ソードアート・オンライン〜真実を知る者〜 作:夜明けを齎す竜
2024年11月7日
今日は第75層のボス戦が行われる。俺にもヒースクリフからの招集の要請があったが断った。参加しても俺にメリットはないし、ムラマサたちを放っておくのはできない。赤の他人のために命を賭けるほど俺はできた奴じゃないし、友達のためであってもメリットが無けりゃ動かない。そうやって生き延びてきた……
「そのツケが回ってきたのかなぁ……」
目の前には言葉では表現できない異形の存在。どのモンスターとも一致しないありえない姿。その強さがオーラで伝わってくる。触手のような植物のような体とその頭部に空いた虚ろ。背後には赤い月が浮かぶ。
「これが『上位者』様かよ……ハハッ!!勝てるとかそんな次元じゃないのは分かるけど…こいつは…」
ーーー!!
声にならない咆哮を上げる異形の怪物。HPは6本。名を『月の魔物 【青ざめた血】』
ガバァァァ!
その細くも大きな腕を振り上げて飛びかかってくる。
右手の『千景』を強く握り、構える
「こいよ、クソッタレ!死ぬのはお前だ!!」
なんでこうなったのかな……
ーーー
事の発端はその日の明け方まで遡る
「ふわぁ〜〜。よく寝た、よく寝た」
俺は朝が比較的得意な方だ。これはガキの頃からの習慣で、茅場の横に立ち続けるには朝から勉強三昧じゃないと無理だった
「ん?ムラマサが居ない……」
いつも俺より遅く起きるムラマサがいなかった。今日は朝から仕込みがあるわけでもないし、まさか朝ご飯を作るわけでもないだろうに
「とりあえず、着替えて下に行きますか…」
装備ウィンドから作務衣を選ぶ。ただの服なだけだからなんの効果もない。ま、『アサシン ブレード』は付けるんですけどね
「誰もいねぇ……」
下に降りても誰もいない。侵入者の可能性も考えたが荒らされた形跡も無ければ、外出の跡すらなかった。
「お〜い、ムラマサ〜!どこだ〜!マサムネ〜!野朗ども〜!」
返事がない。嫌な予感しかしなかった。
ドタッ!
ガシャ!
玄関先にもいない。庭を探すが誰もいない。おいおい、何が起こった!あいつは何処に行った?ムラマサ……
敷地を出てこの現状のヤバさを実感した
「まさか街ごと……!!」
誰もいなかった。まるで一斉に人が蒸発したみたいに…
「そうだ!フレンドリストの確認!」
フレンドリストを開くと生きていることが分かった。
「心配かけんなよ……でも何処に?」
「遅かったじゃねぇか、ルーキスさん?」
後ろから声がした。
腕を掴み、組み伏せる。喉に『アサシン ブレード』を突き立てて問う
「他のプレイヤーはどこだ!ムラマサは!」
「血が上って顔すら見えてないぜ?俺だよ」
「PoHか……って手緩めるわけないだろうが、ボケ!」
PoHだった。どうやらこいつはこの現状の情報を知っているらしい
「で、他の奴らは?お前らラフコフの残党の仕業か?」
「そんなわけあるかよ。プレイヤーな
らまだしも、NPCもいねぇだろうが」
「じゃあ、質問を変ようか。お前は何を知っている!」
「話すからこの刃を退けてくれよ。それと馬乗りも」
「……分かった」
スッ
「何処から聞きたい?」
「初めからに決まってるだろ」
PoHの語ったことは信じがたいことばかりだった。まだ空に星がある夜中、PoHは俺に会うためにこの階層に来た。その時はまだ俺は屋根にいたのだが、ちょうどPoHが敷地内に入るタイミングで俺は寝た。その後、ムラマサやマサムネ、その他のメンバーが一斉に起き、歩き出したらしい。PoHは自身の侵入を感知されたと考え、庭の木に登ってやり過ごそうとしたが、その時点でその現象が街全体で起きていると分かったらしい。ムラマサたちは夢遊病患者のようにある地点に向けて歩いていった。それは小次郎と果たし合った山。その奥に向かっていったらしい。しかも、空には赤い月が浮かんでいたと……
「そのあとはあんたに会いに行くのをやめて街の中の探索をしたわけだが……結果はご存知の通りさ」
「よく耐えたな」
「あんな催眠にかかったみたいなやつらを殺っても楽しくねぇよ。それよりあんなことをやらかした奴の方が面白そうだ」
こいつは大問題ぞ。主街区まるごとNPCすらまとめて一斉に同じ状態になるなんて……カーディナル・システムの維持そのものに直結するエラーだ。
「転移門は使えたのか?」
「いや、他の階層に跳ぶのは無理だった。恐らく、他の階層から来ることも無理だろうさ」
「助けを請おうにも攻略組はボス戦に向かってるだろうし、その他の知識人は頼りにならん」
「…なぁ、これを何だと思う?モンスターの仕業か?プレイヤーか?システムのエラーか?それとも、このゲームを作った茅場の思惑か?」
茅場……は違うな。これはいくらでもやりすぎている。他のプレイヤーにも難しい、NPCは動かせないしな。システムのエラーが可能性として高いかもしれんが、階層まるごと封鎖されるなんてことありえるのか?
