艦これ、始まるよ。   作:マサンナナイ

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(もうこんな時間か、ついつい話し込んじゃったな・・・)
(また今度、部屋行くって約束しちゃったけど相手は部下でしかも女の子だぞ、これ自衛官として良いんすかね?)

――そんなっ!? ダメですっ!!

(行くにしてもまた手ぶらって言うのもなんか悪いし・・・ケーキとか花とか?)

――こんなの、嘘ですよね!?

(う~、まいった、女の子が喜びそうな洒落たモンが思い浮かばな、ん?)

――いつもみたいに嘘だって言ってくださいよ!? 司令官!!

(なんだ今の声!? あれ、・・・先輩の部屋のドアが半開き?)

――チャンスはあったのにしくじった吹雪が悪いんでしょ、自業自得じゃない

(もしかしてこの声って先輩の艦隊の? なんでこんな所でケンカ腰な言い合いを)

――そんなのって、私は司令官を信じてたのにっ!
――いや、これは何と言うかだな・・・
――ぐずぐず言ってないで引き際ぐらいわきまえなさい!

(うぁー、マジかよ、あんだけ俺に偉そうな事言ったくせに、なに修羅場ってんっすか先輩)

「あら、工藤一尉?」

「ほわぁ!? ぁっ、ドアがっ!」



第百九話

〈 北方棲姫は他の姫級と違って滅多に侵略行動を行わないタイプの深海棲艦だ 〉

〈 ほっといても自分の海域から出て来ないし基本的に外海をうろつく様な事もしない 〉

 

〈 要塞型だから軽巡駆逐は痛い目を見るだけで攻略にはどうしても複数の大型艦の投入が必要不可欠になる 〉

〈 それですら相応の被害と消耗を覚悟しないといけないわけでな 〉

〈 んで、質の悪い事に仮に撃破が成功しても時間が経てばどこからか現れた別の北方棲姫がまた同じ場所に住み着くんだよ 〉

 

〈 一応、要塞型深海棲艦に特効を持った装備ってのがあれば簡単に倒せるとか言う話は聞いた事がある 〉

〈 だが、皆はもちろん分かってると思うが現時点、こっちの世界じゃそんなもん影も形も無い 〉

〈 主力艦隊を投入しないと倒せないのにさっき言った通り北方棲姫は倒しても何度も現れるから実質イタチごっこ 〉

 

〈 比較的安全といってもちょっかいをかければもちろん他の姫級に負けず劣らずの反撃をしてくる 〉

〈 近付けば危険だが現れる場所が特に魅力の無い僻地なせいで取り巻きが増え過ぎない様に間引きする以外は放置すんのが一番頭のいい方法なんて言われてたぐらいだ 〉

 

〈 ただ、まぁ、鎮守府からは一定の周期で北方棲姫のいる海域への攻撃作戦は繰り返し行われていたな 〉

〈 いや、北方棲姫への攻撃が目的じゃなくて宝探しって言った方が良いのか? 〉

 

〈 なんか北方棲姫は艦娘にとって役に立つ物資だか何だかを溜め込んでるって話があってな? 〉

〈 その何かを、言い方は悪いが奪う作戦ってのが艦娘達の間じゃ恒例行事みたいな感じになってたらしくて、な? 〉

 

〈 ・・・強盗みたいって、そう言われても俺は実際その作戦で提督連中や艦娘達がどんな事やってたかなんて詳しく知らねぇよ? 〉

〈 あのなぁ、しつこい様だけどあくまで俺が知ってるのはここ(・・)とは別の世界の話だ 〉

 

〈 ともかく、その定期的に行われる作戦のお陰で北方棲姫の画像とか情報は他の深海棲艦よりも豊富に出回ってたんだ 〉

 

〈 他にも自称提督って連中がその作戦に参加するだけで勲章が売る程手に入るとか自慢交じりの笑い話にしてたり 〉

〈 北方棲姫から奪っコホン手に入る物資がまるでプレゼントみたいだなんて言われたり 〉

〈 そして、大きさはともかく見た目が幼い子供にしか見えないってのも手伝ったんだろう 〉

 

