バカとテストと変態紳士っ!   作:ガオーさん

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バカテスト 歴史


問題:次の( )に正しい年号を記入しなさい。
『( )年 キリスト教伝来』

 
霧島翔子の答え
『1549年』

教師のコメント
正解。特にコメントはありません。

 

坂本雄二の答え
『雪の降り積もる中、寒さに震えるキミの手を握った1993』
 
教師のコメント
ロマンチックな表現をしても、間違いは間違いです。


最終問題 そして敗者の末路は。

Side 川上宗一

 

 

 

「三対二でAクラスの勝利です」

 

 視聴覚室になだれ込んだ僕達Fクラスに対する高橋先生の無慈悲な締めのセリフ。

 

「……雄二、私の勝ち」

 

 見事なまでに敗北フラグを回収し、床に膝をつく雄二に霧島が歩み寄る。

 

「……殺せ」

「良い覚悟だ、殺してやる! 歯を食い縛れ!」

「吉井君、落ち着いてください!」

 

 今回の戦犯である雄二を抹殺せんと飛びかかる明久を羽交い絞めにする姫路。胸の形が明久の背中に当たっていい形に潰れている。

 しかしそんな感触を楽しむ暇もないのか、明久は雄二のトドメを刺そうと必死だった。

 

「だいたい、53点ってなんだよ! 0点なら名前の書き忘れとかも考えられるのに、この点数だと―――」

「いかにも俺の全力だ」

「この阿呆がぁ―――!」

 

 雄二の作戦は完璧だった。本当に完璧だった。Aクラスも倒せるほぼ完璧な戦略だった。

 ……問題は、雄二の学力を計算に入れなかったことだ。

 

「アキ、落ち着きなさい! アンタだったら30点も取れないでしょうが!」

「それについては否定しない!」

「それなら坂本君を責めちゃだめですよ!」

「何故止めるんだ二人とも! この馬鹿には喉笛を引き裂くと言う体罰が必要なのに!」

「それは体罰じゃなくて処刑です!」

 

 美波と姫路が必死に明久を止めようとしている。

 

「……川上」

 

 すると、僕のことに気づいた霧島が話しかけてきた。

 

「テストお疲れ、霧島。いやぁまいったまいった。あと少しだったんだけどなぁ」

「……でも危なかった。雄二が所詮小学校の問題だと油断しなければ負けてた」

 

 霧島の言う通り、今回の件は雄二の慢心が敗北を呼んだ。もし雄二が慢心せず小学生のテストの問題も余裕なぐらい勉強していれば、今回のようなことは起こらなかっただろう。やっぱ勉強って大事なんすね。

 

「「代表!」」

 

 霧島と話していると、視聴覚室の入口から叫び声が響く。見てみるとそこには木下姉と工藤愛子が立っていた。僕の方をキッと睨みつけている。

 

「その男に近付いちゃ駄目よ代表!」

 

 木下姉が叫ぶ。

 

「そんなセクハラの塊みたいな人と一緒に話していたら、妊娠させられちゃうわよ!!?」

 

 人間は喋っているだけで妊娠はしません。これ常識。

 

「……大丈夫。川上はいい人」

「良い人!? アタシと勝負してる最中にパンツを要求するような男が!?」

「そうだよ代表! さっきまで見てたよね!? ボクにセクハラの爆撃をして恥をかかせたんだよ!?」

「「こんな性犯罪者がいい人なわけない(でしょ)(よっ)!!」」

 

 失礼な。性犯罪者扱いされるなんて不名誉甚だしい。誠に遺憾である。

 

「……優子はともかく、そもそも川上になんでも訊いてと言ったのは愛子」

「うぐっ……」

 

 痛い所を突かれたからか、工藤が言葉を詰まらせる。

 

「そうだぞー工藤。純情な男子高校生をからかうからさっきみたいな目に遭うんだぞー」

「キミのどこが純情なのさっ!?」

 

 360度どこからどう見ても純情だよ。純粋にスケベなだけだよ。

 

「だからそれぐらい大目に見てよ処女ビッチ」

「処女ビッチって言うなぁ!」

「……愛子、可愛い。でも川上、愛子をいじめちゃダメ」

 

 霧島に注意されてしまった。まあ、今回はこの辺にしておこう。

 

「覚えておいてよね川上君……!いつかお返ししてあげるんだから……!」

「マジで。楽しみにしておくよ」

「フン! その余裕な態度がいつまでも続けられるとは思わないでよね!」

 

 工藤はそう言ってフンと鼻を鳴らした。またずいぶんと嫌われたなぁ。

 

