バカとテストと変態紳士っ!   作:ガオーさん

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バカテスト 英語

問 次の英文を和訳しなさい。
[ Where are you looking at? ]

姫路瑞樹の答え
[ あなたはどこを見ているんですか? ]

教師のコメント
正解です。さすがに中学生レベルの問題は姫路さんにとっては簡単だったでしょうか?

土屋康太の答え
[ どこを見つけてんのよ! ]

教師のコメント
微妙に間違ってますね。それにしてもどうして強気な女性の口調なんですか。

川上宗一の答え
[ どこ見てんのよ! ]

教師のコメント
青木さ〇かさんですか。


第十七問 第一次試召大戦 ~Bクラス戦~ 決着編

Side 吉井明久

 

 地獄の補習の次の日。島田さん……じゃなく、美波といろいろあったり、僕の卓袱台の上に全裸の鉄人のイラストがあったり、宗一と取っ組み合いをしたりして朝のホームルームまで時間を潰すと、何やらいろいろ準備をしていたらしい雄二が教壇の上にのぼり――

 

「昨日言っていた作戦を実行する」

 

 開口一番にそう告げた。それを聞いた宗一が首を傾げて言う。

 

「もしかして対Cクラスの策?」

 

 Cクラス……昨日の話によると、Bクラスの根本君がCクラスで待ち伏せをしてたんだっけ。CクラスがFクラスに戦争を仕掛けようとしているって情報を流して。

 けれど、Cクラスが戦争の準備をしていたのはムッツリーニの情報からして間違いはないらしく、雄二はBクラスとの戦いの前に対処するつもりらしい。

 

「ああ、そうだ。まあ宗一からすれば元カノの小山に負い目があるかもしれないが――」

「はっはっは。雄二、冗談でも止めて。雄二の言葉で割と僕の命が危機に瀕している」

 

 元カノという単語に反応してFクラスの連中(僕とムッツリーニも含む)が一瞬で宗一を取り囲む。

 

「お、おう……済まなかった」

「大体、付き合ってないし。告白されたけど適当にしてたらいつの間にか僕が小山に振られたみたいになってるし。ほら、散った散った」

 

 チッ。まあいい。処刑は後にしてやる。

 

「で、それでどうするのさ雄二」

「簡単だ。秀吉にコイツを着てもらう」

 

 そう言って雄二が鞄から取り出したのはうちの学校の女子の制服。……なんでそんなもの持ってるのさ。

 

「宗一にはスカート、ムッツリーニに上のシャツを用意してもらった」

「「…………」」

「明久、秀吉。言いたいことがあるならはっきり言ったらどうかな?」 

「…………ジロジロ見るのは失礼」

 

 本来、男子には必要がない女子生徒の制服をどうして二人はもっているんだろうか、訊きたいと思ったけど、「創作資料」と言い張られるに決まっているので、僕は考えることをやめた。

 

「秀吉にはAクラスの木下優子として使者を装ってもらう。というわけで秀吉、用意してくれ」

「むぅ……分かったのじゃ」

 

 雄二から制服を受け取った秀吉はその場で生着替えを始める。

 なんだろう、この胸のときめきは。相手は男なのに目が離せない!

 

「…………!!(パシャパシャパシャパシャ!)」

「…………!!(カキカキカキカキ!)」

 

 ムッツリーニは指が擦り切れるんじゃないかという凄い速さでカメラのシャッターを切り、宗一は鉛筆の芯が折れるんじゃないかと思うぐらいの高速でスケッチを描き始めた。

 よかった、ときめきを感じたのは僕だけじゃなかった。

 

「よし、着替え終わったぞい。ん? どうしたのじゃムッツリーニに宗一?」

 

「「なんでもない」」

 

 宗一、ムッツリーニは何故か股間を抑えて前屈みになっているが、深く考えてはいけない。僕ももう少しで前屈みになりそうだったから。

 

「本当に双子なんだな……木下姉と見分けがつかん」

「あ、あまり見ないで欲しいのじゃ」

 

 雄二が感心したように言う。確かに、Aクラスの木下優子と瓜二つだ。何も知らなければ木下優子だと言われても僕は不思議に思わないだろう。

 

