ソードアート・オンライン〜真実を知る者〜   作:夜明けを齎す竜

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ALO編スタートっす。といっても本格的なスタートは次回で、今回はアニメの写真のくだりまでです



14話 夢の残り香

2025年1月19日

 

通称『SAO事件』から2カ月ほどが過ぎた。俺はあれからリハビリをしながら教職に復帰している途中だ。目覚めた当初は検査の連続で気力がごっそり持ってかれていたが、今ではすっかり元どおりだ。国の役人から根掘り葉掘り諸々の事情聴取を受けた。あいつら俺の『過去』を調べたらしく、面倒くさくてたまらなかった。が、今は俺を後回しにしている。

 

今日はとある病院に来ている。経過診察と『ある人』の見舞いだ。まだ目覚めない眠り姫さまの……

 

「おはよう、『ムラマサ』」

 

ムラマサ。本名を『村井 雅代』。ゲーム内では俺の嫁さんだった。今でも愛してる人だ。あっちで言ってた通り、現実では探偵をしていたと役人様に聞いた。この病院に未だに眠っていると役人様から脅迫して聞き出した。国の方も俺が『対処に困る秘密』を知っていることを危惧しているらしく、強引ではあるがその情報を決して口外しないことと交換条件に聞いた

 

「今日の天気はいいぞ〜。天気予報でも冬なのに気温が高くなりますって言ってたから寒くなさそうだ。俺は寒がりだから助かるよ」

 

返事はない。眠ったままのムラマサからは目覚めの兆しすら感じない。喋りかけて1時間ほどがたった。

 

ガラガラガラ

 

「夜明さん、そろそろ」

 

看護師さんが俺を呼ぶ。

 

「ああ、すいません。検査が終わったらまた来るよ」

 

ムラマサの病室を出て、検査室へと入る。俺はSAO帰還者の中で唯一、脳の障害を持っている。役人には公表するなと念を押したから世間は知らないが、この病院の関係者だけがそれを許されている。障害というのは嗅覚及び味覚を感じる脳機能の7割と痛覚を感じる機能の半分が働かなくなったことだ。記憶障害は確認されなかったが問題なのはそれが起こったと思われる時間である。あの『魔物』との戦闘終了時、俺は数秒間だけ心停止をしていたらしい…

 

そう。ナーブギアによる脳細胞が焼かれたからではなく、心停止による脳細胞の死滅による症状なのだ

 

なぜナーブギアの機能が正常働かなかったのか?については未だに不明。実際、俺のナーブギアの機能そのものが故障していたわけはなく、まして外部からの信号で止まるようには設計していない。が、今は生きていることに感謝しよう。その分、五感の一つである聴覚が常人のそれの数倍の感度を持つようになった。この病院にいるのも辛いレベルに……

 

検査は終了し、結果は1週間後に出ると看護師は言っていたがまた同じ値だろうと自分で思う

 

カツン、カツン、カツン

 

ムラマサの病室に戻る道すがら、目の前から二人の男性が歩いて来た。初老の男性と30代くらいの男性である

 

「これはこれは。夜明さんじゃないですか!」

 

「こんなところで再開するとは夢にも思っておりませんでしたよ、結城さん」

 

この初老の男性は『結城彰三』。総合電子機器メーカー「レクト」のCEOを務める実業家。京都を中心に地方銀行を経営する名家の三男。 俺が研究業を再開したころに「レクト」で少し技術協力として所属していたことがある。それ以来の再会だ

 

「なぜ結城さんがこの病院へ?」

 

「私の娘がこの病院に入院していまして、そのお見舞いにと」

 

「それは失礼しました。僕もある人のお見舞いと脳の検査をしにきたんです。」

 

「あの…お話を中断して申し訳ないのですが……」

 

「何かね『須郷』くん?」

 

ん?須郷だと……?どっかで聞いたことのある名前だな…?

