ソードアート・オンライン〜真実を知る者〜 作:夜明けを齎す竜
ユナちゃんとノーチラスくんは出さないといけないという義務がある以上は外せない回ですよね?
茅場を絡めてますし、オリ主設定としても……ね。3と4の間です。
ある昼下がり。俺は久しぶりのフリーの休日を過ごしていた。何もせずに過ごすのは今まであっただろうか……?休んでいてもなんやかんやで襲われることもあったし、助けを請われたなら手伝うしでフリーは無かったなぁ……
「ん?あれは………」
第35層の『ミーシェ』の喫茶店で人間観察をしているとある男女の二人組みが目についた。男のほうは白を基調とした鎧を装備し、女は青っぽい服で帽子を被っている。……どっかで見たことあるんだよなぁ……誰だ?
「あ」
見られた。誰だか思い出すために凝視しているのはやはりマズかったな。二人は俺の座っている椅子の付近まで歩いてくると、途中から小走りになった
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「あ、あの……」
「おいおい、大丈夫かい?こんなおじさんに何か?見つめてたのは謝るよ」
「……まさか僕たちにお気付きにならないんですか?竜さん…」
ん?知り合い?このゲームで会った記憶は無いから現実で会ったことが……?……ッ!!
「……あ!悠那と鋭二か!」
「もう!なんで気づくかないの?」
「いや〜、すまんすまん」
「ユナ、そんなに怒らなくても」
こいつらは鋭二と悠那。鋭二は俺と同じく、重村教授の研究室の出で長い付き合いだ。悠那はその重村教授の娘さんで教授の家にお世話になることのあった俺は家族ぐるみでの付き合いがある。こいつらは幼馴染同士だ
「鋭二はKoB、『血盟騎士団』なのか?悠那は違うみたいだけど……?」
「はい、僕はKoBに所属しています……って僕は今『鋭二』じゃなくて『ノーチラス』です!悠那も『ユナ』ですって言わなくちゃ」
「いっけない!中々慣れないのよね、アバター名で呼ぶのって。まして竜さんだもの」
「今の俺は『ルーキス』。色々と仕事を請け負う、何でも屋だよ」
「うちのノーくんは『血盟騎士団』の中でも期待のルーキーで有名なんだよ!」
「そ、そんなことないよ…。いくらソードスキルをちょっと多く覚えてるからって実践で活躍できないとダメなんだよ……」
「相変わらずの引っ込み系だな、鋭二、いや、ノーチラスくんよ。お前さんにもうちっと覇気があればいい研究者になれるのになぁ」
「僕はそんな器じゃないですよ」
「そうかなぁ〜」
実際、こいつの研究者としての腕は確かだ。俺や茅場とは違った面でのアプローチには教えてもらうことも沢山ある。もう少しだけ自己主張が強かったら世界に立ち向かえるほどのデカい奴になれるんだけど
「ユナは見たところ戦闘系のジョブって感じじゃないけど、何やってるの?」
「私は『吟唱』っていうスキルを持ってるの。これは他のプレイヤーにバフをかけられる珍しいスキルなんだって!使い手がほとんどいないんだよ!」
「へ〜〜!すごいじゃないか!ってことは、巷で最近有名な『歌チャン』ってのはユナのことか」
歌のエンチャンターって意味かな?毎晩深夜にどこかの街の転移門で密かに歌声を披露している女性プレイヤーがいると噂には聞いていたが……
「今、ルーキスさんは何をしてたんですか?」
「今日は久しぶりの完全フリーの日だからな、この喫茶店で人間観察でもしようかなってね」
「ハハw 相変わらずの変な人がなのね。お父さんも『彼は私の知り合いの中でも異端児だからなぁ』って言ってたわ」
そりゃ、アンタの方だ!業界でも先鋭的すぎるとかなんとかで除け者にされてるクセに!……と口には出さずに言葉を飲み込む
「えぇ…そいつは凹むな…」
キーンコーンカーンコーン
「そろそろ行くね。今夜、『はじまりの街』の孤児院で歌うことになってるんだけど、ルーキスさん来てみない?」
「あのメガネの人の孤児院だろ?もちろん、行かせてもらうよ。この頃、あの子たちにも会ってないしね」
「ふ〜ん、わかったわ。しゃあ、またね」
「では後ほど」
二人は転移門から他の階層へと跳んでいった。その背中には成長を感じさせてくれる力に溢れていた
先生。あなたの娘さんはこのゲームで大きく成長してますよ。その姿を必ず見てあげてくださいね
「……守るものが増えたな」
ーーー
その日の夜、俺は第1層の孤児院に行った。最近はお金や食糧を届けるだけで顔を出してはいなかった。
「こんばんわ〜」
「あ!ルーキスおじさんだ〜」
「オッス、ガキども!元気にしてたか〜?ヨイショっと」
