バカとテストと変態紳士っ!   作:ガオーさん

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第十二問 オクスリ・ダメ・ゼッタイ

―――――Fクラス教室

 

 

 

Side 川上宗一

 

 

 迫真茶道部で小暮先輩に迫られた僕に嫉妬し、怒りに狂った暴徒達からなんとか逃げ切った後。

 

 

「ねえ雄二、さっき先輩から妙な話を聞いてきたんだけど」

「なんだ、この忙しい時に」

 

 ホールで接客をしている最中、少し手が空いた雄二に声をかけた。

 

「実は常夏コンビのことなんだけど、どうやら教頭のタケ……タケシ?だっけ」

「竹原だろ」

「そうそれ」

 

 眼鏡をかけたクール知的系な先生だ。僕とキャラがダダ被りなのでぜひとも辞めてほしい。

 

「お前がクール系なわけないだろこの天然パーマ」

 

 うるさい。

 僕は周りのお客さんや接客をしている明久や美波達に聞こえないように教室の隅に移動し、小声で雄二と話す。

 

「その竹中なんだけど、常夏コンビと繋がってるみたいなんだ。先輩に話を聞いてみたら、清涼祭が始まる前からちょくちょく接触があったみたい。今回の清涼祭であった常夏コンビの妨害、全部竹松が差し向けたことなのかも」

「…………ふむ」

 

 そう言うと、雄二は口に手を当てて考え込む。そして僕の方をちらりと見て言う。

 

「宗一、お前はどう見る」

「どうって?」

「竹原がそんなことをする理由だ。Fクラスの妨害なんてして、何の得がある?」

「動機ってこと?――それはどう考えても」

 

 

「「試験召喚大会の景品が絡んでる」」

 

 

 僕の答えと雄二の答えが被る。どうやら僕と同じことを考えていたみたいだ。

 

「飲茶に虫を入れたクレーム。Aクラスで流した悪評による妨害。それと、僕がサボっている間に明久が倉庫でチンピラどもに襲われそうになったんだっけ?」

「ああ。すぐに俺が撃退したがな。三流以下のチンピラだ」

 

 雄二は喧嘩慣れをしているし、そこいらのチンピラなんて取るに足らない存在だろう。……腕っぷしも強くて頭もいいとか、最近雄二はイケメソ化が進んでいる?

 

「ちなみに、どうしてそう思った?」

「気になったのは連中の妨害の仕方だよ。クレームと悪評だけなら、Fクラス単体をターゲットにした妨害行為だって分かる。Fクラスはこの学園の最底辺だからね。それに僕らは1学期初日から試験召喚戦争をやらかした。Aクラスには『調子の乗ったFクラスを制裁する』っていう大義名分がある。見せしめの為に僕らの売り上げを止めようと言うなら、この文月学園のシステムだからまだ納得はできる」

 

 2週間ほど前に僕らがAクラスに試験召喚戦争の一騎討ちを挑んだ時、木下は言っていた。

 

 

『私達Aクラスは、学園の治安と品格を守る義務があるの。一学期初日から試験召喚戦争をやらかし、何の努力もせずにAクラスに挑んできたバカへの制裁措置――あなた達にとってこの一騎討ちは設備を奪うためのものかもしれないけれど、違うわ。これは、『()()()()』よ』

 

 

 試験召喚システム。

 振り分け試験で分けられたAからFまで分けられた6組のクラスメイト。

 成績からはっきりと区分された僕らは明確に『優等生』と『落ちこぼれ』のレッテルを貼られるのだ。

 

 

 つまりこのシステム、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()部分がある。

 

 

 この学校の校風故か、生徒達の気性故か、いじめとかそう言った物は表面に出てはいないが、「Fクラスは落ちこぼれ」「所詮Fクラス」とかそう言った差別意識を持った生徒は確かにいるのも事実だ。それはもちろん先生にも。

 

 人間と言うのはひどい物で、『自分より劣っている生物』に対して嫌に強くなれる生物だ。

 

 だからその優越感に助長され僕らに進んで嫌がらせをする連中――それが例の常夏コンビ、だと思っていた。

 

