問 以下の文章の()に正しい言葉を入れなさい。
「精子が卵の中に入り、精子の核と卵の核が合体することを( )と言う」
坂本雄二の答え
「受精」
教師のコメント
正解です。
土屋康太・川上宗一の答え
「受精」
教師のコメント
君達は何故かこういう問題だけはきっちりと答えれますね。
その努力をもう少し別の科目へと向けて欲しいです。
吉井明久の答え
「受精」
教師のコメント
吉井君が問題に正解してくれたのはとても嬉しいですが、彼らの影響ではないということを切に願います。
Side 川上宗一
「……ここはどこ?」
「あ、気付きましたか?」
「教室だよ。大丈夫? 明久」
「姫路さん……宗一……」
「心配しましたよ? 吉井君ってばまるで誰かに散々殴られた後に頭から廊下に叩きつけられたような怪我をして倒れているんですから」
「どうせまた明久がバカやって島田を怒らせたんでしょ」
「二人とも、実は実際に見てたんじゃないの?」
補給テストを僕が終えた後、閻魔様もビビるような憤怒の表情の島田が戻ってきた。そしてそのあとすぐにぼろ雑巾のようになった明久が教室に担ぎ込まれた。
それを見れば何が起こったか大体分かる。
「僕が寝てる間、試召戦争はどうなったの?」
畳から体を起こしながら明久が言う。
「今は協定通り休戦中じゃ。続きは明日になる」
「戦況は?」
「計画通り、教室前に攻め込んだ。もっとも、こちらの被害も少なくないが」
雄二がこちらの被害を書いたメモを読み上げる。40人近い戦力を注ぎ込んで一見圧勝に見えるが、全体的にみると決して安くない出費だ。
すると、教室に戻ってきた康太が雄二の肩を叩いた。
「…………(トントン)」
「お、ムッツリーニか。何か変わったことはあったか?」
「…………Cクラスに動きがある」
「何? Cクラスだと?」
康太は静かに頷いた。康太の本来の役目は戦闘ではなく情報収集と伝令だ。Bクラスの戦況を見張りながら、他のクラスの動きを警戒していた。
「…………Cクラスに戦争の準備をしているような動きがある」
「漁夫の利を狙うつもりか? いやらしい連中だな」
「…………連戦すればCクラスと戦う余力がない」
「雄二、どうするの?」
ちらりと時計を見ると、まだ四時半。まだ生徒が全員帰るには早い時間だ。
「ふむ、Cクラスと協定でも結ぶか。Dクラス使って攻め込ませるぞ、とか言って脅せば攻め込む気もなくなるだろ」
「それに僕らが勝つなんて思ってもいないだろうしね」
「康太、Cクラス代表って誰?」
僕が何気なく気になってぽつりと訊くと、予想外の名前が返ってきた。
「…………Cクラス代表は、小山友香」
「……うぇ、小山か」
僕はげぇ、と顔を歪めると、僕の反応が気になったのか、明久が訊いてくる。
「Cクラスの代表のこと、知ってるの? 宗一」
「ん? ああ、一応ね。仲がいいってわけじゃないけど」
「へぇ、宗一にも女の子の知り合いがいたんだ。意外だね」
「だって去年僕に告白してきた――」
女の子だから、と答えようとした瞬間。
「総員、狙え」
「「「「サー・イエッサー」」」」
「ファッ!? なんで明久の号令でカッターとボールペンを構えるんだ!?」
一瞬で僕はFクラスの男共に取り囲まれる。くそっ、なんて素早いんだ!?
「どういうつもりだよ明久!?」
「黙れ男の敵! モテない男の苦しみを味あわせてやる! 血の盟約に背いた裏切者に罰を――それが」
『『『『『 我ら異端審問会 』』』』』
「ちょっ、うそ、いつの間に!?」
逃げる暇もなく僕は黒装束に身を包んだFクラスの連中に縄で足を縛られ、いつの間にか用意された十字架に磔にされる。今までどこにこんな物が!?
ダァン!
