バカとテストと変態紳士っ!   作:ガオーさん

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第十三問 今からそいつを殴りに行こうか

―――――Fクラス教室

 

 

 

 

 

 

 

Side 川上宗一

 

 

 

 

 前回のあらすじぃ!

 大会から戻ってくると姫路と美波と葉月ちゃんと木下とあと何故か工藤が攫われてました。

 

 

 

 

「というわけで僕らが留守をしている間の最高責任者である須川さん、何か言い訳ある?」

 

 ホイホイと姫路たちに連れていかれてしまった須川達をロープで縛って尋問する。決して普段やたらと僕を処刑しにかかってくる意趣返しではない。

 

「違う!俺はちょっとトイレに行ってただけだ! 責任ならチンピラにすぐにやられた福村にある!」

「はぁ!? 俺に責任をなすりつけるなクソ野郎!川上、俺じゃなくて横溝だ!横溝はチンピラに土下座してたぞ!」

「な、福村、そりゃねーだろ!? 川上、福村は適当な嘘を言っている! 奴こそ責任を取らせて処刑するべきだ!」

「……ねえ、一言いいかな」

「なんだ、川上」

「チンピラにこうも簡単に攫われるから、君らはモテないんじゃないの? 肝心な時に女の子一人も守れないとか、男としてどうなの?はぁーつっかえ」

 

『『『がはっ!!!?』』』

 

 

 ……会話を聞いてもらえば分かる通り、Fクラスの連中はやっぱり基本的にクズの集まりなんだってはっきり分かんだね。何の惜しげもなくクラスメイトを売る辺り、最低としか言いようがない。

 僕は溜息を吐きながら教室を見渡す。

 テーブルや椅子が倒れ、飲茶を入れるための椀やお皿がいくつか割れてしまって床に破片が散乱している。多分、教室に押し入ったチンピラどもが姫路たちを連れていく際、一悶着があったのだろう。クラスメイト達も抵抗していたようだが、よりにもよって雄二と明久がいない、そしてシフトが薄く人がいない時間帯を狙われてしまったようで、あっけなくFクラスのウェイトレス+メイドは連れていかれてしまったのだ。

 霧島によって薬を盛られた雄二を助ける為、明久と一緒に薬を吐かせるため時間をとられている間に狙われてしまったので、僕達は何もできなかった。教室の状況をリアルタイムで把握していた康太に報告をもらい、急いで駆け付けてみたものの、戻ってみれば後の祭り。今の惨状が広まっていた、というわけだ。雄二曰く、『俺や明久と直接やりあっても勝ち目がないと考えたんだろう』とのこと。暴力が使えないなら人質を、ということなのだろう。これも竹原の指示かどうかは分からないけど……もしそうだとしたら本当に許せない。

 工藤はおそらく……いやなんでここにいたのかよく知らないけど、Fクラスのウェイトレスと間違わられて連れていかれてしまったようだ。Fクラスの生徒は女子が数名しかいないので、ついで感覚で連れていかれてしまったんだろう。

 

「とりあえず、君らは『VRホモビ鑑賞』の刑に処す。いやーよかった。知り合いが押し付けたこのBD、処理に困ってたんだよね。とりあえず君らに観賞する権利をあげよう。スキップ早送り一切なし。ちゃんと最後まで見せてやるぞー」

 

「な、それは!? お願いだ川上!どうかそれだけは!!」

 

 須川が土下座して懇願するが、慈悲はない。普段「FFF団」とか変な自警団みたいなことしてて、いざと言う時役に立たないんだからここで僕に許しを乞うても意味はないのだ。決して普段の仕返しとかではない。

 

「拒否権はない。さぁ康太、やるぞー」

「…………(コクリ)」

 

『『『いやぁぁぁぁあああ!!!』』』

 

 

 

 

 

Side 吉井明久

 

 

 

『やめ、や”め”でぐれぇ”ぇ”ぇ”ぇ”』

『イヤ、イヤアアアアアアア』

『殺してぐれぇぇぇぇぇいっそ殺してぐれよぉぉぉお!!』

『うぐっ……うぉえっぷ……えぇん』

 

 

「何やってるんだあいつらは?」

「さぁ……宗一達にVRゴーグル被せられてから、ずっとああなんだけど……」

 

 ロープに縛られ、ゴーグルらしき機械を目元にかけたクラスメイト達が汚い嗚咽と鼻水を吐き出しながら泣き叫んでいる。仮にも今年で16歳になる彼ら男子高校生たちがマジで泣きながら許しを乞うている。一体、彼らは何を見せられているのだろうか?