「けれど、例のチンピラ連中は明久を直接狙ってきたんでしょ? 今まで回りくどいやり方の妨害が、ここに来ていきなり直接的な方法になった」

 

 雄二が頷く。

 

「なら狙いはFクラスの妨害じゃなくて、試験召喚大会に出ている明久と雄二を妨害することだって僕にも分かる。偶然にも、例の常夏コンビもトーナメントに出ているみたいだし」

 

 さっきトーナメント表を見直してみた所、ちょうど雄二達とは反対側のブロックに常夏コンビが出場していたのだ。このまま順調にいけば、決勝戦でぶつかる計算になる。

 

「じゃあなんで明久と雄二を妨害するのかってなったら、これも当然例の召喚大会に二人を勝たせたくないから――ってことになると思うんだけど、その理由がハッキリと分からない。暴力による妨害してまで、どうして景品を狙うのか。少なくとも、プレミアムチケットが欲しいだけで力ずくで妨害はしないよ」

 

 僕がそう言うと、雄二はもう一度肯定するようにしっかりと頷いた。

 

「ああ。俺もそう考えていたところだ。学園長(ババア)もまだ何か隠していることがあるようだし、俺らは如月ハイランドのプレミアムオープンチケットの為に戦わされているんじゃない。もっと別の――おそらく、景品の『白金の腕輪』が絡んでいるんだろう」

「うん。常夏コンビもそれを狙っているんだと思う。それでトーナメントに勝ち進んでいる上に、学園長がバックにいる明久と雄二を妨害してきた。でも分かんないのが、なんでバックに竹下が絡んでいるのか。「これかな?」って憶測はあるんだけど」

 

「憶測?なんだ、言ってみてくれ」

 

「……多分だけど、学園長は白金の腕輪を高得点者に使って欲しくないんじゃないかなって思えるんだ。景品の回収が狙いなら、最初からAクラスの生徒に依頼するはず。でも、学園長と竹田の狙いがチケットじゃなくて実は腕輪が目的なら話が変わってくる。そもそも学園長は生徒が将来誰と結婚しようと『知ったことじゃない』って一蹴するタイプだし。じゃあなんで学園長は腕輪を狙っているのか考えると――白金の腕輪に何らかの()()があるんじゃないかなって」

 

 

「……欠陥だと?」

 

 

 雄二が驚きに満ちた声をあげる。

 

「例えば、Fクラスレベルの低得点者以外が使うと壊れてしまうとか、そんな理由があるんじゃない?」

 

 僕がそう言うと、雄二は目を見開いた。

 

「武光は常夏コンビに白金の腕輪を使わせ、欠陥があることをスポンサーが集まる召喚大会で見せつけて、学園長の失脚を狙ってるんじゃないかなって。そういう展開の小説、僕も依然書いたことあるし、そうじゃなくても竹川が学園長を何らかの方法で蹴落とそうとしてるんじゃないかな。……雄二? どうしたのさ」

 

 僕が一通り憶測の域を出ない考察を話すと、何やら考え込むようにぶつぶつと言い出した。

 

「なるほど、欠陥か。どうりで俺達に知られたくない訳だ。あのクソババァめ。それなら話の筋が通っている」

 

「雄二?」

 

 ぶつぶつと何か言っている雄二の肩を叩くと、雄二ははっと顔を挙げた。

 

「悪い宗一。少し考えを整理していた。だがおそらく、その推測は当たっている」

「マジ? 適当な妄想なんだけど……」

「いや、これまでの状況からよく推測できた。俺もババアが何か隠していることがあるんだと思っていたが、何故俺達に白金の腕輪を獲らせようとしているのか分からず、ずっと引っ掛かっていたんだ。だが『景品の白金の腕輪に重大な欠陥がある』っていうのはまさに盲点だ。分かったところでどうにかなるわけじゃないが、疑問がひとつ消えたおかげで悩まず進める。助かるぜ」

 

 雄二はそう礼を言い、僕の肩をばしばしと叩いた。なんだろう。ドストレートに褒められるとなんだかむず痒い。

 