「それにしても、今回は慢心ってやっぱいけないってことで教訓になったよ」

「……川上、悔しくないの? 何故か楽しそう」

「いやあ、ここまで大どんでん返しだと逆に笑えちゃってさ。オチが綺麗に決まってるし、今までの雄二の言動を思い出してみると笑えちゃってさ……」

「やめろ……」

「『じゃあな、お前ら。あとでAクラスの教室でな!』なんてドヤ顔でサムズアップしてたくせにフッツーに負けてさ」

「ヤメロ……」

「『大化の改新が起きたのは、645年。こんな簡単な問題は明久ですら間違えない。だが、翔子は間違える。これは確実だ。そうしたら俺達の勝ち。晴れてこの教室とおさらばって寸法だ』ってキメ顔で言ってこのザマ。無様。マジうんこだよ。はーつっかえ。うちの代表、ホントまじつっかえ」

「……雄二」

「ヤメロォォォオオ!!」

 

 雄二の叫び声が響く。自信満々に勝利を宣言しておいて負けたんだから、格好がつかないにもほどがある。クソダサい。

 それにしても綺麗な敗北フラグだった。そのフラグを構築してから回収するまでまるでギャグ漫画みたいなオチだった。そのうちこれで小説を書こう。

 

「負け惜しみみたいになるけど、実は今回は勝てなくてよかったとちょっと思ってるんだ」

「……何故?」

「雄二の作戦は確かにすごかった。事実2回も試召戦争を勝ち抜いてAクラスを追い詰めた。でも、勝った後どうするか(・・・・・・・・・)何も教えられてなかったんだ。仮に今回勝ってAクラスと設備が交換できても、その後EクラスかDクラス、最悪Bクラスが攻めてくる。それをどうやってやり過ごすか僕は不安だったんだ」

「……なるほど」

「ところで霧島」

「……何?」

「あれがあるでしょ。約束」

「……もちろん。分かってる」

「じゃあ、さっそく内容を言ってもらいましょうか」

 

 負けた方が、なんでもひとつ言うことを聞く。

 

「…………!(カチャカチャカチャ!)」

「流石はムッツリーニ。準備が早い!僕も何か手伝いを――」

 

 明久と康太はカメラの準備をしているが、僕は何も言わない。

 

「……雄二。約束」

「分かっている。なんでも言え」

 

 潔い雄二の返事。おそらく、霧島が何を命令するのか分かっているのだろう。

 

「……それじゃあ――」

 

 霧島が姫路をちらっと見た後、再び雄二に視線を戻す。

 

 

 

 そして、普段は無表情な彼女にしては珍しく緊張した面持ちで、こう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……雄二、私と付き合って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はい?」

 

 

 

 

 

 明久と康太、そして他のクラスメイト達も霧島の言葉に呆然としている。

 

 

「やっぱりな。お前、まだ諦めてなかったのか」

「……私は諦めない。ずっと、雄二のことが好き」

 

 

「え、え? どういうこと? どうして霧島さんが雄二に交際を迫っているの?」

「霧島が好きなのは女子じゃなくて、雄二だったってだけだよ」

「宗一! 宗一は知ってたの?」

「まあね。散々惚気られたし」

「じゃあ霧島さんが異性に興味がないっていう噂は――」

「一途に雄二を想っていたから」

「姫路さんを見ていたのは――」

「雄二に近い女子を警戒してたからだよ」

 

 電話で『……雄二って姫路のことが好きなの?』とドス声で訊かれた時は少しちびりました。ええ、ちびりましたとも。

 

「拒否権は?」

「……ない。約束だから、今からデートに行く」

「ぐぁっ! 放せぇっ! やっぱりこの約束はなかったことに―――!」

 

 霧島が雄二の首根っこを掴んでずるずると引きずる。

 しかし、僕は二人を通せんぼするように前に立ちふさがる。

 

「霧島」

「……川上」

「宗一! さすがだ、助けてくれるのかっ!」

 

 雄二が心底嬉しそうに声をあげる。

 だがしかし。

 

「よかったね、霧島。これで霧島の夢だった『好きな男の子と映画館に行く』という夢が叶ったじゃないか」

「……うん。イメージトレーニングは川上の漫画で予習した」

「よし。イイゾ。逃げられそうになったらスタンガンを食らわせてやれ」

「……分かった」

「おいお前ら!? 何不穏な会話をしてやがる!? というより宗一お前、翔子が今言っていた『川上の漫画』ってなんだ!?」

「雄二」

 