 

 

「ごめん、お待たせ」

「…………ウェイトレスがどこに行ったか、突き止めた」

 

 そしてこの光景を生み出した張本人、変態紳士とムッツリーニが戻ってくる。

 

「遅いよ宗一、ムッツリーニ! 何してたのさ!」

「無能な役立たず共に『●乱テディベア』ってホモビ観せてるんだけど。VRで」

 

 なんて残酷な処刑方法なんだ。●乱テディベアって、響きはぱっと訊いた感じ可愛いタイトルだけど、宗一が持っていたビデオなんだから絶対ニッチな内容に違いない。

 

「何、明久も興味あるの?」

「…………引く」

「あるわけないでしょ!ていうか、そんなジョーク言ってる場合!?」

 

 雄二は姫路さん達に何かが起こるって予想してたみたいだけど、今回の妨害はさすがにシャレにならない。下手したら警察沙汰だってありえる。

 

「そうだね。R-18のレイ●物みたいな展開になる前に、さっさと連れ戻そっか。雄二、連中の場所分かったよ。盗聴マイクの記録によると、近くのカラオケに連れてったみたいだ」

「よくやった。さすがムッツリ商会の創設者だ」

 

 雄二はにやりと悪そうな顔をする。盗撮カメラや盗聴マイクを至る所に趣味で取り付けているムッツリーニ商会の情報を使えば、奴らの居場所なんてすぐ分かるのだろう。

 敢えてなんで盗聴器なんて物を持ってるか訊かない。クラスメイトから犯罪者なんて出したくないし。

 

「さーて、場所が分かったのなら簡単だ。かる~くお姫様たちを助け出すとしましょうか、王子様?(ニヤニヤ)」

「いいぞー明久。主役は君だぞー(ニヤニヤ)」

「そのニヤついた目つきは気に入らないけど、今回は雄二と宗一に感謝しておくよ。姫路さん達に何かあったら、召喚大会どころじゃないしね」

「よーし。今から一緒に、殴りに行こうか」

「え? 何それ」

 

 宗一が口ずさんだ歌詞に僕が首をかしげると、宗一は信じられない物を見たかのように眼を見開く。

 

「嘘だろお前。チャ●アス知らないとか明久、君って本当に日本人? チャゲ●スは義務教育期間中の必修科目でしょ常識的に考えて。中学校からやり直して、どうぞ」

「なんで歌を知らないだけで中学生からやり直さなきゃいけないんだよ! そんなのが必修科目なわけないだろ!」

「もしくは『学校へ行こう』を観て」

 

 それ数年前に終わった番組じゃなかったっけ。観れないよ。

 

「康太(パチン)」

「…………(コクリ)」

 

 宗一が指ぱっちんで合図すると、いつも寡黙で物静かなムッツリーニが突如身体を揺らしてリズムを取りながら静かに口を開く。

 突如宗一とムッツリーニのデュエットが始まる。二人ともノリノリに身体を揺らしながら、黒板消しをマイクに見立てて熱唱し始める。

 

「「いーまからいぃーっしょにぃ、これからぁーいぃーっしょにぃー、なぐりに、ゆこーかぁー!」」 宗一とムッツリーニのハモリ

 

「●ャゲアスやめろお前ら」

 

 呆れ顔の雄二が溜息を吐きながら二人のデュエットを無理やり止めた。二人は「ここからがいいところだったのに」とでも言いたげな顔をしながらしぶしぶと歌うのを止めた。

 それにしても、二人ともすごい楽しそうに歌ってたなぁ……今度、宗一達と一緒にカラオケ行こう。

 

「ていうか宗一、お前喧嘩できんのか?」

 

 雄二が不安そうに言う。

 

「もちろん。刃牙全巻を読み、そして龍が如くシリーズを制覇した僕に不可能はない」

「ダメだ雄二、このバカは使えない」

「なんでさ」

 

 格闘漫画を読んだだけで強くなれたら苦労はしない。

 

「とにかく、まずはあいつらを助け出そう。ムッツリーニ、宗一。タイミングを観て裏から姫路たちを助けてやってくれ」

「「了解」」

 

 そう言ってムッツリーニと宗一は教室から飛び出していく。

 

「雄二、僕らはどうするの?」

「決まってるだろ」

 

 雄二の茶目っ気たっぷりの目がこちらを向く。

 

「お姫様をさらった悪者を退治するのさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――カラオケ店 廊下

