問 以下の問いに答えなさい。
(1)4sinX+3cos3X=2の方程式を満たし、かつ第一象限に存在するXの値を一つ答えなさい。
(2)sin(A+B)と等しい式を示すのは次の内どれか、①~④の中から選びなさい。
①sinA+cosB ②sinA-cosB
③sinAcosB ④sinAcosB+cosAsinB
姫路瑞希の答え
(1) X=π/6
(2) ④
教師のコメント
そうですね。角度を『゜』ではなく『π』で書いてありますし、完璧です。
土屋康太の答え
(1) X=およそ3
教師のコメント
およそをつけて誤魔化したい気持ちもわかりますが、これでは解答に近くても点数は上げられません。
吉井明久の答え
(2) およそ3
教師のコメント
先生は今まで沢山の生徒を見てきましたが、選択問題でおよそをつける生徒は君が初めてです。
川上宗一の答え
(1) X=おっぱい
(2) ④
教師のコメント
(2)は合ってますが、(1)の答えに腹が立ったので両方とも×です。『π』を『おっぱい』と小学生のような連想はやめましょう。
side 川上宗一
ボロボロにやられた明久がFクラスに帰って来た。
「何か言うことは?」
「やはりそう来たか」
「ぶち殺すぞコラ」
明久は顔中に青あざを作り、制服の袖の一部は千切れかかっていた。殴られるだけじゃなく蹴られたのだろう、制服には上履きの足跡がくっきりと刻まれている。所々に油性で書かれたのであろう「バカ」という文字が、非情に哀れに見えた。
……それにしても。
「落書きにしては普通だね。ここは『正』か『肉便器』と書くべきだよ」
「………あまり面白くない。Dクラスには少しがっかり」
「こらぁそこの変態二人!! 友達に対してかける言葉じゃないでしょ!?」
何言ってる。友達だからこそだよ。
「明久君、大丈夫ですか?」
すると、ボロボロの明久を見て、姫路が心配そうに駆け寄った。
「「チッ」」
僕と康太は思わず舌打ちをする。
「…………なんで明久が……!」
「落ち着け康太、カッターナイフは駄目だ。血が滲むと周りにばれやすい。服の下を殴るのがベターだ」
「…………承知」
「鳩尾は人体の急所だ。いくら頑丈な明久でもこれを喰らえば悶絶不可避。それ、ワンツー」
「…………(シュッシュッ)」
「いいよ康太。もっと鋭く、もっと抉るように打つべし」
「…………(ビシュッビシュッ)」
「ごめん姫路さん、心配してくれるのは嬉しいけど、あの二人に撲殺されるかもしれないんだ」
シャドーボクシングを始めた僕らを見た明久がさささっと姫路から離れる。
「吉井、本当に大丈夫?」
「ああ、島田さん。ありがとう心配してくれて」
「ううん、よかった……。ウチが殴る余地はまだあるのね……」
「ああっ! もうダメ! 死にそう!」
そのまま死んでしまえばいいのに、と僕と康太は割と本気で思った。
「おい、お前ら。今からミーティング始めるぞー」
他の場所で話し合いをするつもりらしい雄二は、扉を開けて外に出て行った。
「大変じゃったの、明久」
「秀吉……うん、ありがとう」
「ほら吉井、アンタも来るの」
「あー、はいはい」
ぐいっと明久の腕を引っ張る島田。島田も雄二に声をかけられていたらしく、ミーティングに参加するようだ。
僕と康太と秀吉は、引っ張られていく明久についていく。
「返事は一回!」
「へーい」
「……一度吉井は、Das Brechen―――ええっと、日本語だと」
「「調教」」
「そう、調教の必要がありそうね」
「調教って……せめて教育とか指導とか言ってくれない?」
「じゃあ中間とって Züchtigung――」
「「折檻」」
「ねえ、宗一にムッツリーニ。どうして『調教』とか『折檻』なんてドイツ語知ってるの?」
「「一般教養」」
「なんて嫌な教養なんだ」
別にXvideoで見つけたドイツ人のエロ動画を観て二人で調べてたわけじゃない。
「相変わらず、ムッツリーニと宗一の性に関する知識はすごいのぉ。むっつりと変態紳士の名に偽りなしじゃ」
「変態紳士って言うな」
「………!!(ブンブン)」
そんな会話をしながら廊下を歩いていると、先頭の雄二が屋上へとたどり着き、僕らは屋上の太陽の下に出た。
