バカとテストと変態紳士っ!   作:ガオーさん

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第十二問 何気ない雄二の一言が明久の心を傷つけた。

Side 川上宗一

 

 混沌とも呼べる昼食タイムが終了し、皆でのんびりとお茶をすする。

 文字通り死にかけて前世の罪を懺悔し始めた明久だが、雄二による懸命な救命措置でなんとか復活した。そのあと「さっきは無理やり食べさせてゴメン」と心底申し訳なさそうな顔をして謝ってきたのが印象的だった。

 ちなみに食べれなかった姫路と島田には僕が学食でおにぎりを奢ったことで事なきを得た。

 

「次は、Bクラスを落とす」

 

 一息ついた僕達に、雄二はそう宣言した。

 

「Bクラス? 目標はAクラスじゃないの?」

「正直に言おう。どんな作戦でもうちの戦力じゃAクラスには勝てやしない」

 

 神妙な面持ちでそう告白する雄二。その意見は最もだ。

 まだ新学期初日。いくら最終兵器姫路がいるとは言ってもFクラスとAクラスの戦力の差は歴然だ。

 Aクラスに勝つと言うことは、並大抵のことじゃない。よくAクラスは天才、頭がいい奴が揃っていると皆は言うけど実際は違う。

 彼らがAクラスにいるのは『勉強』という地味で面倒で時間と苦労がかかる『努力』を重ね、努力し努力を重ねたからだ。だからこそ、今の豪華設備と立場を与えられている。もちろん、才能が物を言う場面はあるだろうが、基本的に努力をして彼らはあのクラスにいるのだ。

 FクラスがAクラスに挑むと言うのは、彼らがかけた『努力』という並外れた差そのものに挑むということに他ならない。

 その差を埋めるのは生半可な覚悟では足りない。Fクラスは基本的にテスト前に一夜漬けでしか勉強しない連中の集まりだ。

 そんな僕達Fクラスが彼らとの差を詰めるには、通常の手段では無理だ。半年ぐらい勉強漬けにすれば彼らの足元に及ぶぐらいのことはあるかもしれないが、そういうこと(努力)ができないからFクラスなのだ。

 だから、試験召喚戦争で彼らに勝つには、ただ真正面から挑んで戦うだけでは駄目だ。どうやったって絡め手(・・・)が必要になる。

 

「Dクラスに挑んだのはBクラスを落とすため。Bクラスを落とすのは、Aクラスを落とすため……そういうことでしょ、雄二」

「そうだ。クラス単位で戦っても負けるのは目に見えている。だから俺は、一騎討ちでAクラスに戦いを挑む。その為にはBクラスを落とす必要があるんだ」

「一騎討ちに持ち込むってこと? でも、Bクラスと何の関係があるのさ」

 

 明久が首を傾げる。

 

「試召戦争で下位クラスが負けた場合の設備はどうなるか、知っているな明久?」

「え、も、もちろん!」

「嘘つくなバカ」

 

 顔を見れば「知りませんでした」と言わんばかりの焦りが見て取れる。

 すると、姫路が小声で明久に何かを言った。手助けしてくれているのだろう。

 

「設備のランクを落とされるんだよ」

「そういうことだね。BクラスがAクラスに挑んで負けた場合、Bクラスの設備はCクラスに落とされる。なら明久、上位クラスが負けた場合は?」

「悔しい」

「ムッツリーニ、ペンチ」

 

 雄二が康太にペンチを要求。

 

「ややっ、僕を爪切り要らずの身体にする動きがっ」

「違うよ明久」

「え?」

「爪じゃなくて歯だ」

「なんて物騒なことを言うんだ宗一!? 僕を刺し歯だらけにするつもり!?」

「吉井君。もし上位クラスが負けると相手クラスと設備が入れ替えられちゃうんですよ」

 

 またもや姫路の助け舟。ようやく分かって来たけど、姫路は明久に基本的には甘いな……。さすが恋する乙女。明久に対するそれは恋人ではなく勉強ができない子に答えをこっそり教えるお母さんだが。

 

「つまり、俺達に負けたクラスは最低の設備と入れ替えられる。そのシステムを利用して交渉をする。Bクラスをやったら、設備を入れ替えずにAクラスへと攻め込むよう交渉するんだ。設備を入れ替えたらFクラスだが、Aクラスに負けるだけならCクラス設備に落とされるだけで済むからな。まずうまく行くだろう」