 

 

 

 

 

 

 

Side 川上宗一

 

 

 

「さてどうする? 坂本と――吉井だったか? そいつら、この人質を盾にして呼び出すか?」

「待て。吉井ってのは知らないが、坂本は下手に手を出すとマズイ。今はあまり聞かないが、中学時代は相当腕を鳴らしていたらしいからな」

「坂本って、まさかあの坂本か?」

「ああ、できれば俺もことを構えたくないんだが……」

 

 文月学園から5分ほど歩いた場所にあるカラオケボックス。

 そこの、パーティ用の個室。通常の個室よりも広めのパーティールームには7人ほどのガラが悪いチンピラ達と、連れ去られていた姫路、美波、葉月ちゃん、秀吉(何故か縄で縛られている)、そして工藤が部屋のソファに座らされていた。秀吉は悔しそうに歯ぎしりし、少女たち4人は恐怖と不安に染まった表情をしている。連れされてからまだ30分も経ってないけど、どうやらまだR-18展開にはなっていないようだった。

 

「どうもー、注文していたからあげとポテトをお持ちしましたー」

「…………灰皿をお取替えします」

 

 僕とムッツリーニは店員に扮して部屋に侵入する。明久達より先にカラオケ店員の制服をパクリ借り、新人バイトのフリをしてチンピラ達がどの部屋に入ったか確認していたのだ。

 

「(…………確認。人数は7人)」

「(OK、雄二に伝える)」

 

 僕はチンピラ達に見えないようにポケットでスマホを操作し、情報を雄二と明久に伝える。

 もちろん、店員のフリは忘れない。適当な愛想笑いを顔に張り付けながら、テーブルを拭く振りをしながら様子を見守る。

 

「お、お姉ちゃん……」

「アンタ達! いい加減葉月を放しなさいよ!」

「お姉ちゃん、だってさ! かっわいいー!」

「ギャハハハハ!」

 

 チンピラ達はウェイトレス達を特にトラブルなく拉致れたことで安心したのか、げらげらと笑いながら美波の叫びを一蹴する。

 まだ彼女達は僕とムッツリーニがここにいることに気付いていない。本当に怖いのか、テーブルを拭いている僕との距離はほとんどないのに、まったく僕の方に目がいっていないようだ。

 工藤は恐怖で震える姫路を抱きかかえて目をぎゅっと瞑っている。

 

 

「―――川上君っ……」

 

 ん? 工藤がなんか僕を呼んでる。

 

「呼んだ?工藤」

 

「え?」

 

「やっほー」

 

 工藤はきょとんと僕の顔を見ている。今は眼鏡を外しているから、僕のことはまだ気付いていないのかな?

 

「え……?川上くん……?」

 

 姫路は僕の声に気付いたのか、顔を上げて僕の方をきょとんと見つめている。

 そうですよ。川上さんですよ。

 

「(すぐ助けるから、もうちょっと待っててね)」

 

 不安を煽らないよう、小さく笑いながら僕がそう小声で言うと、二人は小さく頷いた。その表情には、もう恐怖の色はない。

 よしよし。では、作戦実行のお時間DEATH。

 

「お待たせしました、ポテトフライでーす」

 

「お、あざまーす」

「おぉ、できたてじゃんか」

 

 拭いたテーブルにポテトフライ(大盛りケチャップあり)のお皿を乗せると、チンピラどもは待ってましたと言わんばかりにポテトフライを摘まんで、()()()()()()()()そのポテトを口に放り込んだ。

 

「……7人中4人か。上出来。康太、行くよ」

「…………OK」

 

 すると、ポテトフライを食べていたチンピラ4人の動きがぴたりと止まり――――

 

 

「「「「辛ぇぇぇぇぇえっぇええええええ!!!!??」」」」

 

 

 慟哭と呼ぶにふさわしい叫び声を上げたチンピラ達はその場に蹲る。おぉ、辛そう……。

 

「ヤスオ!? おい店員!てめぇ何しやがった!?」

「いやいや何も。当店自慢のオリジナルソースをサービスさせていただいたのです」

「オリジナル!?」

「ええ。デスソース9割ケチャップ1割の特製です」

 

 最近のコンビニはデスソースも取り扱っててびっくり。あそこの店長は辛党なのかな?

