ソードアート・オンライン〜真実を知る者〜 作:夜明けを齎す竜
「おお!デカいな」
洞窟を抜けると世界樹の全貌が見えた。まるで岩と岩が螺旋状に捻られたような感じだ
「で、領主会談の場所はどのあたりだなんだ?」
「そうね。北西のあの山の奥よ」
「残り時間は?」
「20分」
「間に合ってくれよ……」
「間に合わせるんだよ!飛ばすぜ!」
ギュゥゥゥーン
間に合う以外に選択肢は無ぇんだよ
ーーー
蝶の谷に差し掛かるとき
「サラマンダーたちより先に到着するか微妙だな」
「そうね。警告が間に合っても、領主だけでも逃がせるかどうか。若しくはは揃って討ち死にかだと思うよ」
「そん時は俺が殿になって時間を稼いでやる。心配すんな」
『主。前方に大集団68人を感知』
「これが恐らく、サラマンダーの強襲部隊です」
クソ!先越されてたか!
「さらにその先に14人。シルフおよびケットシーの会議出席者と予想します。双方が接触するまであと50秒です!」
「間に合わなかったね……ありがとうキリトくん。ここまででいいよ。君だけでも世界樹に行って。私『たち』はサクヤを助けに行くから。……短い間だったけど楽しかった!また会えるといいね!」
「だそうだぜ?キリトよ」
「ーーーここで逃げ出すのは性分じゃないんでね」
「ーーそう言うと思ってたぜ!」
ーーー
スドォォン!
サラマンダーが会談を襲うその時である。二つの影が土煙を巻き上げて、降り立つ
「双方、剣を引いてもらおうか!」
誰だ?なんだ?と聞こえる。リーファ、領主たちに話をつけるの頼んだぞ
「指揮官に話がある!」
キリトの言葉で前に出てきたのは大柄でいかにも強そうな赤い鎧を纏い、大剣を背負った男だ
「スプリガンがこんなとこで何をしている?」
「…………」
おい、キリト。だんまりはダメだろ?
「どちらにせよ殺すには変わりないが、その度胸に免じて話だけは聞いてやろう」
「俺の名前はキリト。スプリガン・ウンディーネ同盟の大使だ。この場を襲うからには我々、4種族との全面戦争を望むと解釈していいんだな」
うわぁ、ハッタリにしては中々に面白いねぇw あぁ、ワクワクするぜw ニヤニヤが止めらねぇw
「ウンディーネとスプリガンが同盟だと……?護衛の一人もいない貴様が大使だと言うのか?」
「ちょい待ち。護衛ならここにいるぜ?翁!」
「貴様らがこいつの護衛か?同盟者たるウンディーネではなく、シルフとインプだと?」
『その通りである。主と我はこやつに傭兵として雇われている護衛だ。この雇い主はシルフとケットシーとの貿易交渉に来ただけだ。だが、会談が襲われたとなればそれだけでは済むまい』
「こちらの4種族で同盟を結んで、サラマンダーと対抗することになるだろう。」
「たった3人で、たいした装備も持たない貴様らをにわかに信じるわけにはいかないな」
シュイィィィ
サラマンダーの男はその背の大剣を抜く。
「俺の攻撃を30秒耐えたら、貴様を大使として認めよう。傭兵2人は俺の精鋭の部下達とやってもらう」
「あら?随分と威勢がいいことだ。舐められたモンよな」
下でリーファと領主のサクヤらしき人物が会話をしている。なにやらこの男、大剣使いとしてはサラマンダーだけでなく全プレイヤー中最強らしい。その剣も『魔剣 グラム』とどこぞの選定の剣だとか。サラマンダーの領主の実の弟で、知と武のバランスが取れた統治をしているらしい。
ふむふむ。なるほど。
【壊しがい】がありそうでなによりだ
ヒューー
風が吹いてきた。雲の流れが速い
キラッ
「ハァァァ!」
「始まったか……」
ーーー
『シャッ!』
ガッキィィン
「翁!そのまま押さえてろ!オラァ!」
ズバ…
「ふぅ……。これで5人!」
『油断するな、主』
バンッ
「わかってるよ!」
ブシュッ
右手に『物干し竿』を。左手に名も無き短剣を。俺たちを取り囲むは幾人ものサラマンダー。それらの強さは並大抵のものではない。鍛錬に鍛錬を重ね、いくつもの戦場を駆けたのだろう。息の合い様、個々の武、仲間が殺されているにもかかわらず立ち向かってくる勇気。そのどれもが心からの賞賛に値する!
