問 以下の文章の()に正しい言葉を入れなさい。
「円周率をギリシア文字で表すと、( )である」
島田美波の答え
「π」
教師のコメント
正解です。島田さんも大分日本語に慣れてきたんでしょうか? 数式だけでなくこう言った問題も解けるようになってもらえて先生は嬉しく思います。
土屋康太の答え
「元」
教師のコメント
ギリシア文字以前にそれが漢字であることを思い出してほしかったです。
川上宗一の答え
「PAI」
教師のコメント
それはローマ字です。君が言うとどうしてか下ネタのように感じてしまいます。
吉井明久の答え
「Enshuritu」
教師のコメント
エンシュゥリトゥ。
Side 川上宗一
放課後。
いろいろあってなんとか船越先生との話をつけることができた(そのことについては後日話そうと思う)後、僕はFクラスの教室にやってきた。
そこには卓袱台に行儀よく正座をして座る姫路がいた。他のクラスの面子は皆帰ったらしい。ボロボロの教室はとても静かで、夕焼けの光に包まれた教室内に座る姫路はどこか幻想的な美しさを持っていた。
「川上君」
「ごめん姫路、お待たせ」
時刻はもう十六時頃。
新学期初日だから、学校にはもうほとんど生徒はいない。ほとんどの部活も休みなのだろう、校舎もグラウンドも人の声はしなかった。
「それで、僕に何か用? 放課後に僕をわざわざ呼び出すって、まさか告白するって訳じゃないでしょうに」
「え、えぇ!? ち、違います、私は別に川上君のことは……」
「デスヨネー。分かってはいたけど面と向かって言われるとくるものがアルネー……」
「あ、あの……そんなに落ち込まれると、こっちも困っちゃうんですけど……」
なんとなく予想していたけど、こうもはっきりと振られると心に来るものがあるね。いやだな、泣いてないよ?
「聞きたいのは明久のことでしょ?」
「ふぇっ!?」
僕がそう訊くと、姫路は突如狼狽えた。
「ど、どうして……」
「だって姫路、明久のことが好きなんでしょ。丸分かりだよ、そんなの」
去年からちょくちょく僕の描いた明久のイラストを買っていたし(最初は腐女子かと思っていたけど)、今日の明久への態度を見れば丸分かりだ。時々熱っぽい視線で明久を見ていたしね。
「そ、そんなに分かりやすかったですか……?」
「明久以外皆分かってたと思うよ? バレバレ過ぎてびっくりするレベル」
「はうぅ!?」
顔を真っ赤にする姫路。白い肌が熱湯で沸かされたかのように赤く染まる。
「は、恥ずかしいです……!川上君なら私の気持ちは分かってると思ったからこうして呼び出したのに、これじゃあ意味ないじゃないですか……!」
「まあまあ姫路。件の明久本人はまったくと言っていいほど全然ちっとも気づいてないから気にすることはないよ」
「それはそれでショックです……」
時々明久はわざとやってんのかと思えるような天然や鈍感を発揮する。あれがなければ今頃島田とどうにかなったと思うけど。
「それで、僕を呼び出したのは……」
「はい……最初は坂本君に聞こうと思ってたんですが、恥ずかしくて……」
「なるほど、ある程度事情を察している僕のところに来たわけか」
ぶっちゃけ明久以外全員姫路の恋心を知ってるから意味はなかったのだが。
「今回の試験召喚戦争が始まったのって……」
「……僕が言っていいかは分からないけど、明久がきっかけだよ」
当人同士の問題だろうから、僕がどこまで言っていいかどうかは分からない。でも、姫路に今回の戦争の発端については知ってもいい権利があると僕は思う。
「雄二は最初から試験召喚戦争には興味があったみたいだけどね。多分、自分から戦争を仕掛けようとはしていたんだと思う。遅かれ早かれ、いつかは起こったこと。でも新学期初日からやることになったきっかけは明久だよ。Aクラスに戦争をしようと一番最初に言い出したのは明久なんだ」
「あの、吉井君がそんなことを言い出した理由って……」
「振り分け試験が理由だね。誰のためにやろうと言い出したのかは……さすがに明久の面子にも関わるから言えないけど」
「…………」
「でも姫路。自惚れてもいいと思うよ。きっと姫路が想像したことは、間違いじゃない。明久は、自分より他人を優先できる、下心なしで誰かのために体を張れるバカなんだから」
姫路の顔が真っ赤に染まる。今にも泣き出しそうに目元は濡れており、頬はにやけていた。
自分が好きな人が、自分のために戦おうとしてくれている。Fクラスに落ちたのは姫路が体調管理出来なかったから。悪い言い方をすれば自業自得でもある。けれど明久はそんな姫路の為に今回の戦争を起こした。
たった一人の女の子の為に、「学力至上主義」というこの学園の絶対不変のルールを覆そうと。
その事実に嬉しさを隠しきれないようだ。
「私……手紙書きます」
「手紙って……もしかしてラブレター?」
僕がそう言うと、こくりと姫路は頷いた。
「この気持ちを……今すぐ何か、形にしないと……私、どうにかなっちゃいそうで……」
姫路は自分の顔の熱を押さえるように、顔を両手で隠した。その仕草だけで、姫路が明久をどれだけ想っているのかが伝わってくる。自分の中に湧き上がる明久への想い、愛しさに戸惑う姫路。扱い切れない想い人への恋心は、姫路の純粋さを現すようだった。
「…………」
羨ましい!!妬ましい!!なぜこんないい子が明久をぉ……!
