バカとテストと変態紳士っ!   作:ガオーさん

26 / 46
第二十三問 第一次試召大戦 ~決着編~

Side 川上宗一

 

 

 Aクラスの女子達のブーイングが収まったのは、康太が勝利してから大体十分ぐらいだった。

 どうやら僕が工藤さんをセクハラして泣かしてしまったことになっている。

 どうしてこうなった。僕はただ「なんでも答えてあげるよ♪」って言われたから素直に気になったことを質問しただけなのに。

 それにまだ質問の10分の1も終わってない。もっと質問攻めをさせてほしい。

 

「いや、だからってアレはねえだろ。セクハラで訴えられても文句は言えないレベルだぞ」

「せやかて工藤」

「工藤は俺じゃねえ」

 

 雄二は呆れながらAクラスの方を指差す。指を指した方には、大勢の女子に囲まれて慰められている工藤がいた。

 

『大丈夫工藤さん?』

『気分とか悪くない?』

『あはは……大丈夫、平気だよ』

 

 さすがにもう泣いてはいないみたいだけど、終始苦笑いをしているように見える。

 まあ「実技が得意(自称)」がバレていたたまれない気分になっているのだろう。きっとエッチに詳しい大人の女の子というキャラだったんだ。なにそれかわいい。

 結局処女かどうか明言は取れなかったが、彼女には無限の可能性を感じるのでこれからも頑張って欲しい所だ。ああいう、『経験豊富そうに見えて実は処女でした』って言う感じの女の子、すごくそそるよね。年上の幼馴染のお姉さんとかだとさらにグッジョブ。

 

『やっぱすげえな変態紳士は……』

『すげぇよ変態は……』

『あの工藤にセクハラをやり返すとは、とんでもねえ猛者がいたもんだぜ……』

『マニアック過ぎて後半の言葉はもうほとんど俺には分からなかったぜ……』

『あれが分かったのはムッツリーニくらいじゃないか?』

 

 Aクラスの男子とFクラスの男子はひそひそとそんなことを語り合っている。いつの間に仲良くなったんだ君達。

 

「失礼な。僕はこんなにもKENZENだと言うのに」

「お前は健全の意味を辞書で引いてからこいバカ」

 

 何を言う。現代国語は僕の得意科目だぞ!

 

 

 ポンッ

 

 

 ん? 誰だろう。僕の肩を掴むのは。

 なんだかひどくゴツゴツしていて力が強い。そう、まるで野生のゴリラのような――

 そう思って後ろを振り返ると――

 

 

「ウェルカム」

 

 

 満面の笑みをした鉄人先生が立っていた。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

Side 吉井明久

 

 

 

 

 鉄人に殴られて床に倒れ伏している宗一を尻目に、勝負は続く。

 

「では、現在二対一ですね。副将戦、次の方は?」

 

 高橋先生が淡々と勝負を進める。自分のクラスが負けても気にならないのかな?

 

「あ、は、はいっ。私ですっ」

 

 こちらからは当然姫路さんが出る。唯一Fクラスにいながら、Aクラスとまともに戦える人材だ。

 

「それなら僕が相手をしよう」

 

 Aクラスから歩み出たのは――久保利光!

 

「やはり来たか。学年次席」

 

 現れたのは久保利光。姫路さんに次ぐ学年三位の実力の持ち主で、振り分け試験を姫路さんがリタイアした今、彼が次席の座にいる。

 

「……なんか眼鏡をクイッってやってる。眼鏡めっちゃクイッてやってる」

「…………多分、カッコつけたい」

「だよね……。まだ本人は躊躇ってる節があるし、あれは無意識に明久にカッコよく見せたいんだろうなぁ」

 

 ムッツリーニと宗一が何か小声で話し合ってる。何故だろう。お尻の辺りになぜか寒気が……。

 

「ここが正念場だな……いくら姫路でも、学年次席が相手だと不得意科目を突かないと厳しい」

 

 雄二が緊張した面持ちでつぶやく。

 

「では、科目はどうしますか?」

 

 高橋先生が二人に声をかける。次の科目の選択権はこっち――

 

「総合科目でお願いします」

 

 すると、勝手に久保君が答えていた。

 

「そんな勝手に!科目の選択権は僕らが――」

「構いません」

「姫路さん?」

 

 クレームをつけようとする僕を止める姫路さん。大丈夫なのだろうか?

 

「それでは、試合開始」

 

 再び召喚獣のフィールドが展開される。

 そして二人の召喚獣が呼び出され――すぐに決着がついた。

 

 

総合科目勝負

 

   Aクラス 久保利光   3997点

 

      VS

 

   Fクラス 姫路瑞希   4409点

 

 

『マ、マジか!?』

『いつの間にこんな実力を!?』

『この点数、霧島翔子に匹敵するぞ……!』

 

 教室中から驚きの声が上がる。点数差400点オーバー!? 姫路さんが強いのは知ってたけど、これは尋常じゃない!