「期待通りでなによりだ!……もっとだ。もっと、もっと、もっと、もっとぉ!」
ズバ、ズバ!
滾る、昂ぶる、沸き上がる!
「俺を楽しませろォ!トカゲどもぉ!」
気持ちが止められない!いや、止めたくない!この感覚、この音!これだよ、これなんだよ!殺しはこうでなくちゃいけねぇ。圧倒的な数の暴力を、塵芥のように、喰い散らかすように、更なる力で跡形も残さず、潰してこその闘争だ!
「でも、アレだな。やっぱり、こいつらじゃダメだわ。」
『物干し竿』と短剣を蔵う。俺は背中の弓を手に取る
「新しいオモチャで遊びたくなるのは、いつまでたってもワクワクするもんさ!」
こっちは楽しいんだが、キリトはどうだ?
……ガギィ、ガンッ!……
ほぅ。あのサラマンダー、ユージーンだったか?あの剣、防御行動を無視するのか。一回こっきりだが、一撃が重い大剣ならその効果は大きかろう。まあ、キリトが勝つことに変わりはないが
「そろそろ、大技行っとくか!」
『主………』
翁が悲しそうな目で俺を見る。そうだよ。俺はお前の掲げる信仰からはかけ離れている。お前に求めたのは俺に無いものばかりだからな。始まりは似ていても、結末は違うさ
弓を正面に構えて、詠唱を始める
「Ek skýt noun verb níu draca ör (エック・スキート・ノウン・ベーブ・ヌル・ドラカ・エール)………」
グギギギ…
弦を引き絞る。これぞ、かの大英雄が数多の首を持つ竜を殺した武芸の一つ!かの不死たる毒の竜ほどでは無いが、お前たちのその強さへの賞賛と受け取れ……!
「射殺す百頭‼︎」
放たれしは九つの竜。射手の狙いし対象を喰らうまで地の果てまでを追い続ける。幻想を殺し尽くすための技術。弓を用いたのならば、こうなるものである
グワ〜!ギャア〜!
いくつもの断末魔が聞こえる。本来、人へ向けたものではない。これは十二の難行の怪物を倒す為に編み出されたものだ。それを人が受けたらばどうなるのかは必然だ
「MP全部持ってかれたぞ……。これで半数くらいは消し飛んだか?」
「オラァァ!」
スドォォン
爆炎が地面へと落ちていく。キリトの奴も終わったようだ
「あっぱれ!見事!見事!」
「すご〜い!ナイスファイトだよ!」
ウォーーーー
歓声が上がる。シルフやケットシーはもちろん、サラマンダーたちも完敗した、あっぱれって顔をしてる。ちらほら、しかめっ面が居るが……
『主……。』
「お疲れ様、翁」
『……主は楽しんでいた。戦いに悦を感じる者は少なからずいる。それでも、主のアレは別である。そうであろう?』
「……それについてはノーコメントで。今はまだ『狂人』で収まる程度だ。俺が『獣』になったら………そのときは頼む。お前しか俺を殺せないからな」
『我が主、我が光よ………』
ーーー
「見事な腕だったな。」
シルフ領主のサクヤが復活魔法でユージーンを蘇生させた。
「俺が今まで見た中で、最強のプレイヤーだ貴様は」
「おい?俺は?」
「そりゃ、どうも」
「貴様のような男がスプリガンにいたとは…。世界は広いということか」
「ちょっと⁉︎俺には何の言葉もないの?」
まぁまぁされても嬉しくないの!翁、頭撫でるのやめろ!
「俺の話、信じてくれるか?」
「ぬぅ……」
緊張が走る。ここでNOとなったらそれこそ全面戦争だ。さぁ、どうでる?
「ジンさん、ちょっといいか?」
「カゲムネか、なんだ。」
声の主はサラマンダーのランス使いだ。さっきの乱闘の中でもピカイチの強さを感じた奴だ。雰囲気からこの部隊のナンバー2だと思われる
「昨日、俺のパーティーが全滅させられたのは知ってると思う。その相手がまさにこのスプリガンなんだけど……確かに連れにウンディーネがいたよ」
「…っ」
リーファが妙な反応したな。なんだ?こいつら何かあったのか?
