艦これの小説なんだぞっ!?
三章開始の四十五話目だぞ!?
誰も気が付いてないだろう伏線を回収してる暇があったら艦娘の出番と肌色の面積を増やせよ・・・。
第四十五話
「ご苦労だったね、田所君」
「いえ、大した事ではありませんでした」
黒塗りの公用車の中で田所浩輔はその整った顔立ちに冷たさを感じる微笑を浮かべながら自分が秘書として仕えている相手である品の良いスーツを纏った男性、日本国民協和党の代表であり、日本行政の頂にいる総理大臣、岳田次郎からの労いに軽く頭を下げる。
個人の利益の為に組織全体の仕事を滞らせる害獣共の餌を撒き監視して然るべき時に知らせるだけの簡単な仕事、それは自分は手を汚す事なく総理からの信頼を得ただけでなく大塔財団の裏の顔への伝手と言うオマケまで付いてきた。
今回の人生は前よりも格段に自分は上手く生きていると言う確信をその美形の裏に隠し、前の世界ではある大企業で管理職に就いていた田所は自らの仕事の成果にほくそ笑む。
「約束通りあの計画へ官僚として参加するための席を用意するのは良いが、君なら国会議員としても上手くやって行けるだろうに」
「いえ、身の丈に合わない高望みは身を亡ぼすだけと言う実例を見ましたので」
他人の上に立って
そんな主張を胸の内に隠して田所は正当な労働に十分な報酬を得る社会の一部として働く事こそが最良の生き方を信じていた。
「ふむ、確かにその通りだな・・・さて、そろそろ着くか」
田所の何気ない一言に妙に深く同意する様に頷き苦笑した岳田は走る車の窓から見える巨大な施設、表向きは原子力発電所として膨大な電力を数百万人へ供給している敷地を見つめる。
今回の害獣駆除の対価として田所が岳田に望んだのは艦娘の拠点である鎮守府への介入権を有する官僚としての席。
彼は教育に熱心な母親と講師であった厳格な父の影響から今世も前世においてもテレビゲームの類とは縁が無く。
その計画の原型となったと言う前世に存在してたソーシャルネットゲームの情報などテレビCMか広告を流し読みする程度の情報しか知らない。
鎮守府や艦娘と言う単語すら計画の是非が国家の審議に掛けられるまで忘却の彼方であったのだから。
(組織内の
発電所の敷地内で車は停まり、車内から出た田所は自分の前を歩く岳田の背中を見つめながら心中で艦娘や鎮守府を甘やかしている現在の管理体制とその原因である総理大臣の迂闊さを是正すると言う使命感を心中で強める。
(だが、私ならより洗練した無駄の無い組織へと生まれ変わらせる事が出来るだろう)
彼にとって艦娘の原型がゲームであろうと今は紛れも無く国防の要となっている存在、それが実質、好き勝手な好みや理由で上司を選び仕事を選ぶ事を許している現在の有り余る無駄を抱える鎮守府の管理体制には憤りしか感じない。
他人の足を引っ張る事しかしない無能は不要、全体の和を乱す個人主義もまた無用、全体の為の個人として一定の労働力を安定供給させる事がより良い社会を形作るものなのだ。
「さて、それでは先に言っていた通り、この施設の事を知ってもらう事が最後の条件だ。その上で君が望むなら私からの最大の援助も約束しよう」
「ありがとうございます」
護衛と共に施設を歩きながら後ろ手を組んだ岳田は感慨深そうに白い建物を見上げ、自分が望んだ報酬を得る為の最後の条件として連れて来られた発電所へ特に興味も無く田所は上司に小さく頭を下げる。
(知ってもらう事が条件か、ここが原子力発電所では無い事など私は既に知っていると言うのに、まったく社会見学など中学生以来だな・・・)
岳田の後に続いて施設へと入っていく田所は皮肉った思考で既に知っている情報を頭の中に引き出す。
(大気中の霊的エネルギーを利用した燃料を必要とせず、廃棄物も出ない強力な発電システム、前の世界では考えられない凄まじい技術だが・・・だからどうしたと言うんだ)
この世界の日本に原子力発電所などが存在しない理由の詳細も事前の調査で既に承知している、だが、自分は電力会社の経営者になりたいわけではないのだと田所は僅かに眉を顰める。
「ここが発電所として完成してからもう30年になるか、所で君はここが一体どんな施設であるかは知っているかね?」
「はい、刀堂博士が提唱した霊的エネルギー力学理論の応用によって作り出された発電技術を利用した史上初の霊力発電所です」