「さてと、そろそろ準決勝か。秀吉を呼んで、とっとと作戦を実行しよう」

 

 時計を観てみると、雄二の言う通りもうすぐ準決勝だ。決勝戦は明日の午後の予定になっているから、今日はこれがラストになる。

 

「確か対戦相手は霧島と木下姉コンビだっけ。正直きつくない?」

「ああ。だがあんなバケモノ共とまともに勝負するほどバカじゃない。今回はお前にも協力してもらうぞ」

「それはいいんだけどさ……」

 

 準決勝の科目は保健体育。「なんで準決勝で保健体育勝負してんの?」と疑問に思うかもしれないが、これも雄二の作戦の内。あらかじめ準決勝で霧島・木下姉ペアが勝ち上がってくると予想していた雄二は、あえてここで保健体育勝負を仕込んでいたのだ。

 

「まあ、ここで負けたら結婚までのカウントダウンが秒読みだもんね」

「ああ。絶対に負けられない……! 俺の人生の為に……!」

 

 雄二の気合がこっちにまで伝わってくる。これまでと違い、今回の対霧島戦には文字通り全力で挑むつもりなのだろう。目がマジだ。

 

「例え、明久の命に代えても勝ってやる……!」

 

 そこは自分の命じゃないのかよ。

 

「まあ、うまく行くといいけどね、作戦」

 

 果たして、対雄二最終決戦兵器である霧島は今回の雄二の作戦にどう対処するか。あの霧島が何もしないということに不安は残るが、なんとかするしかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――召喚大会会場 準決勝

 

 

 

 

「くっ……。すまぬ、雄二。ドジを踏んだ……」

 

「な、なんだと!? バ、バカな!」

 

 結論、雄二の作戦は失敗しました。

 雄二が仕掛けたのは木下姉弟が双子で瓜二つであることを利用した入れ替わり作戦だ。得点力の高い木下姉を秀吉とすり替え、霧島を孤立させ、明久、雄二、秀吉と霧島の3対1の状況を無理やり創りだそうという作戦だったのだが……。

 

 

「ま、匿名の情報提供があったんだけどね」

 

 

 木下姉の得意げな顔。

 なるほど、完璧な作戦っすねぇ。相手に筒抜けという点に目を瞑ればよぉー!

 姫路と美波がチャイナ服姿で大会に出て宣伝したのをオマージュ(パクリとも言う)したのか、霧島、木下姉両名ともメイド服を着ての出場である。いやぁ。お二人ともよくお似合いで。あの姿で「ご主人様」と呼んで欲しい。上目遣いだとなおよし。

 

「……雄二の考えていることぐらい、お見通し」

 

 さすが、恋する乙女だからなのか、それとも幼馴染として長い間雄二と付き合ってきた所以か、雄二の考えは霧島にトレースされていたようだ。

 現に、おそらく木下姉にボコボコにされたであろう秀吉がロープで縛られステージ脇に転がされてしまっている。裾が短く袖がないチャイナ服に身を包んだ秀吉にロープとか、はっきり言って目に毒である。

 

「まあ、相手が自称雄二の嫁である霧島だとダメだよねぇ……」

 

 会場の天井に潜んでいる僕は、2対2で睨み合う形でステージを挟む明久・雄二ペアと霧島・木下姉ペアを見下ろして呟く。こうして見ると改めて霧島の規格外っぷりには驚かされる。恋する少女の可能性は無限大なんだってはっきり分かんだね。

 会場の観客席には明久達の召喚獣の対決を見ようと大勢の人が埋め尽くされている。こうなった以上、大勢の客がいる前で下手な反則をすることはできない。それをすれば雄二達は即失格、姫路は転校、雄二は結婚ルートまっしぐらというバッドエンドだ。

 

「…………!!(パシャパシャパシャ!)」

「ムッツリーニ、いつの間に!?撮影なんかしてないで、(その写真あとで)早く秀吉の縄をほどいてあげてよ!(売ってほしい)

「明久。本音が混ざっているぞ」

 

 カメラを構え、縄で縛られている秀吉を激写する康太に自分の欲望をぶちまける明久。信じられないだろ?これ、試験召喚大会の準決勝で一般客がたくさんいるんだぜ(震え声)。

