田中や他の司令官は海上護衛とかに駆り出されて働いています。
高速修復剤? 課金アイテムじゃないっすかね? 知らんけど。
皆、頑張れ、超頑張れ(他人事)
諸事情により今回ちょっと短い
「むふぅ・・・♪ しれぇかんぅ・・・♪」
「吹雪ちゃん、やめ、止めて・・・寝ぼけてないで起きてぇ・・・ひゃあっ! そこはだめですよっ・・・」
突然、彼女が寝ている木製の二段ベッドの下からドタンッバタンッと何かが落ちる音と姉妹の悲鳴が聞こえ、眠気を訴える瞼を薄く開けた駆逐艦娘の初雪はのそのそと上布団の中から顔を出してベッドの下を覗き込む。
「吹雪も白雪も、何やってんの二人とも・・・初雪はまだ眠いんだから騒がないでよ」
艦娘として目覚めた後に支給された吹雪型の制服に身を包んだ姉の白雪と白い綿地の寝間着を着たまま寝ぼけている吹雪が絡み合う床に倒れ、気持ち悪い笑顔を浮かべてまだ夢の中にいるらしい長女が唇を次女のほっぺたに擦り付けている。
ひどい光景としか言いようがないのに、何故か白雪の方が本気で拒絶していないので二人が床で転げまわるのはまだもう少し続きそうだった。
「んぅむぅ・・・眠い・・・布団にひきこもる・・・」
「アンタはさっさと起きないさいよ! 白雪もさっさと引っぱたいてでも吹雪を起こしなさいなっ!」
亀のように頭を布団に引っ込めようとした初雪の前髪が何者かの手によって握られ、毛根が訴える痛みに顔を顰めた吹雪型の三女は胡乱な視線を犯人である白銀色の妹へと向けた。
「でも吹雪ちゃん、昨日やっと治療が終わって治療槽から出てきたばかりなのですよ?」
「治療の一カ月の間まるまる眠りこけてたら睡眠時間なんて十分足りてるでしょ、ほらさっさとする」
隙を見て初雪は自分と同じ吹雪型姉妹である叢雲の手から逃れようとするが気の強い妹は握力も強いらしく下手に抵抗すれば額の広さが数cm広がると言う悲劇が早朝から自分を襲ってしまう事実に彼女は口の中で唸る。
「今日は私・・・特に朝の予定入ってない、だから、・・・座学の時間まで寝ててもだいじょぶ・・・」
「んなわけないでしょ、着替えてさっさと朝食、その後は軽巡の人達と湾内演習に決まってんでしょ」
「ぇぇ・・・やだ、今日の担当艦って・・・神通さん、でしょ・・・初雪は天龍さんの時に演習する、から」
面倒事をボイコットする事に関しては積極的になる姉の姿に叢雲は大きくため息を吐いて初雪の前髪を離し、次の瞬間には彼女の身体を覆っている上布団を剥ぎ取った。
そして、早朝の寒さに凍える雪の名を持つ駆逐艦の悲鳴が部屋に響き、寝ぼけながら妹達に朝の挨拶をしてその場で寝間着を脱ぎ始める長女を次女が甲斐甲斐しく世話する。
「だらしないわねぇ初雪や私も大半の艦娘が目覚めたばかりなんだから、厳しい訓練は寧ろ自分から挑んでいくべきよ!」
初雪とは違う理由でクレイドルへと霊核となって戻ったが、奇しくも彼女とほぼ同時に目覚める事になった叢雲は自分と同じ境遇の姉妹へのお節介を焼くのが日課となり始めている。
こうなったら叢雲はテコでも意見を変えてくれないとまだ短い共同生活の中で学んだ初雪はウンザリとした顔でベッドの上から降り、自分の衣類棚へと向かった。
「・・・まぁ、神通さんの陸上訓練や海上演習は接近戦に偏ってますからね」
「天龍さんはちゃんと砲雷撃するし・・・、当たらないけど。神通さんだと組み手ばかりになる・・・痛いのやだ」
吹雪が使い終わった部屋共有のヘアブラシを初雪に渡しながら白雪が苦笑する。