戦後の米国などから提供された原子力発電用の核燃料は一部が大学などの実験に使われている以外は手を付けられる事無く政府が所有する倉庫施設で厳重に保管されており、今、田所達が居る発電所と言う名前を被った実験施設を含めた日本に点在する全ての原子力発電所にも核物質など一gも存在していない。
そして、一行はそれぞれ厳重な持物と身体の検査をされ、施設の案内らしい職員に先導され発電所の中央にある巨大なドーム状の建屋に足を踏み入れた。
分厚いドアを通り発電所内に入った田所は巨大な機械が立ち並ぶ複雑な内装の中心に液体で満たされた高さ10mはあるだろう巨大な円柱を見上げる。
「良く知っているねぇ、まぁ、最近では公然の秘密となってきているから仕方ない話かなぁ・・・」
その円柱の中で渦巻く青白い光が数えきれないほどのフィンを回して装置の基部にあるタービンに鈍い音を立てさせ、作業員らしい男達が操作盤などの周りを歩き回っていた。
「総理が言っていた条件はコレを知っているかどうかと言う事だったのですか?」
部外者が知るにはハードルが高いモノの日本党である程度の権限があれば党本部の資料室で手に入れられる情報、知った当初は驚きもしたが今の田所にとっては既に知っている情報を復習させられた様なものであり自分が老人の我儘に無駄な時間を使わされたのだと合点する。
「ああ、それも一つではあるな・・・ところで君はこの発電機がどの程度の世帯の電力を賄えるかは知っているかね?」
「・・・通常運転時では512万kw、約170万世帯分であったかと」
稚拙な質問に教科書通りの返答、まさに子供の社会見学だ。
微笑みながらこちらへと下らない問いを掛けてくる岳田への呆れを澄ました表情の裏に隠して田所は予め不備の無い様に調べておいたこの施設の情報を口に出す。
「違うよ、田所君・・・あれが作る電力は精々、あ~えっと、君、20万kwぐらいだったかね?」
「は・・・? そんな馬鹿な」
田所が公式の資料と民間の調査報告などから調べた情報をあっけらかんとした微笑みを浮かべたまま否定した岳田は施設案内の為に近くにいた職員の男性へと気安い調子で話しかけ、声を掛けられた男は目に見えて狼狽しながら総理へと顔を向けた。
「いえ、あの・・・総理・・・それは」
「大丈夫だよ、ここでそれを知らないのはそこにいる彼だけだ、そして、今日はそれを彼に教える為に我々はここに来た」
「・・・は、はい、確かに現在の発電量は20万kwほどが限界ですが、しかし、今後予定されている新たな装置の設置と機能の効率化によって数十倍の出力を出せる目処がついています!」
その会話の違和感に田所は妙に背筋がざわつく、周りを見回すと護衛の黒服は表情を僅かに強張らせ、発電機を管理している作業員はこちらをチラチラと視線を向けてくる。
そして、問いかけられた男が自分達の管理している装置を侮られた事に少し憤ったような顔でだが田所たちへと頷き総理の言っている通りだと同意した。
「うむ、そこらへんは予算会議の時にでも詳しく聞かせてもらおう、今後もその調子で頑張ってくれ・・それじゃぁ、行こうか、田所君」
「いえ、待ってください。先程の20万kwとは一体? ここが都市部へ電力を供給しているのは確かなはずです」
「そうとも、ここが数百万の人間の生活を支えている事は覆し様が無い事実だよ。だからこそ、その種明かしをしようじゃないか」
嫌な予感が背中でざわつき歩き始めた岳田の背について行く事を拒む様に足が重くなるが、いつの間にか背後に立っていた護衛がまるで退路を塞ぐように田所を見つめ、自分が取り返しのつかない状況へ引き込まれていると自覚しながらも彼は歩を進めるしかなかった。
岳田について発電所の建屋を素通りして裏口から出ると目の前には綺麗に石畳で舗装されたハイキングコースのような海を臨む山道が伸び、その道を何の気負いも無く軽い足取りで歩く日本国首相の後を歩く田所は徐々に口の中が渇く不快感に眉を顰め。
「ここだ、ここに君が望んだポストを得る為に知らなければならない物が保管されている」
施設の外側からは見えないように抉られた山肌に埋め込まれた完全に開けばトレーラーすら入れそうなほど巨大な扉、その前に立って肩越しに振り向いた岳田の顔はまるで悪戯を実行する前の子供の様に笑っており、その顔に言い知れない警告を放つ胃痛を抑え込み田所は何とか引きつった笑みで応える。
巨大な扉の脇に造られた人間サイズのドアを案内の職員が開き、それに続いて入った面々の前には何かの機械が壁際に幾つか並ぶ倉庫の様な広い空間が少し頼りない蛍光灯の光で照らされていた。