 

「あなた…夜明 竜…。竜先輩ですか?」

 

「その呼び方……お前、伸之か?重村ゼミの伸之か?」

 

「やっぱり!お久しぶりです、先輩」

 

「何年ぶりだよまったく!レクトさんにお世話になってるなら俺に会う機会もあったろうに」

 

「先輩がウチにいらしたときはまだ新米のペーペーだったもので……」

 

「おや!二人は知り合いだったのかね」

 

「ええ。大学時代の同じ研究室に所属していたんですよ。僕の方が先輩で、伸之は後輩なんです」

 

「いや〜、本当に懐かしい。積もる話もあるんですが、今はあとで……」

 

「そうだね…。」

 

「娘さんのお見舞いに行かれるんですよね?邪魔かもしれませんが、僕もついて行ってよろしいでしょうか?結城さんのご家族なら僕にとって大切な人も同然ですから」

 

「いいのてますか?あなたも誰かを見舞いに来たのでしょう?」

 

「お気遣い痛み入ります。でも、一度くらいは……」

 

そんなわけでムラマサの部屋に戻る前に結城氏の娘を見舞うことにした。返しきれない恩がある以上はそのご家族にも何かしないといけない気がする

 

ガラガラ

 

「おや?今日も来てくれたのかね、桐ヶ谷くん」

 

「失礼してます、結城さん」

 

その病室には一人の青年がいた。黒い服を着た黒髪のその子は16歳ほどだろうか?年の割に幼く見える顔立ちをしている……

うん、見たことあるなぁ!!知ってるやつじゃん!うわ、鳥肌と冷や汗が出てきやがった

 

「そちらのお二人は?」

 

「ああ、紹介しよう。こっちの眼鏡の青年は『レクト』フルダイブ技術研究部門の研究員で、ALO運営会社『レクト・プログレス』のスタッフをしている須郷 伸之くんだ。私の腹心の息子でね。」

 

「へぇ〜」

 

「その隣にいるのが夜明 竜さん。数年ほど前に『レクト』の研究部門に所属してくれていた人でね、今は東都工業大学の非常勤講師を勤めいらっしゃる」

 

「キミが『キリト』くんか!いや〜、会いたかったよ!」

 

伸之はキリトこと桐ヶ谷青年の手を握る。その態度にキリトはたじろいでいる

 

「キミの噂は色々と聞いているよ。この明日菜くんにも親切にしてくれていたってね」

 

んぬぐッ!喉から変な音が出た。おいい、今日は何て日だ!

 

「ゲホゲホッ」

 

「あ、あんた!大丈夫か?」

 

「大丈夫ですか、先輩?」

 

「き、気にすんな……。じゃあ、俺からも挨拶を。

はじめまして、桐ヶ谷くん。俺は夜明 竜。しがない研究者だ。………いや、『久しぶり』と言ったほうがいいかな?キリトよ」

 

「すみませんが、何処かでお会いしたことが?」

 

「おいおい、薄情なやつだな。2年来の付き合いだろ?この顔を忘れたとは言わせないぞ、『黒の剣士』さん?」

 

「……あ!あ、あんたルーキスか!その喋り、その表情、確かにルーキスだ……」

 

「せ、先輩がルーキス…。あの『人狩り鴉』の……」

 

「ビビるなよ、伸之。俺はお前の知ってるただの夜明だ。あのゲームのルーキスじゃない」

 

伸之は得体の知れない存在を見るかのような顔をする。大学のときもその顔をよくしていた。そして、あのときと変わらないギラギラした目をしてやがる。こいつの分からないところは表情筋と目が合ってないときの心だ。多少の訓練はしたつもりだが、今でも読めん

 

「そうだ。社長、『あの件』ですが、謹んでお受けします。」

 

「そ、そうかい。でも、君の将来を決めてしまっていいのかい……?」

 

なにやら面白そうな感じ。こういうのに首を突っ込んでるから厄介なことに巻き込まれるんだろうけど、やめられねぇなw

 

「明日菜のためにも僕がしっかりしないと…」

 

「そうかい。……そろそろ時間だ。私は先に車に行っているよ。桐ヶ谷くんと積もる話もあるだろう」

 

「じゃあ、僕も。キリト、またな」

 

「ああ…」

 

結城さんとアスナの病室を出る。

 

「では、結城さん。またいつかお会いしましょう」

 

「ええ。今日はありがとうございました」

 

「最後に一つ申し上げてもいいですか?」

 

「何か?」

 

「僕に敬語を使わなくててもいいですよ。結城さんもイマイチな感じしましたし……」

 

「ふふ。分かりました。では次からは」

 

少し微笑んで結城さんは去った。こっちとしても敬語を使われるのはむず痒くなるんだよなぁ

 

「さてさて、中ではどんな会話が……」

 

幸いにも今は看護師たちの巡回の時間ではない。部屋の外に立ってても怪しまれないだろうさ。今の俺なら壁に耳をつけなくてもこの距離くらい聞き取れる

 