おそらくこの連中のトップと思われる―――多分あれ須川だ。須川が小槌を―――なんて名前だっけアレ。逆転裁判で裁判長が叩くアレ。
「これより、異端審問会を始める」
「なんだコレ。マジなにコレ」
「意外じゃの。よもやあの宗一が女子に告白されておったとは」
「一時期『清涼祭』の活躍で女子達の注目の的だったからな。まあ、オープンスケベな宗一の性格についていけずにすぐ鎮静化したが」
「私も見ましたけど、あのライブは凄かったです……」
「ねえ秀吉、雄二。喋ってる暇があったら助けてくれない?」
雄二の言う通り、僕は去年の一時期モテていた。モテていたと言っても、特定の誰かと付き合ったわけではない。
清涼祭でライブをしたら、僕と付き合って欲しいという女の子がたくさん現れたのだ。でもあれは、僕の内面を好きになったわけではない。ただ単純にライブの熱に当てられた女子達が「川上宗一がカッコイイ!」と言う風に錯覚しただけだ。現に去年僕に告白した女子のほとんどは、僕に告白した事を「アレは黒歴史」と唾を吐いて言うぐらいだ。アレ? なんか涙が出てきたよ。
小山にも告白されたが彼女は僕自身を好きになったのではない。あの告白自体意味のない物だった。
でもまさかそんな過去が今僕を殺そうとするだなんて!
「罪状、被告、川上宗一は、うらやましいことに女の子に告白された。しかも一人だけではなく多数の女子生徒に告白されたらしい。これは事実に相違ないか?」
「「「相違ありません!」」」
ダァン!
「被告、何か言い残すことは?」
「弁護すらさせてくれないのか! ていうか1年前のことなのになんで――このっ――理不尽だッッ!!」
明久とFクラスの連中はノリノリだ。僕を粛正することに一切の躊躇いがない。
ハッ!そうだ、康太は? 僕の相棒である土屋康太なら、この絶体絶命のピンチをなんとかしてくれるはず!
僕が辺りをキョロキョロ見渡すと―――明久の隣に、少し小柄な、具体的に言えば康太と同じぐらいの身長の黒装束が立っていた。
「……康太、そこで何やってるの? 僕を助けてくれるんじゃないの?」
僕が懇願するように言うと、康太は答えた。
「…………裏切者は許さない。親友と言えど、容赦はしない。裏切者に死を」
『『『裏切者に死を!』』』
神は死んだ。
「有罪、死刑!」
その後ボロボロになるまで
――閑話休題。
「じゃあ宗一。代表と知り合いだって言うのなら都合がいい。Cクラスに探りに行って来い」
「ねえ雄二。僕、たった今拷問に近いリンチをされた後なんだけど。怪我人をいたわる心遣いとかはないの?」
「ない」
もうやだこのブラックな教室。転校したい。
―――Cクラス
Cクラスの教室は、通常の教室より2倍の面積がある。
裕福な公立校の教室って感じだ。黒板ではなくホワイトボードが設置してあり、清潔感がある。
Fクラスにいるせいで基準が著しく低くなっているのか、十分豪華な設備に感じる。環境って人を変えるんだなって思いました、まる。
「ちわー。小山いるー?」
「あ、川上君ッ!? なんでここに来てんのよ! この変態ッ!」
教室に入ったらいきなり罵倒された。辛い。
「……ってなんだ、小山じゃん。いきなりヒドイなぁ。何そんなに怒ってるの?」
見てみると、黒髪のベリーショートの女子が僕を睨みつけていた。Cクラス代表の小山友香だ。一年前と全然変わってない。噂でだけど、バレー部で活躍しているとよく聞く。足もほっそりと健康的でいい。
「別に、怒ってないわよ」
「生理?」
「殺すわよ」
やっぱり怒ってる。
「――――ん、根本? なんで君もここにいるのさ」
「チッ。ばれたか」
よく見ると、小山の後ろには短く刈りそろえた黒髪――鋭い、けれどどこか陰湿さが混じった目つきの男。
Bクラス代表の根本恭二がいた。
「何よ川上君。恭二がここにいるのがいけないの?」
「恭二? 呼び捨てって、まさか」
「そうだよ、川上。俺が友香の恋人だ」
「マジか、付き合っていたのか」
Bクラス代表とCクラス代表がカップルだったのか。
……なるほどね。Cクラスが戦争の準備をしていたって言う情報は餌か。よく見ると根本の周りに固まるように生徒が何人かいるのが見えた。おそらくBクラスの連中なのだろう。
あっぶな! 雄二を連れてきたら、根本の待ち伏せにやられてたじゃん! しかも連中が立会人として連れてきているのは数学の長谷川先生だ。僕の超苦手科目じゃん!