 

「ぐっ……! 姫路さん、どうやってそんなに強くなったんだ……?」

 

 久保君が悔しそうに姫路さんに尋ねる。

 

「私、このクラスの皆が好きなんです。人の為に一生懸命なみんなのいる、Fクラスが」

「Fクラスが好き?」

「はい。だから、頑張れるんです」

 

「姫路さん――……」

 

 

 

――――――――――――

 

 

Side 川上宗一

 

 

 

 鉄人先生に殴られてできたたんこぶの痛みがようやく引いた頃。

 

「では、大将戦。最後の一人、どうぞ」

「……はい」

「俺の出番だな」

 

 いよいよ大将戦。5対5の一騎討ちのラストバトル。僕らは今日この日、この瞬間のために戦っていたと言っても過言ではない。

 Aクラスから霧島。そしてうちのクラスからは雄二が前に出る。

 

「教科はどうしますか?」

 

 高橋先生が尋ねる。それを雄二は――

 

「教科は日本史。内容は小学生レベルで百点満点の上限ありだ!」

 

 

 ざわ・・・

        ざわ・・・

 

 雄二の宣言でAクラスがざわざわし始める。

 

『上限ありだって?』

『しかも小学生レベル。満点確実じゃないか』

『注意力と集中力の勝負になるぞ』

 

 雄二の策。『ある問題され出れば勝てる』という、ある種の賭け。

 確率としては高くはない。必勝と呼ぶにはとても難しい。けれど、それはありえない可能性。AクラスとFクラス、学力の差が圧倒的であるのにも関わらず、こうやって対等に戦うことは本来はできない。けれど100%負けるはずの勝負の中に現れた、たったひとつの勝利の可能性。

 

「わかりました。そうなると問題を用意しなくてはいけませんね。対戦者は視聴覚室へ。そちらで最後の勝負を行います」

 

 ノートパソコンを閉じ、高橋先生が教室を出ていく。その後を着いていくように霧島も出ていく。

 

 そんな先生の背中を見送り、明久達が雄二に近付く。

 

「雄二、後は任せたよ!」

 

 明久はグッと雄二の手を握リ固い握手を送る。

 

「ああ。任された」

 

 明久の激励に雄二は力強く握り返す。

 

 そして二人の姿を見た僕は―――

 

「あっ(察し)」

 

 康太も雄二に歩み寄り、ピースサインを向ける。

 

「………(ビッ)」

「お前の力には随分助けられた。感謝している」

「…………(フッ)」

 

 康太は珍しくニヒルに笑い、元の表情に戻った。

 

「坂本君、あの、いろいろお世話になりました……」

「ああ、今回の試召戦争のことか。気にするな、後は頑張れよ」

「はいっ」

 

 そして雄二は僕の方を見てくる。

 

「宗一」

「…………」

「ムッツリーニ同様、お前には助けられた。感謝している」

「…………」

「じゃあな、お前ら。あとでAクラスの教室でな!」

 

 

 雄二は楽しそうに笑いながら、教室から出て行った。

 

 

「…………」

 

 

 けれど僕は―――嫌な予感を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

Side 吉井明久

 

 

 

『では、問題を配ります。制限時間は五十分。満点は100点です。不正行為などは即失格となります。いいですね?』

『……はい』

『分かってるさ』

『では、始めてください』

 

 モニターに映された雄二と霧島さん。今、二人の手に渡った飯田先生の問題用紙が表にされる。

 

「吉井君、いよいよですね……!」

「そうだね。いよいよだね」

「これであの問題がなかったら坂本君は……」

「集中力や注意力に劣る以上、延長戦で負けるだろうね。でも」

「はい、もし出たら―――」

 

 もし出ていたら、僕らの勝ちだ。

 

 誰もが固唾を飲んで見守る中、ディスプレイに問題が映し出される。

 

「…………」

「宗一、どうしたのさ?さっきから黙りこくって」

「そうよ、宗一。あんたもちょっとは坂本に激励を送るべきだったんじゃない?」

 

 さっきからずっと一人用ソファに疲れたように座り込んでいる宗一。雄二の言葉に一言も返さず、暗い表情のままだ。

 

「…………」

 

 しかし、宗一はやっぱり何も話さない。どうしたんだろう。

 まあいいや。今は雄二達のテストの問題だ!

 

 

 

《次の( )に正しい年号を記入しなさい》

 

( )年 平城京に遷都

( )年 平安京に遷都

 

 

 流石は小学生レベル。僕でも分かりそうだ(解けるとは言ってない)。

 

  

( )年 鎌倉幕府設立

( )年 大化の改新

 

 

「あ……!」

 

 出て、いた……。

 

「吉井君っ」

「うん」

「これで私達っ……!」

「うん! これで僕らの卓袱台が」

 

『システムデスクに!』

 

 揃ったFクラスの皆の言葉。

 

「最下層に位置していた僕らの、歴史的な勝利だ!」

 

『うぉぉおおおっ!!』

 

 教室を揺るがすような歓喜の声。しかし、そんな中でも宗一の表情は暗いままだ。

 

「宗一、何をしてるのさ! 僕らは勝ったんだよ! もっと喜びなよ!」

 

 宗一の肩をぱんぱんと叩く。けれど宗一はされるがままだ。

 一体どうしたのだろう?

 

「…………明久」

 

 すると、ようやく反応を返した宗一がぽつりとつぶやく。

 

「どうしたのさ宗一!ついに僕達がAクラスを―――」

 

「…………いいことを教えてあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本史勝負  限定テスト  100点満点

 

 

Aクラス 霧島翔子  97点

         VS

Fクラス 坂本雄二  53点

 

 

 

 

「さっきの会話は……明らかに、負けフラグだっ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Fクラスの卓袱台がミカン箱になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Aクラス戦、決着! ここまで長かった……ようやく一区切りです。
次回、エピローグ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。