偉大なる女王は『おまえ達は何か』とお尋ねになった。
万の軍勢は『貴女様の忠実なる艦隊であります』と答えた。
次に真珠色の指先は自分へと刃を向ける者達を指して問う。
それらは深海棲艦の常識から考えれば呆れるぐらいに小さく中には風に煽られただけで飛ばされるぐらいに軽い、自分達の使う力と似て非なる能力を振るう埒外の異物と言う他に言い様の無い存在。
その体が纏う不愉快な色の光をチラつかせる薄っぺらい装甲は貧弱の一言、普通種の砲撃ですら直撃すれば一撃の下にグシャリと潰れてしまうだろう事が見て取れ、五十隻程度の艦隊で正面から突撃してきた敵の姿を見た時などほとんどの深海棲艦がそのあまりの愚かさと醜さに
おまけに開戦の号砲が空に轟いた時点で泊地水鬼の忠実な下僕達の関心事は如何にライバルである同胞同族を出し抜いて手柄を得るかどうかであり、愚か極まる突撃によって自分から袋の鼠となった敵に勝利する事は戦いが始まる前から決まっていると思い込む。
そうして泊地水鬼が
誤射で同士討ちすると主人である泊地水鬼が怒るからそこだけは気を付けよう、と言う心理ブレーキを辛うじて共有しているとは言えどそれ以上にライバルに手柄を奪われるかもしれないと言う焦燥や功名心が深海棲艦達の脳内アクセルを強く踏み込ませ。
艦娘によってすれ違い様に側面装甲やスクリューを壊されて高波で転覆した同族を助けるどころか“オ先ニ失礼”と足手まといをせせら笑い通り過ぎていく。
獲物は数える程しかいないのだから早い者勝ち、むしろもっと自分の艦隊の攻撃範囲に近寄ってこい、とモノクロデザインの怪物達は汽笛を荒れ狂う海に響かせる。
艦隊全体と言う括りで言えば戦闘開始からある時点まで
何故ならば、あの矮小な連中はすばしっこく逃げるだけで産まれたばかりの
きっと、先の戦いで空母棲姫の艦隊が屈辱極まる敗北を喫したのも
いや、もしかしたら我らが女王をあそこまで怒らせるのだから自分達には想像も出来ないぐらい筆舌に尽くし難い卑怯な罠か策を弄したに違いない、と。
たとえ血気盛んな怪物達は三十隻程の同胞があっと言う間に撃沈されたと言う知らせを聞いても功を焦ったライバルが
抗い難い狂奔の中で自分ならば他の誰よりも上手く敵を屠れるとでも言う様に砲声を盛大に撃ち鳴らし、とても小さくて弱く見える獲物に向かって乱杭歯の隙間からよだれを垂らし
それは言うなれば象と蟻の戦い。
確かに
ところで話は変わるがここで一つ、些細な問いを掛けさせてもらいたい。
“艦娘達にとって明らかに時間の無駄でしかない数の勝負を馬鹿正直に受けてやる義理があるのか?”と。
その答えは
そう、彼女達はどれほど悪辣と非難される事になろうと自分達が
奇しくも泊地水鬼が支配する深海棲艦が咆哮と共に糾弾する通りに艦娘達はいとも容易く卑劣極まる策に手を染める。
・・・
《気合を入れろ! 押して押して押しまくれぇ!!》
巨大な鉄塊同士がぶつかり合う鈍く重い音に負けじと腰まで届く黒髪を振り乱して駆逐艦娘、磯風がその涼し気な顔立ちからは想像も出来ないぐらい猛々しい大声を上げて横倒しになった軽巡ヘ級の船体を全力で押す。
体中から黒煙を立ち上らせて悲鳴の様な野太い遠吠えを繰り返し響かせる巡洋艦サイズの巨体が磯風と共に取り付いた十数人の米海軍の艦娘が放出する推進力によって荒波を押し退けてその進路に立ちふさがる深海棲艦の横列に向かって突進する。
