【 飛べ! アキツシーマ 】
操作説明
① 大艇ちゃんをクリックしてドラッグするとドラッグした方向へと飛びます!
それはもうビューンと勢い良く飛びます!
② 画面下からの弾幕や空中にいる敵機にぶつかると大艇ちゃんは爆散します!
全部避けてください!
③ 大艇ちゃんに乗っている秋津洲さんに当たってもアウトです!
気合で避けてください!
④ 撃墜されたら大人しくコンティーニュしてくださいね!
③ 出来るだけ長く生き残ってハイスコアを目指しましょう!!
Q.これ、攻撃方法って無いの?
A.え? 何言ってるんですか
幻想的ですらある虹色が照らす青い天井の下、黒一色に染まった海から撃ち上げられた無数の対空砲撃が次々に爆音を連続させ続けていた。
《ひぃいいっ!? 提督っ、秋津洲もうダメかも!! きゃぁっ、今、掠った!? 被弾したかもっ!?》
不自然に凪いだ海面から見て上空3000m、限定海域と深海を隔てる空色の下で飛行艇母艦を原型に持つ艦娘が吹き荒ぶ向かい風の中で叫んだ泣き声は一向に止む気配の無い爆音で掻き消され。
『秋津洲、自分の感覚を信じるんだ! 俺達だっている、っ!? 左舷回頭60度!』
四発の大型エンジンを唸らせた二式大艇が己の主である秋津洲の操縦に従って急旋回を行い、一際大きな火球が回避を行った緑色の翼の先端を焦がして通り過ぎ。
『さしずめ敵が七分に海が三分かしら?』
『敵も海も黒いから色も何もあったもんじゃないけれどっ! 電探に反応多数! 中心に桁違いのが二つ!』
勢い衰えず風を切り音を残して通り過ぎ果てが見えない程に広い天井へと着弾して咲いた幾つもの炎の大輪が巻き起こす熱風から逃れた秋津洲を乗せた二式大艇はなおも続く対空弾幕の隙間を縫う様に何度も身を翻して宙を駆ける。
《あれって・・・宝石で出来た・・・島かも? 黒い海にあるのに・・・すごく綺麗》
そして、機体が大きく傾き真横になる程の急旋回によって翼の先に雲を引く二式大艇の操縦桿を握っていた秋津洲が強烈な遠心力に抗いながら見下ろした黒い海、そこには海上城壁とも言うべき無数の深海棲艦が幾重にも作る巨大な輪形とその中心に七色に光る空よりもさらに光り輝く水晶の島があった。
『油断しないで! 私達は敵の真上を飛んでるのよ!』
『戦艦棲姫の艦影を確認! その近くに白いドレスの深海棲艦・・・まさかあれが泊地水鬼って言うの?』
『しかし、あの島は? ・・・マナ結晶? あれが全て固形化した霊力の塊だと言うのかっ!?』
『え、マナ結晶って中村二佐が研究室との取引材料に使ったって言う? 嘘でしょ、あの島全部!?』
見た者を須らく圧倒する巨大な結晶で創られた孤島、類まれな指揮官と勇敢な艦娘達ですら絶句させる水晶の形を成した莫大なエネルギーの中心に真珠色のドレスが鎮座する。
『粒子濃度が急に振り切れて!? 提督は何か感じる!?』
『いや、いきなり何か感じるって聞かれても・・っ!?』
『でも、私達の周りだけなんて、対空砲火でここまでマナ濃度が上昇するデータなんて見た事無いわ!』
『待ってくれ! これは・・・まずいか!?』
絶景や雄大と言う言葉を曲がりなりにも人の形を持った存在に対して使う事が正しいかどうかは別として艶やかな真珠のドレスを纏う女神の再現体と彼女が座する水晶の島に秋津洲は一時見惚れた。
《んべっ、なんか顔に? うわっ、なにこれ気持ち悪いかもっ、ベトベトするぅ》
艦内の指揮官や仲間達の慌ただしい声が遠く感じてしまうぐらい敵である泊地水鬼の姿に見惚れていた秋津洲は不意に顔や髪に付着した粘つきで我に返り、不注意で空に漂う霧雲にでも入ってしまったのかと考えて自分や相棒の装甲に付着して昏い光粒に解けていく