〈 んで 〉

 

〈 ネット掲示板が発信源になっていつの間にか北方棲姫の通称がほっぽちゃん(・・・・・・)に定着したってわけだ 〉

 

〈 ああ、まともじゃないのはその通りだろうな、国内の常識的な人間は眉を顰めてただろうし 〉

〈 海外の反応も俺の知る限り軒並み「日本人の頭はどうかしてるぜ」扱いだった 〉

 

〈 あと、念の為に言っとくが北方棲姫は他の深海棲艦と比べると比較的安全なだけで無害な深海棲艦ってわけじゃないぞ? 〉

〈 俺が知ってるだけでも結構な数、他の深海棲艦に混じって人類へ攻撃してきたヤツもいるからな 〉

 

〈 ん、あぁ、さっきも言ったが北方棲姫は自分だけでは絶対に外海に出ようとしない 〉

〈 なのに何故か他の姫級や鬼級が一緒だとそいつらにくっ付いて外洋に出てくるんだ 〉

〈 それがまるで母親とか姉に連れられてる子供みたいな感じだったのもそのあだ名(ほっぽちゃん)の原因だったのかもしれないな 〉

 

〈 って、ワケでだ 〉

 

〈 つまり何が言いたいかって言うとこの話が全部、自分で言うのもなんだが俺はもちろんこの世界じゃ誰にも本当かどうか分からない無責任なゴシップネタって事だ 〉

 

〈 ・・・は? いや、吹雪お前なぁ、確かめてみましょうって、おい、浜風も何言って 〉

〈 待て待て、不知火、だからさっきの勲章が貰えるとかって話はなんの根拠も無いんだって! 〉

〈 おーい、五十鈴、皆を落ち着かせるのを、って高雄まで? 〉

 

〈 なんでだよ!? 〉

 

〈 大体、あそこは俺達が勝手にうろついて良い場所じゃねぇだろう! 無人島になってるってもロシアなんだぞ!?〉

〈 う、止めろよ何でそんな顔で俺睨むんだよ? 国土云々はどうしようもないじゃねえか 〉

〈 納得いかなくても日本の土地じゃなくなってんのは全員分かってるだろ? 〉

 

〈 工藤! お前もこの前の現地調査を誤魔化すためにやった面倒な手続きとか書類の山はもうこりごりって言ってたろ!?〉

 

〈 おまっ、浦風に抱き付かれただけで日和るな! 〉

〈 やっぱお前が愛宕の事引き摺ってるのって・・・なんだその情けない顔、ぁ 〉

〈 おーい、工藤艦隊・・・おしくらまんじゅうがやりたいなら外行けぇ~ 〉

 

〈 はぁあぁ・・・もぉ、分かった、分かったから 〉

〈 出撃したいってんなら明日か明後日ぐらいに適当な哨戒任務でっち上げてやるから・・・ 〉

 

〈 ライブ? ああ、それもまたやってやる落ち着けって、落ち着け! 那珂踊るな! 阿賀野も光るな! 〉

 

〈 はっ? いや、でっち上げるとは言ったけどそうじゃねぇよっ? 〉

〈 お願いだからまず北方棲姫と色丹島の話から離れてくれ! 〉

 

〈 姫級がヤバいってのはお前らだってよく知ってるだろっ!? 〉

 

・・・

 

 海上を真っ白に染める吹雪の中、わずかな雪の間隙を縫って長袖を手元に少し余らせたセーラー服が駆け抜け、近くの波を穿ち水柱を立ち昇らせる砲弾の発射点へと黄色みの強い琥珀色を宿した瞳が潰れた巻貝にも見える歪な敵の艦影を映す。

 

 特Ⅲ型としては四番目、特型駆逐艦と言う大きなカテゴリー内では最終番号である二十四番艦として【電】(いなずま)の名を与えられた艦娘が吹雪の中で荒れ狂う波に片足を突き刺した。

 

 茶色の革靴と黒のハイソックスを履いた左足がその表面に纏った輝く障壁で海水を激しく弾き飛ばして海面を白波と共に切り裂き、急制動で身体の周りに渦巻いたつむじ風に煽られ頭の後ろ、錨が描かれた髪留めに纏められた栗毛の毛先が雪の粒を切る様に薙いだ。