磯風の鼓舞に負けじと《GO! GO! GO!》と口々に気合の声を上げる駆逐艦娘達が軽く見積もっても2000tはあるだろう鋼の怪物を100knot以上まで加速させて針路上にいた駆逐艦や潜水艦の頭を轢き潰し。
周囲にハの字の津波を巻き起こし時速180kmで押される
《はっはっはっ! 実に他愛無いぞ、深海棲艦!!》
寸分違わず二発の砲弾を同じ位置に命中させる事で駆逐ロ級の船体を貫き心臓部を破壊した12.7cm連装砲を片手に磯風は昏い光粒になって砕け海に飲まれていく残骸に向かって些か男勝り過ぎる豪快な笑い声を上げ。
その磯風に続いて戦場の真っ只中を走る米海軍の艦娘達が敵艦の撃沈に限界まで興奮を高ぶらせた熱狂の声を上げながらそれぞれの手にある魚雷を空に向かって投げ自分達自身の機銃弾によって誘爆させる。
空中に轟いた十数発の爆発は所狭しと犇めく深海棲艦の頭上を掠めはしたが傷一つ付ける事は無く、目に見える限りで言えば精々が爆炎の煤をモノクロの巨体に降り注がせる程度。
しかし、同時に発生した強力な霊力力場によるジャミングによって艦娘の隊列を多勢を以て囲む深海棲艦達が算を乱してまるで自分と僚艦の位置関係を見失ったかの様に追突し合う。
《ほぉっ、かく乱に惑わされず私と司令の道を阻むか?》
混乱し不完全になった包囲網の端で何とか艦娘の進路を塞ぐ壁の一隻として間に合い立ち塞がった軽巡ツ級エリートがまだ生存している同族とそれを盾にして突撃してくる敵の姿に逡巡する。
小艦隊を指揮するエリートとは言え勝手な判断で同胞を沈めて自らの
突進しか能の無い矮小な連中など自分の大きさと自慢の砲撃で仕留めて見せると戦意を滾らせた黒ずくめの軽巡と生ける死体と化した白灰色の軽巡がぶつかり合い。
二隻の間で重苦しい衝突の轟音と痛々しい鋼の塊が捩じれる悲鳴が響くもののそれでも止まらない艦娘達の突進力に負けじと軽巡ツ級エリートはその真っ黒な身体から炎の様に赤いオーラを吹き出しビルの様な両足で深く海を抉り、昏い光の渦を吐き出すスクリューが激しい衝突に抵抗する。
ツ級による渾身の抵抗によって流石に急減速を余儀なくされた艦娘達の顔に一瞬だけ焦りや狼狽えが浮かぶ。
《敵ながらその意気や良し!!》
だが、彼女達の表情と呻きは直後に艤装のスクリューを最大戦速にしたまま白灰色の鋼板に鋭い鉄靴をめり込ませながら深海棲艦の船体を直角に駆け上っていく磯風の姿のせいでヤケクソ気味な笑みと笑い声に変わった。
《しかし!》
灰色の軽巡深海棲艦を踏み台に磯風の身体が飛び上がり、重い撃鉄が起こされる様な鋼の音と同時に彼女の右舷を守るかつての駆逐艦磯風の艦橋を模した艤装が甲高い音を立てて展開しその内側で銀色の刃を鈍く光らせる。
それは深海棲艦の身体を駆けあがるまでの僅か数秒で展開した磯風専用の近接戦闘用の武装、世間一般で言うところのカッターナイフに非常に酷似した形状、ただし縮尺は持ち主が両手で剣の様に構える事が出来る程に長く。
その機械仕掛けの内部機構を剥き出しにしたグリップの中から勢い良く等間隔に横線が刻まれた刃が伸ばされ、鈍い銀色の切っ先が風切り音を立てて赤いオーラを纏った深海棲艦の首元に吸い込まれた。
金管楽器を思わせる涼やかな響きと共に鈍く光る刃の先端が刀身に刻まれた横線に添って割れ、砕け散る。
《その程度で私達の進撃を止められるなどと思うなっ!!》
霊力によって形作られる疑似物質である