『秋津洲、大艇を分離しろ! 今すぐ!!』
『ちょっと提督いきなり何言って!?』
『分離って立体機動で加速もせずにっ? 海上から狙い撃ちにされるじゃない!?』
そして、スロットルを上げたと同時に耳朶を強く打った指揮官の今まで聞いた事が無いぐらい厳しい声に驚いた秋津洲は思わずその手を二式大艇の操縦桿から離してしまった。
《え? なんで大艇ちゃんが離れて、あたし・・・落ちる、かも?》
直後に全長28mの飛行機に揚力を与えている向かい風を正面から受けて仰け反った艦娘の細身が大型飛行艇の背から滑り落ちる様に空に投げ出される。
指揮官の有無を言わせぬ強い口調に反射的に従ってしまったが自分自身ではそんな事をするなど全く考えていなかった秋津洲は体勢を立て直すどころか冷静さを失い、深海棲艦がひしめく黒い海に向かって落下を始めていると言うのにただただ目を丸くして自分から離れていく愛機の翼に向かって手を伸ばす。
『障壁強度を最大! 防御急げ!!』
木の葉の様に風に煽られて唖然とした表情から一転して慌てふためいた声を上げる彼女を他所にその背では搭乗中の安全帯として二式大艇に繋がっていた銀色の機動ワイヤーが彼方へと飛んでいく飛行艇から逃げる様に高速で巻き上げられ艤装へと回収されていく。
《提督どうしてっ!?》
時速400kmで飛ぶ愛機から突然に投げ出されると言う鎮守府の訓練でも体験したことが無い状況に陥って空中で溺れる様に手足をバタつかせる秋津洲の耳の中でさらに意図の分からない命令を発する指揮官の声が響く。
『皆! 提督が説明しない時は!』
『問うより従うべき、ね!』
そして、海上の深海棲艦がオモチャの様な大きさに見える程の高度から落下する秋津洲の艦橋で指揮官の命令に即応した艦娘達によって甲高い汽笛の音と一緒に放出された大量の光粒が十数mの身体を包みその身を護る障壁の強度を高める。
《でも! 大艇ちゃんなんだよ!?》
身体に纏わりついてきた玉虫色が障壁の放った霊力によって弾かれ掻き消されるのを横目に他の艦娘と比べて一段も二段も劣っている戦闘能力のせいで自らに自信を持てない秋津洲にとっては唯一と言っても過言では無い自分の長所である二式大艇を失うなんて事はあってはならない。
それこそ飛行艇母艦を原型に持つ気弱な艦娘にとって相棒と離れ離れになるだけでなく身一つで敵群の真っ只中に降下するなんていくら
だから彼女は自分から二式大艇の操縦権を奪った指揮官の行動が理解できず動揺で未だに続く対空砲火の中で身体を硬直させ、その瞳はただ自分から離れていく二式大艇の尾翼へと向けられ。
そして、秋津洲は突然空中に現れた巨大な生き物の口にも見える爆炎に相棒が一瞬で呑み込まれる姿を目に焼き付け。
こめかみに走った神経を刺す様な痛みで二式大艇が瞬きする暇もない間に破壊された事を知った彼女は数秒前まで必死に執着していた相棒の事を呆気なくその頭の中から放り捨てて。
《ひぃいぃっ!?》
これ以上ないぐらい大きく口を開け、青い天井を覆い尽くさんばかりの勢いで広がり追いかけてくる炎の塊に向かって悲鳴を上げた。
《ひぁっ!?》
だが、赤黒い怪物の顎が如き熱波が空中で藻掻く艦娘へと襲い掛かり炎が鼻先を舐め様としたと同時、彼女の腰に装備された艤装基部へと背後から飛んで来た銀色に輝くワイヤーのジョイントが突き刺さる様に接続される。
《ぁあぅいいいぃぃっ!?》
直後に瞬きする間も置かず凄まじい力で後方へと引っ張られた秋津洲は傍目からは悲鳴だけを爆風と共に広がる炎の大顎の前に残し