「んじゃ、Cクラスに行くぞ」

 

 僕達は雄二のあとをついていくように、Cクラスの教室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――Cクラス教室前

 

 

『Fクラスなんて相手してられないわ! Aクラス戦の準備を始めるわよ!』

 

 

「……小山、ヒステリックで切れやすい性格は全然変わってないんだなぁ……」

 

 見事秀吉の挑発に引っ掛かった小山さんのヒステリックな怒声を聞いた宗一はぼつりと呟いた。

 

「小山さんって昔からああだったの? 宗一」

 

 宗一は頷く。

 

「プライドが高い、強気、短気、挑発に乗り易い。それさえ直せば、割といい奴なんだけどね……」

 

 再び深いため息を吐く宗一。やっぱり友達を罠に落としたのは罪悪感が――

 

「ああいうのに限って大抵すぐに〇〇〇による快楽堕ちするキャラだってエロゲーだと相場は決まって――」

「宗一、朝から下ネタはやめよ?」

 

 罪悪感を抱くところか劣情しか抱かないとは、変態ここに極まれりだ。

 

「バレー部のコーチに呼び出された小山は、『レギュラーになりたいなら<閲覧削除>』と提案される。プライドを傷つけられながらもレギュラー入りという誘惑に勝てなかった小山は、■■■■■■■■■■。コーチの〇〇〇に徐々に××××、××を××された小山はついに彼氏の根本に――」

「…………!!(だらだらだらだら)」

「宗一!それ以上はダメ!廊下が血で汚れちゃう!」

 

 ムッツリーニも宗一の妄想にあてられたのか鼻血流してるし。ていうか知り合いの女の子をエロ小説(しかも過激)のヒロインにするなんて頭がおかしいんじゃない?

 

「俺もここまでうまく行くとは思わなかった。作戦もうまく行ったことだし、俺達もBクラス戦の準備を始めるぞ」

 

 時計を見れば、あと10分でBクラス戦が始まる。僕らはムッツリーニの鼻にティッシュを詰めながらFクラスの教室へ戻った。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――Fクラス教室内

 

 

Side 川上宗一

 

 

 Cクラスへの妨害が終わった後、いよいよBクラス戦が始まった。

 始まったと言っても、二日目の今日はあくまで昨日の続き。昨日中断されたBクラス戦の前から進軍が始まっている。

 雄二が明久達に出した指示は「敵を教室内に閉じ込めろ」とのこと。

 そして僕は――

 

「なんだまた待機?」

 

 Fクラスで待機させられていた。

 

「昨日もずっと教室に引きこもってたし。僕もたまには暴れてみたいよ雄二」

 

 召喚獣で絵を描いて実体化させるのは本当に楽しい。紙やペンタブに描くのとはまた全然違う楽しさがあるのだ。だから僕はぜひとも戦場に飛び込んでもっと絵を描きたいのだが。

 

「そう言うな。お前は理系科目はクソ雑魚だが文系はAクラスのトップ並。しかし万が一今回の作戦が失敗し、姫路とお前が補習室に送られれば本当に負ける(・・・・・・)。けれどお前が残っているなら、まだ望みはあるからな。切り札ってことで我慢してくれ」

「それは分かってるんだけどさ……」

 

 僕の召喚獣は、条件を整えて腕輪を使えばBクラスを壊滅させることは簡単にできる。だがその時Fクラスにも甚大な被害が出てしまう。だから僕が戦うのは本当に代表と自分を除く兵隊がほとんど戦死した時になる。

 

「せめてお前が理系科目もそれなりに取れれば、姫路と同行させて一気に決められるんだが……」

「ま、仕方ないよね」

「お前が言うな」

 

 戦争は、よくボードゲームである『チェス』に例えられる。

 試験召喚戦争では代表――即ち雄二と根本のどちらかが討ち取られるまで勝敗はつかない。チェスのコマで言うなら、雄二達クラス代表はキング。どちらかが討ち取られればこの戦争(ゲーム)は終わる。明久達がポーン、ムッツリーニがビショップ、島田がルーク。そして姫路がクイーンと言ったところだろうか。