ツ級の頭部と同時に虹色の逆光に向かって鈍く光る鋼刃を両手に跳躍した駆逐艦娘が力強い跳躍の勢いをしなやかな宙返りによって真下へと向かう力に変え、巨大カッターナイフのスライダーが押し上げられガチャリと内側からせり出した新しい切っ先が返し刀で眼下の海面に倒れ伏す軽巡ヘ級の船体へと振り下ろされた。
《嘗めるなよ、この磯風伊達ではない!》
二度目の撃鉄が落ちる音が鋼刃を甲高く響かせて砕け散る銀片と共に放たれた暴力的な衝撃波によって障害物を切り裂いた駆逐艦娘が首から上を失って背中から海面に倒れて沈んでいくツ級とその後を追う無残に断裂したヘ級が巻き上げる水飛沫を背に着水する。
《泊地水鬼および戦艦棲姫を発見・・・全艦、突撃用ぉ意ぃっ!》
深海棲艦の女王の力によって空間だけでなく時間まで歪んだ異常空間である為に磯風達が走り抜けた正確な距離を導き出す事は不可能、しかし、途方も無い長距離航路と無数の深海棲艦を文字通りに押し退けた彼女達の目の前が不自然な程に開けて遠く真っ黒な水平線に水晶の島が光り輝く。
終わりが無いと錯覚する程に続いていた分厚い深海棲艦の鉄壁の最後の一枚が磯風によって取り払われ、立ち上る水飛沫を強行軍の勢いのままに広い海へと飛び出した艦娘達は燃える様な戦意を漲らせた
まるで
《姫級と鬼級の力を併せ持つ要塞型深海棲艦、相手にとって不足無し!!》
その一気呵成の先陣を切り『だが、敵大将を討ち取り最も大きな武勲を得るのは米軍などでは無い!』と胸の中へ強く宣言した黒髪の駆逐艦の姿が何の前触れも無く光粒に解けて周囲に400knot分の慣性エネルギーを撒き散らして玉虫色の光沢が混じる黒い海を抉った。
・・・
「さぁ、この磯風と司令が引導をっ! は? ぬぁっ!?」
メインモニターを包み込む閃光をくぐり抜けて再び黒い海面が見えたと同時に磯風が艦橋の円形足場に現れ、一時漫画みたいに空中で手足をじたばたさせたかと思えば直ぐに重力を思い出したかの様に床に落ちて尻餅を着いた。
《Please Follow me! ついて来て下さいネー!》
そして、尻餅を着いたまま狐に抓まれた様なキョトンとした顔で周りを見回してすぐに状況を理解した磯風がスンッともの悲しそうな表情でこちらを見上げ、それに少しだけ申し訳ない気持ちになるが弁明や慰めよりも今はやらないといけない事があると俺は自分に言い聞かせる。
「金剛! すぐに動力を外付けジェネレーターに集中させろ! 全部だ!」
ついさっきから身体中にしがみ付いている数人の小人が矢印の付いた棒を四方八方に向けて俺の髪や服を引っ張る様な仕草を繰り返す。
「集中って何パーセントよ!?」
「今
艦娘の艦橋に潜む妖精達の姿は俺の視界にしか存在しない幻覚だが、その力によって鋭敏化させられた肌感覚が矢印の指し示す方向から押し寄せてくる殺気でヒリついて仕方がない。
数秒の合間すらもどかしく感じる時計の針が全く役に立たない限定海域の中心域で金剛が踏み込んだと同時に玉虫色の光沢を蠢かせる海面が激しく泡立ち、一つ一つが小さな家ぐらいある気泡が無数に膨れ弾けあっと言う間も無く妖しげな色の濃霧が俺達と泊地水鬼がいる水晶島の間に発生する。
「来るぞ!!」
《OK! 最大出力でいきますヨー!》
そして、俺の突然の命令に従って金剛型戦艦の主動力から湯水のように流し込まれるエネルギーを全て装甲の耐久力に変換するのは元々陸上で運用される事を想定して設計されたマナ粒子の除去装置。
限定海域突入前には
その改造を担当した【はつゆき】の整備員曰く「とにかく使える部品を繋げただけ」と言うデザイン性皆無な