「総理、防護服を・・・」
「いや、私には必要ない、そっちの田所君もだ・・・彼も私と同じだろうからね」
倉庫内の警備室だろう場所から出てきた数人の警備員が田所達へと物々しい防護服を差し出してくるが岳田はその数をわざわざ二つ減らさせ、周囲の対応から明らかに人体への危険があるだろう場所へ向かう事に気付いた青年は澄まし顔を崩し今度こそ完全に引きつらせた。
「そ、総理、危険な場所に向かうなら私達もそれを着た方が・・・」
「言っただろう、私と君は同じだから問題無いと」
転生を経験した人間にはあそこの害など有って無いようなモノだ、田所の肩に手を置き朗らかな笑顔で告げられた岳田の言葉、防護服を着込んでいる背後の者達に聞こえないほど小さな声が告げた内容は彼が今まで周囲に気付かれないように隠していた情報が含まれていた。
目の前にいる老年の男が自分と同じように転生を経験した人間ではないかと言う疑いは日本党に入るよりも前から抱えていた疑惑だったが、親にも知られていない自分の秘密まで看破され、それをまるで他愛の無い事だとでも言う様に告げる岳田の姿に田所は目を剥き絶句する。
しばし、呆然としていた田所は耳に大きな金属と機械の音が届いた事で我に返り、倉庫の床の一部が一段低くなり音の発生源がそこにある事に気付く。
「では行こう」
地下へと向かう昇降機となった床へと乗り手招きする岳田に続き、まるで古い映画に登場する宇宙服の様なずんぐりむっくりとした防護服を纏った護衛達がエレベーターに立ち、その前で立ち尽くしていた田所の背が後ろに立っていた宇宙服の太い手に押されてたたらを踏みながら青年は地下の入り口へと乗ってしまう。
そして、大型の資材搬入用らしいエレベーターが物々しい音を立てて動き出した。
「そろそろ、君にここが一体何の為に造られた施設であるかを教えておかなければならないね」
少し耳障りな音と共に地下へと向かう警告灯らしい赤い光がエレベーターの縁で点滅する薄暗い空間、その中心で後ろ手を組んだまま立つ岳田は後ろに立つ田所に振り返る事無く独白する様に言葉を続ける。
自分が刀堂博士と出会い才能があるなどと煽てられ口車に乗せられて政治家を目指した事。
その一番目の仕事としてこの施設がある都市の議員となり表向きは原子力発電所と言うカバーストーリーを用意した事。
その後、三十年以上の時間をかけ、協力者を増やし、大塔財団の多大な援助によってここ以外にも同じ施設を複数用意した事。
全ての用意が整い自分と同じ様な理由から政治家となった協力者と現在では最大与党となっている政党を結成した事。
先ほどとは違い護衛などの耳がある為か転生者である事だけを伏せて淡々と自分の半生を語る男の声を聞きながら田所は暗闇に視界が揺れ始めているような錯覚を感じる。
「苦労して世間に知られないように集め、この地下へと秘密裏に収容されたそれらは私達に半永久的に電力を生産供給し続けてくれる便利な存在となるだけのはずだった・・・」
刀堂の言葉と理論に協力したのはオカルト技術の完成によって得られる利益が少し考えただけでも莫大なモノだったからであり、純粋にあの狂人の言葉を信じて計画に参加していたのは大塔財団の会長ぐらいなものだ、と岳田は暗闇の中で低く喉を震わせて笑う。
「刀堂先生の志しと生き方は憧れたし尊敬も出来た、突拍子の無い事を言い出すけれど面倒見の良い性格には何度も助けられて感謝以外の言葉が無い」
しかし、その笑いは自分達の功績を誇ると言う笑いでは無い、むしろ自分の失敗への自嘲を宿して田所の耳を揺らす。
「私達は彼の頭脳から溢れる知性には白旗を上げる事しか出来なかった、だが、それでも、その口が語る言葉は信用するべきでは無かった、私達は刀堂吉行と言う人間を信頼してはいけなかったんだ」
政財界だけでなくあらゆる分野に混じる様に存在している刀堂吉行のシンパ、その独白は田所が知る限りで政治家と言う類の中では筆頭であるはずの男が言うにはあまりに不釣り合いに感じる。
世界的なマナエネルギーの復活と地球環境のどうしようもない変化。
東京湾に用意した鎮守府の地下でマナを集め続けている霊力の結晶で造られた中枢機関の存在。
その人工の世界樹が持つ人間の味方である艦娘と都合の良い敵である深海棲艦を意図的に作り出す機能。
そして、刀堂博士が自らの生命エネルギーを利用して鎮守府の全機能を起動させ計画が開始した事。
