バカとテストと変態紳士っ!   作:ガオーさん

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バカテスト 保健体育

問 以下の問いに答えなさい。
「女性は( )を迎えることで第二次性徴期になり、特有の体つきになり始める」


姫路瑞希の答え
「初潮」

教師のコメント
正解です。


吉井明久の答え
「明日」


教師のコメント
随分と急な話ですね。


川上宗一の答え
「初夜」

教師のコメント
第二次性徴期の前の子に、その行いは犯罪です。


土屋康太の答え
「初潮と呼ばれる、生まれて初めての生理。医学用語では生理のことを月経、初潮のことを初経という。初潮年齢は体重と密接な関係があり、体重が43㎏に達する頃に初潮を見るものが多いため、その訪れる年齢には個人差がある。日本では平均十二歳。また、体重の他にも初潮年齢は人種、気候、社会的環境、栄養状態などに影響される」

教師のコメント
詳しすぎです。


第十九問 武器は装備しないと、意味がありませんよ?

Side 川上宗一

 

 

 皆さんもご存じのとおり、ここ文月学園は学力至上主義の進学校である。実力主義と言い換えてもいいだろう。

 勉強ができる生徒にはそれにふさわしい待遇を。勉強をしない怠け者にはやはりそれにふさわしい対応を。

 

 それがこの学園のルールである。

 

 一年生の三学期に行われる振り分け試験。ここの試験で取得した点数に応じ、生徒はAからFまで6段階にクラス分けされる。

 勉強ができる人はAクラスに、その逆はFクラスに、と言った具合に。その人の実力に応じたクラスに分けられる、という訳だ。

 

 だが、ただ頭がいい奴と悪い奴を分けるだけではない。クラスによって教室の設備が大きく異なっていく。

 

 改めて確認してみよう。

 

 我がFクラスの教室。最低のバカが集められた最低の教室だ。

 

 その教室は、カビだらけの畳、綿がほとんど入っていない座布団、そしてぼろぼろの卓袱台という、江戸時代の廃墟から持ってきたんじゃないかと思えるようなボロボロの教室だ。

 

 え?畳の方が好き?

 座布団と卓袱台でも勉強はできる?

 それだけあれば勉強するには十分?

 

 ふむふむ、なるほど。確かにノートを取るための机と座れる場所があるなら、青空教室よりはマシかもしれない。

 だが考えてみて欲しい。学校というのは勉強をする場所である。

 朝8時までに登校し、午後5時近くまでほぼ一日中椅子に座って授業を受ける。

 それぐらい普通だろ、と思うかもしれないが思い出してほしい。我がクラスは椅子はなく座布団である。しかも机は卓袱台である。

 約9時間もの間机にかじっていなければならないと言うのはストレスと体力を使う。だと言うのに、背もたれもない、座布団の上で1日中胡坐か正座で過ごすのは、いくら若いとはいえ背中と腰にひどい負担がかかる。

 学校が終わる頃には背骨がゴキゴキとなるぐらい固まるなんて日常茶飯事。

 ただでさえ疲れる授業を、腰と背中を痛めながらやらなければいけないのだ。苦行と言っても過言ではないだろう。

 

 

 勉強する、というのは確かに場所は関係なく誰でもできる簡単なことだが、それをするためには一定の道具や環境という物が必要になってくる。

 

 

 それを僕はここ最近地味に実感している。

 補充試験中、背もたれが欲しくて欲しくて辛い。だから先生、座椅子ぐらいダメですか? え? 我慢してください? あ、そう……。

 

 

 

 

 閑話休題。

 

 

 それに対して、Aクラスの教室。

 

 ちなみに僕は耳にしてはいたが、実際どんな内装をしているのか見たことはない。冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートだとは聞いたが、女子更衣室でもないのに覗きに行きたいと思うほどさほど興味なかったし、実際自分には関係ないと思っていたからだ。

 

「さて、Aクラスに乗り込むぞ」

 

 雄二がそう言ってFクラスの教室から出ようとする。Aクラスに宣戦布告するためだ。

 

 この時、僕は『そういえばAクラスの内装って見たことないな』と思い出したのだった。

 

 だが、僕達は長く厳しい戦いを乗り越え、ついにAクラスと戦う。今からお前らの施設を奪うぞ、と宣戦を布告するのだ。

 しかし、そんな大事な日だと言うのに明久は――

 