確かに明久は友達だ。いい奴だとは思う。でもそれはそれ。妬ましいし単純にムカつく。
「川上君?どうして笑いながら血の涙を流して……?」
「ううん、気にしないで」
ちょっと憎しみでどうにかなっちゃいそうだったから。
「じゃあ、手紙を書いてみようか。せっかくだから僕がちょっとだけアドバイスしてあげるよ。これでも、文書を書くことに関しては学校一だと勝手に思ってるからね」
「本当ですか!?ありがとうございます!! 」
とは言っても、姫路にアドバイスできることはそれほど多くはない。
「明久は超鈍感だから一行目に『あなたが好きです』ってストレートに書くといいよ。その後にどれだけ自分が好きか、理由を丁寧に書いていけばいい。変にこだわった言い回しより、真っ直ぐに言った方が相手からすれば嬉しいし、明久にも伝わると思うから」
「それでいいんですか……?」
「いいんだよ。大体明久はバカなんだから、変な言い回しより直球にものを言った方が伝わるさ」
姫路は僕よりずっと勉強はできるし、変にアドバイスをするよりは姫路の言葉で書いてもらったほうがずっといいと思った僕は、姫路に男の目線から「どんな文章なら嬉しいか」を教えることにした。
言葉というのは不思議なもので、書き手の気持ちがそのまま刻まれると僕は思っている。
僕が『バカにも分かるラブレター』と言って姫路のラブレターの文章を一言一句考えるのは簡単だ。きっと読んだ奴を惚れ惚れさせるラブレターが出来上がるだろう。
けれどそれは姫路のラブレターではない。
姫路の想いや気持ちは姫路だけの物。
変にアドバイスをするよりは姫路の言葉をそのまま書いてもらったほうがいい手紙になると思ったのだ。
なのでアドバイスはそれだけにし、書き終わったら僕が見直しをして校正する、ということになった。
Fクラスのボロ教室に、僕と姫路の話し声と、便箋に文字が刻まれる音と、僕がスケッチブックにえんぴつを走らせる音が響く。せっかくだから姫路の横顔をスケッチさせてもらってる。本人は恥ずかしそうで嫌がったけどなんとか説得した。
「へぇー……姫路は明久と小学生の時からの友達だったんだね」
「はい……吉井君は覚えているか分かりませんけど……」
「ううん、明久は姫路のことを覚えてたよ」
「ほ、本当ですか?」
「うん。今思い出したけど、去年の合同の試験召喚実習の時、明久が姫路のことを話してたよ。「小学生の頃にクラスメイトだったんだけど」なんて言ってた。本人は「姫路は多分自分のことを忘れてる」って切なそうにしてたのが印象的だったなぁ」
姫路は手紙を書きながら、僕はスケッチ(姫路の横顔。本人は照れながら許可をしてくれた)をしながら、姫路と明久の馴れ初めを聞いていた。
「吉井君……覚えていてくれたんですね」
「多分、姫路が可愛くなったからどう接すれば分からなくなったんじゃないかな。学年トップの才女に、学年最低の明久じゃ、つり合わないとかなんかそんな理由で。話しかけ難かったんだと思う」
「そうだったんですね……」
「これからは同じクラスだし、たくさん思い出を作れるといいね」
「……吉井君と思い出……楽しみです」
姫路は心底うっとりした表情で言う。ううん、恋する女の子は綺麗になると聞くけど、その言葉は本当だと思う。明久を想う姫路の姿はいつもより綺麗で可愛かった。
そして話をしながらも、姫路は手を動かしている。こういうところも頭の回転が早い姫路のスペックの高さが伺える。
「じゃあ姫路は小学生の頃からずっと片想いだったんだ」
「はい……」
「ロマンチックだね。でも姫路と明久かぁ……うん、お似合いだと思うよ」
「ほ、ほんとですか?」
「うん」
想像したら吐き気がするほどムカつくが。
