バカとテストと変態紳士っ!   作:ガオーさん

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バカテスト 国語

問 以下の意味を持つことわざを答えなさい。
『(1)得意なことでも失敗してしまうこと』
『(2)悪いことがあった上に更に悪いことが起きる喩え』


姫路瑞希の答え

『(1)弘法も筆の誤り』
『(2)泣きっ面に蜂』

教師のコメント
正解です。他にも(1)なら『河童の川流れ』や『猿も木から落ちる』、(2)なら『踏んだり蹴ったり』や『弱り目に祟り目』などがありますね。


川上宗一の答え

『(1)釈迦も経の読み違い」
『(2)一難去ってまた一難』

教師のコメント
これも正解です。川上君は現代国語は完璧ですね。先生は「釈迦も経の読み違い」は思いつきませんでした。ばっちりです。


土屋康太の答え

『(1)弘法の川流れ』

教師のコメント
シュールな光景ですね


吉井明久の答え

『(2)泣きっ面蹴ったり』

教師のコメント
君は鬼ですか。


第一次試験召喚大戦 (原作1巻)
第一問 類は友を呼ぶ。馬鹿はバカを呼ぶ


 …………これって廃屋?

 

 二年F組……と書かれたボロボロのプレートがある教室を見て、さすがの僕も驚いてしまった。

 

「これはひどい。何がひどいって、どれから指摘すればいいか分からないぐらいにはヒドイ」

 

 

 埃まみれの畳、汚いちゃぶ台、隙間風だらけの窓!

 長年放置した寺子屋みたいな場所だ。昭和時代の学校か? かろうじて教室の体裁を保てているけど、廃墟とさほど変わりはない。これがFクラスか……。

 中に入ると、何人かがすでに席……ちゃぶ台についている。

 その中には見知った顔が何人かいた。

 僕は窓から校門近くにいる女子生徒を双眼鏡で眺めている男子生徒に声をかけた。

 

 

「康太」

「…………宗一」

 

 双眼鏡から顔を上げたのは、去年からつるんでいた僕の親友の土屋康太。またの名をムッツリーニ。小柄で声が小さい男だが、一番気が合う友達だ。いや、友達と言うよりもうすでに相棒と言ったほうがしっくりくるレベル。

 

「久しぶり。康太もFクラスだったみたいだね」

「…………保健体育だけじゃAクラスはダメだった」

 

 少しだけしゅんとして項垂れながらつぶやく康太。

 もし保健体育だけでAクラスに行けたらこの学校のシステムを根本から見直さなきゃいけないだろう。

 

「僕も現国だけじゃダメだった」

「…………当然」

 

 ついさっきまで保健体育だけでAクラスに行こうとしてた奴のセリフとは思えない。

 

「そういえば昨日のニュース見た?」

「…………ニュース? そんなものに興味は」

「アナウンサーがパンチラしてたよ」

「…………いくら?」

「100円」

「………助かる」

 

 僕は鞄からニュース番組を録画したDVDを康太に渡し、僕は百円を受け取った。

 

「………次の作品はいつ出来上がる?」

「明後日には出来上がるよ」

「………了解。顧客は用意しておく」

「こっちも助かるよ。康太のおかげでこっちも潤う」

「………問題ない、宗一のイラストと小説は人気がある。売り上げの10%は」

「仲介料としてムッツリ商会に譲渡する、だね。新しいカメラは買えそう?」

 

 康太はそう言ってサムズアップした。

 うむうむ、お互いに利益しかない取引。よきかなよきかな。

しかし康太は少しだけ申し訳なさそうな顔をしながら言う。

 

「…………けど、いいのか?」

「何が?」

「…………宗一の作品は価値がある。もっと高くても釣りが来る。…………あんな価格でいいのか、時々不安になる」

「いいんだよ、利益目的じゃないんだから。僕はイラストが描けて、それが人の眼に触れられればとりあえずそれでいいんだし。あんまり気にしないで。康太と僕の仲でしょ?」

「…………分かった」

「それでも気になるなら、今度康太の1番の写真を見せて。それでチャラってことで」

「…………任せろ(グッ)」

 

 僕の目的はお金じゃない。学生の身分で大金持ってたってあれだからね。高く売るんじゃなくていろいろな人に触れてもらうことが重要なんだ。

 それに康太にはお世話になってるからね。エロ本コレクションとか、写真とか。

 

「よお、宗一、ムッツリーニ。また何かスケベなことを企んでいるのか?」

「雄二」

 

 声がした方を振り向くと、話しかけてきたのは僕らの悪友の一人である坂本雄二だった。相変わらずのチンピラ風だ。

 

「…………スケベなことなんて企んでない」

 

 ムッツリーニは不満げにそう言う。相変わらずのむっつりスケベっぷり。さっきまで双眼鏡で女子生徒の定期バスト成長チェックをしてたくせに。まああとで僕も見せてもらうけどさ。

 

「雄二もFクラスに?」

「ああ、俺が代表だ。頼むぜ、『変態紳士』」

「…………変態は認めるけど『変態紳士』はやめろ」

 