「待って雄二。明久の手が瞬間接着剤でくっついてるんだけど」

「…………文字通り一心同体」

 

 卓袱台と合体(意味深)をしていた。

 事の始まりは、明久の卓袱台の足が折れてしまい、支給された接着剤で修理する所から始まる。

 

 

「さすがは瞬間接着剤。あっという間に修理完了!」

「よかったのう明久。木工用ボンドではなく瞬間接着剤を支給してもらえたのじゃな」

「せっかく苦労してBクラスに勝ったんだもの。せめて支給品くらいはレベルアップしてくれないとね」

 

 ていうか、自分で買ってくればいいのに。

 

「なんだお前、そんなに卓袱台が好きなのか?」

 

 雄二がにやにやとからかうと、その言葉に腹を立てたのか明久はむっとしたように言い返す。

 

「こんなすぐ壊れる卓袱台なんか、好きなわけないじゃないか!」

 

 バアン!

 

 明久が卓袱台を叩くと、上に何かが吹っ飛んだ。僕の足元に落ちたそれを拾い上げて見てみると、明久によって潰された瞬間接着剤だった。

 

「え? ぬぁあー! ぬあ、ちょっ、手がくっついて離れないぃぃぃいいい!」

 

 馬鹿な明久は卓袱台から離れたくないあまり自分に装備してしまったのである。

 ここで装備していきますか? 武器は装備しないと、意味がありませんよ。

 しょうがないから外すのを手伝おうと明久の腕を引っ張ってみるが……

 

「ぐぬぬぬ! おおう……見事にくっついて取れない」

「くっつきすぎじゃないこれ。さすがアロンアルファ」

 

 しかしその卓袱台は呪われているのか引き剥がそうとする明久とべったりくっついて離れようともしなかった。

 これはラスボスの魔王城まで持って行かないといけないパターンですね。

 

「卓袱台は放っておいて、Aクラスに行くぞー」

「待て雄二! 今僕のことを卓袱台扱いしたな!?」

 

 明久はぎゃーぎゃーと喚いている。なんとか引き剥がそうとしているのだが、それでも卓袱台は離れないようだ。やれやれ。仕方ない。

 

「明久、そんなに外したい?」

「え? 宗一、もしかして外し方を知ってるの?」

「もちろん。ハイ」

 

 僕は明久にノコギリを渡した。

 

「頑張って落としてね?」

「違うよね宗一。卓袱台を壊せって意味だよね? 手首を切り落とせって意味じゃないよね?」

「大丈夫だ明久。切り落としてすぐに病院に持っていけばくっつくはずだから」

「そういう心配をしてるんじゃないよ!?」

 

 結局、どうやっても外せないので、卓袱台を装備したままAクラスに向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――Aクラス教室内

 

 

 

「……おおう。予想の十倍ぐらいすごい」

 

 

 

 ここは高級ホテルか?とさすがの僕も驚いてしまう。

 

 まず目に入ったのが、おそらく黒板の代わりなのであろう超大型スクリーン。何インチあるんだ。

 そして並べられたシステムデスク、それに付随するように置かれたリクライニングシート。しかも高級そうな革製だ。

 さらにはノートパソコン、個人用の小型冷蔵庫が生徒一人一人に支給されるように置かれている!

 少し離れた所にはドリンクサーバーも設置されている!

 これがAクラス! まさに選ばれた人間のみが使える教室というわけか。

 

「ここがAクラス……」

「まるで高級ホテルのようじゃのう……」

 

 驚きを隠せないように声を漏らす美波と秀吉。

 

「ふっ、僕が学園生活を送るには、相応しい設備じゃないか」

「明久。身の程知らずって言葉、知ってる?」

 

 よくもまあそんなことを堂々と言い切れる物だ。明久の器のデカさ(バカさ加減)には感服するほかない。

 

「何を言っているんだ宗一。僕がこの教室にふさわしくないとでも?」

 

 卓袱台を手にくっつけてる奴にこの場所は場違いとしか言いようがないだろう。

 

「見てよアキ! フリードリンクにお菓子が食べ放題よ!」

 

 興奮を隠しきれない美波がはしゃぎながら明久にそう言うと、明久はやれやれ、と溜息を吐いた。

 

「ふっ、美波。駄目じゃないか。そんなのにいちいち驚いていたら、足元を見られるよ? もっと堂々と構えなきゃ」

「つくづく行動と発言が伴わぬ男じゃのう……」

「恥知らずってああいうのを言うんだなって僕分かった」

 

 お菓子を制服のポケットに溢れんばかり詰め込んでいるバカが何か言ってるよ。

 まあでも、せっかくだから僕も一つもらおうかな。でも無許可で食べるのはアレだから、誰かに――あれ?