「例えばだけど、想像してみなよ姫路。吉井明久と結ばれて――恋人同士の学園生活。体育祭や清涼祭、クリスマスや正月と言ったイベントを二人で過ごしていく……悦びと悲しみ、時に意見の食い違いで喧嘩をすることもあるかもしれない。でも、それらを乗り越えて二人は……」
「はわわ……」
「姫路は卒業、明久は留年」
「そこは二人揃って卒業させてください!?」
「冗談だよ」
半分だけど。
「でも、明久と姫路が同じ大学というのは厳しいかも。これからの明久の成績に期待だね」
「わ、私が勉強を教えますっ! そうすれば、もっと二人きりになれますし……」
「自分の欲が滲んでるよ姫路」
まぁ、恋人と勉強会だなんて、定番中の定番のイベントだしね。まだ二人が付き合うと決まった訳じゃないけども。
「まあ仮に明久が大学にいけなくても、遠距離恋愛、最近だと同棲っていう手段もあるし、あんまり悲観することはないと思うよ?」
「ど、同棲……(ふるふる)」
想像しているのか、筆を止めて悶えている姫路。耳まで真っ赤だ。
「姫路は知らないかな? ああ見えて明久は料理や家事は得意だよ。僕も何回か雄二達と一緒に明久の家に行ってごちそうになったけど、明久のパエリアは絶品だったなぁ」
「そ、そうなんですか? 意外です……」
「まああんな食生活を見るとね……ほらこれ」
「うわぁ……すごく美味しそうです」
明久作パエリアの写真をスマホで見せると、姫路は感嘆の声が漏れる。
「こ、これは……私も負けていられません。明日は頑張ってすごいお弁当を作らないと……!」
僕の一言がきっかけで翌日に大惨事が起こるのだが、この時の僕はまだ何も知らない。
「大学を卒業したら、二人の同棲生活が本格的にスタート。僕の想像だと、明久は主夫かな。体力あるから明久も働けると思うけど、僕としては家でエプロンを着けて、働いている姫路を家で待ってる明久のほうが想像しやすい。例えば……ゴホン、ンッ、ンンッ。……『姫路さん。ううん、もう瑞希だったね。お帰りなさい』」
「は、はわわ……! それはダメです……! 反則すぎます、吉井君!」
どうやら性癖に突き刺さった模様。好きな人と同棲生活。誰でも一度は想像するシチュエーションだよね。
「『吉井君……じゃなくてさ、瑞希には……明久って、呼んで欲しいな』」
「はうぅ! ……あ、明久君……!」
身悶えしながら嫌々と顔を振る姫路。全然嫌そうに見えない。
「な、なんでそんなシチュエーションを具体的に思いつけるんですか……! しかも声マネがとても上手ですし……!」
作家は妄想するのが仕事なんだよ姫路。雄二×明久の新婚生活なんていくつ書いたか。あと声マネはカラオケでモノマネの練習とかしてたらできるようになった。さすがに秀吉には負けるけど。
「『今日は瑞希の好物を作って待ってたよ。ほら、今日は……僕と瑞希が、結ばれた日だから』」
「~~~~~~~っ!!」
声にならない悲鳴をあげて悶絶する姫路。
「『ほら、こう、さ。恥ずかしくて上手く言えないけど……僕は君のことが大好き……ううん、愛してるよ、瑞希』」
「わ、私もです! ―――ハッ」
「……(ニヤニヤ)」
「も、もぉー!! 川上君は――!」
姫路はぽかぽかと僕を叩いてくる。散々惚気られたんだ。幸せ税ということで勘弁してほしい。
それにしても、大分打ち解けたな。明久という共通の話題で姫路の警戒心を解けれたのかもしれない。
そして、あまりにも姫路をからかうのに夢中で気づかなかった。
この教室はFクラス。設備としては最低で、廊下側の窓はすかすか。防音対策なんてほとんどしていないということ。
そして廊下である人物が僕達の会話を盗み聞きしていたということに……。
「ん? それは?」
「あ、これは――私が今日作ってきたケーキです」
「ケーキ?」
「はい。新しいクラスになりますから、お近づきの印に手料理を食べてもらおうと……ちょっと失敗しちゃって、1個しかできませんでしたか」