 キングを倒すには、キングの周りを守るポーンを排除しなければいけない。その為にあえてポーンやルークなど別の兵隊を囮、犠牲にし、あるいはクイーンでポーンを全て討ち取り、キングを詰みに追い込む(チェックメイト)……というのが一つの手法としてよくつかわれる。 

 姫路(クイーン)の役目は根本(キング)の周りをうろつく近衛兵の排除。そして僕はその控え。最終兵器姫路ほどの力はないが、ちょうど今向こうのフィールドは古典らしく、Bクラスの近衛兵を倒すなら現国じゃなくても大丈夫なはず。腕輪を使えないのがちょっと不安だけど、今回は短期決戦。後のことを考えなければ僕の召喚獣で十分。

 雄二が何手先までこの戦争の先を見ているのかは知らないけど、僕は指示に従うしかないしね。

 

 

 ――と、そんなことを雄二と話していると。

 

 

 バァン!

 

 

 Fクラスの扉が乱暴に開かれた。

 

「明久?」

 

 教室に入ってきたのは明久だった。

 

「うん? どうした明久。脱走ならチョキでシバくぞ」

「話があるんだ」

 

 明久が纏う雰囲気がいつものとは違っていた。雄二のジョークにも反応しない。

 

 本当にキレている。

 

 鼻息が荒く、目つきが鋭い。怒っているのだと、僕と雄二はすぐに察した。

 

「……とりあえず、聞こうか」

 

 真剣な表情で明久を見る。

 一体どうしたと言うんだ明久、君がキレるなんてよっぽど――

 

 

 

「根本君の制服が欲しいんだ」

 

 

 

 …………。

 はっ、一瞬思考停止してしまった。なんで明久が根本の制服を?

 

「「お前(君)に何があったんだ」」

 

 雄二と僕の声がはもる。

 

「ああ、いや、その、えっとー……」

「まあいいだろう、勝利の暁にはそれくらいなんとかしてやろう」

「なんとかしてやれるんだ……」

 

 雄二もなんやかんやいろいろと適応力高いよね。

 

「それだけ? 明久」

「ううん、まだある。姫路さんを今回の戦闘から外して欲しい」

「え? 姫路を?」

 

 僕は思わず聞き返すが、明久は笑わない。どうやら大真面目に言っているらしい。

 雄二は明久を鋭く睨み続けて問い続ける。

 

「理由は?」

「言えない」

「どうしても外さないとダメなのか?」

「どうしても」

 

 雄二の問いに、明久は応える。どうやら一切譲るつもりはないらしい。

 顎に手を当てて考える雄二。

 姫路を抜いてどうやってBクラスを攻め落とすか考えているのだろう。

 

「頼む、雄二!」

 

 頭を下げて頼みこむ明久。ここまでするなんて、よっぽど根本の制服が――いや、違うか。明久はノーマルだから、根本の制服を欲しがるわけがない。秀吉のだったらまた違うだろうけど、そんな奴じゃないはず。

 なら、制服に何かあると考える方が妥当か。

 その何かを、明久は根本から奪いたいんだ。多分。

 そしてしばらく考え込んでいた雄二が、ようやく口を開いた。

 

「条件がある。姫路の役目を、お前が果たせ。方法はどんな方法でもいい。必ず成功させろ」

「もちろん! 絶対にやってみせる!」

 

 明久の言葉に口の端を上げる雄二。

 

「タイミングを見計らって根本に攻撃を仕掛けろ。科目はなんでもいい」

「皆のフォローは?」

「援護はほとんどない……いや、宗一を連れていけ。だがこいつを戦死させることは許さない」

 

 雄二が僕を指名する。他の兵士の手助けなしで、僕だけを使う。ただ、戦死はできない。つまりフィールドで僕に戦闘させるな、ということ。実質、明久一人でほとんどやれと言っているような物だ。

 

「もし失敗したら?」

「失敗はできない。宗一が戦死してもダメだ。その時点で敗北だと思え」

 

 強い口調で断言する雄二。

 

「じゃあ俺はDクラスに指示を出してくる」

「雄二!」

「ああ、そうだ明久」

 