「天龍さんは砲雷撃を牽制って割り切ってる感じがあるから、足場を引っ掻き回して接近戦に持ち込むのが一番効率が良いって前に言ってたし」
「軽巡の人が使う刃物は敵の障壁を無視して攻撃できますから皆さん、実戦に慣れてくると大抵はそんな戦い方になってしまうみたいですね」
いつものセーラー服に着替え赤いヘアゴムで後ろ髪を結い身だしなみを整えた吹雪が脱いだ寝間着を畳んでからベッドの寝具を畳んでいた白雪と共に初雪の方へと振り返る。
「まぁ、神通さんに関しては助けに来た時の那珂ちゃんさんの姿が衝撃的過ぎたから、らしいですけど・・・」
「確かにあの時の那珂ちゃんさんは凄かったよ。壊れかけの短刀一本で敵の砲撃を十発以上も交わしきったんだから、私には無理だよ」
初雪は霊核となってしまっていた為に覚えていないが自分が深海棲艦に多くの仲間達と囚われていた限定海域なる特殊な空間へと目の前の吹雪は仲間達と共に突入し、見事に全長500mに達する姫級なる深海棲艦を撃破したと言う武勲を打ち立てたらしい。
だが、初雪にとって目覚めてから顔を合わせたのが昨日の昼と言う事やまだ深海棲艦との戦闘で負った重症からの病み上がりでフラフラした様子をみせる吹雪型姉妹の長女に頼りない印象を受けている。
「あれ? そう言えば深雪ちゃんは?」
「深雪ならさっさと着替えて陸軍の連中と朝練してくるって走っていったわよ、ホント落ち着きが無いのっ」
「叢雲ちゃん、今の呼び方は陸上自衛隊の隊員さんですよ。間違って言うと鎮守府の外では色々面倒になるので気を付けてくださいね」
戦争の最中に海の藻屑となり、何者かの呼び声で目覚めて人の身体を得てからは船だった時代とは大きく違う日本の姿に戸惑いを感じつつも艦娘達は少しでも早く順応する為に努力を続けている。
四人が廊下へと出ると彼女達と同じように起きてきた艦娘達が朝の挨拶を交わしながらそれぞれの歩調で歩いていく。
「なんだか鎮守府もにぎやかになってきたね」
「うん、この前の救出作戦でたくさんの子達が戻って来ましたから」
「深雪ちゃんも頑張ってるみたいだし、私達ももっと頑張らないとっ!」
とは言え初雪としては朝っぱらから青あざを作って教室の勉強机に突っ伏す羽目になるのは真っ平であり、交流を深めた他の艦娘から教えてもらった演習を回避できる素晴らしいアイディアを実行する為に朝食が終わるまでにお節介焼きな妹から逃れる好機を探る事にした。
「まずは夢に見るぐらい大好きな司令官が帰って来るまでに吹雪ちゃんも調子を取り戻さないといけないですよ?」
「もぉ、白雪ちゃんったらっ! そう言う揶揄うのはもう良いから、行くよっ、朝ごはんが待ってるんだからっ!」
昨日、治療槽から出てきたばかりの時に自分の指揮官が重傷で入院をしていると聞いてから顔を青くしたり赤くしたり目まぐるしい百面相をしながら慌て泣き喚いていた吹雪よりはマシではある。
さらに昨日からこの調子の二人に長女と次女との仲が良いのは十分に分かった、分かったからもういい加減にして欲しい。
ついこの間、クレイドルの中から現代に目覚めた初雪はそんな事を目の前で延々とやられると鬱陶しくて仕方ないと吹雪への不満にウンザリとした顔になる。
ふとすぐ横へと視線を向けた彼女は、よく見ると澄まし顔にちょっと呆れが混じっている叢雲の表情に気付き、性格が真逆とも言える妹とちょっとだけ自分と同じ部分がある事を知った初雪はちょっとだけ嬉しいと思った。
「なに人の顔を見て笑ってんのよ、気持ち悪い」