「そうか。そういうことにしておこう」
成る程ね。一回、やりあったのか。いや〜、俺、察し良すぎ
「確かに、現状ウンディーネやスプリガンとことを構えるつもりは俺にも領主にもない。この場は退こう。だが、貴様とはもう一度戦うぞ。」
「望むところだ。」
グッ
キリトとユージーンはグータッチをした
「貴様とも戦ってみたいものだ。我らの軍と1人で渡り合ったのだからな」
ユージーンは俺の顔を見てそう言った。ギラギラしたいい目だ。猛者って感じがビリビリ伝わってくるぜ
「……嬉しいね。俺が弓を使う時は対軍、刀を使う時は対人のつもりでやるからな。お前さんの好きな方で受けて立つさ。いつでも訪ねてきな」
「そうさせてもらおう」
ーーー
「行ったな」
ユージーン達、サラマンダー部隊は自らの領地へと飛んでいった。
「サラマンダーにも話のわかる奴がいるじゃないか」
「あんたらって本当に無茶苦茶だわ」
「よく言われるよ」
「むしろ誉め言葉だ」
「ンン!すまんが、状況を説明してもらえると助かる」
ーーー
「成る程な。シグルドの態度に苛立ちめいたものがあるのは私も感じていた」
「苛立ち?何に対して?」
「多分、彼には許せなかったんだろうな。勢力的にサラマンダーに後陣をはいしているこの状況が。」
あ、これ。めんどくさいやつだ。あんまり首を突っ込むのは好きじゃないんだよなぁ。政治はからっきしだし
「翁……」
小声で翁を寄せる
「すまんが、俺にはこの手の話は手に余る。お前が後から説明してほしいんだけど……」
『その怠慢、我はそのようなことを主に望まないのだが…………よかろう。請け負った。できぬことを強いるほど我は厳しくはない』
「ありがとう」
ーーー
「御礼ならこのキリトくんとルーキスさんにどうぞ」
「そうだ。君らは一体?」
「ねぇ、君。スプリガンとウンディーネの大使って本当なの?」
どうやらめんどくさいのは終わったらしいな。仲間割れしてたようにも見えたが、俺にはどうでもいい
「ん?もちろん、大嘘だ!ブラフ、ハッタリ、ネゴシエーション!」
「ブハw やっぱりお前さんは『キリト』だなw 俺の見込んだ通りの奴だよ」
「無茶な男だな。あの状況でそんな大ボラを吹くとは」
「手札が多い時はとりあえずレイズする主義なんだ」
スリスリスリ
「大嘘付きにしては随分強いね君。スプリガンの秘密兵器だったりするのかな?」
「あ!」
ケットシーの領主、アリシャだっけ?に擦り寄られるキリト。羨ましいとは思わずが、アスナが知ったらどうなることやら………。冷や汗が出てくるわ
「キリトくんだったかな?個人的興味もあるので、この後スイルベーンで酒でも……」
サクヤにも迫られる始末。こいつのハーレム属性は最早、呪いの領域に達しているのでは?畏怖すら覚えるぞ
「ダメです!キリトくんは私の!私の…………えっと私の……」
『この男、中々の器だな』
翁まで⁈ おいおい、どうなってやがる?俺も同じくらいの活躍してよね?まぁ、狂気じみた感はあったけどさ。なんかあってもいいだろ?言い寄られても靡くことは絶対にないんだけど。俺の沽券に関わってくる
「お言葉はありがたいんですが、すいません。俺は彼女に世界樹まで連れていってもらう約束をしてるんです」
「ほう?それは残念。アルンに行くのか、リーファ。物見遊山か?それとも………」
「領地を出る……つもりだったけどね。でも、いつになる分からないけど、きっとスイルベーンに帰るわ」
「そうか、ホッとしたよ。必ず戻って来てくれよ。彼も一緒にね」
「途中で内にも寄ってね!大歓迎するよ!」
「金欠の俺は何かないの?」
「そう……君だよ、君。あの戦い方、あの刀、あの弓。あれほどの強さを持つシルフなんで、領主の私でも聞いたことがないぞ?」
「このキリトくんの傭兵さんも世界樹に行くの?」
「ああ。行くぜ?この翁も一緒にな」
『我らは表裏一体。光と影。我が光たる主が黒き妖精とともに行くというのならば、我はそれに従うのみ』
警戒されてるな。当然か。あれほど暴れた奴を警戒しない方がおかしいわな。なんとかせねば………
ーーー