『ぐぅうっ、助けられておいて言える立場じゃないがっ、少しは加減してくれぇっ!!』
『中村艦隊から入電っ! これって合流地点の座標でいいのよね!?』
『さっきの爆発が何って、そんなの私だって分かんないわよ! 提督に聞いて!』
今までに経験した事の無い強烈な加速度に振り返る事も出来ずに声にならない悲鳴を上げる秋津洲の艦内もまた阿鼻叫喚の有り様でコンソールパネルやメインモニターに押し付けられた面々がワイヤーで繋がった友軍との通信に怒声にも聞こえる叫びで返事を返す。
『げほっ、恐らく気化燃料爆発に近い何かだ、いや、泊地水鬼の能力じゃない、空間転移の兆候は無かった!』
『敵対空の範囲外に出れたのは良いけれど、まったく潰されるかと思ったわ・・・』
そして、風にはためく
『それに二式大艇に付着したあのヌメる様な光沢、ハワイ沖海上に戦艦棲姫が出現した時に見た色と同じだ・・・海に火柱? そっちでもあの玉虫色が燃えたって言うのか?』
燃え盛る炎を前にして甲高い悲鳴を高らかに上げる絶望の表情から一転して悟りを開いた者が見せるかの様な安らかな微笑みを浮かべ沈黙した秋津洲の艦橋では指揮官が暴力的な加速度で咳き込みながらも友軍と情報交換を続けていた。
『そうか、なら・・・あれは燃料の様なモノで、それの生成が戦艦棲姫の固有能力と考えるべきか? ・・・榛名の榴弾では引火しなかったか、いや、大筋ではあってるはずだ、だがどんな能力か断言できないのは悩ましいな』
『秋津洲? ちょっと、あなた大丈夫? 返事なさい、秋津・・・ぁっ!?』
『それとそっちも気付いていると思うが泊地水鬼は今までの深海棲艦に類を見ないレベルで同士撃ちを嫌がっている、戦艦棲姫もそれに従っている様だった』
『提督! この子、気絶してる!!』
『だからあの奇妙な玉虫色も敵群を盾にすれば封じ込めが出来そうじゃないか? 気絶か、ああ、気を失ったと言う事だな・・・いや、ここらが潮時だろう、こっちも手持ちの
『高度120m、このままだと減速が足りないよ!』
『あれだけ強力な反応なら上手く流れに乗ってあの島に・・・あれ? 気絶?』
『艤装、ワイヤーは撃てるけど中継に使える艦載機が無いわよ!?』
見えないパラシュートを広げたかの様な理想的な降下体勢で水上機母艦娘はスムーズに減速し、もう艦橋内からの目視でも細波が見えるぐらい近くなった黒い海へと見えない滑り台を滑り落ちる様に下りていく。
不意に友軍との目まぐるしい情報交換と自らの思考整理に熱中していた指揮官は咄嗟に聞き逃していた部下からのその報告を反芻する様に聞き返し。
三人分の怒鳴り声が彼の耳朶をしたたかに打つ。
『冗談だろ!? 全端子、推進力放出! 制動を!!』
『もうやってます! せめて着水体勢の確保だけでもぉ!!』
そして、アルカイックスマイルを浮かべた秋津洲の体中から大量の光粒が放出され、風に踊る木の葉の様に数回の宙返りを経て減速しながら頭から海上へと
・・・
その光景を敢えて例えるなら海水で出来た巨大なトンネルとでも言うべきだろうか。
とは言え、直径が小さく見積もっても1kmに達する筒状の空間は黒く染まった水面の色も相まってその光景を見る者の距離感をどうしようもなく狂わせる。
そんな深海棲艦の力によって創られた
無数の敵艦が海面を覆い尽くす程に蠢くと聞いていたにしてはあまりに穏やかで星一つ見えない夜を思わせる不自然に凪いだ海。
自分自身の目と正気を疑いたくなる大スケールですら事前情報ではアメリカ合衆国ひいては人類にとって不倶戴天の敵となった深海棲艦の本拠地、その