 

「ふざけんな!? それほぼデスソースじゃねえか!ふざけやがって『お邪魔しまーす!』あぁ!?」

 

「死にくされやオラァ!」

「げぶっ!?」

 

 個室の扉を開け、入って来たと同時にチンピラを見事なハイキックで蹴り飛ばしたのは明久だ。その後ろには野性的な笑みを浮かべた雄二がいる。

 

「よくやった、宗一、ムッツリーニ。後は任せろ」

「イィッシャァァ―――!」

「こいつ、吉井と坂本だ!」

「どうしてここが!?」

 

 突然のデスソース、そして目的である明久と雄二の登場により、チンピラ達は予想外の出来事ばかりで混乱に陥ってしまう。

 よしよし。あとは雄二達に任せて今のうちに脱出しよう。

 

「大丈夫?葉月ちゃん、美波、姫路、工藤、秀吉――秀吉は縄は解かなくていいかな?」

「それは冗談では済まぬのじゃが!?」

「嘘だって。あまりにもよくロープが似合ってるからさ」

 

 日本で一番ロープで縛られた姿が似合う高校生だよ。こんな状況じゃなければ、僕もさりげなく秀吉のお尻をタッチしたい。

 

「(シュルシュル)はい、解いたよ」

「とにかく、助かったのじゃ。儂も雄二達の助太刀をするとしよう」

「か、川上君……!」

 

 ん、工藤どうしたの。そんなに顔を赤くして目をうるうるさせて。そんなに怖かったのかな。

 

「変態のお兄ちゃん!」

「げふっ。葉月ちゃん、そのタックルはやめようね。お兄さん鳩尾にいいダメージ入ったよ……」

 

 タックルをしてきた葉月ちゃんだが、よっぽど怖かったのか僕のお腹で顔をぐりぐりさせてくる。

 

「ありがとう、宗一、助かったわ! 葉月、こっちに来なさい! 瑞希、工藤さん、今のうちに――」

「逃がすかぁ!」

「きゃぁ!」

 

 すると、さっきデスソースを口にしたはずのチンピラが人質を逃がすまいと美波を乱暴に押し飛ばした。

 

「美波っ――げぶっ」

 

 突き飛ばされた美波をキャッチしようとした僕だけど、お腹に抱き着いていた葉月を咄嗟にどかそうとしたのがまずかった。うまくタイミングが取れず、美波の頭が僕の顎にクリーンヒット。超痛い。

 

「宗一、大丈夫!?」

「だ、大丈夫……葉月ちゃん連れて、早く康太と一緒に逃げて」

「…………こっち」

「わ、分かったわ!」

 

 心配そうにこっちと明久を見ていた美波だけど、妹の葉月ちゃんを逃がすことを優先したようだ。さきほど灰皿でチンピラ一つを轟沈させた康太の後に着いていき、個室から出ていく。

 

「ま、待て、逃がさ――」

「テメェ、今よくも美波に手をあげやがったな! 歯ぁ食い縛れぇ!」

「がはぁ!」

 

 美波に手を挙げたチンピラは、あえなくキレた明久の股間キックで失神してしまう。わお、痛そう。

 

「吉井君っ!」

「姫路さ――ぐぶぁ!」

「……ナイスパンチ」

 

 今、姫路の奴どさくさまぎれて明久に抱き着こうとしてたなー。よく思うけど、姫路は内気っぽい雰囲気出しながらこういう時大胆だよね。

 まあその大胆な行動も、チンピラのパンチが明久に命中したことで止められてしまったようだが。ここで姫路が明久に抱き着いたのなら「エンダァァァァァ」ってなるんだけど。

 

「…………!!」

 

 うわ。悔しさで血の涙流してるよ。まあせっかくの姫路の抱擁のチャンスが潰れたんだもんねぇ。あ、そのチンピラもあっという間に殴り飛ばされた。

 

「よ、よくも……千載一遇のチャンスを……!ひ、姫路さん!もう一度――」

「姫路!お前も島田と一緒に学校まで先戻れ!」

「雄二! キサマまで僕の邪魔をするのか!?」

「は、はい!」

 

 姫路も雄二の指示に従い、さっさと外へと逃げ出す。さて、あとは工藤だけだね。

 

「工藤、大丈夫? 立てる?」

「あ、えっと、」

 

 どうしたんだろう。さっきから工藤は顔が赤いし、言葉もしどろもどろだ。

 普段の工藤だったらこういう状況に陥っても咄嗟の判断で自力で脱出できそうなもんだと思ってたけど――やっぱり工藤も女の子なんだな、と思う。腰が抜けたのかまだ立てないようだ。

 