メインモニターに映る金剛の白い飾り袖が纏う
直後、俺達ごと海を呑みこもうと広がってきた玉虫色の濃霧が一気に発火する。
《But! この程度、テイトクへのBurningLOVEに比べればマッチみたいなものデース!!》
一気に周囲を埋め尽くした炎の色の中ですらくっきりと見える赤文字の警告が手元のコンソールやメインモニターに表示され、金剛の船体に致命的な損傷を与える可能性が高いと知らせるそれの言う通り増幅され強化されているにも拘わらず戦艦娘を守る障壁装甲がまるで溶ける様な早さで削られていく。
「米艦隊で旗艦変更が、重巡が出撃! あれは・・・障壁を内張りで強化するって事よね!?」
「アメリカ軍の指揮官にも反応が良いのもいるって事ね、でもこのままだと数分持てば良い方だわ」
「そんな事より提督! このまま闇雲に進んだら敵の思う壺じゃないの!?」
速力を犠牲にして一時的に強化された透明なバリアごしに押し寄せる炎の色へ金剛の両手の指先が迷いなく真っ直ぐ掲げられている。
「いや、問題ない、このまま進撃だっ!」
そんな口から出たセリフとは裏腹に指揮官として彼女達の信頼に応えられるのだろうか、と弱気な事を考えてしまう。
《YES! 金剛型のFULLPOWER見せてあげマース、だからテイトクは目を離しちゃノーなんだからネー!!》
見えている地雷に仲間を引き連れて飛び込めと言われたも同然だと言うのに全く揺るがないいつも通りな金剛の陽気さについ口元が緩んで溜め息が漏れてしまった。
「でもこのままだと突っ切るなんて無理よ! 電探で見える範囲全部火の海なのよ!?」
「いくら何でも今回だけは無謀だわ! 今からでも後退して敵群の中に戻ってやり過ごせば!」
流石にこんな状態で進撃を選べば諌められもするか、と内心で他人事のように呟きながら周りを見回せば血相を変えて俺に危険を訴えかけている夕張と叢雲の二人ほどではなくとも皆の表情から強い緊迫感を感じる。
それでも俺の命令を失策と断じる反抗的な言葉が飛び出てこないぐらいにはまだ俺に期待してくれているだろう、そう、信じてくれているのだと思いたい。
「大丈夫、なにも問題ないさ」
だから努めて落ち着き払った口調を心掛け、視界を埋め尽くす様な炎への恐怖でカラカラに乾いた舌を動かし、自分にできる最大の虚勢を張って指揮官らしい顔を作った。
「いい加減あのサボり魔も働く気になった頃だろうからな」
俺達に先頭を押し付けて隊列から離れた悪友の顔を思い浮かべて指揮官らしくしていた顔を場違いな苦笑へと変えれば俺に向けられている時雨達の顔に少しの笑みと呆れが混じり。
丁度その時、噂をすれば影とでも言いたいのか俺達を守っている拡大障壁を包む様に轟轟と燃え盛る炎の音とは違う甲高いガラスを削る様な音波が足下を走った。
・・・
まるで虚空を撫でる様に動いていた戦艦棲姫の両手が止まり、怪訝そうな表情を浮かべた
直後に電探に繋がる感覚器だけでなく艶やかな黒髪に隠れた耳朶まで激しく突き刺す音と言うより衝撃と言うべき波動の放出に驚いて泊地水鬼は玉座の背もたれへと仰け反る事になり。
空母棲姫の仇共との戦いの最中でありながら初めて目にする猛々しい炎の山がその内側から真っ白な水蒸気に上書きされると言う深海棲艦にとってですら大スケールの光景に一時見惚れてしまった。