「へぇ、ちょっと食べてみてもいい?」
「はい! 勿論ですっ。川上君には今日のお礼です!」
「やった。明久の奴羨ましがるだろうな。……お、美味しそう。綺麗なカップケーキだ。それじゃあ遠慮なく―――(ぱくっ)」
ここから僕の記憶が途絶える。
Side 吉井明久
「ま、まるでできたてのカップルのような雰囲気だな……」
雄二と帰っている最中、教科書を忘れていることに気付いた僕は大急ぎでFクラスの教室に帰って来た。
そこにいたのは……談笑を楽しんでいる宗一と姫路さんの姿だった。
何をしているんだろう。まるで恋人に向けるような目で宗一を見つめていて、どこかうっとりしている。宗一はそれを見て楽しそうに笑っている。
『現実を見ろ。明らかにカップルじゃないか』
黙れ僕の中の悪魔! 僕はそんな虚言に騙されはしない――!
「ほら、こう、さ。恥ずかしくて上手く言えないけど……僕は君のことが大好き……ううん、愛してるよ、瑞希」
「わ、私もです! ―――ハッ」
「……(ニヤニヤ)」
「も、もぉー!! 川上君は――!」
「…………」
『これ以上ない証拠だと思うが』
……下の名前で呼ぶなんて、宗一はフレンドリーなんだね!
『こいつ認めない気か!』
何を言うんだこの悪魔め! 二人は仲よく雑談しているだけじゃないか! 僕は騙されないぞ!
「たっだいまー!」
僕は実家に帰って来たように明るく挨拶する。決して二人を邪魔しようと思っているわけではない。
「か、川上君!? なんで倒れちゃったんですか!? って吉井君!?」
「やあ姫路さん、宗一。ちょっと教室に忘れ物しちゃって……宗一どうしたの?」
教室に入ると、宗一が眠っていた。畳の上に横になっている宗一は、まるで死んでいるかのような安らかな眠りだった。
「えっと、あの、急に倒れて眠っちゃって……どうしたんでしょう?」
「眠かったのかな? 宗一は普段からあまり寝ないで絵とか小説を書いているから、きっとそのせいだよ」
そのせいに違いない。そしてあわよくば永遠に眠れ。
「そそそそそ、そうだったんですか?」
さっきから何やら慌てている姫路さん。どうしたんだろう?
姫路さんが座っている席(卓袱台)を見る。その卓袱台の上には可愛らしい便箋と封筒が置いてあった。あとお菓子が入っていたカゴかな? 宗一が食べたのだろうか。
それにしても、ま、まるで宗一へのラブレターに使うような便箋と宗一へのラブレターに使うような封筒を用意しているみたいだけど。
『だから現実を見ろって明久。それはどう見たってラブレターだ』
だから黙れ僕の中の悪魔め! 認めない、僕は絶対にこれがラブレターだなんて……!
「これはですね、その、えっと――ふあっ」
コテンと卓袱台に躓いて転ける姫路さん。
その拍子に隠そうとしていた手紙が僕の前に飛んできて、その一文が目に入る。
《あなたのことが好きです》
「…………」
『認めろ明久。証拠はもう上がっているんだ。さ、諦めて認めて楽になっちまえよ?』
「ち、違うんですこれは、違わないけど、ちち、違うんですっ」
飛んできた手紙を綺麗にたたみ、姫路さんに返してあげる。
そして気遣うように一言。
「変わった不幸の手紙だね?」
『どこまで認めたくないんだ!?』
黙れ悪魔め! お前の言葉はいつも僕を不幸にする! もう騙されないぞ!
「あの、それはそれで凄く困る勘違いなんですけど……」
「そんなことしないでも、言ってくれれば僕が直接手を下してあげるのに。ああ、大丈夫、スタンガンなら隣のクラスの山下君に借りてくるから」
「吉井君、これは不幸の手紙じゃないですから」
「嘘だ! それは不幸の手紙だ! 実際に僕はこんなにも不幸な気分になっているじゃないかぁ……!」
どうして馬鹿でド変態の宗一なんだ! まだ雄二とかだったら分かるけど、よりにもよって宗一だなんて納得できない!