薄暗い空間で知らされる知りたくも無かった深海棲艦の正体。
それは海だけで無く場所を選ばず無差別に現れるはずだった人外や霊的災害よりはマシではあっても、わざわざ人類の敵を生み出すと言う暴挙は他国にそれが知られればそれだけで日本は終焉を迎えるだろう爆弾発言である。
「欲に目を眩ませた人間がどんな選択をしようと、どんな行動を取ろうと最終的に次の世代が生き残れる事、ただその一点のみを刀堂先生が追求していたと私も他の仲間も気付くべきだった」
その刀堂と言う狂科学者に唆された岳田達がやってしまった暴挙の暴露によってもたらされた深い奈落へと引きずり降ろされていくような錯覚。
その暗闇の中で田所は自分の視界が徐々に明るくなってきている事に気付く。
「日本だけが霊的生物災害へ対抗出来る兵器を得るアドバンテージ、さらに無限に人々を照らし温めるエネルギー源の主導権、その大き過ぎる利益に目が眩んだ私達は鎮守府計画の初期段階、その時点で既に組み込まれていた狂人の罠に気付けなかった」
足下から青白い光が差し込み暗い斜めの傾斜を下り続けていたエレベーターが広い地下空間へと出て、下から押し寄せる光に全員が目を晦ませ、それどころか防護服を着ている護衛の中には目眩を起こしたように倒れかける者までいた。
眩しいとは感じるが手で目を守り光を遮る事で青白い光に満ちた地下空間への降下を耐えた田所は地下に到着し、鈍い音を立てながら停止したエレベーターの上から周囲の様子をおっかなびっくりと言う様子で伺う。
「さあ、ここが終点で、ある意味では始まりの場所だ」
無数のケーブルが繋がっている地上で見た円柱に形は似ているが3m前後の装置、それが地下と言う事を忘れてしまうほど広い空間の床に所狭しに等間隔で並べられ青白い光を放ちながら無機質なタービンを回す音を立てている。
「おいおい、そんな所にいないで降りてきたまえ」
いつの間にかその中のエレベーターに一番近い一つへと近付いていたらしい岳田が軽く手を振って田所達を呼ぶ。
「これは・・・一体・・・」
「そろそろ目は慣れたかい?」
恐る恐るエレベーターから岳田が立っている装置の前へと近づいた田所は装置に背を向けた総理がおどけた調子で軽く手の甲で小突く金属のプレートを見て、青年はそこに刻まれている文字を読む。
「収容日時、1966/3/21・・・USS Saratoga? レキシントン級航空母艦、二番艦!?」
随分と古びているが金属の板に書かれた文字列を口から漏らした田所はハッと顔を上げて目の前にある装置のガラスで造られた円柱を見つめる。
その青白い光の発生源、液体で満たされたガラス管の中で握り込んだ拳ほどの大きさを持つ水晶体がふわふわと揺れながら光粒を渦巻かせて水底のタービンを一定の速度で回し続けていた。
その正体に気付いた田所は一歩二歩と後退り、背中を別の装置へと当ててしまい、そして、振り返った場所に着けられていたプレートの文字にも目を走らせる。
「収容日時、1961/6/14・・・ノースカロライナ級戦艦、ワシントン・・・、まさか、ここにある全ての装置に・・・?」
その結晶体が回収された年月日、場所の名や座標、艦種、艦型などが事細かに刻まれたプレートが取り付けられた円柱の発電装置。
地下に整然と並ぶ船の魂が収められたガラス容器、それが青白く輝く光景を見回して田所は感嘆に震えて目を見開く。
「ここだけでも520個、いや、520人分かな・・・刀堂博士達が世界中を駆けずり回り見つけ出したのは日本帝国海軍の船だけではない、連合国側の戦没艦だけでなく解体される直前だった艦艇からまで回収した霊核の保管所・・・未だ目覚めぬ軍艦達の揺り籠とでも言うべきかね、これこそがこの施設が持つ本来の役割なんだよ」
自国の軍艦だけでなく他国の軍艦からまで霊核を取り出して盗み隠す暴挙、艦娘の能力が世界的に広まり始めた現在において他国が奪い取りに、否、取り返す為の戦争を仕掛けられても文句が言えない悪手の成果。
それが田所の目の前にあった。
【悲報】岳田総理【蝙蝠野郎】
1:作者に代わりまして名無しの読者がお送りします 2018/10/14(日) 00:00:00 ID:masannanai
みんな騙されるな! こいつは味方じゃない!
きっと世間だけじゃなく艦娘達も騙してるぞ!
それだけは皆に伝えたかった。以上。
じゃっ、僕は選挙行って日本党に投票してくる。ノシ