絶対コイツの思惑通りに動いてやるもんか、と初雪はいつか自分が姉である事を小生意気な妹へと思い知らせると言う思いを改めて決意した。
・・・
「へへっ・・・疑似的に戦闘形態を体験できる装置、シミュレーターゲームとか言うのやってるなら訓練してるって言い訳になるし、ちゃんとコインもたくさん持ってきたから、お昼まで遊べる・・・ふへへっ」
それの始まりは中村義男と言う指揮官が昔ゲーム機の修理や製造に関するアルバイトをしていた経験から彼の実費で揃えた部品で原型が造られ、艦娘の為に用意された酒保の片隅に設置され指揮官としての視点を学ぶためと言う名目で艦娘に公開されている。
プレイヤー達の意見や自分の経験を元に中村がちょくちょく弄っていたそのゲームは機械弄りが好きな軽巡洋艦や鎮守府の研究者までもが協力者に加わったため今では下手なゲームセンターの大型筐体よりも高い完成度を誇るモノとなった。
そして、ゲームのランキング表示の最上段に中村の名前がある事から明らかにこのシミュレーターを彼が自分自身の為に用意したのは艦娘達にとっても公然の秘密である。
「この事、教えてくれた望月には感謝しないと・・・んっ?」
テンションの低い口調を裏切る軽快な足取りで初雪が訪れたのは鎮守府内の大きな倉庫が並ぶ一画、入り口に艦娘酒保と言う看板が掛けられたそこへと吹雪型の三女は手に数枚の硬貨を握って滑り込むように入る。
広い倉庫の中に様々な商品を機内に並べている自動販売機が幾つも設置されて小さく駆動音を立てているが今の初雪の興味はそこには無く、さらに倉庫の奥から聞こえてくる爆発音のような音へと向かって行った。
かくしてウキウキとゲーム機へと辿り着いた彼女の目には巨大な半円形の大型スクリーンと円形の通路に囲まれた肘掛け椅子、そして、その椅子に座った睦月型駆逐艦の長月とシミュレーターの前に列を作っている睦月型駆逐艦達が飛び込んできた。
「ぇっ・・・? 何それ・・・」
「ぁ~、初雪、ん~、悪いんだけどコレ今はあたし達が使ってんだよねぇ」
艦娘が戦闘形態となった時に司令官や指揮下の艦娘が乗り込むことになる艦橋を模したと言う大型筐体の中、椅子に座って四苦八苦と言う顔をしながら初雪よりも一回り小さい体格の長月がレバーやペダルへと懸命に手足を伸ばしてモニターの中の深海棲艦と戦っている。
その長月が座る指令席のすぐ隣には天龍型軽巡洋艦の二番艦である龍田が柔和な笑みを浮かべながら駆逐艦へと操作手順を教えていた。
「・・・何で?」
「龍田さんに頼んだら助言してくれるって言ってくれたにゃし♪ 睦月達もこれでハイスコアを取れるようになるのね!」
「睦月ちゃんったら、張り切っちゃって可愛い♪」
肩を落とし唖然とした顔で立ち尽くす初雪と対照的に睦月型の長女が嬉しそうにその場でピョンピョン跳ね、次女がその微笑ましい姿に我が事の様にうふふっと喜ぶ。
そんな二人の姿に艦娘の長女と次女は仲が良くないといけない暗黙の了解でもあるのかと初雪は現実逃避気味に頭の端で益体も無い事を考える。
「う、裏切ったの・・・!? 望月は初雪をっ・・・」
「あたしらもさぁ、何て言うかさ、朝っぱらから神通さんと訓練はちょっと、いや悪い人じゃないんだけどさぁ~?」
そして、初雪は同じ怠惰を信条とする志を持った友だと思っていた相手からの意外過ぎる裏切りを見抜く。
「いやいや、ホントに今回はたまたまタイミングが悪かっただけだって、てぁっ、長月ぃ、あっちゃぁ・・・」