………

 

忘れたつもりだった。二度としないと誓ったつもりだった。友達を傷つけるなんて外道のやることだと思っていた

 

たが、『コレ』だけは容認できない。認めてはならない。認めたのなら俺は俺自身を否定することになる。『愛』を捨てるのと同じだ

伸之はキリトに『アスナの命は僕が握っている・アスナは僕と結婚することになっている』なんてほざきやがった

キリトの心を知りながらもあいつはあのバカを嘲笑った。

 

「伸之よ…。それをやったらお終いだ。俺と同じになる。戻れなくなる」

 

ムラマサの病室で一人呟く。両手を組み、壁を見つめる。この気持ちは何だ?伸之への怒り?キリトへの同情?いや、そのどれでもない

 

『ムラマサが起きない理由もアスナと同じなのでは?』

 

そう思ってしまった

コレは俺自身の怒り。愛する人を傷つけられたことへの怒り。言い換えるなら『復讐』に近い。そう、『復讐』だ…

 

ーーー

 

病室を出て自宅に帰った。前の家ではなく、役人さまが用意してくれたものだ。あいつも中々に腹黒い。俺の扱い方を知ってやがる。上に俺を知る奴がいるのか?

 

プルルルル

 

「噂をすれば……もしもし?」

 

『もしもし、夜明さん?菊岡です。今、話せますか?』

 

菊岡 誠二郎。総務省通信ネットワーク内仮想空間管理課職員。SAO事件でゲームクリアによるプレーヤーの開放時、俺の事情聴取を担当した役人だ

 

「さっき家についたところだ。で、そっちからかけてきたってことは何かあるんだろ?話せ」

 

『だいぶ高圧的ですね…。まぁ、いいです。今、そちらのパソコンに写真を添付したメールを送りました。それを見ていただきたくて』

 

いちいち胡散臭い奴だな。嘘ついてるわけじゃないのはわかるが、絶対に裏がある喋り方なのが気になる。

 

ツーー、カチカチッ

 

マウスでメールを開く。確かに菊岡からのメールが来ているな。通知音を消してるから分からなかったな。表示はボックス開くまで分からないし

 

「こ、これは……」

 

写っていたのは何かのゲームだろうか?一枚目には大きな木らしきものの奥に鳥籠が見える。二枚目はその鳥籠の拡大したものだが、これは……

 

『一枚目はネットの掲示板に貼られていたもの。二枚目はこちらで拡大させてあります。どちらも解像度を上げていますが………どうお考えですか?』

 

「考えるもなにも、この写ってるのは『アスナ』だろ……」

 

『やはり。そう言われると思ってました。』

 

「おい、こいつは何の画像だ!何かのゲームなのか?いつ撮られたもんだ!」

 

『それはALO。《アルヴヘイム・オンライン》というゲーム内で撮られた写真です。』

 

「アルヴヘイム・オンライン……。」

 

伸之の運営してるゲームか!なるほど、そういう事か……!

 

『そのゲームではSAOと違って空を飛ぶ事ができるのですが、プレイヤーの飛行時間は限られており、数人のプレイヤーが肩車の要領でロケットのように切り離して飛んだ時に撮られたのがそれです』

 

「なるほど。上手く考えた奴らだ。なぜそいつらはそこまでして飛ぼうと?」

 

『なんでもゲーム内にある世界樹の頂上に辿りつけたプレイヤーの種族は無限に飛べるようになるとか』

 

「種族?」

 

『ALOは妖精の国をモチーフに北欧神話を取り込んだコンセプトのゲームなんです。運営はPKを推奨とした種族間抗争をさせて競争心でプレイヤーを煽るような方針なんですよ』

 

PK推奨か……。SAOじゃ考えられないが、死なないのなら何でもアリだな

 

「情報提供ありがとう。また貸しができたな」

 

『こっちはそれが目的ですからね。上はあなたが何かやらかすんじゃないかってビクビクしてますよ』

 

「総務省よりも防衛省と外務省のほうがアタフタしてるだろうさ。あれらは厄介ごとをお前さんたちに押し付けたかったのだろう」

 

『ホントにそうみたいで洒落にならないですよ……』

 

「ハハハ」

 

『……まだ300人ものプレイヤーが昏睡状態です。その解決の糸口がこのゲームにあるのなら早急に調査しなければなりません。

 