孤児院に着くと俺の声を聞いた子供たちが集まってきた。俺は一人の男のの子を抱きかかえる。まったく、かわいい奴らだな
「ルーキスさん、いつもありがとうございます」
「サーシャ!」
サーシャはこの孤児院の運営をしている女性プレイヤーだ。元々は攻略組を目指していたが、R-13の制限を守らなかったこの子達を放っておけないと世話をしてくれている。子供を下ろして……
「チョットあっち行っててくれないか?おじさんはサーシャさんとお話があるからさ…………最近はどうだ?」
子供たちは素直に従ってくれた。不満そうな顔の子もいたが、後からたっぷり遊んであげればいいだろうさ
「ここ最近は目立った問題は起きてはいません。ですが、今後を鑑みると少しお金が心許ないとも思います」
「そうか……なら送金を増やすとしうよう。それはそうとして、ユナとノーチラスはどこに?」
「今は客室のほうにいらしてますよ。子供たちの為に無償で歌ってくださるのは大変嬉しいことです。子供たちを遊ばせておくのも多少の危険がありますし、子供たちを退屈にさせておくのもチョット……」
「そこんところはあいつらに感謝だな。で、いつからやるんだ?手伝えることなら何でもするぜ?」
「夕食の後に予定しています。なので早めの支度をしている最中なんですが……それをお願いします」
「おう任された」
子供たちのために腕によりをかけて料理を作った。みんな笑顔で完食してくれた。うん、現実で苦手な食べ物があった子も今では喜んで食べくれる
「さぁ、そろそろだよ」
少し部屋を薄暗くしてみんなを座らせる。みんなワクワクしててこっちがニヤケてくる。ノーチラスはいつの間にやら部屋の後ろで壁に寄りかかって立っている………
「〜〜〜♪♪」
「「「「うわ〜〜」」」」
「みんな今日は私の歌を聞いてくれるんだよね?」
登場したユナは手にギターに似た楽器を持っていた。ほ〜!弾き語りか!
「聞かせて〜」
ある女の子が言う。他の子たちも『聞きたい!』と口々に言いはじめる
「オッケー!じゃあ、行くよ〜」
〜♪〜 〜♫
それからユナは数曲を歌った。どれも彼女らしさに溢れていた。アップテンポな曲からバラード調の曲まであったが、子供たちはその全てをしっかりと聞いていた。あんまり子供受けしないんじゃないか?と思うところもあったが瑣末な事だったようだ
「大成功だったな」
「へへw 子供たちも喜んでくれたみたいでとっても嬉しい」
「ユナの歌でみんなが幸せになると僕も嬉しいよ」
「お?ノーチラスくん、それはどんな感情だい?」
ニヤニヤ
「茶化さないでくださいよ、先輩」
くっ…。先輩呼びは色々と応える。
「じゃあ、俺はホームに帰るとしようかね」
「サーシャさんは子供たちを寝かしつけるとおっしゃってましたし、これでお開きですね。」
「今日はありがとうね、ルーキスさん」
「俺は何もしてねぇよ。じゃあな!また会おうぜ」
俺は月明かり照らす夜道を歩く。良い気分だ。このゲームをしててこんな気持ちになることがあったんだなぁ……
ーーー
2023年10月16日
俺はこの日ほど自分を責めた日はない。
昨日、第40層のダンジョンでとあるパーティーが閉じ込めトラップにかかり全滅しかけるという事件が発生した。攻略組の最精鋭はフロアボス攻略戦の最中であり、ユナは攻略組二軍(エイジ及び風林火山メンバー2名)、及び攻略組志望の中層プレイヤー上位複数名と共に救出に向かった。俺にも召集がかかっていたものの別の依頼の最中で参加することはできなかった……
しかし攻略組最精鋭に比べダンジョン攻略の経験が足りなかった救出部隊は、自分たちもモンスターの大群に囲まれミイラ取りがミイラになりかけてしまう。
ユナは《吟唱》スキルでヘイトを集め囮となることで救出を成功させるが、自身は薄暗い牢獄ダンジョンの底で二十体以上の獄吏型モンスターのリンチに遭い凄惨な最期を遂げることになった………
「ノーチラス……」
あいつは目の前で愛する人を失った。もし自分が動けたのならユナは死ぬことはなかった、犠牲になることはなかったと前線から離れ、どこかに隠居したらしい
俺は何処へとなく雨の降る夜道を歩く。泣いているのか雨なのか自分でも分からないほどに濡れいる。あの声、あの笑顔、なによりあの子の夢をもう見ることが出来ないというのは辛い。
「先生……俺は……」
先生の娘さんというのもあるのだろうか……これは俺の責任だ
「ユナ……すまなかった……」
俺はこの後悔を決して忘れないだろう。あの夜の歌を忘れないだろう
決して、決して………
少し短いですが、ここまで
次回からALOやりま〜す