 引きずられている雄二の肩に手をぽんと置いてあげる。そして、雄二の眼を真っ直ぐ見て、僕は言ってあげた。相手に不快を抱かせないよう微笑みながら。

 

「……霧島翔子は、先週からムッツリ商会の上客だよ。『雄二と私のカップルデイズ』という薄い本をいつも買ってくれるお得意様だ」

「貴様、宗一ィ――――――――!! なんてもんを、よりによって翔子に売ってやがんだぁ―――――!?」

 

 雄二が叫ぶが、僕は聞こえないふりをした。

 そもそも、これは完全に雄二が悪い。これは小学生の頃から霧島の想いを無視し続けたツケであり、『なんでも言うことを聞く』という約束を安請け合いしてしまった雄二の自業自得であり、そしてこれは僕からの仕返しだ。

 53点って。もうちょっと頑張れよ。

 

「まあ大丈夫だよ。霧島はちょっとアレだけどきっと雄二を幸せにしてくれる。気にすんなよ。くよくよすんなよ。大丈夫、どうにかなるって。Don't worry。Be happy」

「爽やかな笑顔で言われても全然安心できねぇ!」

「あ、そうだ霧島」

「……何?」

「はいコレ」

 

 

 ポン ジャラララ ← 手錠を霧島に渡す

 

 

「これ使って」

「……ありがとう、川上はいい人」

「どこに持ってたんだそんなモン!この変態糞野郎がっ、くそ、俺は家に帰―――グボホァ」

 

 手刀が霧島から放たれ、雄二の首元に命中する。

 恐ろしく早い手刀。僕じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 

 そして一撃で意識を刈り取られた雄二の手首にがっちりと手錠を嵌めた霧島は、雄二の首根っこを掴んでずるずると教室から出て行った。

 

「お幸せに~~~~~」

 

「………………」

「………………」

「………………」

 

 教室にしばしの沈黙が訪れる。僕以外の全員、あまりの出来事に言葉が出ないようだ。

 

「さて、Fクラス諸君。お遊びの時間は終わりだ」

 

 すると、野太い聞き覚えのある男の声が響く。

 教室の入口を見てみると、生活指導の西村先生が立っていた。

 

「あれ? 西村先生、僕らに何か用ですか?」

「ああ、今から我がFクラスに補習についての説明をしようと思ってな」

「え? 我がFクラス?」

「おめでとう。お前らは戦争に負けたおかげで、福原先生から補習授業担当のこの俺に担任が変わるそうだ。これから一年、死に物狂いで勉強できるぞ」

『なにぃ!?』

 

 クラスの男子全員が悲鳴をあげる。

 生徒指導鉄人。

 この人が恐れられているのは持ち前の厳しさもあるが、『鬼』と呼ばれるほどの厳しい授業をすることで有名だからだ。

 特に明久や雄二にとっては天敵だろう。不良素行が目立つ生徒には持ち前の肉体で鉄拳制裁をするのだから。

 

「鉄人先生がうちの担任……適材適所ですね(白目)」

「西村先生だ。喜べ川上。お前も吉井達と一緒にしっかりと教育してやる。お前のその捻じ曲がった性癖をしっかり叩き直してやる」

「いや、先生。実は割と今の性格気に入ってるんです。人からの評価が自分の価値観を変化させやすくなってしまっている今の時代、自分が自分を好きになるっていうのは結構希少で素晴らしいことだと思いません? なので洗脳は勘弁してください」

「人聞きの悪いことを言うな。これは洗脳ではない。立派な教育だ。あと哲学風に語って自分の変態性がまるで問題なくいいことのように話を挿げ替えるな」

 

 教育と言えばなんでもやっていい時代ではないんですよ先生!

 

「それと、さっきのセクハラの言動について、まだ処罰は終わっとらんぞ?」

「ゲェッ!? さっき拳骨したじゃないですか! あれで終わりじゃないんですか!?」

「あの後、Aクラスの女子生徒による『川上宗一を補習室に監禁してほしい』という要望が多くてな」

 

 ちらりと工藤と木下姉の方を見ると、木下姉は「当然よ」と言わんばかりにこっちを睨みつけ、工藤はこっちを見て「あっかんべー」をしていた。しかも二人の後ろにはたくさんの女子生徒がこちらを睨みつけている! おそらくAクラスの女子生徒達だろう。あの野郎! 違う、女郎! 恐らく木下がAクラスの女生徒達を先導して、鉄人に僕を売ったな!? あと工藤、そのあっかんべー可愛いんでモデルにさせてください!