「失礼しますよーっと」

「え!? ちょっと!? 川上君!?」

「舌噛むよ、口を閉じててね」

 

 僕は工藤の足と背中に手を回し、持ちあげる。俗に言うお姫様抱っこだ。

 

「貴様宗一! なんてうらやま――けしからんことを!後で貴様もぶっ殺してやる!」

 

 血の涙が止まらない明久が怨嗟と殺気をこちらにぶつけてやる。いや、ほっとけよ。僕だって結構恥ずかしいんだから。大体こういうのは僕のキャラじゃないし、でも腰抜かしてる工藤を無理やり立たせるのは気が引けるし。

 

「か、川上君、お、降ろして――」

「いいから。工藤はそのまま。ごめんね、助けるの遅くなって」

「そ、そんなこと――」

「無事でよかった、工藤」

 

 R-18展開とか、リアルでレイ●はNG。ああいうのはAVやエロ漫画の世界でのみ許された行為なのだ。「くっころ」展開はそんなに好きじゃないしね。

 

「――――――――っ」

 

 工藤は顔を熱湯か何か沸かしたかのように真っ赤にし――顔を伏せ、黙ってしまった。

 まあいいや。これ以上ここにいる理由はない。あとは雄二達に任せてすたこらさっさーだぜ。

 

「クハハハハハ! それにしても丁度良いストレス発散の相手ができたな! 生まれてきたことをとことん後悔させてやるぜぇぇっ!」

「これが坂本か……!」

「悪鬼羅刹の噂は本当だったのか……」

 

 扉から出ると、後ろから岩窟王っぽい雄二の笑い声が聞こえてきた。

 霧島にいろいろと追い詰められ、ストレスが溜まってたのか、雄二はここで鬱憤を晴らすつもりのようだ。チンピラの諸君はご愁傷様としか言いようがない。どんな目に遭うか知らないけれど、まあクリスマスまでには帰ってこられるでしょ(適当)。バーサーカー状態の明久と雄二の相手なんか、僕だったらごめんだし。じゃけんさっさとここから逃げましょうねー。

 

 僕はさっきからずっと黙りこくってる工藤を抱えながら、学校まで走って行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――カラオケボックスから脱出後。

 

 

 

「工藤さん」

「ひ、姫路さん? あ、あはは、姫路さんもちゃんと脱出できたんだね、ヨ、ヨカッタナー」

「よかったですね? お姫様抱っこ。私、ドキドキしちゃいましたっ」

「変態のお兄ちゃん、かっこよかったです!ね、お姉ちゃん!」

「そうね、宗一も土屋も、やる時はやるじゃない。……ひょっとして工藤さんって、宗一のことを?」

「…………言わないで島田さん……」

 

 

 

 

 

 あの時。

 

「―――川上君っ……」

 

「呼んだ?工藤」

 

「え?」

 

 聞き覚えのある声がした。本来なら、ここにいるはずのない男の子の声。

 

 無意識だった。彼の名前を呼んだのは、ガラの悪い男の人達に囲まれて――怖くて怖くて仕方なくて、目を瞑ってその怖さを耐えるしかなくて。

 そんな時に、脳裏に浮かびあがったのが、彼の笑顔だったから。

 

 顔を上げると――そこには、ボクが今一番会いたかった川上君が、カラオケ店員の変装をしながら、心配そうに僕の顔を覗きこんでいたのだ。

 

「やっほー」

 

 彼はそう言ってほほ笑みながらボクに手を振った。まるで廊下ですれ違った時のような、そんな気軽い挨拶。

 でも、ボクはその笑顔を見た瞬間――今まで感じていた不安とか恐怖とか、全部吹き飛んだんだ。

 

 

 

 

 

 

 こんな状況で自覚するなんて、どうかしてる。でも、ああ、これはもう止められない。

 

 

 

 ボクは――川上宗一君がどうしようもなく好きなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 宿題をしよう、と思っている時に限って、親から「勉強しなさい」って言われるとモチベーション下がらない?って感じです。
 知り合いから「はよ投稿」とせつかれたので初投稿です。

 感想、評価いつもありがとナス!



 追記
 著作権のこと、すっかり忘れてました。お酒を飲みながら書いてはいけない。(戒め)
 ちょっと書きなおしました。指摘してくれた方々、ありがとナス。

 ところでこの小説の時代設定ですが、アニメとか観てみるとガラケーが主流の時代です。
けれどせっかくなんで明久達をタイムスリップさせ、スマホとかふつーに出してます。
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