「兎に角、そこに行ってみるか……。付いて来てくれるか?」
「他にやることもないし、それしかないだろうが」
「頼もしい『後輩』だな、PoH」
「まったく後輩扱いの荒い『先輩』だよ、ルーキスさん」
ーーー
ザク、ザク、ザク
小次郎と果たし合った階段を歩く。道中、何かの痕跡はないかと探しながら来たがなんの跡もない。時刻は昼になろうとしているが何故か薄暗く感じる……
「……っ!」
「Ho Ho Ho!こいつはスゲぇ」
死体の山が出来ていた。寺の境内は血溜まりがいくつもあり、まさに地獄と呼べるに相応しい光景だった
「これはNPCか……?プレイヤーなら消滅してるはずだ…。」
「ここにあんたの知ってる奴らはいないのか?俺はあんたの【燈し火の家】は知ってるが誰がいるのかまではわかんねぇからよ」
「……いねぇな。この階層を拠点にしてるプレイヤーの顔ぶれくらいは覚えてるが、そいつらもこの中にはいねぇ…」
「『現役』のころを思いだすだろ?」
「どっかの部隊を潰したときはこんなだったな。………先行くぞ」
寺の裏手には大きな洞窟がある。入ったことは無いが、噂では強力なモンスターが潜んでいるとかいないとか……
先に進むと洞窟内特有の霧が出てきた。ひんやりとした空気が嫌に肌を撫でる。
「嫌な冷たさだ……」
「あんたは気にしすぎなんだよ。こんなのは何処にでもあるだろうが」
「口悪りぃ奴」
「元からなのは知ってるだろ!」
へっ!……そんなところも似てるのかな?
「ん?あれは……」
「おいおい、ここは『あのダンジョン』じゃないぞ…?」
扉。大きな扉があった。俺たちはこの扉を知っている。
「開けるぞ」
「あの女王サマが犯人なら、殺っていいよな?」
「ああ。存分に殺っていい。仮にそうだったらな………」
ギィィィ
「貴公ら、久しいな。さて、此度の訪問は何用かな?」
やはりか。膝をつき、頭を下げる
「お久しぶりです。またお目にかかれて恐悦至極でございます、女王 アンナリーゼ」
「……そんな言葉使えるのかよ」
「PoH、お前も頭下げろ!」
「よい。貴公らの無礼を許そう」
「ありがとうございます。して、此度、我らが女王に御目通り願った理由はーー」
「分かっておる。赤い月が出たのだろう?数多の民草が消えたのだろう?」
俺の言葉を遮るように女王はそう言った
「何故、知っておられるのですか!……よもや、女王様の仕業なのですか!」
「そうであるなら私をどうするかね、鴉が如き狩人よ」
「なぁ、女王サマよ!あんたはそれくらい知ってるだろうが!」
「PoH!黙れ!………仮にそうであるのなら私、いや、俺はお前を殺して尽くす。俺がお前の血を受け入れた血族であっても、お前が不死たる存分であってもな」
「フフフ。やはり貴公は『獣』だな。そちらの男も人のまま狂気に堕ちた憐れな者だ。だが、よい。貴公らの全てを赦そう。フフフ、久方ぶりに面白いではないか」
「その口ぶりから察するに、あなたが原因ではないらしいですね」
「は?なんで今のでそんなの分かったことになるんだよ!!」
「フフフフ。貴公はやはり狩人だ。私が会話に混ぜた痕を手繰り寄せ、答えに辿り着くとは」
「お戯れを。貴女ならばそうできる力を持っていても不思議ではないと思ったまで……。なぜなら私は貴女の最後の血族ですから」
「………教えて欲しいか?誰が何故に月を染め、人を誑かしたのか」
「もちろん。そのために来たのですから」