ちなみにシミュレーターでは龍田の声も聞こえない様子で長月がワーッワーッと叫びながら半狂乱になってコンソールパネルをレバガチャしており、駆逐イ級らしいCGで出来た敵がつるべ打ちに砲撃を放ってモニターを赤く点滅させていた。
「うぅっむぅ、どうしよっ・・・暇に、なった・・・」
太々しい態度で言い訳がましい事を言うだけ言って姉妹へと歩み寄っていく望月の背中を睨みつつ、自分の番が来るまで待っていたら昼食も逃してしまうのではと思えるほどの行列に初雪は並ぶべきか並ばざるべきかを悩む。
そして、不意に背後からポンッと自分の肩を軽く叩かれて初雪は反射的にそちらへと振り返ってしまった。
「おはようございます。初雪さん、お暇でしたら御一緒に湾内演習でもいかがでしょうか?」
「げ、げぇっ!? なんで神通さんっ・・・!?」
「げぇ、なんてはしたない事を言ってはいけませんよ? 私達は任務に精励する為にいついかなる時も平常心を持っていなければなりません」
背後から奇襲をかけてきた川内型軽巡洋艦に初雪は睦月型の行列以上の精神的衝撃に白目を剥き、そのオレンジ色の制服の向こうにある自動販売機の影から覗く邪悪な笑みを浮かべた銀髪の姿を見た。
初雪は激怒した。
必ずやかの邪知暴虐の徒であるお節介妹と圧政じみた訓練を課す気弱なフリをした鬼教官を除かねばならぬと決心した。
初雪には過剰な訓練の必要性が分からぬ。
常日頃からお布団とおやつがあれば生きていけると自負していた。
しかし、自分から温かいお布団を奪い、折角食べた朝食を魚の餌にする邪悪には人一倍敏感であった。
「ぅぅっ・・・はいぃ・・・」
でも、今日の所は格上の軽巡洋艦には勝てそうにないので初雪は反撃の頃合いを待つ事にしました。
・・・
その日の湾内演習で初雪が頭の天辺から下着の内側まで海水にまみれた頃、治療が終わり艦隊に復帰したばかりの吹雪が復帰の挨拶回りで近くに通りかかり、神通に手合わせを願われた。
それを聞いた野次馬の艦娘達がわらわらと訓練に使っている海上へと集まってくる。
そして、鎮守府の研究員たちが丹精込めて作った色と形だけは正確に再現された人間サイズの艤装を身に着けた吹雪と神通の周囲が騒然となった。
開始から三分少々、観衆の目の前で吹雪と神通の間で光を纏ったペイント弾が飛び交い、初雪はその二人の姿を水柱を上げて飛び散る海水の向こうに見失う。
だがその直後、水柱の向こう側から駆逐艦の一本背負いで投げ飛ばされた軽巡洋艦が水きりの石の様に海面を滑り飛んでいった事で勝負は吹雪の勝利で決した。
「何やってんのよっ! 神通ぅっ!?」
野次馬の囲いの中から飛び出した川内型の長女が驚愕に目を見開いて叫びながら飛んでいった神通を追いかけ、酒保でシミュレーターをやっていたはずの睦月型がいつの間にか野次馬に混じってワイワイ騒いでいた。
「やっぱりすごいです! 吹雪さん!」
「私達も見習わないと、ですねっ!」
漏れ聞こえてきた睦月型の誰かの言葉を耳にして初雪は決意した。
耳にタコが出来るほど事ある事に自分の指揮官を自慢する面倒臭い一番艦ではあるが彼女に逆らう事は絶対にしないと。
神通「まだまだ私も鍛錬が足りないようですね・・・」
吹雪「いえ、単純にお互いの適正距離の問題ですよ?」
神通「ぇっ? それはいったい・・・」
吹雪「長距離走者が短距離走者と50m走するようなもんです」
「他の艦種が駆逐艦に格闘戦を挑む事ほど無謀な事は無いって司令官が言ってました」
書き溜めが切れた。
でも書きたい事は大体書けたからこれからはゆっくりする。
色々書きたいシーンはまだあるから続けるとは思う。