 

「…………了解」

 

 若干名残惜しそうに秀吉の縄を解く康太。その気持ちはよく分かる。

 

「……雄二。邪魔しないで。諦めて降参して」

「そうはいくか! 俺にはまだやりたいことがたくさんあるんだ!」

「……雄二、そんなに私と行くのは嫌?」

 

 霧島が涙目で雄二に尋ねる。普段クールであまり表情が変わらない霧島にしては珍しい上目遣いだ。

 こんなことをされれば大半の男子は堕ちるだろう。堕ちたなってなる。

 

「すごい、霧島さんの上目遣い……!こんな誘われ方をして、断るような奴は人間じゃない!」

 

「ああ。嫌だ」

 

「雄二は人間じゃなかった!」

 

 明久の絶叫。Fクラスが誇る赤ゴリラは幼馴染の求愛を簡単に跳ね除ける。

 

「雄二! なんてこと言うのさ!せっかく霧島さんが涙目で誘ってくれてるのに!」

「……前に、翔子に言われたんだ」

「……何を?」

「――式はどこで挙げたいと」

 

「「霧島(さん)は一途だなぁ」」

 

 僕と明久の感想がハモる。ここ最近、Aクラスに今度こそ勝とうと必死に勉強して点数をあげてるもんね、雄二。

 

「……やっぱり、一緒に暮らして分かり合う必要がある。……同棲すれば、雄二も分かってくれるハズ」

 

 断られた霧島は霧島で、戦闘する気満々のようである。「ガンガン行こうぜ」を突き進む霧島にはいつもびっくりである。いやマジびっくり。この間「彼氏と考えを合わせたいなら同棲するのが一番だよ」と霧島に適当なこと言ったのは関係ないと思いたい。

 

 

「吉井君、大人しくギブアップしてくれないかしら。弱い物いじめは好きじゃないし」

 

 木下姉はそんなことを言ってるが、ならなんでこの間見せしめの制裁を行ったんですかね。

 

「くっ……万事休すか……!」

 

 雄二が悔しそうに唸る。ことごとく雄二が立てた作戦が潰れてしまった今、将棋やチェスで言う『詰み』にはまっていると言っても過言ではない。

 この状況だと僕や康太を使った作戦も出せなくなる。なんとか霧島か、木下姉、どちらでもいいから片方が行動不能になれば明久達をサポートできるのだが……!

 

 

「こうなったら、奥の手を使うしかない!」

 

 

 すると、明久が自信満々に声を上げる。

 

 

「奥の手!? 明久、お前に策があるのか!?」

「ああ。雄二!今から僕が言う通りに台詞を言うんだ!」

「分かった、今回はお前に任せよう!」

 

 驚く雄二に、明久がぼそぼそと耳打ちをし始める。

 

「翔子、俺の話を聞いてくれ!」

 

 明久が耳打ちで指示した台詞を、そのまま言う雄二。明久が指示したと思われないよう、雄二の表情は真剣そのものだ。

 

「お前の気持ちは嬉しいが、俺には俺の考えがあるんだ!」

「……雄二の考え?」

 

 雄二の言葉に霧島が首を傾げる。

 ん? 秀吉が明久の近くに向かってる。何か指示が出たんだろうか。

 

「俺はどうしても優勝したい!」

 

 明久。君は一体、雄二に何を言わせる気―― 

 

「俺が大会で優勝したら、お前にプロポー、アイ、ッあおぉぉおおお誰がそんなことを言うかボケェ!?」

 

 自分で霧島にプロポーズする。簡単に言えば、人生の墓場に堕ちるってことで、言い方を変えれば雄二の自殺宣言である。

 おそらく明久の指示した台詞をそのまま言いそうになったのを咄嗟に止めたのだろう。

 

「……雄二」

 

 雄二がプロポーズしてくれると分かったのか、頬を赤らめうっとりする霧島。

 だがしかし、そんなことは言うまいと明久に激しく抵抗し始める雄二。

 

「うるさい!頸動脈をこうだ!(ゴキッ)」

「くぺっ!?」

 