「こんなところに何の用だ? 川上。友香とはそれなりの付き合いだというのは知っているが、友香は俺の彼女だ。挨拶に来たのならとっとと出て行ってくれ。振られた男が友香に関わるんじゃあない」
「別に。そっちこそ何してるんだよ。試召戦争に関わる行動は明日まで一切禁止なんだろ? Cクラスと共謀するのはルール違反じゃない?」
「おいおい、言いがかりはよしてくれよ。俺は自分の恋人と雑談を楽しんでいるだけだぜ? 代表の立場を抜きにして、な」
にやにやといやらしい目で笑う根本。まあ、そういう風に逃れるだろうな。僕だって逆の立場だったらそう言うさ。
けれど……
「……けれど小山。いくらなんでもそいつは趣味が悪いよ……」
「ハッ。変態紳士とか呼ばれる馬鹿のくせに言うじゃないか」
「いやいや、その髪型、ファッションセンスの欠片もないじゃないか。キノコみたいな頭して」
「なんだとこの天然パーマ!」
「待って、恭二。川上はそういう性格なのよ。掴みどころがない言動で挑発するのよ」
「いや、別に挑発じゃないよ。ただ素直にそう思っただけで」
「なお悪いわ!」
まったく、相変わらずだなぁ小山は……。まあ、小山の考え方は理解できないわけじゃない。以前言ってたっけか。「私は頭がいい人が好みのタイプ」だって。
ここで言う「頭がいい」というのは勉強ができるという意味ではなく、知恵が働く男のこと。言い方を変えれば悪知恵とでもいうべきなのだろうか。権力を手に入れる為なら、どんな手段も問わない根本はまさにドンピシャなのだろう。
誰かを好きになったから付き合う、のではなく、付き合うことでメリットがあるから付き合う、というのが小山友香のスタンスだ。かつて清涼祭で、一時期、時の人として脚光を浴びた僕に告白したのも、そういう理由があったからなのだろう。付き合うことで自分を上の立場に押し上げてくれる男が好きになる――それが小山友香という女の子なのだ。
僕としては、あまり好きではない考え方だ。理解できない訳ではないが、合わない価値観。だから小山の告白を断った。
でもなぁ……。
「小山は美人で、健康的でいい身体してるのに。いろいろと勿体ない。そんな男と付き合うなんてちょっとショック……」
「言ったでしょ、川上君。私は頭がいい男の子が好きなの。勉強しかできない男になんか、興味はないわ」
「ああ、言ってたね。でもそれはないでしょ……」
「どういう意味だ!?」
「根本にはもったいない高嶺の花って意味だよ。小山、かつての友人としてアドバイスするけど、取り入るならもうちょっとまともな男を探した方がいいと思うよ? 君ならもっといい男と付き合えるのに」
「余計なお世話よ! 大体、私とあなたは友達じゃないでしょ! 私とあなたの間に友情とか恋愛感情とか、そういうのは一切ないんだから勝手なこと言わないで!」
愛がない友達……ふむ、つまり――
「じゃあ、セフレ?」
「殺すわよ」
やっぱり生理じゃないか(呆)
「まあ、いっか。また来るよ、小山」
「もう二度と来ないで」
「まったく、変態の癖に小山に付き纏うな! 『芸術』なんて価値のない物に取り憑かれる馬鹿が、いい気になるんじゃない」
「…………」
「な、なんだよ川上。怒ってるのか? 戦争するなら、こっちは正当防衛ということにさせてもらうぞ」
根本の後ろに隠れていたBクラスの近衛兵が前に出る。
「やんない。意味がないから」
「何?」
「本当に大切な物が何か、分からない三流と戦っても意味はない。どうせ明日決着は着くんだ、今じゃなくていいでしょ。僕、もうへとへとだし」
「何イキがってるんだ? 大切な物? Fクラスの癖に随分とかっこつけるじゃないか」
「……薄いな、根本。お前は薄い。ペラペラの紙だ。小山」
「……何よ?」
「…………また来る」
僕はそれだけ言って、Fクラスへ帰還した。
前書きに書いている「バカテスト」のネタが足りないです。
ネタを絞り出すのにも一苦労。
感想、評価お待ちしておりますとも。