「では……その方よ。貴公にはこの間から出ていてくれまいか?」
PoHを指さすアンナリーゼ
「お、俺?」
「頼む、PoH。俺からも」
「チっ……」
ギィィィと音を立てて外に出るPoH
意外に素直で少し驚く
「さぁ、貴公。話そうかーーー」
ーーー
「で、なんでそれが俺を置いてく理由になる?」
「お前には行かせられない。お前はまだ死ぬべきやつじゃねぇよ。これは俺の問題だ」
「じゃあ、話せよ!なんでだ!」
「っ!…………こうなったのは俺が原因なんだよ」
「は?」
ーーー
「強引にしすぎたかなぁ……」
なんとかこじつけでPoHを帰したもののあの感じじゃ納得なんてしてないだろう……。
「しかし、茅場のくれた特権がここに来て『暴走』するとは……」
女王が語った真実はシンプルなものだった。茅場がくれた俺を中心とした範囲内をフィールドと同じ扱いにするっていう特権の範囲が超拡大されただけだった。そんなことをシステムが許すはずがないとも思ったが、そのシステムの一部たる女王がそう言ったのだ。信じるしかあるまいよ。
「ムラマサ、みんな、待ってろよ」
女王曰く、俺の能力範囲内にあるモンスターが居て、そいつの能力が俺の能力範囲に及んできたとの事だ。そいつは『上位者』と呼ばれ、女王自身にも関係のある設定を持つ忌まわしき存在なのだそう。なぜそれを女王が知っているのかと問うと『貴公の写し身であり息子たる影から私は作られた』とのことだった。しかもユイちゃんのプロトタイプであり、モンスターとして設定された滅びゆく存在だと言っていた。俺と共に行かないかと問うたが、女王は残ってこのゲームと共に消えると言った……
あれ?スゲぇ頭回ってるな、俺。前にもあったぞコレ
ブワッ
洞窟を抜けるとそこは白い花々が咲く広い土地に出た。
「ムラマサ!」
花畑のいたるところにプレイヤーたちが寝ている。その中にムラマサを見つけた
「大丈夫か⁉︎起きてるか⁈」
ムラマサを抱き上げて声をかける。返事はないが息はある。他の奴らも寝ているだけだ
「『上位者』さまは何のためにこんなことを?」
怒りが込み上げる。もはや、血が上るのではなく、顔が青ざめていくのが分かる。ムラマサを下ろし、『千景』を装備する。『無銘』より『物干し竿』よりコレが一番今の俺に合っている。自身を犠牲にしなきゃ勝てないと本能が最大限の警報を鳴らしている
「待っててくれ、ムラマサ」
チュッ
ムラマサの額にキスをする。絶対に助けると誓って……
先に進むと月が異様に近くなってきた。ここが決戦の地らしい
「お出ましようだ……」
月なら降りてくる影。長い髪の人型モンスターかと見紛うシルエットではあるが……
ドサァァ
白い花びらが散る。
「ッ!!」
息を飲む。その姿を認識することを脳が拒絶しているみてぇだ。気持ち悪りぃ……
これにて冒頭に戻る
ーーー
ズバッ!
ーー!
「…血が赤い。こういうときは青とか緑とかが鉄板なんだけどなぁ!」
身体を回せ。限界を超えろ。こいつを殺すには力が足りないことなんて分かってる。ならば、意思の力で補うだけ。動け、俺の身体!こいつのHPを飛ばすまでぇ!
ーーォ!
バキバキッ
「ガハッ」
カウンターで俺の腹に拳がめり込む。ダメージエフェクトだけじゃねぇ。本物の『痛み』が身体を襲う。肋の何本か持ってかれたか……?
「ペインアブゾーバーはどうなってるんだよ…。クソ痛ぇじゃねぇか!離れろ!」
ドスッ
ーー!