 そう呼ばれると某クマを思い出すから少し複雑だ。

 

「まあそう嫌がるなって。……ん?なんだこの紙」

 

 雄二はそう言って僕の鞄からはみ出した紙を取り出した。

 

「あ、それは」

 

 僕が止める暇もなく、雄二はそれを見た。

 

 

(ピラッ)→坂本雄二が裸Yシャツで吉井明久らしき男の子を抱き締めているイラスト

 

 

「おいこら宗一、一体これはなんだ……?」

「あははは雄二、君がアイアンクローをしたら僕のこめかみが割れるように痛いぃぃいいいいい!!! はみ出る!! 僕の脳みそがはみ出るゥぅぅ!」

「…………一部の女子に大人気(グッ)」

「お前ら本人に無許可でなんておぞましい物を売ってやがる!?」

 

 なんて失礼な。「雄二×明久 ~俺達の友情は愛情に~」は女子達に大人気だと言うのに。

 

「だってさ、雄二と明久ってどう考えてもカップルでしょ? 雄二×明久だって女子生徒の間では有名になって僕の右手首に裂けるような痛みがああああああ!!!」

「なんでよりによってそんな吐き気を催すモンを描かれなきゃいけねえんだ! 無駄にうまく描きやがって!」

「いいじゃん別に。女子に大人気だよぉぉぉぉおおおいだいいいい!!ギブ、ギーブ!! やめて!! 右手首は作家にとって命だからァァァ!!」

「こんな風に女子にモテたくねえ!」

 

 雄二はそう言って僕を解放した。いてて……こめかみと手首壊れてないかな?

 

「まったく、ムッツリ商会と宗一の才能が組まれるとマジで手がつけられねぇ……。まあいい、儲けてる分、試召戦争ではしっかり働いてもらうぞ」

「……しょうがない」

「……分かったよ」

 

 まあ、雄二たちをネタに儲けさせてもらってるのは事実だし、ここはその分働かせてもらいましょうか。

 

「お主らは相変わらず騒がしいのう」

「秀吉! 秀吉もFクラス?」

 

 雄二の後ろから話しかけてきたのは女子、ではなく男子、でもなく男の娘の木下秀吉だった。

 相変わらず可愛い奴だ。

 

「(やったぜ康太、秀吉が同じクラス!これで康太は写真、僕はネタに困らない!)」

「(…………幸運。いろいろと捗る)」

「……何か今、不穏な単語が聞こえたんじゃが?」

「気のせい気のせい。それよりほら、頼まれていた物」

 

 僕はそう言って鞄からある物を取り出す。

 

 

(チラッ)→秀吉が猫耳を装備して上目遣いしているイラスト(乳首が見えている)

 

 

「(ババッ)間違えた」

「ちょっと待てお主! 今儂の絵が見えたぞ! しかもそれ、儂の裸―――」

「気のせい気のせい。ほら、こっち」

 

 今度こそ間違えずに例の物を取り出す。

 

「むぅ、まだ納得がいかんが……とりあえず、感謝するぞ」

「何だ?その分厚い紙の束」

 

 雄二が僕が秀吉に渡した紙の束を覗いてくる。

 

「なんだこれ? 台本か?」

「そうじゃ。次の演劇部で演じる台本じゃ」

 

 僕は小説や漫画、イラストを描くのが得意だ。それを知った秀吉が、こうして時々話を書くようお願いしてくる。

 特に断る理由もなかったし、演劇用の話を書くのはそれはそれで面白かったのでこうやってちょくちょく書いているのだ。

 ちなみに今回は新入生歓迎会用の演劇で使う台本だということで、少し短めだ。

 

「宗一は物語を書くのは一流じゃからのう。よくこうやって頼んでおるのじゃ」

「確かにな。こいつが書く話は面白い」

「………センスがいい」

「はは、褒め言葉として受け取っておくよ」

「代わりに理系科目がクソ雑魚なめくじだが」

「orz」

「そういえば、明久はまだ来ておらんのか?」

 

 秀吉が教室を見渡しながらそうつぶやく。そう言えばまだ僕らを代表するバカがいないね。

 

「…………あそこ」

「「「ん?」」」

 

 康太が窓の外を指差した。そっちを見てみると、校門で鉄人から結果を受け取ったらしき明久がショックを受けているのか悶絶しているのが見えた。

 

「やっぱあいつFクラスだったか」

「当たり前だよね」

「ま、当然じゃの」

「…………馬鹿代表」

「「「うんうん」」」

 

 自分達もバカだと自覚しているが、明久が代表(バカ)。それが僕らの認識だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数分後。

 

「すみません、ちょっと遅れちゃいました♪」

「早く座れ、このウジ虫野郎」

「……雄二、何やってんの?」

 

 茶目っ気を混ぜて教室に遅れてやってきた僕らの悪友、吉井明久。通称バカ。

 

「やあ、明久」

「宗一? 宗一もFクラス?やっぱり、雄二と宗一は、Fクラスだよね!」

「「明久、歯を食いしばれ」」

「何をする気!? 新学期初日から僕に何をする気!?」

 