新月の夜よりもなお深い暗闇に染まった海を淡く照らすスクリューが渦巻かせる輝きの航跡を残して進むワシントンは周囲を見回して自分と共に敵の支配下にある海を行く友軍の気配に気を配る。
軍艦だった頃と遜色ないどころかさらに
(いえ、目を光らせていると言うのは言い過ぎかもしれないわ)
そう内心で呟き、溜め息を吐いたワシントンの艦橋では彼女の指揮官の鼻歌を伴奏に
『よぉ、お前これどう思うよ?』
『・・・まるでピクニックね』
そんな時、不意に近付いてきて馴れ馴れしく
『だな、スリルがあったのは入り口のウォータースライダーだけ、敵艦なんか駆逐艦の影一つ見えやしない』
『確かに日本人はこれが最短航路と言ってたみたいだけど・・・これだけだだっ広い凪海だとどこを通ったって同じに見えるわね』
普段なら特に理由なく揶揄い混じりに喧嘩を売ってくるサウスダコタが珍しく大人しい態度を見せた事に片眉を上げて内心驚きながら銀髪の戦艦は肩を竦める。
『ただ通信の調子が悪いのが気になるんだよな、先に
『仮にも作戦中なんだから私信は控えなさいよ、まぁ、貴女はともかくインディアナの方は分かっているみたいね』
『いや、なんて言うかそう言うのじゃないんだよなぁ・・・どう言えばいいか分かんないけど』
妙な違和感を試す様に突き放す若干の嫌味を含んだ言い方をしても怒りださないどころか
『・・・この航路が正しいならもうすぐ合流ポイントよ、姉妹と話がしたいならその時になさい』
『あー、まぁ、それはそうなんだけどなぁ』
基本的に人の迷惑を考えずに好き勝手するタイプで現に今も相手どころか自らの指揮官の了解すら取らずに接触回線を繋いでいるサウスダコタが妙に煮え切らない態度で頭を掻いているだけでなく、まるで自分を納得させる様に小さく呟いてから離れる姿にワシントンは暗闇の中で淡く光る障壁に照らされている澄まし顔を崩して目を丸くした。
(驚いた、ワイヤーで神経が出来てる様なヤツでもナイーブになる事もあるのね)
そして、もしかしたらこの途方も無く巨大な海底トンネルよりも珍しいものを見た驚きにワシントンが苦笑を漏らしたと同時、120knotで黒い海を走る艦娘達の前方に微かな光が瞬く。
光の強さと大きさをドンドン増していくソレが目的地であると先行偵察を行った日本の艦娘部隊が調べたと言う限定海域内の航路を改めて確認した指揮官が同僚と連絡を取り合い。
『隊列確認! 警戒を厳にせよ!』、と此処まで全く戦闘が無く緩みかけていた艦娘部隊を引き締める様に警戒を命じ。
その耳の内側に直接聞こえた命令に米国海軍の艦娘全員が即座に表情を引き締めて《
燃料消費を抑えた巡航速度ですら通常艦艇を大きく上回る速さで海上を走る艦娘達が暗闇に差し込む強い逆光のせいでろくに景色が見えないトンネルの出口へと顔と砲塔を真っ直ぐ揃えて向けながら突入した。
しかし、敵の砲声で出迎えられる事も覚悟していたと言うのに実際には何一つ抵抗らしい抵抗は無く。
ただ青い空と勘違いしてしまう程に高い天井と太陽の様に海とワシントン達を照らす七色に輝く照明が見下ろす。
《とんでもないわね、これが、深海棲艦の・・・
あらかじめ聞いていた情報が確かなら自分達がいるのは本来光一つ射さない深海である筈なのにあまりの明るさに目を眩ませ顔を振る彼女達が見回した黒い海は遥か遠くに水平線すら見えた。
《おい、先発組の
《っ!? ええ、分かってるわ、皆行くわよ!》
直径1km全長数百kmのトンネルすら小さく感じてしまうスケールのインフレに他の艦娘と同じ様に怖気に肌を粟立たせていたワシントンは直後に背中に掛けられたサウスダコタの急かす様な声に押されて艦橋へと届いた友軍からの誘導に従い凪いだ黒い海を駆ける。
