多々あった回ですね。いっそのことクラディールを殺すのをオリ主にしてしまおうとも思いましたが、キリトとアスナのいい雰囲気のシーンを変えるのはいかがなものか?ということでこういう感じになりました