 

 

「秀吉、なんで女装してるの? ていうかいつの間に」

 

 ふと気づくと、そこには女子の制服を着た秀吉が立っていた。いつの間に着替えたのだろうか。

 

「宗一、どうかした――あれ? 秀吉、どうして女子の格好を……そうか、やっと本当の自分に目覚めたんだね!」

「明久、宗一よ、儂はここじゃぞ」

 

「「え?」」

 

 明久と僕は思わず声を上げる。

 

「秀吉が、二人?え?あれ?」

 

 声をした方を振り返ると、そこには男子の制服を着た秀吉が立っていた。秀吉が二人――ああ、そっか。

 

「木下優子さんか」

「え?どういうこと、宗一。そっちは秀吉の本当の格好じゃ――」

「それは儂の姉上じゃ」

「秀吉は、私の双子の弟よ」

 

 すると、女子の制服を着た方の秀吉――じゃない、木下姉がそう言った。

 秀吉の物腰の柔らかそうな声とは違い、彼女の言葉からは凛とした生真面目さが伺えた。

 

「ああ、ごめん木下。そっくりで分からなかった」

 

 僕が素直に謝ると、彼女は「いいのよ」と言った。

 

「よく間違えられるから慣れてるわ。あなたは川上宗一君ね」

「え? 僕のこと知ってるの?」

「知ってるわよ。あなたは有名だもの」

 

 へえ、僕も有名になったのか。まあエロ絵とか官能小説ばっかり書いているとはいえ、少しは僕の芸術家としての才能も認め――

 

「よく聞くわ。ノーパン主義の変態だって」

 

 待ってほしい。その認知の仕方はあんまりだ。

 どうやってその誤解を解こうか悩んでいると、雄二に気付いた木下姉が声をかけた。

 

「それで、何か用かしら、Fクラス代表さん?」

「ああ、もうすぐ俺達の物になる設備の下見だ」

「随分強気じゃない?」

 

 雄二が不敵な笑みを浮かべながら木下姉を挑発する。表面上は静かだが、二人の間に見えない火花が散っているのが見えた。

 

 

 そして、雄二ははっきりと、それこそAクラスの教室全体に響くようなよく通る声で宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――宣戦布告をしに来た。俺達Fクラスは、Aクラスに試験召喚戦争としてAクラス代表に、一騎討ちを申し込む」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

Side 吉井明久

 

 

 

 

 交渉のテーブルに着いたのは、我らがFクラス代表、坂本雄二。

 柔らかそうな一人用ソファーに座り込み、テーブルの上に行儀が悪く脚を乗せている。

 そしてAクラスからは木下優子さんが、雄二と面を向かい合う形でソファーに座っている。

 さっきは思わず間違えちゃったけど、本当に秀吉とそっくりで、秀吉を女の子にしたそのままの姿でとても可愛い。でも、この子を認めると秀吉にも気があるということに――!

 

「一騎討ち……2年の首席に勝つつもり?」

「もちろん。俺達Fクラスは勝利を狙っているからな」

 

 木下さんが訝しむように雄二を睨む。最下位クラスの僕らが、一騎討ちで学年トップに挑むということ自体が異例なのだから。

 

「面倒な試召戦争を手軽に終わらせることができるのはありがたいけどね、だからと言ってわざわざリスクを冒す必要もないわ」

「賢明だな……ところでCクラスの連中との戦争はどうだった?」

「時間は取られたけど、それだけだったわ。何の問題もなし」

 

 秀吉の挑発に乗り、Aクラスに攻め込んだCクラス。その勝負は半日で決着が付き、今CクラスはDクラスと同等の設備で授業を受けている。宗一にそのことを聞いてみたら、『今頃小山が癇癪起こしているだろうからCクラスには当分近づきたくない』と青ざめた顔で話していた。

 

「なら、Bクラスとやりあう気はあるか?」

「Bクラスって……、昨日来てたあの(・・)?」

 

 心底嫌そうな表情をする木下さん。根本君の女装姿を思い出していたのだろう、気持ちが悪そうに眉をひそめている。

 気持ちは分かる。僕も想像してみると……うえぇ。

 