 悲しいかな、元々明久の指示だと霧島たちに悟られぬように雄二の後ろに回っていた明久が一手有利だったようだ。あっという間に雄二を黙らせてしまう。

 

「……雄二?」

 

 霧島が続きの言葉を早く早くと待ちかねている。基本的に雄二の敵である明久はそんな霧島の期待に応えるべく、秀吉に指示を出す。

 

「俺は大会で優勝したら、翔子にプロポーズするんだ!優勝したら結婚しよう!愛してる、ショーーーコーーーー!」

 

 もはや十八番である秀吉の声真似で雄二の声をした秀吉が、霧島にプロポーズの台詞を吐いた。

 けれど、依然霧島は秀吉の声真似を見破っている。そう簡単に行くのか――

 

「……雄二。私も愛してる……♥」

 

 えぇ……(困惑)。さすがにチョロすぎやしませんかね?

 

「代表!?」

「ふははははは! これで最強の敵は封じ込めた! 残りは君だけだ、木下優子さん!」

「ひ、卑怯な……!」

 

 木下姉が悔しそうに唸る。あーもう滅茶苦茶だよ。これはもう試験召喚大会じゃないわ。ただのコントよ。

 

「くっ、私一人でも負けないわよ!試獣召喚(サモン)!」

 

 さすが木下姉、Aクラスの優等生。こんな状況でも諦めずに召喚獣を呼び出した。

 

「ふふっ。それはどうかな? この勝負の科目が保健体育だったことを恨むんだね! 行くよ、雄二!試獣召喚(サモン)!」

「ああ、分かってるぜ明久。新巻鮭(サーモン)!」

 

 雄二の声を真似した秀吉が、召喚獣を呼び出すお馴染みの呪文試獣召喚(サモン)ではなく新巻鮭(サーモン)と言った瞬間。

 ここからが僕と康太の出番である。

 

「「試獣召喚(サモン)」」

 

 僕は天井裏で、康太は召喚フィールドの床下でおなじみの呼び出し呪文を唱える。

 

 雄二曰く、ばれなきゃ反則じゃないんですよ作戦『代理召喚』である。

 

「え、それ土屋君の……!? きゃ、何!? 上から何か降ってきた……って、アレって!」

 

 すると、天井裏に潜んでいた僕とステージの上にいた木下姉と目がカチ合う。気付かれた。

 

「あの変態、今度は何を!?」

 

 悪いね木下姉。さっきは僕らが将棋やチェスで言う詰みにハマったと焦ったけど、こうなれば形成は逆転だ。今回は諦めて無前に負けて欲しい。今更僕と康太の存在に気付いたって、いろいろな意味で手遅れだ。

 けっして、前回の試召大戦で負けた腹いせではない。

 僕は召喚獣を操作し、ある物を描いてステージの上に落っことした。

 

 さて、ここで一つ補足しよう。

 僕の召喚獣は空間に絵を描いてそれを実体化させる能力を持つ。実体化できるのは架空の生物や自然現象だけでなく、武器も描くことができる。

 ピストルを描けば弾丸を出せるし、爆弾を描けば爆発する。

 ではそれらの武器の威力はどうやって決まるかというと、それは僕の召喚獣の持ち点からいくつ消費して描いたか、完全に点数に依存する。

 例えば僕の召喚獣が現代国語で300点の点数を持っていたとして、ピストルを描いた時、299点を消費して描くことができる。

 その場合、約300点近い持ち点を持った武器がその場にもう一つできると言ってもいい。腕輪を使わなければ1回しか攻撃できない、更には秀吉や康太などの召喚獣は持って使うことができないというデメリットを持つ僕の絵だが、300点のピストルなんて物で撃たれれば、並大抵の召喚獣は木端微塵だ。さらに、観察処分者である明久だけ、僕の絵を使うことができる。

 

 

保健体育勝負

 

   Fクラス 川上宗一   211点

 

       ↓

 

   Fクラス 川上宗一    1点

 

 絵を描き終えると、僕の召喚獣の点数が遅れて更新される。ふぅ、描いた描いた。

 

 

「ロケットランチャー!?」

 

 

 僕が今回描いたのはロケットランチャーだ。広範囲で爆発し、かつ高威力を持つシンプルにして最強のロケット発射器だ。

 

 

Q.210点近く消費して作った武器を持った明久と、圧倒的な保健体育力を持った康太と戦う木下姉は果たしてどうなるでしょーか?