しかし、その僅かな油断によって急激な熱膨張によって濃密な蒸気を含んだ熱風が海から押し寄せ黒から白へとグラデーションするロングヘアが波立ち、猛烈な潮の臭いとしょっぱさに噎せる事になった泊地水鬼は咄嗟にその白い長手袋に包まれた腕を振るって空間に穴を開けて玉座である水晶島の前庭と言うべき凪いだ海原で発生した濃密なマナ粒子を含んだ水蒸気の塊を遠く離れた場所へと追い払う。
そして、気を取り直して苛立たし気な様子で再び泊地水鬼が自分が支配する領地へと目を向けた時、そこに広がっているのは炎の山では無く、彼女が見慣れた虹色に照らされる黒い海ですらなく、視界一杯に虹色を反射して輝く透き通った海があった。
・・・
限界を超えて文字通り火を噴いた
『確か開発費に二億かかったとか聞いた事あるぞ、それ』
続いて追加装備による
ガラスの割れる様な音を立てて雪の様な破片を散らし解けていく光の中で白衣の小袖を揮って指先を銃の様にして水晶島を指し示す金剛の足下を大きな人影が白い泡を渦巻かせながら走り抜ける。
『そんなのを使い捨てにする事になるとは、こう言う事をやるから俺達は税金の無駄遣いと言われるのかもな』
限定海域の中心へと砲塔を揃えて向け不敵に笑う戦艦娘とは対照的に米艦娘達は突然に自分達に襲い掛かってきた大火炎が跡形も無く消えた事に戸惑い周囲をキョロキョロと見回し、足元から水飛沫を上げて浮上してきた友軍のシグナルに驚いて走る足をふらつかせた。
『ご愁傷様、始末書で済めばいいな』
海を黒く染める昏い光粒と相反する輝く光粒の波動によって浄化された海中から急角度で浮上した星条旗柄を付けた水着姿の艦娘達が激しく咳き込みながらそれぞれの艤装の開口部から噴水の様な排水を行い。
無数の深海棲艦による広大な防衛線の途中で逸れていた部隊の合流に驚きながらも歓声を上げるアメリカ海軍の面々を引き連れる金剛型高速戦艦とその足元で桃色の髪を海流になびかせて伊号潜水艦がミサイルの様な速度で海上と海中に二本の白泡の線を水晶の島へと引く。
『他人事みたいに言うな、お前が遅れなかったら使わずに済んだ事を考えればそっちだって同罪みたいなモノだろ』
泊地水鬼と戦艦棲姫と言う最上位の支配者が座する水晶島に向かって直進する艦娘の気配に広大な海を埋め尽くさんばかりの巨大円陣から憤怒に満ちた遠吠えが向けられる。
しかし、深海棲艦達はその身に刻まれた厳格な階級制度と指揮系統によって本来なら女王の許しを得た極限られた者しか入る事を許されない聖域へと土足で踏み込んだ罪人を追いかける事を躊躇い。
聖地とも言うべき尊い領域に武器を向ける事すら忌避した黒鉄の下僕達は逃した敵の背を撃つべき砲口の行方を彷徨わせてしまう。
『・・・道が混んでたから仕方なかった、つまり不可抗力って奴だ』
『まったく、お前はいつもその言い訳を使うな』
不甲斐ない従僕達や自分に対してでは無く愛する女王に対する有り余る無礼に対して怒髪天の勢いで体中から憤怒を迸らせた戦艦棲姫が潜水艦娘の超音波によって黒い海水ごと分解された
戦艦棲姫の意志によって軟体生物の様に蠢き、白泡を渦巻かせて近付いてくる潜水艦を触腕の様な汚染でもって迎え討とうと姫級深海棲艦の異能が広がりを見せた直後。
静かにそれでいて狂おしい程の紅色の灯火を溢れさせる視線の先、真珠色に包まれたしなやかな腕が鞭の様に振り抜かれる。
白磁の指先が距離を無視して音速を凌駕する勢いで遠く遠く大海を引っ掻き。
海原が縦に割れ。
母なる海が地球に満ちてから今日まで海底の闇に閉ざされていた地球の地肌が虹色に照らされた。
そんな事、問うまでも無いでしょ?