 

 艦橋に居る指揮官や姉妹艦の操作で増設装備が施されていない霊力端子にマナのきらめきが走り、背負った艤装や手足に浮かび上がった幾何学の中心から霊的エネルギーが放たれて運動エネルギーへと変わる。

 

 その推進機(スクリュー)程の出力は無いモノの各部の端子が発生させたスラスター効果で急制動の慣性に引っ張られかけた電の体勢が安定を取り戻し、同時に海面下に突き刺された革靴を支点に回転する片足が海中を掻き混ぜて小柄な駆逐艦娘の船体(身体)が急旋回を行う。

 

 距離を詰めてくる駆逐艦娘に屍蝋色の巨体は自らの砲撃を避けられた事に身体の各部から赤い灯火を立ち上らせ顔のない頭と海藻の様な黒髪を振り乱して苛立たし気に咆哮する。

 

 自分よりも小さな敵に手こずる苛立ちを隠そうともしない巨体から歪な形の魚雷管が迫り出し、時速にして120knotで航跡を海に走らせる深海棲艦から黒い鮫の様な魚雷が飛び出し海面に落された。

 

 艦橋からの敵艦が魚雷を放ったと言う鋭い警告の声に毅然とした態度で駆逐艦娘は頷き、その視界の中に浮かぶ雷撃の予測軌道を掠めながらさらに速力を上げる。

 

 電が背負う艤装に搭載されている大型艦娘ほどの精度はなくとも電波だけでなく霊力の波も捉える多機能電探(マルチセンサー)が前方の軽巡ホ級との相対距離が急激に縮まっていると視界内に表示する数字で知らせ。

 

 耳の奥に聞こえた指揮官の命令と共に背中で黒鉄が軋む音を立て、かつての船だった頃の艤装を模した装備の船底にぶら下げられていた鋼色の錨がクレーン型の装置によって鎖の絡む音を立てながら電の肩を乗り越えて彼女の進行方向へと突き出された。

 

 肩の上に現れた鉄錨の柄を捧げ持つように少女の両手が握りしめ懸架装置から艤装と繋がり伸びる鎖ごと引き抜けば、ジャラジャラと騒めく鎖の先で錨が変形を始め。

 本来なら海底を引っ掻く為に存在する半月が内部から広がる様に割れ目を表面に走らせる。

 

 激しい向かい風と吹き付ける雪に余った袖が激しくはためく両手の先で艤装から引き抜かれて十秒も経たずに黒鉄の錘が無数のハニカム構造を展開し内部に複雑な金属部品を垣間見せる鋼の三日月へと生まれ変わった。

 

《電の本気を見るのです!》

 

 駆逐艦娘は自らを鼓舞するように叫び距離にして20m先を見据える。

 

 それは身長13mの艦娘と全高30mの怪物から見れば正しく目と鼻の先であり軽巡級深海棲艦のだらりした軟体動物の触腕か水死体の腕と言った不気味なそれを伸ばし振るえば届く距離。

 

 主砲と魚雷が装填中で使えないと言っても軽巡級深海棲艦と比べれば体格(質量)が圧倒的に劣る駆逐艦娘はただ追突されるだけでも容易に弾き飛ばされ波立つ海面に叩き付けられ沈みかねない。

 

 だが、砲撃と魚雷を回避され目の前に迫る電へ苛立ちと共に(冷静さを欠いて)拳を振るったホ級の腕は空を切り雪の結晶を風と共に弾けさせるだけに終わり。

 深海棲艦の腕の下を身体を捩じる様な体捌きで避けくぐった駆逐艦娘は自らの胴体と比べても大差ない程に巨大化した鋼鉄の刃を振り被る。

 

《命中させちゃいます!!》

 

 直前の回避運動による腰の捩じりを利用した反作用を合わせたアンダースローで振り抜かれようとしている腕の先に握られた三日月型の鈍器が細長い鎖を軋ませながら鈍く光る先端で北海の波を切り裂き。