 

 

「あれれ―!? 空から武器が降ってきたぞぉ―!? これはラッキーだなぁ!」

 

 明久は某小学生探偵のような白々しく台詞を吐きながら、天井裏から落としたロケットランチャーをキャッチし、木下の召喚獣に照準を合わせる。

 

「…………加速」

「芸術は、爆発だっ!!(バシュッ)」

 

 高速で動く康太の召喚獣、そして明久が発射したロケット弾頭が木下姉の召喚獣に迫る!

 

「ほ、本当に卑怯――きゃぁっ!?」

 

 

A.アリーヴェデルチ!(さよならだ)

 

 

ドカアアアアアアアン!

 

 

 

保健体育勝負

 

 

   Fクラス 吉井明久   89点

         &

        土屋康太   511点

 

      VS

 

   Aクラス 木下優子   321点

         &

        霧島翔子  UNKNOWN

 

 

 爆炎がステージ上に舞い、残ったのは康太に無残に切り裂かれ爆発でズタボロになった木下姉の召喚獣。

 爆発オチとかサイテーだと思います。

 

「くっ……!」

 

 木下姉は悔しそうに天井……というか僕の方を睨みつけてくる。康太の召喚獣だけならまだ咄嗟に攻撃を躱すことができたかもしれないが、迫るロケットの弾頭のせいで逃げ切れなかったのだろう。ざまあみろである。

 

「べー」

「……!」

 

 木下姉に対して僕はあっかんべーで返しておくと、木下は悔しそうに顔を赤くする。それもこれも全部木下姉が僕をAクラス出禁にしたのが悪い。メイド服、もっと観たかったんだぞ。

 

「よし、僕と雄二の勝利だ!」

「……ただいまの勝負ですが」

 

 明久が勝ち名乗りをあげたが、さすがの教師もこの事態にどうすればいいか困惑している。

 

「霧島さん、僕らの勝ちでいいよね?」

「……それは」

「愛してるぅ、翔ーーー子ーーーー!」

「……私達の負け」

「……分かりました、吉井・坂本ペアの勝利です!」

 

 秀吉の咄嗟のフォローで、口説き落とされた霧島が降参したことによりついに明久達の決勝戦進出が決まった。相も変わらずガバガバな大会である。

 観客はロケットランチャーの爆発で驚いたのか目を見開いているが。想像していた召喚獣バトルと180度違ったのだろう。是非もないよね。

 

「それじゃ、僕はこれで!」

 

 明久はぺこりと一礼し、雄二をその場に置いて教室に引き返す。僕も撤収しよう。僕はささっと天井裏から床に降り、明久達と合流する。

 

「明久、なかなかの機転じゃったな」

「…………作戦勝ち」

「ナイス明久。ロケットランチャーが上手く使えてよかったよ」

「ありがとう!三人の協力があってこそだよ」

「いよいよ決勝だね、明久。……ところで雄二はいいの?」

 

 僕はぽつりと明久に尋ねる。

 

「え、別にいいんじゃない? 雄二もたまには素直になるべきだと――」

「よいのか明久よ。霧島が雄二に一服盛って持ち帰ろうとしておるぞ?」

「あれ、なかなかのヤバイ薬だけど大丈夫かな? 見てよ、雄二の顔に死相が出てるよアレ」

「き、霧島さん! 雄二には決勝戦があるから薬は許して!」

 

 この後、タキシードを着て虚ろな目をしていた雄二は水を浸かって薬を無理やり吐かせたことで事なきを得た。

 

 オクスリ、ダメ、ゼッタイ。

 

 

 

 




感想、評価いつもありがとナス!

小暮先輩が大人気ですこしびっくりです。

早い所後夜祭で宗一達に演奏させたいので、早めに投稿です。
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