・・・
延々と続いた海水トンネルとは打って変わって海底とは思えない果て無き青空が広がる閉鎖空間に辿り着いた米国の艦娘部隊は先行していた友軍との合流地点へと何の障害も無く辿り着く。
しかし、戦闘形態を解除して人間サイズに戻った彼女達は目の前にある信じがたい光景に狼狽えにも似た動揺を顔に浮かべて立ち尽くしていた。
「マジかよ、一体どうなってんだ? ここ戦場って事で良いんだよな?」
それは言うなれば海上に浮かぶバラックか難民キャンプ、乱雑に廃材やらなにやらとにかく水に浮くモノを適当に繋げた浮島と言うべき歪な物体は広さだけながら小さな運動場ほどの面積を持ち、粗末な作りであるがワシントン達を含めた艦娘や指揮官達を乗せても沈んだりせずに凪いだ黒い海を漂っている。
「その、筈よ・・・痛っ」
「なら、アイツらこんな所で何やってんだよ?」
困惑してキョロキョロと周りを見回している同艦隊の駆逐艦や軽巡を背にサウスダコタがそう呟けばその隣に立っているワシントンが自分の正気を疑う様に自分の手の甲をつねり確かな痛みに呻く。
「知らないわよ、私達だって合流地点としか聞いてないわ・・・大尉もそうよね?」
それこそ二、三日持てば十分とでも言うかの様な雑な造りの足場の上にある妙に所帯じみた長閑な雰囲気に面食らっていた数分前までワシントンの艦橋に座っていた壮年の米海軍士官が戸惑いながらも「その通りだ」と答え。
破れた網や漁業用の浮きが家屋の壁と屋根の残骸を繋ぎ浮かせており、その中にはどこかの浜辺から奪ってきた様な浮き桟橋が廃材の筏と一緒に細波で穏やかな上下を繰り返す。
何故かあちこちに帆の様に突っ立ている幾本かのヤシの木の丸太とその丸太の間を結んでいるロープには万国旗の様にカラフルな衣類が干され垂れ下がり、在り合わせの布と角材で作ったらしい小屋があるかと思えば迷彩柄の軍用テントや
「あそこにいるの日本の輸送、いや、給油艦か? 誰が連れてきたんだよ、あぶねえなぁ」
手の平をひさしにしてサウスダコタがこの場で最も目立つ存在を見上げて誰にと言うわけでもなく不服そうな声を漏らし、声にはせずとも彼女の周囲にいた仲間達も同意する様に小さく頷き、巨大なドラム缶に見える装置を抱えて凪いだ黒い海に横座りしている妙に露出度の高い民族衣装をまとった艦娘へに向かって―――正確に言うならば非戦闘員である
「ねぇ、サム、あれって・・・アイスクリーム屋さんじゃない?」
「うん、やっぱりそうかな? 皆並んでるけど貰えるの?」
「アイスって私まだ食べた事無いけど昔の
「もしかしての基地司令から貰えるキャンディより甘いのかな?」
周囲のマナ粒子を吸収して貯蔵するだけでなく電力やバリアへと変換する事も出来る円筒型装置を両手で抱えてのんびりとした顔を浮かべている自衛隊所属らしい艦娘を僅かに眉をしかめたサウスダコタとワシントンが見上げていればその後ろでこそこそと囁き合う声が耳に着く。
その声に二人の戦艦が横目でついさっき暗闇の海水トンネルを一緒に抜けてきた仲間達の様子を伺えば重巡や空母は別として大半の駆逐艦は何故か友軍との合流ポイントに存在していた歪な浮島や給油艦をよりも気になる一角へと食い入るように視線を向けている。
「
「本当になんなのよ・・・コレって」
ぼそりと足下の桟橋に呟きを吐き捨てサウスダコタが赤と青に分かれた髪を乱雑に手櫛で掻き回せば胸の前で腕を組んだワシントンが己の運命を憂う様な表情で虹色の輝きが煌めく呆れるぐらい高い天井を見上げた。