ふむ、風が強い。これなら―――
「姫路さん、気を付けて。そこの変態二人がスカートの中を覗こうとしてるから」
「別に覗こうと」「………なんて」「「していない」」
「息ぴったりじゃの」
「あ、ありがとうございます島田さん」
「いいのよ、別に。そこの二人は女の敵だから、何かあったら言って。殴り殺すから」
さらりとなんて恐ろしいことを言うんだ。
「そうだ、せっかく少ないFクラスの女子同士なんだし、瑞希って呼んでいい? アタシのことは美波でいいから」
「はい、しま――美波ちゃん」
うむうむ。美少女二人が仲良くしているのを見るのは心が和む。
一方は暴力女だが、それを差し引いても島田は可愛い。胸がないのは残念だが、スタイルはいいし、足は長くて綺麗で魅力的だ。
姫路とは別ベクトルの可愛さを持っているのだ。
だから、胸がないのを気にしていちいち僕の眼をチョキで潰そうとしないで。
「親睦会は済んだか?」
雄二は溜息を吐きながら、屋上の段差に座っていた。島田達の話が終わるのを待っていたようだ。
「ゴメン坂本。それで、今回の戦争のミーティングだったわよね?」
「ああ。これからも基本的にこのメンバーで作戦会議を行う。明久、宣戦布告はしてきたな?」
「一応今日の午後に開戦予定を告げてきたよ」
そう言いながら僕らは屋上の床に腰をおろす。
「それじゃあ先にお昼ご飯ってことね?」
「そうなるな。明久、今日の昼ぐらいはまともな物を食べろよ?」
「それならパンぐらい奢ってよ」
明久は不貞腐れたように言った。そういえばこいつ……
「え? 吉井君って、お昼食べない人なんですか?」
姫路が驚いたように明久を見る。
「違うよ姫路、明久は食べない人じゃなくて食べれない人なんだ」
「???」
僕の言葉の意味がうまく伝わらなかったのか、疑問を浮かべる姫路。
「いや、一応食べてるよ」
「あれは食べてると言えるのか?」
雄二の横やりが入る。
「お前の主食って、水と塩だけだろう?」
哀れむような雄二の声。
ホームレスだって今時そんな食生活送らないだろう。
「きちんと砂糖だって食べてるよ!」
「あの、吉井君、水と塩と砂糖って食べるとは言いませんよ……」
「舐める、が表現としては正解じゃろうな」
僕らの哀れむような視線に気付いたのか、明久は眼から食塩水を流し始めた。
「そもそも食費までゲームに使い込むのが悪い。アルバイトもしてないくせに」
「………自業自得」
「仕送りが少ないんだよ!」
明久は一人暮らしをしている。家族が海外で暮らしているらしく、仕送りで生活しているのだが―――その食費を遊びにつぎ込んでいるのだ。
趣味にお金がかかるのは分かるけど、もうちょっと自重した方がいいと思います、まる。
「まあでも、それだけでよく生きてるなって思う。なんで餓死しないの?」
「宗一の言葉が辛辣っ!」
「…………感心はするけど別に褒めてるわけじゃない」
「ていうか! 僕の食費を削るのは宗一とムッツリーニに原因があるよ!」
「僕と康太に?」
「………失礼な」
「そうだよ! 毎回毎回、ムッツリ商会にあんな魅力的な商品の数々を出すのが悪い!」
言いがかりだろそれは。
「失礼な。僕らの商品を買ってくれるのは嬉しいけど、そういうのは自己責任だし。それに、どの商品もちゃんと良心的な価格を設定しているし。ねえ康太」
「…………まぁ、明久はお得意様(スッ)」
そう言いながら康太は懐から保健体育の資料(僕のイラスト)を取り出した。
数日前に「金髪・ボイン・JK」をテーマに描いたイラストだ。価格は500円。
「買ったぁ――――!」
「「毎度ありー」」
「うぉー! すげぇー! うぉー!」
「……お前、食費は?」
雄二の言葉に固まる明久。ちなみにムッツリ商会は返品、返金は一切受け付けておりません。
「男なら……後悔……しないっ……!」
「勇者だな」
「吉井のこと馬鹿だと思ってたけど、ここまでとは思わなかった……」
雄二と島田はやれやれと呆れる。
すると、何を想ったのか、姫路が恥ずかしそうに言った。
「あの……もしよろしければ私がお弁当を作ってきましょうか?」
「ゑ?」
うっそ。姫路の手作り弁当?