頼めますか、【人狩り鴉】?』

 

「請け負った。これは俺の望んでいたことでもあるしな」

 

『ありがとうございます。ALOは《アミュスフィア》でのプレイを想定して作られています。恐らく、明日にでもそちらに届くはずです。』

 

「何から何まで用意してもらってすまん」

 

『いえいえ。それでは…』

 

プツッ

 

「あ……。切るときはもうちょっと何か言ってくれよ」

 

ALOねぇ…。目覚めてからこっちVRMMOなんてやってないんだよぁ

大丈夫だろうか……

 

「……『翁』」

 

『何用か、我が主よ』

 

パソコンの画面に髑髏が映る。その声には冷徹さと温厚さをどちらも感じさせてくれる力がある

『山の翁』。SAOにて再会した俺の全ての結晶。俺の影であり、息子とも呼べるAI。元々はAIのアーキタイプとして作ってあったが茅場に提供して現在のような姿になった

 

「さっきの会話は聞いてたよな?」

 

『ああ。妖精の国に出向くのだろう?汝の友を救う為、汝の愛する人を救う為に。』

 

「そうだ。俺はあの世界に戻る。再び、この手に剣をとる。何者が立ち塞がろうとも、かつての友が敵であっても……。我が影よ、付いてきてくれるか?愚かなる、お前の光の我儘を聞いてくれるか?」

 

『何を言うか。そなたの言葉を知っていながら我がそれを聞き入れないわけがないだろう。我も行くさ、妖精の国に』

 

「そうか、そうか……」

 

『すでに夜も更けている。疾く休息せよ』

 

俺はその言葉に従ってベッドに入る。すぐに眠気に襲われ、意識が途切れた

 

ーーー

 

現実に戻ってきて唯一、絶望したことがある

それは『茅場 晶彦』の死

菊岡からそれを聞かされたときには24時間ほど高熱にうなされたものだ

あの馬鹿はハナっから死ぬ気だったんだ

俺が止められた。俺が止められた。

あいつは自分の脳に高出力のスキャンをかけていた。ナーブギアによるマイクロ波ではなく、脳の情報をデータに変換するために

それは自らの意識、魂や心とも言える不安定な存在をネット世界にコピーすること

つまり、擬似的な不死となること

その研究は俺が北欧でやってたときに考えた案の一つだ。構想段階でほとんど夢物語だと同僚たちに否定されたが、どこか確信が俺にはあった。そいつらに気づかれないように研究所のスパコンでこっそり演算させていた。結果は1%にも満たないと出たが、その考えだけは文書にしていた

俺は茅場との再会時にそれを話していた。その時は笑い話と流してくれていたと思っていたが…こうなるとは

俺の面会が許可されたあと、一番最初に来たのは凛子だった。

その顔は窶れ、生きているのが不思議と思うほどに生気を感じられないほどに憔悴していた

あいつは怒らなかった。泣かなかった。謝罪を求めもしなかった

ただ、

 

『晶彦さんを返して』

 

そう言っただけだった。俺を殴れと貶せ、罵れとそうされたほうがいくらかマシだ

その一度以来、音信不通となった

知っていた。そうなることを。SAOを始める前からそうなるのは理解していた。

だけど、実際は違った

わかってなんかいなかったんだ……

 

『仕事』ときもそうだったのだろう。殺した相手に家族がいるなんてよくあることだった。それでもやった。それしかやることがなかった

『復讐』のときだってそうだ。あいつらを殺したことに後悔はない。憐れみなんてこれっぽっちもない。

でも、そうなのかもとは思う

 

ムラマサ……早く会いたいよ…

 

ーーー

 

翌日 2025年1月20日

 

ダンボールが届いた。これがALOとアミュスフィアか

 

「なぁ、翁。」

 

『何だ』

 

「俺はもう『人狩り鴉』じゃねぇ。今からは『簒奪者』。無辜の民を己がものとし、その意思を弄ぶ王からその座を奪う者。民のため、友のため、愛する者のため。俺はその座を奪う」

 

『我が主ながら大きく出たな。ならば、冠位など我には不要なれど、今この一刀に最強の証を宿さん』

 

カチャ

 

アミュスフィアをつけて、横になる。

 

「リンクスタート!」

 




こんな感じでいいですかね?翁はストレア的なあれにしたいので、ユイちゃん枠兼ストレア枠な方向で
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