 Dクラスへ向かおうと教室を出る直前、雄二は明久の方を振り向かずにこう言った。

 

「確かに点数は低いが、秀吉やムッツリーニ、宗一のように、お前にも秀でている部分がある。だから俺はお前を信頼している」

「……雄二」

「うまくやれよ」

 

 そう言い残し、雄二は教室を出て行った。

 

「…………」

「どうすんのさ、明久」

 

 考え込む明久に声をかけると、ぽつりと小声で彼は言った。

 

「……痛そうだよなぁ」

 

 何をする気なんだ。

 

「宗一」

「ん? どうしたの明久」

「……頼みがあるんだ」

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

Side 吉井明久

 

 

 宗一に僕が考えた作戦を伝えると、呆れたようにため息を吐いた。

 

「明久、本当にやる気?」

「本気の本気。大マジだよ」

 

 僕は迷いなく頷く。

 

「……一応、僕の召喚獣の力なら明久のアイデアは問題なく実現できるよ。けれどはっきり言って自殺行為だよ。雄二も『リスキーすぎてよっぽどの場面じゃないと使えない』って断言したんだ。第一、やろうとした本人は絶対に点数が0点になって補習室送りになる。加えて、明久にはフィードバックがある。気絶は免れないし、文字通り死ぬほど痛いよ。それでもやるの?」

「やる」

 

 そうはっきりと言う。

 僕が気絶するぐらいなんだ。死ぬほど痛いからなんだ。もちろん嫌だけど、姫路さんが受けた苦しみに比べれば、屁でもない!

 

「……分かった。でも僕からも条件がある」

「何?」

 

「根本のポケットに、何が入ってるんだ?」

 

「……気付いてたの?」

「明久は僕が知る限りノーマルだしね。女装癖があるとでもいうなら別だけど――あ、でも入学式の時確か明久は――」

「僕はノーマルだ! 女装癖だなんて、そんなものがあるわけないじゃないか!」

 

 そりゃ昔は姉さんによく着せられてたけど僕にそんな趣味はない!

 

「でも、さすがに宗一には――」

「言わないと協力しない」

「くっ……」

「ほら、早く言って。そしたらちゃんと協力する」

 

 宗一はさあさあ、と僕をはやし立てる。僕は諦めて答えた。

 

「……手紙だよ」

「手紙? それが姫路と何の関係が―――っ」

 

 そう言いながら途中で気づいたらしく、宗一は言葉を途中で止め、怒りを押さえきれないように歯ぎしりしながら拳を握りこんだ。雄二には言えないけど、宗一ならいいだろう。だって、あれは宗一へのラブレター。そして姫路さんは、宗一の恋人なんだから。

 すでに恋人の宗一にラブレターというのはよく分からないけど、姫路さんのことだ。きっと、何か大切な理由でもあったのだろう。

 

 

「……そういうことね」

「そういうこと」

「……僕は変態だけど、やっちゃあいけないラインってのは弁えてるつもり。でも、根本のそれは絶対に許さない。分かった、明久。お望み通りにやってあげるよ。それもド派手にね! 後悔するなよ?」

「上等! あのクズ野郎に目にもの見せてやる!!」

 

 僕らはハイタッチを交わす。バチィン、という強い音が響く。掌がじんじんと痛む……宗一は相当怒っているのだと言うことが分かった。

 

「……でも、宗一はあの手紙の内容知ってるの?」

「知ってるよ。だってアレは僕がアドバイスして姫路が書いた手紙だからね。内容もこの間読み直して手直ししたのも僕だし」

「え?」

「え?」

 

 僕と宗一の間の空気がぴきりと固まる。

 

「……読んだの?」

「読んだよ?」

「え?」

「え?」

 

 宗一はもう読んだ?恋人だから?手紙の内容を手直しして?そりゃ小説のプロフェッショナルの宗一だったら手紙を直すぐらい余裕だろうけど、でもそれならなんで宗一の手には渡ってない?姫路さんが渡し忘れた?いやいやそんなまさか。普通それだったら恋人の宗一に渡すだろうし、あれ?じゃあなんで姫路さんの手紙は――宗一以外の誰か宛て!? なんでそんなことを? 姫路さんが宗一と他の男子と――まさかの二股? でも姫路さんがそんなことをするわけないし――まさか!宗一貴様の指示か!