『千景』を右肩に突き刺す。と同時に全力の蹴りで拘束を抜け出す。
「武器の一つ程度なんてくれてやるぁ!お前の命を狩るのにそいつだけなわけあるかよ!」
『無銘・黒』を両手で構える。右は順手、左は逆手。
「予想より耐久値は低いらしい……。あの拘束さえ避けられれば勝機はある!」
ザンッ、ザンッ!
ズサァァ
股下を走りながら切る。表皮もそんなに固いわけじゃない。まだイケる!
「ギルター・アーク!」
ザスッ!
「からの!」
「エグジスト・スペクター!」
ザンッ、ズバッ
ーーッ!!!
「ハッ、ハッ……キリトの真似してて良かったぜ……」
キリトの『二刀流』を短剣で再現できないものかと密かに試行錯誤した結果、片方を逆手にしての状態ならギリギリでモノマネ程度になっただけのことだがなぁ!
「名付けるなら『スキル・コネクト』ってとこかな……クッ…!」
強引にスキルの硬直を繋げてる分、次の技までの隙がデカいのがこれの弱点か……
ズズズ……
ーーーォォ!
痛がるような動作をしながら『魔物』は立ち上がる。弱そうなのにこの執念じみた行動だけは恐怖を覚える。モンスターではなく、まるで人間のような感情を持っているみたいだ……
「そうか……まだヤレるか!こいよ、クソッタレ!まだ踊れるよなぁぁ!」
守るためなのか愉しむためなのか、意識を保っていることすら出来ないほどの快感と虚脱感に飲まれそうになる……自分を捨て去ってただ殺し合いたいと願う『獣』の俺と、自分を捨て去ってでも愛する者たちを救うために戦う『人間』の俺。どちらも純粋で、どちらも間違っている。それらを否定することは誰にもできない……
地獄を見た。楽園を見た。平和を見た。戦争を見た。
それらは全て同じ世界にあって、同時にあった。
自分を忘れた俺も思い出し俺も、同じことを思った。
『これは面白い』と。
矛盾とはこのことだ。世界は両儀的に渾沌とし、全てを内包している。
では、
『始まり』と『終わり』はいつ現れた・訪れる?
俺はそれらを歓迎しよう。終わらぬ終わりを良しとしよう。始まりの始まりに歓喜しよう
さぁ、目覚めの時だ
「……はっ!」
ーー!
魔物の虚ろが眼前に迫る。何もない穴。存在を否定し、傀儡とするその意思がそこにはあった
「俺を喰うにはまだ足りんな!」
ガンッ!
ーーッ
頭突きで怯む魔物。少し浮いた身体をすり抜け、体勢を立て直す。身体のいたるところが軋む。変な音を立てて骨が折れる。頭を上げると血が目に垂れる
「おいおい……。血の演出は無いんじゃないのかよ……」
鉄臭い空気が漂う。辺りの花も俺たちの血で赤く染まっている
「……次で最後にしようや…」
残ったのは『物干し竿』だけ。血が流れていくにつれてHPは減っていく。魔物も同様にあと少しで消える分しか残ってはいない
「さぁ、こいよ……」
ーー!
魔物が俺の言葉に応えるように低くを構える。どうやらあっちも最後にするつもりみたいだ
『ガァーーー!!』
魔物は人間のような叫び声で飛び上がる。やっと聞き取れる声出しやがって…これでやっとこさ戦いらしくなるなぁ!!
