バカとテストと変態紳士っ!   作:ガオーさん

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第六問 第一次試召大戦 ~Dクラス戦開幕~

Side 吉井明久

 

 

「川上、吉井! 木下達がDクラスの連中と渡り廊下で交戦状態に入ったわ!」

「OK。全員、戦死するのだけは絶対に避けるんだ。中堅部隊はこのままスリーマンセル、2対1で相手を叩け! 残った一人は味方が苦しくなったと思ったらすぐにスイッチ(後衛と入れ替わること)!」

 

『『『 了解! 』』』

 

 宗一の指示が渡り廊下に響く。初めての試験召喚戦争なのに、表情には緊張や怯えは微塵も出ていない。

秀吉達前線部隊を通り抜けたDクラスの兵士達を宗一は的確な指示で1人ずつ補習室に送っていく。

 

『川上! こっちの敵は仕留めたぞ!』

「ナイス須川! 反対側の横溝のフォローに向かってくれ! あっちは数で押そうとしてきてる、敵を一人も通すな!」

『分かった!』

 

 宗一の言葉に須川君が力強く頷く。宗一の指揮官としての能力が高いとなんとなく分かっているのだろう。実際、宗一の指示は的確で、まだここまで一人も戦死者は出ていない。

 

「僕達の役目は先行した秀吉達の援護! 死ぬのは今じゃない、踏ん張れ!」

 

『『『 おうっ! 』』』

 

「生き残ったら、僕がエロイラストをタダで描いてやる! もちろん、リクエストは受け付けるぞ!」

 

『『『 よっしゃぁ―――!! 』』』

 

「すごいね吉井! 川上ってこんな頼りがいがある奴だったのね!」

「うん、これなら行けそうだよ!」

 

 同じ部隊に配属された島田さん。ポニーテールがトレードマークの彼女は、背は高く脚も綺麗だ。なのにどこか女性としての魅力が欠けている。何が足りないんだろう。

 

「ああ、胸か」

「あんたの指を折るわ」

 

 まずい。なんか地雷踏んだっぽい!

 

「島田、今はこっちに集中して。明久はあとで殺していいから」

「ちょっと待って宗一! 仲間の一人が同士に殺されるのを隊長として黙ってみてていいのか!?」

「じゃあ、明久はあそこの激戦区に行ってもらおう」

 

 宗一は渡り廊下の方を指差した。

 

『戦死者は補習ー!!』

『て、鉄人!? 嫌だ! 補習室は嫌なんだっ!』

『黙れ! 捕虜は全員この戦闘が終わるまで補修室で特別講義だ! 終戦まで何時間かかるかわからんが、たっぷりと指導してやるからな』

『た、頼む! 見逃してくれ! あんな拷問堪え切れる気がしない!』

『拷問? そんなことはしない。これは立派な教育だ。補修が終わるころには趣味が勉強、尊敬するのは二宮金次郎、と言った理想的な生徒に仕立てあげてやろう』

『お、鬼だ! 誰か助け、イヤァァ―――(バタン、ガチャ)』

 

 渡り廊下の先は地獄が繰り広げられていた。

 

「宗一、副隊長として進言する。ここは総員退避を――」

「島田、逃亡は反逆罪だから処罰して」

「この意気地なし!」

 

 殴られた。しかもチョキで。

 

「ぎゃあ!目が、目がぁ!」

 

「明久、補習が怖いのは分かるけど、これは戦争だよ。君が逃げてどうすんのさ」

 

 宗一が言う。

 

「試験召喚戦争。本物の戦争とは違うけど、本質は同じだ。僕たちは領土(施設)を奪うために戦いを仕掛けたんだ。Aクラスの設備が欲しいって言う自分勝手な理由で。いきなり喧嘩を買わされて負ければ設備を落とされる相手からすれば堪った物じゃないでしょ? なのに明久、君が始めた戦争なのに自分は逃げる気? まさか自分が始めておいて後は知りませんって人任せにするつもり? さすがに虫がよすぎるよ」

「うぐっ」

 

 宗一の正論に思わず言葉が詰まる。

 

「友達の為に戦う。聞こえはいいけど、自分が作った責任も果たせないなら下がれ。臆病風に吹かれた兵士は邪魔なだけだ」

 

 苛立ちが込められた宗一の言葉は鋭く冷たく、まるで鈍器のように重かった。思わず僕は頭を殴られた気分になる。

 基本的にスケベで軽い性格の宗一だけど、今分かった。宗一はこの場にいる誰よりも真剣に戦っているんだ。

 

 実は昼休みの後、この試験召喚戦争が行われた理由を半ば無理やり宗一に言わされた。「姫路さんの為」と言うと、宗一は呆れながらも笑って「明久らしい」と言ってくれたけど……。

 

「どうする? 逃げるか、戦うか」

「僕は―――」

 

 僕は姫路さんの為と言ってこの戦争を仕掛けたんだ。雄二の性格から考えて、遠からず行われるはずだったんだろうけど、きっかけは僕なんだ。

 なら僕には、戦わなきゃいけない責任がある。

 

 

「吉井、ウチも戦うから頑張ろう?」

「島田さん――うん、ゴメン、宗一。僕が間違っていたよ。補習室を恐れずにこの戦闘に勝利することだけを考えるよ」

 

 僕が始めたことは決して軽いことじゃないんだ。

 宗一の言葉に気付かされ、僕は恥ずかしい気持ちになる。戦死ペナルティの補習が怖くて逃げようだなんて……!