 

「宗一! ちゃんと恋人を大切にしなきゃあ! 宗一のNTR趣味(寝取られ)なんかに姫路さんを付きあわせたらダメだろこの変態!」

「何の話をしてるんだ!?」

 

 許せない! 姫路さんの純情を弄ぶだなんて! 根本だけじゃなく宗一も息の根を止めて上げなきゃ!

 僕はカッターナイフを取り出し、宗一の息の根を止めようと――

 

 

「姫路と僕は付き合ってない!」

 

 

「――――――――ゑ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宗一と姫路さんが恋人同士だというのが誤解だと言うことが分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――Bクラス前

 

 

 

『お前らもいい加減に諦めろよ。昨日からずっと教室の出入り口に人を集めやがって。暑苦しいっての』

『軟弱なBクラス代表様もそろそろギブアップか?』

 

 廊下で雄二が根本と軽口を叩き合っているのが聞こえる。

 あの後僕らは、補給テストを受けていた美波、武藤君、君島君の3人をDクラスに呼び出し、潜伏していた。

 

「アキ、宗一、本当に大丈夫?」

「大丈夫だよ美波。心配いらないから」

「ああ、明久の言う通りだ」

 

 ぼくらは美波の言葉に頷く。それにしても、二人もいつの間に名前で呼び合う関係になってたんだ。いつの間に仲良くなったんだろう……でもなんか、ちょっと面白くない。

 

「川上。大きな音がしたらBクラスに突撃するんだな?」

「そう。音は分かり易いから、聞き逃すとかはまずないから安心して。明久、そろそろ」

「うん、試喚召喚(サモン)

試喚召喚(サモン)

 

 僕と宗一は同時に召喚獣を召喚する。Bクラス前の古典のフィールドはDクラスの方まで広がっているおかげで、僕達もこっそりとだけど召喚できる。

 

 

 

古典勝負

 

   Fクラス 川上宗一   278点

 

      &

 

   Fクラス 吉井明久   63点

 

 

 召喚された宗一の召喚獣は、呼び出されたと同時に勢いよく絵を描き始める。

 僕の召喚獣は、学ランに木刀という弱そうなチンピラ装備。その上観察処分者で、いいことなんて一つもなかったけど……今だけは、それに感謝してもいいと思う。あの外道に目にものを見せてやれるのだから。

 

 

『はぁ? ギブアップするのはそっちだろ?』

『無用な心配だな』

『そうか? 頼みの綱の姫路さんも調子が悪そうだぜ?』

『……お前ら相手じゃ役不足だからな。休ませておくさ』

『けっ! 口だけは達者だな。負け組代表さんよぉ』

『負け組? それがFクラスのことなら、もうすぐお前が負け組代表だな』

 

 雄二が時間を稼いでくれている。宗一の絵を描く時間。

 宗一は早く、丁寧に、完璧に、僕が頼んだ物を描いていく。

 

「出来た。行くよ、明久」

「うん!」

 

 僕は宗一が描いて実体化させてくれたある物を、学ランの中に、外から見えないように抱え上げる。普通の召喚獣が持つと、すぐに消えてしまう宗一の絵。けれど観察処分者である僕は持てる。

 

 

古典勝負

 

   Fクラス 川上宗一   1点

 

 宗一は1点を残し、あとは全てこの絵に点数を注ぎ込んだ。これの威力が発揮されれば、いかにBクラスと言えど木端微塵だろう。

 僕には分かる。

 何故なら僕は昨日すでに体験したからだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

『けっ! 口が減らない野郎だ。どうせもうすぐ決着だ、お前ら、一気に押し出せ!』

『……体勢を立て直す! 一旦下がるぞ!』

『はっ! どうした、散々ふかしておきながら逃げるのか! お前ら、全員召喚して一気にとどめをさせ!』

 

 

『『『『『試喚召喚(サモン)!!』』』』』

 

 ここだ、このタイミングしかない。雄二達の部隊が戦線を離脱するために離れ、それを追い詰めようとBクラスの生徒達が召喚獣を呼び出した! 