「私達も貰えるのかな?」
「アイスクリーム・・・いいなぁ」
「ね、司令官、行っちゃダメ? ねっ? ねっ?」
水上キャンプの一角に浮かべられた大型フロートを広げるコンテナの上に立つアイスクリームの形をした看板と、その前で長い行列を作っている仲間達と、それぞれの指揮官を囲みおねだりの言葉と共に袖を引っ張っているらしいお子様達の会話。
そして、何故か敵領域の真っ只中に存在していた簡易海上拠点の桟橋に立ち尽くしている戦艦二人の横を彼女達と一緒にやってきた艦娘達が華やいだ声を上げて大尉や中尉の階級章を襟に付けた軍人達の手を引っ張ってアイスクリームを配給しているらしいコンテナの方へと駆け出し。
躊躇無く走り出した駆逐艦とそれに手を引かれて若干つんのめりながら連れていかれる指揮官、さらに巡洋艦や空母達が慌てて保護者を元気よく引っ張っていった子供達を追いかけていく。
そんな予想外過ぎる光景と仲間達の姿に怒る気力すら失い、もう何を言うべきかも分からなくなったワシントンは
「やっと来たわねアンタ達! 遅いじゃないの!!」
「本当になんなのよ・・・」
「コロラド、お前もかよ・・・」
なけなしの緊張感すらも失いその場に項垂れ座り込みたくなっていた赤青と銀色の戦艦達は顔馴染みの癇癪持ちの登場にウンザリとした顔を向け、目に飛び込んできた二段重ねアイスが乗ったワッフルコーンを手している自称BIG7の姿に眩暈を覚える。
「まあ良いわ、二人とも今のうちに英気は養っておきなさい」
「本当に配ってんのかよ・・・」
「あ、チョコとペパーミントはもう無くなってるからがっかりするんじゃないわよ」
「はぁぁぁ・・・もぅ嫌、何がアイスクリームよ」
そう言ってからバニラアイスをかじりコロラド級一番艦はネオンサインの様な星型の光が飛び回っている妙に賑やかなアイスクリーム配給所として使われているらしい一角を指さす。
「ん? そうねアイスクリームの事にやたら厳しくなる子ってイヤよね!」
「あれだけの期待を受けて出撃したのよ、私達はっ! 遊びに来たんじゃないのにっ!」
「サラトガなんかちょっと順番抜かそうとしただけで引っ叩いてきたのよ? あのシスターサラが信じられる? 駆逐艦じゃないんでしょうに全くもう」
「な、なぁ、ところでインディ、インディアナはどこだ? なんか全然気配感じないんだけどココにいるんだよな?」
嘆きの呻きを吐きながらその場に頭を抱えてしゃがみ込んでしまったワシントンのセリフの何を勘違いしたのか相手の気を全く考えずに些細かつ個人的な愚痴を垂れ流し始めたコロラド、そんな彼女の言動に引きつった苦笑いを浮かべたサウスダコタがあからさまな話題変更を行い。
「なによ、連絡入ってないの? あの子なら撤退したわよ」
その問いかけにサウスダコタへと振り返った鮮やかな金色のセミロングから不機嫌そうな感情を感じる揺らぎが湯気の様に立ち上った。
「そうか、撤退した・・・撤退した!? あの戦艦インディアナだぞ!?」
「ええ、いきなり空中から現れた馬鹿みたいに大きな手に握り潰されかけたの、何とか命は助かったけど戦えそうにはないから少し前に外へ護送されてったわ」
そう言ってから不機嫌そうに一息鼻を鳴らしたコロラドは残りのアイスクリームをコーンごと頬張りモゴモゴと頬を膨らませる。
「は? デカい手? いや、でも私達あの真っ暗トンネルで撤退する部隊となんかとすれ違わなかったぞ」
「大破した子達を外に連れて行ったのはMr.タナカの部隊だから彼らがどうにかしたんでしょ」
「そのタナカってこの作戦に参加しているジエイタイの指揮官よね?