 

「いいか。確かにお前らはよくやった。Fクラスがここまでくるとは俺も正直思わなかった。でもな、いくら『学力が全てではない』と言っても、人生を渡っていく上では強力な武器の一つなんだ。全てではないからと言って、ないがしろにしていいものじゃない」

 

 先生のありがたいお説教。正論でかっこよくて、僕が女だったら惚れてるまであるんだけど、せっかくの放課後という名の自由を潰すのは勘弁してくれませんかね。

 

「吉井。お前と坂本、そして川上は特に念入りに監視してやる。なにせ、開校以来初の『観察処分者』とA級戦犯、そして変態だからな」

 

 先生、変態呼ばわりされるとちょっと悲しいです。

 

「そうはいきませんよ! なんとしても監視の目をかいくぐって今まで通りの楽しい学園生活を過ごしてみせます!」

「……お前には悔い改めるという発想はないのか」

 

 ため息交じりのセリフ。明久らしいが、鉄人先生が担任となった今、今まで通りとはいかないだろう。

 

「とりあえず明日から授業とは別に補習の時間を二時間設けてやろう」

 

 地味にきつくてつらい提案が!嫌だ!それだけは嫌だ!

 

「先生、明日から急に体調がアレがアレしてアレするんで補習は欠席していいですか?」

「腹痛か? 大丈夫、気のせいだ」

 

 何その根性論!?

 おのれ、どうやってサボれば……そんなことを考えていると。

 

 

 

「さぁ~て、アキ。補習は明日からみたいだし、今日は約束通りクレープでも食べに行きましょうか?」

「え? 美波、それって週末って話じゃ……」

「ダ、ダメです! 吉井君は私と映画を観に行くんです!」

「ええっ!? 姫路さん、それは話題にすら上がってないよ!?」

「ほら、早くクレープを食べに行くわよ!」

「わ、私と映画に行くんですよね!」

「いやぁぁっ! 生活費が! 僕の栄養がぁっ!」

 

 

 明久がさっきの雄二のように、美波と姫路にずりずりと連行されていった。

 

 

「………………先生。僕も映画……デッドプール2観に行かなきゃ」

「お前は補習室だ。さっきの工藤へのセクハラ、たっぷり指導してやる。まずは反省文20枚」

 

 反省文20枚……20枚かぁ。放課後だけで書けるかなぁ。

 

「川上君! 私へのセクハラの件、たっぷり西村先生に指導してもらいなさい!」

「そうだよ川上君! ボクを辱めた罰として観念して……って、あっ!?」

 

 

 ダッ

 

 

「こらぁ! 逃げるな川上ィ!!」

「待ちなさい、川上君! 諦めて捕まりなさい!!」

「逃げようとしてもそうはいかないんだからっ!!」

『そうよ変態!待ちなさい!』

『あんたみたいな性犯罪者は学園の平和の為に補習室に監禁されるべきなのよっ!!』

『だから大人しくしなさぁい!!』

 

 

 後ろを振り返ると、西村先生、木下姉、工藤、そしておそらくAクラスの女子総勢20名以上が僕を追いかけてきていた。恐い!リアル鬼ごっこ恐過ぎぃ! 佐藤君の気分ってこんな感じだったんですね!?

 それか、100人の素人男性に追いかけられて捕まると×××されるシリーズ。

 

「助けてー!犯されるー!Aクラスの女子生徒達に集団逆レ〇プされるー!!」

 

『『『何を言っているのよこの変態!!!?』』』

 

 背後から女の子達による罵声。おおう、今背中がぞくぞくした。

 

「川上ィ!この期に及んでまだそんなことを言うとはよっぽど補習を受けたいようだな! 覚悟しろ!」

「できません!つい出来心で!勘弁してください!」

 

『先生、早く捕まえてください!』

『あの男を補習室に!』

『いえ、それだけじゃダメよ! 捕まえて動物病院に!』

『そしてパイプカットをするのよ!』

 

 何やら恐ろしい提案が聞こえる!

 

 

「いやだぁ――――!パイプカットだけは嫌だぁ――――!」

 

 

 ダッシュで鉄人達から逃げながら、僕は叫ぶ。

 こうして、捕まるまで僕は廊下を走り続けた。

 

 

 

 




これにて第一次試験召喚大戦、原作一巻は終了です。
最後は駆け足で書き上げてしまいましたが、いかがだったでしょうか?

感想などお待ちしておりますので、よろしくお願いします。

次回からは、1、2話ほど幕間として短編を投稿し、その後原作二巻の清涼祭編を書いていこうと思います。
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