そんなところで白目を剥いて気絶するように眠っている宗一のどこがいいっていうんだ!
「その手紙、相手はうちのクラスの―――」
「……はい。クラスメイトです」
顔を真っ赤にしながら迷いなく答える姫路さん。……これはもう、確定的か。さすがに姫路さんとその本人(眠)がいるので名指しはしないけど。
「……そっか。でも、そいつのどこがいいの? そりゃ確かに、外見はそれなりだと思うけど」
「あ、いえ、外見じゃなくて、あっ、もちろん(吉井君の)外見も好きですけど!」
「憎い! そいつ(宗一)が心底憎い!」
「そう、ですか?」
「うん、外見に自信のない僕には羨ましくて」
「え? どうしてですか!? とっても格好いいですよ! 私の友達も結構騒いでましたし!」
「本当?」
「はい、よくわからないですけど、坂本君と二人でいる姿を見ては『たくましい雄二と美少年の明久が歩いているのって絵になる』って」
「いい友達だね。仲良くしてあげてね」
「『やっぱり明久が受けだな』って」
「すぐに縁を切りなさい」
「そう言ってました。川上君が」
「貴様か宗一ぃ!」
時々僕や雄二をモデルにした怪しげな絵をムッツリ商会で売ってるとは聞いたけど、こいつはここでとどめを刺しておくべきなんじゃないか?
「それにしても、外見がいいってことは中身も?」
「あ、えーっと、はい」
「そうだね。肝臓とか丈夫……かなぁ?」
宗一はお世辞にもいい体をしてるとは言えない。
「それは体の中身です」
「じゃ、まさかありえないとは思うけどそいつの中身が?」
「ありえなくありませんっ」
姫路さんにしては珍しく大きな声。ちょっとびっくり。そこまで想いを寄せていただなんて。
「……そいつのどこがいいの?」
「や、優しい所とか……」
優しい?
雄二と一緒に僕をだましてDクラスにぼこらせて、ムッツリ商会で人を勝手にモデルにした怪しげな絵を売って、人のお尻に○イブを突っ込もうとするあのド変態が優しいと?
「今から僕が番号を教えるから、メモの準備はいい? 大丈夫、とっても腕のいい脳外科医だから」
「別に気が変になったわけじゃありません!」
そんな馬鹿な!? あんな性格を優しいと評するなんて、姫路さんはどんな洗脳を受けたんだ!? いや、洗脳じゃなくて催眠術? だって宗一が持っていたエロ漫画にそういうシーンあったし。
「優しくて、明るくて、いつも楽しそうで……私の憧れなんです」
でもそんな真剣な口調から、茶化すなんてできそうにもない程の強い想いが感じられる。
「その手紙――」
「は、はい」
「幸せになれるといいね」
これじゃあとても邪魔なんてできるわけがない。そこまで好きになった相手なら、応援してあげよう。友人と、自分の初恋の女の子との。
「はいっ!」
嬉しそうに笑う姫路さんは本当に魅力的で、僕は宗一を心の底から羨ましいと思った。
姫路さんが帰ったあと、まだ居眠りしている宗一がいる教室の扉をぱたんと閉める。
やるせなさ、切なさ、悔しさ――様々な感情が僕の心の中で渦巻いている。
「おお、吉井。何をしているんだこんなところで。もう完全下校時間だぞ」
校舎を見回りしていた鉄人が、僕に呆れながら声をかける。
「…………」
「遅くなる前に早く帰るんだ吉井。――吉井、どうした? 何があった?」
「鉄人先生……」
「西村先生だ」
「僕は、僕は―――」
「受けなんかじゃなぁ―――――い!!」
「……は?」
僕は悔しさに涙を流しながら全速力で家に帰った。
「なんだというんだ一体……(ガララ) ん? 川上、まだ居残りしていたのか? もう下校時刻だ、居眠りしていないで早く―――ん? …………!? ……救急車ぁ―――!!!」
書いていて楽しかったです。
評価や感想、お待ちしています!
追記
ついに評価バーが真っ赤っかに!すごい!さすがバカテスだ!みんな大好きなんやなって!
これからも応援よろしくお願いします!