心を落ち着かせ長刀を構える。腹は上を向け、右手は強く、左手は鮫肌に添えるように……
「その素っ首、切り落としてくれよう」
『グガァァ!』
キラッ
「ーー秘剣『燕返し』」
ボタ…………
「…………刀身に歪みなし。たとえ傷だらけであっても『あの男』の技に一切の汚点があってはいけない……」
落ちたのは魔物の首。断末魔さえ赦さぬ魔剣。人の身では辿り着けぬ領域に踏み入った剣技は『外なる者』すら避けることは出来ぬ。
バタッ
「おっと……。流石に立てないか……。」
魔物の消滅を見届けて俺は倒れる
やっと終わった。ムラマサはどうなった⁈マサムネたちは⁉︎他のプレイヤーは⁈ 意識が霞むッ…!耐えろ、俺ぇ……
「ルーキス!」
「親父!」
どれくらい目を瞑っていたのか。聞こえる声に目を開ける
「ムラマサ……。マサムネ……」
「ルーキス!起きた⁈」
「親父!またあんた死ぬ気かよ!」
「けッ…。俺は死なねぇよ。死んでたまるか……」
そう言ってみるものの俺のHPは減っていく。ポーションも回復結晶も咄嗟のことで持ってきてはいない……
「誰か!回復アイテムを持ってるやつはいないのか!あたしの旦那が死にそうなんだ!」
「他のメンバーはプレイヤーの脱出の先導をやらせてるし、ここに居たとしても持ってるか……」
どうやら手詰まりみたいだ……
「泣くなよ、ムラマサ…」
ムラマサの涙を拭う。でもそれ以上の涙が俺の顔に滴る
「君には泣かないでほしい。これ以上ないてしまったら、心が枯れてしまうよ……?」
「でも……グスッ…」
「マサムネ、最後のリーダー命令だ」
「……はい。」
「いい顔になったな……。よし『今後、我ら【燈し火の家】のメンバー全員のその死亡を固く禁ずる。』……………ベタたがそれくらいしか今の俺では考えられない……。」
「不肖、マサムネ。その言葉をしかと胸に刻み、精進していくと誓います。」
「もう行け。お前に任せる」
「……っ。長い間、お世話になりました。このご恩は一生、忘れません…。」
マサムネは振り返ることなく走り去った
「ムラマサ、もう……」
もう尽きる蝋燭の火をムラマサは見守る……
「最後に一つだけお願い……目を瞑って……」
「はいよ……」
そういつのは俺の方からやるのが常だったんだけどね…
チュッ
ゴーン、ゴーン、ゴーン
「…この鐘は…?」
キスと同時に鐘が鳴り響いた。晩鐘かと一瞬思ったが、それはないだろう
『11月7日 14時55分、ゲームはクリアされました』
「…ゲームクリア?」
「おやおや、一歩及ばなかったか……」
茅場め、ボロを出したか…あの馬鹿たれが
「ルーキス、あたしはっ……!!」
シュウィーン!
ムラマサの身体は何処かへと転移させられた
「ムラマサ!…………これで戻ったことになるのか……」
あと…少しだったのにな…
ジッーーー
俺のHPが尽きた。フッ、もっとスムーズに転移するように設計しとけっての……
ーーー
気がつくと俺はアインクラッドを見下ろしていた。辺りには何も無く、黄昏の空に浮かんでいる。
「これは……」
「やぁ、竜。」
「茅場……」
声の方を向くと茅場がいた。ヒースクリフとしての真紅の鎧を纏った姿ではなく、幾度となく見た白衣の研究者と姿で…
「終わっちまったな……」
「私たちの夢はもうすぐ崩れ去る。だが、彼らは無事に現実へと帰還したよ」
「彼らって?」
「キリトくん達さ……。フフ、彼らは私に人間の新たな可能性を見せてくれてた。夢は潰えるが、今後の課題も見つかった。それで良しとしよう……」
「……現実に戻ったらお前はどうする?2年間、無辜の民を監禁し続けたとかなんかで刑務所行きは確定だろうぜ?」
「その点においては対処してある。君が心配する必要は無い。…………竜、今までありがとう」
「改まるな。あっちで会う時に恥ずかしくなるわ!」
「フフ、君らしいな。……見ろ、あの鋼鉄の城を…」
ガラガラと崩れていくアインクラッド城。あぁ。さよならだ、俺たちの夢
城が完全に無くなるまで俺たちは無言で見続けた。語らずとも思いは同じだったのだろう……
「じゃあな、また会おうぜ」
「また…な……」
最後に笑って茅場は消えた。滅多に笑わないあいつの顔は俺に塵ほどの不安を覚えさせた……….
ーーーーー
「…………ッ」
目を開ける。白い天井。白い壁。カーテンから漏れる光。どうやらなんとか生きているらしい……
ムラマサは大丈夫だろうか?マサムネは?ん!ん!身体は動かせないか……。戻ってきたんだな、現実に……
人を愛する『獣』たる男は戻ってきた。
鴉は羽ばたいた。
『獣』は次なる変化と遂げる。
妖精たちの国
かつての友
世界の変革
さぁ、夢の続きを始めよう
SAO編、終了です。いたらぬ点はいくつありましたが、自分としては中々にいい方なのでは?と思っております
番外編を1話挟みますが、更新はお休みしません!
お楽しみにw