 

 まあ、大前提としてBクラスにFクラスが勝つという条件が必要だが。

 

「ふんふん、それで?」

「それをネタにAクラスと交渉する。『Bクラスとの勝負直後に攻め込むぞ』といった具合にな」

「なるほどね! そうすればAクラスは一騎討ちの勝負に合意せざるを得ないんだ!」

 

 ……やっぱり雄二、スゴイな。僕がもしAクラスだったらこの条件は嫌でも頷かざるを得ない。

 一騎討ちをしなければBクラスが、そしてその後にFクラスが攻め込んでくる。授業の時間を潰されたうえに最低設備に落とされるなんて正直たまったもんじゃないだろう。勝っても何も得られない。なのに負ければ最高の設備を畳と卓袱台に替えられるなんて嫌がらせ以外の何物でもない。

 

「でも雄二、一騎打ちに持ち込むのはいいけど勝算はあるの? 最終兵器姫路がいるのはいいけど、それだけであの霧島に勝てるとは思えない」

「儂も同感じゃな。こちらに姫路がいるということは既に知れ渡っていることじゃろう?」

「その辺りも考えてある。心配するな、宗一、秀吉」

 

 自信満々に言うけど、その台詞はフラグにしか聞こえないよ雄二。

 

「とにかく、Bクラス戦か」

「ああ、で、明久」

「ん?」

「今日のテストが終わったら、Bクラスに行って戦線布告を」

「断る。宗一に行ってもらえばいいじゃないか」

 

 学習したのか宣戦布告を嫌がる明久。いや、僕を巻き込むな。

 

「やれやれ。それならジャンケンで決めないか」

「ジャンケンか……OK、乗った!」

「よし、負けた方が行く、でいいな?」

 

 それを聞いて頷く明久に、雄二は心理戦ありにしよう、と言い出した。

 

「いいよ。僕はグーを出す!」

「なら、俺は――お前がグーを出さなかったら、ブチ殺す

 

 それはただの脅迫だ。

 

「行くぞ。ジャンケン」

「わぁぁっ!」

 

 パー(雄二) グー(明久)

 

「決まりだ、行って来い!」

「絶対に嫌だ!」

「やれやれ、明久。もしかしてDクラスの時みたいにぼこられると思ってるの?」

 

 僕がそう訊くと、明久は頷いた。

 

「なら大丈夫だよ、明久。実はBクラスの人達は美少年が好きで、明久のイラストをよく買ってくれる人が多いんだ。つまり明久は人気だということ。そんな人気の明久をボコるわけないでしょ?」

「そっか。それなら確かに安心だね!」

 

 チョロすぎて時々明久が心配になる。

 

「だが明久はブサイクだろ?」

 

 何気ない雄二のツッコミは明久の心を傷つけた。 

 

「失礼な! 365度どこからどう見ても美少年じゃないか!」

「5度多いぞ」

「実質5度じゃな」

「馬鹿」

「3人なんて嫌いだ!」

 

 こうして明久がBクラスに宣戦布告をすることになり、昼休みの作戦会議はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――放課後。

 

「…………言い訳を聞こうか」

「お前が人気な訳ないだろ馬鹿」

 

 テストは終了、Bクラスに宣戦布告をし暴行を受けて帰ってきた明久が雄二にとびかかった。もちろん、あっという間に返り討ちに遭い、雄二はさっさと教室を出て行ってしまった。

 

「お、ナイスパンチ。相変わらず雄二は強いなぁ……(カキカキ)」

「…………予想通り(パシャパシャ)」

「ねえ、二人とも。ボロボロになった友達が悶絶しているのを見てスケッチしたり写真を撮るのは楽しい?」

「「これはこれで」」

「二人なんて嫌いだっ……」

 

 明久の涙は畳を濡らした。あとでおにぎり奢ってあげるから、許してよ明久。

 

「ん? 姫路、まだ帰らないの?」

「え? あ、ちょっと探し物を……」

「……? まあ、何かあったら言ってよ、姫路」

「は、はい……ありがとうございます、川上君」

 

 教室できょろきょろと何かを探していた姫路が気にかかったが、それ以上追及せず、僕は明久をおんぶし康太と一緒に下校した。




今度こそ……次回こそBクラス戦っ……!

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