「本当に良いの? 僕、塩水と砂糖意外の物を食べるのは久しぶりだよ!」
「はい! もちろんです! それじゃあ、明日のお昼は持ってきますね」
どうやら僕は姫路を見誤っていたらしい。内気な性格だと思っていたので、こんなに積極的なタイプだとは思わなかった。
「良かったじゃないか明久。手作り弁当だぞ」
雄二が明久の肩をぽんぽんと叩く。明久は本当に嬉しそうで、ニコニコと喜んでいる。
だが、一名面白くなさそうな人が。
「ふーん、瑞希ってば優しいんだね。吉井
棘が生えたように言うどこか不満げな島田。そりゃ、自分が好きな男に別の女子が「弁当作ってくる」なんて訊いたら面白くはないだろう。
「あ、いえ! その……よろしければ皆さんにも……」
「俺達にも? いいのか?」
雄二が驚いたように声を上げる。
マジかよ天使かよ。一人分だけでも十分大変だろうに、姫路本人も含めて7人分のお弁当とは。
「はい! 嫌じゃなかったら!」
なのに嫌そうな顔ひとつしない彼女。マジで天使か。
「それは楽しみじゃのう」
「…………(コクコク)」
「お腹減らして待っておくよ」
「………お手並み拝見ね」
秀吉も康太も僕も、思わず嬉しくなる。ついでとはいえ、姫路の手作り料理を食べれるのは嬉しい。島田はちょっと複雑そうだけど、彼女の明るい表情に圧されたのか、何も言わなかった。
「姫路さんって優しいね。今だから言うけど、僕初めて会う前から君のこと好き――」
「おい明久。今振られると弁当の話はなくなるぞ」
「――にしたいと思ってました」
…………。
「……おい、それじゃあ欲望をカミングアウトした、ただの変態だぞ」
「明久。いくらなんでも無理やりレ○プは……」
「違う! そんなつもりで言ったんじゃあない! 宗一も女の子がいるところでそういう単語言わないで!!」
「…………さすがに引く」
「ムッツリーニに引かれたぁ―――!?」
閑話休題。
「そういえば雄二。一つ気になっておったのじゃが、どうしてDクラスなんじゃ? 段階を踏んでいくのならEクラスじゃろうし、勝負に出るならAクラスじゃろ?」
「そういえば、確かにそうですね」
「簡単だ。戦うまでもないからだ」
雄二が答える。
「振り分け試験の時点では確かにEクラスのほうが上だ。だが明久、お前の周りにいる面子をよく見てみろ」
「美少女二人と馬鹿が二人と変態が二人いるね」
「誰が変態だ!」
「えぇ!? 雄二が反応するの!? どう考えても宗一とムッツリーニじゃないか!」
なんて失礼な。まあ明久は複雑なことを考えると頭がショートするからな。少し手助けしよう。
「明久。振り分け試験の時点じゃ確かにEクラスは上。でも今は違う。理由は分かる?」
「えーっと……」
明久は頭を抱えて唸り始める。
「ヒントは、本来うちのクラスにいないはずの生徒がいるからだよ」
僕がそう言うと、明久は分かったのか手をポンとたたいた。
「そうか! 姫路さんか!」
「その通り」
「さすがだ宗一。姫路の実力があればEクラスは正面からでも簡単に倒せる。ぶっちゃけ、姫路一人でもEクラスを圧倒できる。だから戦うのは無駄なんだ。結果が分かり切ってるからな」
なるほど~、と明久達は感心したように唸る。島田も姫路も驚いているようだ。
「だがDクラスとなると正面からは難しい。そこであるアドバンテージを使う。宗一は分かるか?」
ふむ。アドバンテージか……。
「……新学期初日、初めての試召戦争。僕だったら――姫路を切り札に使う」
「理由は?」
「まだ他のクラスは誰がどのクラスにいるか把握し切れていないから」
僕がそう言うと、雄二は「正解だ」とにっと笑う。
「今日は新学期初日。Fクラスに姫路がいるなんて情報はまだ出回っていない。これが大きなアドバンテージになる。相手はうちのクラスにAクラス並の生徒がいるなんて思ってもいない」
「たかがFクラスだ、と油断しているところを姫路さんでぶつけて相手を倒す、ってことだね」
「おぉ~」という感嘆の声が上がる。
「……もしかして、川上って頭がいい?」
「お、驚きました……」
「あれ? 実は僕って評価低い?」
「普段の言動を考えれば、当然と言えるじゃろ」
やだ……僕の評価って低すぎ?
「俺達なら勝てる。このメンバーなら、Aクラスの連中を引きずり落とすことだってできる」
「いいわね、面白そうじゃない!」
「そうじゃな。やってみようかの」
「………(グッ)」
「が、がんばります!」
「よし、それじゃあ作戦だが……」
打倒Aクラス。
僕らの戦いが始まっていく。
Dクラス戦まで書ききれんかった……