「ああ。アレが代表をやっているクラスだ。まだ宣戦布告はされていないようだが、さてさて、どうなるかな?」

「でもBクラスはFクラスと戦争をしたから、三ヵ月の準備期間を取らない限り試験召喚戦争はできないはずよね?」

 

 戦争の泥沼化を防ぐため、敗者は三ヵ月間他のクラスに宣戦布告ができないというルール。

 だが、このルールは今回は適用されない。何故なら――

 

「あの戦争は実情はどうあれ、『和平交渉にて終結』となっている。規約にはなんの問題もない。Bクラスだけじゃなく――Dクラスもな」

 

 雄二が試験召喚戦争で勝っても設備を交換しなかった理由。

 それがこれだ。相手を一騎討ちという舞台に立たせるため、先に負かした相手を取引の材料にしようとしているのだ。

 

「……それって脅迫よね」

「人聞きの悪い。ただのお願いだよ」

 

 やっていることはただの悪役だよ雄二。

 

「分かった。何を企んでいるのか知らないけど、代表が負けるなんてありえないからね。その提案受けるわよ」

「え? 本当?」

「だって、あんな格好した代表がいるクラスと戦争なんて嫌だもん……」

 

 せやな……。

 

「でも、代表同士の一騎討ちはダメ。五対五よ(・・・・)。お互い五人ずつ代表を選んで、一騎討ち五回で三回勝った方の勝ちということにしましょう」

「なるほど。こっちから姫路が出てくる可能性を警戒しているんだな?」

「そうね。代表が負けるとは思えないけど、警戒はするに越したことはないし……警戒するべきなのは姫路さんだけじゃないしね」

 

 優子さんがちらりと宗一の方を見る。

 

「現代国語だけならAクラストップレベルの川上宗一君。彼は侮れない。Dクラス戦とBクラス戦、彼が活躍したって聞いたわ」

 

 警戒心マックスの眼を宗一に向ける。確かに、今までの戦争でここぞという時、宗一が戦況をコントロールしていた。渡り廊下の戦いも、僕の特攻の時も。

 それに、宗一の召喚獣はとても目立つ。Aクラスの誰かが宗一のことを知っていて、そこから話が漏れたのかもしれない。

 

「…………」

 

 睨まれる宗一だが、まったく臆することなく木下さんを見つめ返している。

 

「な、何よ。私の顔に何かついている?」

 

 真正面から見られて照れがでたのか、木下さんは慌てたように言う。

 

「…………腐女子の匂いがする」

 

 宗一は何かつぶやいたようだが、何を言ったかよく聞こえなかった。

 

「安心してくれ、うちからは俺が出る」

「無理よ。その言葉は鵜呑みにはできない。これは競争じゃなくて戦争なんだから」

「そうか。それならその条件を呑んでもいい。ただし、勝負する内容はこちらで決めさせてもらう。そのくらいのハンデはあってもいいはずだ」

「…………」

 

 悩むように考え込む木下さん。クラス代表としての交渉だ。この会話で仲間の設備が変わる可能性がある。慎重になるのも当然だろう。

 科目の選択権は僕らに必須だったけど、こんな条件を呑んでくれるだろうか。

 

 

「……受けてもいい」

 

 

 突然現れた静かな、凛とした声。

 いつの間にかAクラス代表、霧島翔子さんが近くに来ていた。

 物静かで、近くにいたなんて全然気づかなかった。

 

 それにしても学年一の美少女という話は本当だったみたいだ。綺麗な黒髪、物静かな雰囲気と整った容姿は神々しさを感じさせる。

 

「一騎討ち、受けてもいい」

「代表!」

 

 咎めるように木下さんは立ち上がる。

 

「大丈夫、優子」

 

 しかし、そんな木下さんをあやすように、霧島さんが言うと、木下さんはやれやれと言いながら再び椅子に座りこんだ。

 

「感謝するぜ、Aクラス代表さん」

「……一騎討ちは受ける。ただしその代わり、条件がある」

「条件?」

「うん」

 

 雄二が訊き返すと、霧島さんはやはり凛とした、静かな口調ではっきりと宣言した。

 

 

 

 

「……負けた方は、なんでもひとつ、言うことを聞く」

 

 

 

 

 彼女は確かにそう言った。傍にいた姫路さんを値踏みするかのようにじっくりと観察しながら。

 

 

 




次回からAクラス戦…いけるといいなぁ。
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