いまいち要領を得ないコロラドの言葉に面食らったサウスダコタはその会話が気になって何とか立ち上がったらしいワシントンと顔を見合わせて半信半疑と言った表情を浮かべた。
「・・・知らないわよ、よく分からない方法か何かで何とかしたんでしょ、それにそんなに騒がなくても死んでさえ無ければコウソクシュウフクザイとか言う薬で直るらしいから大丈夫でしょ」
「いや、お前なぁ、よく分かんないは無いだろ、仮にも軍人が思考放棄はダメだぞ」
「あのねっ!? それ以外に
戦艦コロラドの突発的なヒステリックに関して二人の戦艦娘はもう慣れっこではあるが、しかし、普段よりも一段高い興奮の度合いとこれ以上ないぐらい不愉快と言う顔で繰り出される怒声にサウスダコタもワシントンも二の句を継げず呆気に取られる。
「いきなり蛇みたいに伸びて砲弾の雨を回避したり! 精々数mのサムライソードで戦艦みたいにデカい深海棲艦を真っ二つにしたり! 何もないところに出鱈目撃ちしたかと思ったら海面下の敵を撃破するとか!! とにかく無茶苦茶な事する連中なのよ!? あんなの見たら実はテレポートが出来ますって言われても納得しちゃうわっ!」
怒涛の勢いで叩き付けられたコロラドの叫びに後退りながら耳から入ってきた内容の荒唐無稽さに青赤と銀色の頭が奇しくも同じタイミングで左右に分かれて首を傾げ、彼女達の脳内に?マークの弾幕が盛大に広がる。
「・・・ふぅ、でも今はそんな事どうでもいいのよ、そうよ、重要な事じゃないわ!」
そして、戸惑うサウスダコタとワシントンを他所に一頻り叫んだおかげで落ち着いたらしいコロラドが自分よりも背の高い二人の戦艦に向かって澄まし顔でそう言い切った。
「大破した子達の撤退を知らないならこれも聞いていないでしょう・・・私達はこれからここに全艦娘部隊を集合させ、その全戦力を以て限定海域の中枢である泊地水鬼を撃破する作戦を実行する事になるわ」
筏の様に横並びに繋げられた艀の上で一拍の沈黙が流れる。
「まっ、これは後で集合した時に改めて聞く事になるでしょうけどね」
「コロラドお前、いくら何でも吐いて良い嘘と悪い嘘があるんだぞ?」
「ちょっと頭の、コホンッ、休憩が必要なのは貴女のようね?」
笑えないギャグを聞いた様な態度で失笑を浮かべたサウスダコタと可哀そうな生き物を見る様な目で目の前にいる仲間を見るワシントンの態度に、しかし、周囲から満場一致で怒りっぽい艦娘と称させれているコロラドは二人の失礼な言葉に小さく鼻を「フンッ」と鳴らすだけで済ませ。
「私達がこの最悪レベルにムカつく海に着いてから貴女達が来るまでに何時間経ったか分かる?」
「何時間って? 多く見積もっても精々六時間、半日ぐらいでしょ」
「それに司令部がいきなり作戦開始時間を繰り上げしやがって急かされて出発させられたんだ、これでも予定より早いぐらいだぞ」
時計無くしたなら貸してやろうか、とお道化ながらポケットに手を突っ込んだサウスダコタに向かってコロラドは胸元から取り出した鈍い銅色の懐中時計を突き出してバネ仕掛けの時計蓋を開く。
「あのねぇ、いくら戦力の逐次投入が気に・入らない・・・からって・・・?」
「作戦全体に対する文句は司令部に、な・・・おい、この時計、時間も日付も狂ってるぞ」
自分に向けられた二人の言葉に「察しの悪い奴らね」と小さく肩を竦めたコロラドは粗雑とは言え半日程度では作れそうにない海上拠点を爪先で小突き。
「いいえ、狂ってなんかないわ」
強い意志を込めた青い瞳で正面から二人を見据えて、間違いなど一つたりとも存在しないと断言する様に言う。
「外と違って
産メヨ、増ヤセヨ、此ノ海二満チヨ。
魂モ、油モ、鉄モ、アラユル糧ヲ与エヨウ。
黒鉄ノ城トナリテ咎人共ヘ鉄槌ヲ打チ下ロセ。
真珠色の指先が距離を手繰り寄せる。閉じた世界の時がさらに加速する。
時計の針が一つ進む度に量産される従僕を従えて水晶島と南国へと繋がる道が縮む。