 

 雪の舞い散る宙に大きな弧を描く電の手から離れた鉄錨(ブーメラン)が鋼色の旋風へと姿を変えて速度を落とさないすれ違いざま軽巡級の右舷へと襲い掛かり、金属製の重量物同士がぶつかり合う鈍重な鋼の音が海上の空気をかき乱す様に轟いた。

 

 電の手からリリースされ軽巡ホ級へと突き進み雪の帳を突き抜いた鋼の月は狙い通りに深海棲艦の横っ腹に突き刺さりその反動で血色の悪い船体を傾斜させるが、不可視の障壁ごと側面装甲を打ち破ったものの駆逐艦娘の近接武装の威力はその深海棲艦を一撃のもとに撃破するには至らず。

 

 右舷に奇妙な錨がめり込み一秒前には傷一つ無かった装甲を手ひどく破壊されたとは言え航行出来ない程ではない、砲も魚雷も使わずに自分の装備を投げ捨てる様にぶつけてきた駆逐艦娘の姿はホ級にとって苦し紛れの悪足掻きにしか見えず。

 今すぐに腕を伸ばして身体に刺さった錨と鎖を掴み自分から距離を取ろうとしている忌々しいチビ(艦娘)を力任せに振り回し海に叩き付けてやればきっと小さく弱い敵は自らの死と共に身の程を知るだろう。

 

 ホ級がそこまで考えたとほぼ同時、不健康な色の巨椀が握ろうとした細い鎖の先端で大きな撃鉄が弾底を打つ様な強く乾いた音が寒空の下に響き渡る。

 

《ごめんなさい、なのです》

 

 その敵艦への急接近から攻撃後の離脱までに電が要した時間は僅か数十秒。

 

 目を背ける様に顔を伏せた電の艤装に繋がる鎖の先で鋼の三日月(ブーメラン)の内部機構がその機能を発動させ、深海棲艦に突き立った状態の近接武装から放射された激しい衝撃波が軽巡の胴を爆ぜさせる。

 

 そして、巨大な鉄槌でへし折られた様に深海棲艦の船体が激しい破砕音を撒き散らしながらネジ切れる様に真っ二つになって砕け散った。

 

《成仏して欲しいのです・・・》

 

 昏い光粒へと溶けていく無数の破片と黒い血を撒き散らして水底へと沈んでいく灰色の腕を見送り、倒さねばならない大敵であると言うのにその相手の死を悲しんでしまう軟弱な少女(悼む事が出来る優しい戦乙女)は胸元に片手を当てながらもう一方の手に握った鎖を強く手繰り寄せ。

 撃破したホ級と共に海に沈みかけていた事を思わせぬ勢いで波を切る様に海中から電の下へと戻って水飛沫を撒き散らすブーメラン型艤装が持ち主の手に収まり、巻き取られる鎖に合わせてか衝撃波を作り出す機構を内側に覗かせていた装備は折りたたまれる様に再び元の錨の形(大きさ)へと戻っていく。

 

《これで湾の外側に居た深海棲艦は・・・雪が止むのです?》

 

 深海棲艦が支配する領域の入り口に踏み込んだとほぼ同時に襲い掛かってきた深海棲艦達を視界の悪い雪空の下で撃破した電は艦橋からの知らせでふと見回した周りの様子が妙に明るく空から降りてくる雪が疎らになっている事に気付き。

 

《・・・あれはっ!?》

 

 遠くに見える広大な白銀の岸を広げる湾に黒い足輪を付けた素足で立っている人の形をしている異形の存在が紅い灯火を宿したまるんまるの瞳で、まるで初めて見る不思議な物を興味深く見詰める様な子供の顔が自分に向けられている様子に北国の海上を走る駆逐艦娘は顔を強張らせ息を詰まらせる。

 

《あの、あの深海棲艦が北方棲姫・・・司令官さんっ、はい、了解なのです!》

 

 電の艦橋で計測された相手との距離は軽く20kmは離れている言うのにまるで自分と同じ身長で向かい合っていると錯覚してしまう程に巨大な身体を持った白いワンピースを身に着けた童女の様な深海棲艦。