「今日は本当にありがとう、リーファ、キリトくん、ルーキス、翁。私たちが討たれていたらサラマンダーとの格差は決定的なものになっていたと思う。何か礼をしたいのだが……?」
「いや〜」
「そちらの都合もあるだろう。今すぐじゃなくてもいいだろうに」
「ねぇ、サクヤ、アリシャさん。今度の同盟って世界樹攻略の為なんでしょ」
「ああ。まぁ、究極的にはな」
「その攻略に私たちも同行させて欲しいの。それも、出来るだけ早く。」
顔を見合わせるサクヤとアリシャ
「同行は構わない。むしろこちらから頼みたいほどだよ。しかし、なぜそんなに急いでいる?」
「………」
チラッ
キリトを見るリーファ。ま、俺も同じなんだけどさ。『愛する人を救うため』。口にするには俺たちじゃ、まだまだ足りない
「俺がこの世界に来たのも世界樹の上に行きたいからなんだ。そこにいるかもしれない『ある人』に会うために……」
「俺はそんなこいつの心意気に賛同したからだ。…………ってのは建前で、俺は『ある馬鹿野郎』をブッ飛ばすために来たんだが」
「キリトくんが言っているのは『妖精王 オベイロン』のことか?」
「いや、違う。兎に角、リアルで連絡が取れないんだけど……どうしても合わなきゃいけないんだ。」
その意思。その決意。俺は高く評価するよ、キリト。それでこそ俺の惚れ込んだ男だよ
「でも、全員の攻略装備を揃えるのにしばらく時間がかかると思うんだよ?とても1日や2日じゃあ………」
「そっか………。そうだよな……。俺もとりあえず樹の根元まで行くのが目的だから、後はなんとかするよ。ーーーあ、そうだ。よかったら、コレ資金の足しにしてくれ」
キリトはウィンドから大きな袋を取り出した。中にはこの世界の貨幣が詰まっているように見えるが………欲しいと思ってしまった自分が恥ずかしい
「うわぁ!サ、サクヤちゃん、見て!」
「ん?」
袋を落としそうになるアリシャ。サクヤもそれを見て訝しんだ。そんなにあげたのか⁉︎ いいなぁぁぁぁ
「10万ユルドミスリル貨がこんなに!」
10万⁈ あれ全部が⁉︎ こ、こいつめ。どれだけ貯めてきたんだ?道中にそんなに敵倒してたのか?
「いいのか?一等地にちょっとした城が建つぞ?」
「構わない。俺にはもう必要ない」
「これだけあればかなり目標金額に近づけると思うよ!」
「大至急装備を揃えて、準備ができたら連絡させてもらう」
「よろしく頼む」
「あ。俺からも一つ……」
「なんだ?」
「人探しをやってほしいんだ。『ある奴ら』をね。ケットシーかシルフか、それとも他の種族か……そちらの2種族の中だけでいい。『あいつら』ならこの世界に来てるはずだからな」
「して、それは?」
「それはな……ゴニョゴニョゴニョ……」
ーーー
辺りはすっかり黄昏時になった。夕日が空を赤く染めている
「ありがとう!また会おうねー」
シルフとケットシーたちはそれぞれの領地へと帰っていった。
「なんだかさっきまでの出来事が嘘みたい」
「まったくもう!浮気はダメって言ったです、パパ!」
「うわ!」
ユイちゃんがキリトと胸ポケットから顔を出す。なんだか久しぶりの感じがしなくもない
「なんだよいきなり」
「領主さんたちにくっつかれた時、ドキドキしてました」
キリトの肩に乗って説教を始めるユイちゃん。フフ、親子ってのはままならないものだな。………子供かぁ。
「ね、ねぇ、ユイちゃん。私はいいの?」
え。それ聞いちゃう?危なくない?
「リーファさんは大丈夫みたいです。」
「な、なんで⁈」
「う〜〜ん……。リーファはあんまり女の子って感じしないんだよな」
「ちょ、それってどういう意味!」
チャキ。刀に手をかけるリーファ。ほら。な?こうなるだろ?
「し、親しみやすいっていうか……いい意味でだよ」
『キリトよ。それは些かに女子へかける言葉とは思えぬぞ』
「翁に言われるほどだぜ?ハハw」
「そ、そんなことよりアルンまで早く飛ぼうぜ?日が暮れちゃうよ!」
「誤魔化したな!飛ぶんじゃねえ!」
「あ!こら待ちなさい!」
いい仲間って感じがしてきたんじゃねぇか?うん、いいね!これこれ!
首を洗って待っておけよ、伸之。いや、オベイロン!その椅子から引きずり下ろしてやるぁ!
疲れた……
ナポレオン欲すぃ……
宝具5にしたい
あと4枚