 僕らが教壇で騒いでいると、担任の先生が入ってきて注意された。おのれ、まだ明久を殴っていないと言うのに。

 

「えー、おはようございます。このクラスの担任の福原慎です。よろしくお願いします」

 

 先生は黒板に自分の名前を書こうとして、止めた。チョークないんかーい。

 

「皆さん全員に卓袱台と座布団は支給されていますか?不備があれば申し出て下さい」

 

その言葉を待っていたかのようにクラスメイト達の不満が飛び交う。

 

「せんせー、俺の座布団に綿がほとんど入ってないです!」

「あー、はい。我慢してください」 

「先生、俺の卓袱台の足が折れています」 

「木工用ボンドが支給されていますので、後で自分で直してください」 

「センセ、窓が割れていて風が寒いんですけど」 

「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」

 

 Fクラスにはどうやら人権はないようだ。

 まあ、当然と言えば当然かもしれない。去年から先生達に言われていたことだ。「Fクラスは最低だぞ」って。

 よりよい設備、よりよい学園生活を送りたいのならば勉強をしろ。入学した日から先生達が口を酸っぱくするぐらいに言ってきたことであり、それをしなかった僕らに文句を言う筋合いはないのだ。

 そんなことを考えていると、廊下側から席順に自己紹介が始まっていた。

 僕の友人たちも、次々と自己紹介を始めている。

 

「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」

 

 我がクラスの男の娘、木下秀吉。

 

「………土屋康太」

 

 趣味は盗撮、エロ本蒐集。僕の親友、土屋康太。

 

 

「島田美波です。生まれは日本ですがドイツ育ちなので日本語の読み書きはあまりできません。趣味は吉井明久を殴る事、特技は川上宗一を蹴る事です♪」

 

 

「「誰だっ!?恐ろしくピンポイントかつ危険な趣味(特技)を持つ奴は!」」

 

 

「はろはろー」

 

 笑顔で僕らに手を振るのは、島田美波だった。Fクラスだったんだ。あれだけ日本語教えたのに……。

 まあ、一年生の時、ふざけて「日本で人に好意を伝えたい時は『一緒に寝て』って言うといいよ」と教えたのは間違いだった。本当に明久にそんなことを言うとは思わなかったもの。あれ以来僕に対する当たりが強くなったのは気のせいじゃないと思う。

 でもスカートで躊躇なく蹴りをするからスカートまくれて見えるんだよね。暴力系ヒロイン最高!

 

「あう、島田さん……」

 

 けれど明久はそんなに嬉しくないらしく、顔色はよくなかった。明久、島田の君に対する暴力の半分は照れ隠しみたいなもんだから、別にいいじゃない。そんな困った風な顔するなよ。

 

「今年もよろしくね、吉井、川上」

「よろしく、島田。今年もいいパンチラ期待してあべしっ!」

「アンタは今年も蹴り甲斐がある奴ね……!」

 

 ふわりと浮かぶスカート。一瞬見えたライトグリーンの下着。そして畳に顔を付けてふわりと浮かぶスカートを覗き込む康太。畳に叩きつけられてK.Oされる僕。 

 

「宗一……島田さん相手に躊躇いなくそんなこと言うなんて君の勇気にはいつも驚かされるよ……!」

「ただのオープンスケベだろ」(雄二)

「変態紳士に恥じない行いじゃ」(秀吉)

「………!(ブシャアアアア)」(康太)

「ほら川上、次はアンタの自己紹介よ」

「あの、島田さん?僕今蹴られて立てないんだけど。あそこは立ってるけど」

「……っ!この変態!」

「ありがとうございまへぶぅ!」

 

 倒れた僕の顔面を踏みつけられる僕。うーん、島田の蹴りは相変わらず健在なようだ。

 まあ、なんやかんや言っても根はいい人なのに違いはないし、明久と島田の絡みは面白いから、これから楽しくなりそうだ。

 

「川上宗一。よろしく」

 

 ふらつきながらも僕は立ち上がってさっさと自己紹介を済ませる。そして他の生徒の自己紹介がどんどん終わって、次は明久の番だ。

 

 

「吉井明久です。僕の事は『ダーリン』って読んでください♪」

 

 

「「「「「ダーーリィィーーーーーン!!!!」」」」」

 

 

 野太い男の大合唱。これはひどい。 

 

 

「――失礼、忘れてください。とにかくよろしくお願いします」

 

 

 青ざめながら座る明久。ちょっと場を盛り上げようとしたら予想以上にFクラス男子のノリがよく、男どもの声は明久の耳に大ダメージを与えた。吐き気をこらえてるのだろう。まあ、大勢の男共から「ダーリン」(最愛の人)なんて呼ばれたら吐き気がするのも仕方ないネ。

 

 

 

 そんな明久の心情は無視して自己紹介は続いていく。そろそろ終わりかと思った頃―――

 

 

ガラガラガラ

 

 

「あの、遅れて、すいま、せん……」

 

 

『え?』

 

 

 彼女はやってきた。




次の話は来週の土曜です。
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