 その深海棲艦の出現によって降雪が止められたとでも言うのか分厚い雲に覆われていた灰色に青色の穴が開き始め、陽の光に照らし出された白い子供の背からまるで染み出す様に歯茎を剥き出しにした口が開く奇妙な球体が現れる。

 

《浦風さん、次お願いするのです!》

 

 明らかにその北方棲姫の幼児体型に隠れるには大きすぎる奇怪な球体がその白い装甲を鈍く光らせ、一つ二つと数を増やしていく様子に電は怖気づく事無く仲間の名を呼び。

 次の瞬間、明るい栗毛色の髪が輝きを湧き立たせたと同時にその駆逐艦娘の身体が光粒になって解け、晴天の青空へと変わった海上で光り輝く金の輪がその内部に陽炎型駆逐艦の名前を刻む。

 

《ウチに任せとき!》

 

 出撃の宣言と共に高らかに鳴り響く汽笛の音に続いて黄色いスカーフタイがその胸元で結ばれ、青空にも負けない鮮やかな空色の髪が白銀の湾に吹き抜ける風に中でたなびく。

 

《そがいに心配せんでも分かっとるよ、ウチらの仕事は出来るだけ長い事時間を稼ぐ事じゃけえ》

 

 四つに増えた浮遊怪球とその口の中から吐き出されている深海棲艦の艦載機が編隊を組んで近づいて来る様子を見上げて浦風は不敵な笑みを浮かべ、左右の手に構えた12.7cm連装砲と25mm連装機銃へそれぞれ砲弾と銃弾を装填した。

 

《・・・けど、別にアレ全部撃ち落してもうても問題は無いんじゃろ?》

 

・・・

 

 分厚い氷の天井へと女の子らしいしなやかな両手が突き、魚の気配すら感じない氷点下の水温の中で発生した超短波振動が細い指先を氷の中へと潜り込ませ。

 直後、滑らかな肌が纏う障壁から発生した高周波が水分子ごと氷を融解させ水中で発生した泡立った蒸気が出口を求めて熱と共に上昇を始める。

 

 細腕を中心に突然発生した高熱による湯気が収まった後に残ったモノは例えるならワカサギ釣りの為に湖氷に空ける穴だろうか。

 

 広げた両腕で厚み3mの氷板を刳り抜いて自身の身体が通れる程度の穴を開け、切り出された氷塊を水底に押しやった潜水艦娘がピンク色のアホ毛から目元までを海面へと出して穴の外を窺う。

 

『異常ーなし、敵影なーしでち・・・うわぁ、ホントに海底だけじゃなく地形も別物になってる』

 

 敵の反応は無く見えるのは見渡す限りの氷原とそこへ影を落とす山、北極圏に迷い込んだのかと錯覚しそうな白一色の絶景へと這い出した伊58がブルブルと雪の上で身を震わせ、紫色になった唇を温める様についさっきまでマイクロウェーブを発していた両手を口の前で重ねて白い霧の様な吐息を吹きかける。

 

『てーとく、寒いよぉ、ゴーヤここから歩くのなんて嫌でち、死んじゃうよぅ』

 

 半泣きになって脳内で電気信号へと変換した泣き言を自らの内側へと訴えたスク水少女の身体が内側から徐々に輝きへと変わり、光の粒へと変わり姿を消した潜水艦が居た雪山の麓で若干控えめな輝きで金の枝葉と錨に飾られた輪が描かれた。

 

《はーい、阿賀野、こっそ~り出撃しま~すぅ・・・》

 

 普段の溌剌とした元気っぷりを数分の一まで抑えた小声、艤装も茅の輪の内側で完全に構築を終えてからの出撃で金属同士の合体音を消し。

 当社比八割増しの隠密行動を心がけた阿賀野型一番艦が背後で消えた金の輪から出て直ぐに雪原にしゃがみ込み。

 寒い寒いと凍えて青っぱなを垂らす伊58を抱き抱えあやしている指揮官が艦橋から指示した方向へと顔を向けた阿賀野は小さく頷いてから姿勢を低くしつつ移動を始め、元は400m級でしかなかった小山の変わり果てた山影を見上げる。