 

「分かったならいいよ」

「大丈夫よ吉井。個別戦闘は弱いかもしれないけど、多対一で闘えばいいのよ」

「そうだね、よし、やるぞ!」

「その意気よ、吉井!」

 

 拳を挙げる僕達。大丈夫、僕らならやれる!

 

 そう意気込んでいると、宗一の所に報告係がやってきた。

 

「川上! 前線部隊が後退を開始した!」

「分かった。皆、ようやく出番だ! もうすぐ秀吉達が戻ってくる。とどめを刺そうとやってきたDクラスの連中を引き連れて! 僕達の役目はそのDクラスの連中を渡り廊下で抑えることだ!」

 

『『『 おうっ! 』』』

 

 僕らは改めて気合を入れ直す。さあ、いよいよ僕達の出番だ。

 

「あと、代表――雄二から伝言がある」

「雄二から?」

 

 メモを見ながら宗一が全員に伝わるようにはっきりとした声で言った。

 

「『逃げたらコロス』」

 

「全員突撃しろぉーっ!」

 

 僕らは思わず戦場へと駈け出した。

 

 

 

 

 

 

「明久! 島田! 宗一! 援護に来てくれたんじゃな!」

 

 前方から美少女、もとい、秀吉がやってきた。相変わらず可愛い。

 

「秀吉、大丈夫?」

「戦死は免れたが、点数はかなり厳しい所まで削られてしまったわい」

「分かった。後退した時の指示も雄二からもらってる。秀吉達前衛部隊はこのまま教室に戻って回復試験を受けて、終わり次第雄二たちと合流して」

「了解したのじゃ。時間的に全部のテストは受けれんが、1、2科目受けてくるとしよう」

 

 言うや否や、秀吉達先行部隊は教室に向かって走っていく。出陣した時より人数が少ないのは、戦死して補習室に連れて行かれたからだろう。

 

 そしてさっきまで秀吉達と戦っていたのだろう、Dクラスの兵士達がこっちに向かってくる!

 

「吉井、川上! あいつら、五十嵐先生と布施先生を連れてきたわ!」

「化学教師か!」

 

 現在、渡り廊下に広がっているのは総合科目のフィールドだが、勝負を早めるために立会人を増やしてきたのだろう。秀吉達先行部隊が予定より撤退するのが早かったのはこれが原因か!

 

『いたぞ! 変態紳士の川上宗一だ!』

『あいつは理系科目が壊滅的だ! 周りの兵を潰して川上宗一を狙え!』

 

 どうやら宗一の苦手科目が理系科目だとばれているらしい。

 

「ちなみに宗一、化学の点数は……」

「二桁もいってない」

「僕より低いじゃないか!」

 

 なんてことだ。まさか僕より低い奴がいるだなんて!

 

「分かってる。島田と吉井は僕についてきて。須川達は布施先生を連れてきたDクラスをこの場に張り付けろ! 僕達は高橋先生を連れてきて挟み撃ちにする!」

「了解!」

 

 僕らは渡り廊下の脇を通って高橋先生の所に行こうとするが――

 

「させない! 布施先生、川上宗一に化学勝負を―――!」

 

 ちぃ!気付かれた! 宗一に敵が―――!

 

「させるか! 須川がその勝負を受ける!」

 

 そこを須川君達が滑り込むように盾となってくれた。さすが!

 

「川上ィ! 貸し1だからなぁ!」

「ちゃんとイラスト用意しとけよコラァ!」

「俺はOLのイラスト!」

「俺は美人人妻だ!」

 

「任せろ! 夜のおかずに一生困らないようなドチャクソシコリティが高い芸術を見せてやる!」

 

『『『よっしゃあ!』』』

 

 男達は笑顔で戦場を駆ける。すべてはエロの為に!

 

「な、何よこいつら……」

「目が血走ってるー! きもいー!」

 

 

「…………」

「ん? どうしたの、島田さん」

「いや……なんか、ウチもこいつらの仲間だと思うと、テンション下がっちゃって……」

 

 

 何を言っているんだろう。こんなに熱くテンションが盛り上がる最高の場面だと言うのに。

 

 

 

 

…………

 

 

「見つけましたわ、お姉様……! それに、あのお方も一緒だなんて! どうやら運命は美春の味方のようですっ!」




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次回はバカテスの世界で1,2を争う問題児クレイジーサイコレズの登場です!
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