 やるならここしか……ない!

 

 

「おおおおおおっ!」

 

 僕は廊下を一気に駆け出す。

 

 Dクラスから廊下に飛び出ると、Bクラスから飛び出してきた数十人の生徒と召喚獣……Bクラスの兵士達。そして、廊下の奥には雄二が、僕を見て、何か言っていた。

 

 

  ―――後は頼んだぞ、明久

 

 

 僕は召喚獣を、Bクラスの生徒達の前に飛び出させる。

 

「何だ!? 殿(しんがり)か?」

「構わない、Fクラス代表に逃げられる前に、やっちゃいなさい!」

 

 Bクラスの生徒の召喚獣が一斉に剣を突きだし、そして僕の召喚獣はそれを全て受け止める。

 

 

古典勝負

 

 

   Fクラス 吉井明久   DEAD

 

 

 体中に走る痛み。刺され、斬られ、僕の召喚獣はあっという間に0点になってしまう。

 そして召喚獣が受けた痛みは、僕に返ってくる。

 

 

「あがぁ―――!!」

 

 痛みに悶える。体中から変な汗が出てきて、視界がもうろうとする。だけど、これでいい。

 

 

「―――かかった!」

 

 

「おい、こいつ何か持ってないか?」

「な、まさかこれ―――!」

 

 Bクラスの召喚獣は、僕の召喚獣を串刺しにした。学ランの中に隠しておいた、宗一が描いて実体化させた爆弾も一緒に(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「いけ、明久」

 

 宗一がにやりと笑う。僕も痛みと吐き気にこらえながら、笑っていただろう。

 宗一が描き上げた傑作。200点以上の点数を注ぎ込んだそれは、僕だけじゃなく今フィールドにいるほとんどの召喚獣を巻き込み、吹き飛ばす。

 僕が考えた作戦――というより、雄二が考えた作戦。

 使えない、と思っていた作戦を、僕は使った。僕だけにしかできない、自爆特攻。

 

 人柱大作戦、またの名を―――神風。

 

 

「「芸術は――――」」

 

 

 爆弾が光を発し始める。雄二たちはとっくにフィールドを脱出しており、爆風に巻き込まれることはないだろう。

 雄二たちを追いかけようとした追跡部隊を除いて――ね。

 

 

 

 

 

「「爆発だっ!!」」

 

 

 

 

 

 瞬間、視界は閃光で包まれ、僕の召喚獣が熱と光によって消し飛んだ。その痛みによって僕はそのまま廊下に倒れてしまう。

 

 意識が途切れ始める。

 

 

「―――アキ――――!」

「―――全員、戦死―――!」

「―――川上―――貴様―――」

「突入―――召喚―――」

 

 

 視界は暗転と明滅を繰り返す。耳が爆音によってぐわんぐわんする。途切れ途切れの視界の中で、美波が心配そうに僕の顔を覗き込んでいる。

 今の爆破でBクラスのほとんどの召喚獣は消し飛んだらしい。君島君達が宗一に連れられて根本に特攻する。

 

「近衛部隊―――!」

「奇襲―――失敗だ―――」

 

 根本が笑う姿が見える。痛みで視界が揺れている中、宗一たちが根本に攻撃を仕掛け、近衛兵に阻まれるのが見えた。

 

 僕はそれを見て―――笑った。

 

 

「や……った……」

 

 

 作戦――成功――だ―――

 

 

 

 

 

 意識が途切れる直前。

 

 最後に見えたのは、近衛兵と戦う宗一と君島君達、心配そうに僕を抱き締める美波、そして―――

 窓から保健体育の先生と共に現れた―――ムッツリーニの姿。

 

 

 

 

 

「…………Fクラス、土屋康太」

「…………明久の覚悟、無駄にはしない。Bクラス代表、根本恭二に保健体育勝負を申し込む」

 

 

 

 

 

 

 僕の意識が途絶えると同時。

 

 

 Bクラス戦は終結した。

 

 

 僕達の勝利によって。




Bクラス戦、決着。

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