 

『うんっ、ハムタロさんの艦隊が敵を引き付けてくれているんだから私達も急がないとねっ!』

 

 そして、阿賀野が向かうのは前回に調査で訪れた際に鳳翔と大鳳による航空機観測で確認された北方棲姫が雪原を無為に散歩する以外の時には拠点としているらしい限定海域化に伴い数倍に巨大化した斜古丹(しゃこたん)山の一角。

 海上の様に推進機関(スクリュー)による加速が出来ないもどかしくなる程の低速ではあったが雪山の麓に足跡を点々と刻んでいた阿賀野は慎重に警戒しながら数十分の道程を経て、深海棲艦に支配された領域でありながら一度の戦闘も無く目的地である北方棲姫のねぐらへと踏み込んだ。

 

 慎重を期したわりに拍子抜けな事にここまで望遠拡大も可能な目視だけでなく阿賀野型艤装に装備された優秀な電探も敵の気配を捉える事はなく、ただ指揮席のコンソールに浮かぶ古めかしいデザインの羅針盤の紅い針先だけはまるで引き寄せられている様に一点を指し示す。

 

 そこは山を豪快に削り縦に割った様な深い谷間、左右に切り立った岩壁に挟まれてはいるが身長140mの巨大な幼女(空母ヲ級よりも大きな体)が日常的に出入りしている為かハイヒールを含めても16.6m程度しかない軽巡艦娘には広すぎると言って良い程の空間が広がっており。

 さらには山中を深く抉った陽の光が届かないはずの場所でありながらその巨大な洞穴の内側は奥に見える煌めく輝きによって足下にすら不自由せず、阿賀野は自らの障壁を探照灯代わりに使うまでも無くそれ(・・)の前へと辿り着いた。

 

《てっ、提督さん・・・これ、なんなのかしら・・・?》

 

 それは青白く波の様にうねる光を内側に湛えた小山の様な水晶の塊、その前に立ち止まりその結晶体が内包する凄まじいエネルギー量(マナの流動)艦娘としての本能的に(霊力を扱う種族であるが故に)察知した軽巡はわずかな怯えを含んだ声を揺らした。

 

 まだその時点で阿賀野とその艦橋に居る仲間達だけでなく、人類側の誰一人として姫級深海棲艦が自らの身体に集めたマナ粒子を結晶化させる能力を持って生まれると言う事実を知らない。

 

 そして、それが現在までの人類が火から始まり原子力まで積み上げてきたエネルギー科学を根底から覆しかねない人類社会にとっての劇薬となりかねない代物だと気付く事が出来た(妖精から教えられた)のは艦橋の指揮席でマナの輝きに慄く潜水艦娘に抱き付かれながらマヌケ顔を晒している指揮官一人だけだった。

 

《えっ、提督さん? マナの・・・結晶ぉ?》

 




霞「だから、偵察飛ばしなさいって言ったんだったら」
伊58「そもそも吹雪の艦隊、回避盾なんだから正面から突撃しないで欲しいでち」
吹雪「だって司令官が今回は全体的に難しくないって言ってたもん! だからボスマスだって!」
中村「あー、あれだ、生存判定のダイスを」
五十鈴「アナタは甘やかさないの!、考え無しでボスマス突撃した上にファンブったのは吹雪よ、キャラロストに決まってるでしょ!」
吹雪「そんなぁ・・・義男さんと一緒に育ててきた私の艦隊(パーティ)がっ!」

ウァワン>(つ;>ω<;)(吹雪)N督)ムギュ

五十鈴「吹雪は進行の邪魔しないで大人しく新しいキャラシでも用意しときなさい、で、ゴーヤはさっさ遭遇ダイス振る!」
伊58「サ、サブマスが容赦なさすぎるよぉ」
霞「ゴーヤ、ボス前のマスで合流よ! さっき吹雪がやられた編成なら連合組んで叩けば何とかなるったら!」

鳳翔「あらあら、提督、皆さん、お夜食持ってきましたよ」

工藤「・・・えっ、ぇぇー?」
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