言葉を飾るな。
これは只の
艦隊構成は駆逐艦、軽巡、重巡、空母、戦艦、そして、戦闘に参加しない補助を担当する艦娘の計六名とする事。
駆逐艦を最初にする以外は旗艦の変更に関する順番は任意でかまわないが相手が旗艦を変更した場合にはその艦種に合わせなければならない。
そして、一度変更した艦娘へと旗艦を戻す事は禁止される。
そんな演習を行う際のルールを押しつけてきた細長い眼鏡を掛けたイケメン、今回の艦娘艦隊同士による
そもそも艦娘の能力はそれぞれの艦種が得意とする極端な状況で戦う事に特化しているのだ、と少なくない時間を彼女達と海の戦場を駆けてきた彼は口の中で言葉を転がした。
駆逐艦なら急加速から繰り出す突撃で敵装甲を破壊し雷撃で止めを刺す近距離戦を主体にしたヒット&アウェイが定石だが、その低い火力と防御力を驚異的な加速力による突進と回避で補っている小型艦は敵の小口径砲の一撃ですら直撃すれば致命傷となる。
軽巡洋艦は駆逐艦よりも射程が長く火力も高く、対空対潜を熟し敵の障壁を切り裂く近接武装を持ち、その手数の多さを武器に状況を見計らい攻防を素早く切り替えることが出来る。
だが、その手に持つ刃は不可視の障壁を破壊する事に特化しているが単純に装甲が分厚い敵には効果が薄く、他の武装も全て駆逐艦を大きく上回っていると言うわけではない為に単艦で運用すると器用貧乏となってしまう。
空母ならば複数の艦載機を放出して戦闘機で制空権を取り爆装させた機体で敵艦隊の頭数を減らすと言う様に面制圧力に優れ、更に自らの重量を操作する艦種特有の能力によって高高度へと飛翔し広範囲の索敵を観測機と共に行うことが出来る。
その反面、移動速度は戦艦とほぼ同じであり駆逐艦と比べればウサギと亀とも言えるほどの差があり、艦載機を運用する航空甲板が破損すればそれだけで大半の戦闘能力を失い敵にとって恰好の的となってしまう。
重巡と戦艦に関して中村は実際に運用した経験はほとんど無いがそれでも深海棲艦の同一艦種と比べると勝っている部分の方が少ない事は一目瞭然である。
だが、その火力は彼女達が持つ大口径砲と艤装の
暗視能力や音波探査によって海中や夜間の闇を見通し情報収集を行える潜水艦は特にその極端さが突飛であり、奇襲を成功させれば戦艦級ですら一撃で屠ると言うのに初攻撃に失敗して敵に見つかれば他の艦種を大きく下回る障壁の薄さと武装の少なさによって尻尾を巻いて逃げる事しか出来なくなる。
しかし、その各艦種が持つ戦場では致命的になるデメリットを指揮官が行う旗艦の変更によって取り除きメリットだけを戦場で得られるからこそ人類側を圧倒する破壊力と防御力を持った巨大な深海棲艦の撃破が可能なのだ。
要するに旗艦の変更とは指揮官が艦橋で行う最も重要な仕事であり、彼らは逐一変わる戦闘状況や敵艦種に適した艦娘を選び続けなければならない事を意味している。
その判断次第で生死を分ける旗艦変更を制限すると言うのは艦娘の実戦を公開すると言う謳い文句で企画された公開演習のコンセプトからも外れるのではないかと中村は独り言ちた。
「私達が本気で戦ったら佐世保まで戦場になるったら、あなた、そんな事も分からないの?」
「説明にあった障壁を発生させる装置が頼りになるなら問題無いだろうよ、スペック上は艦娘より強くて御立派な壁を作れるってんだからな・・・スペック通りならなっ」
指揮席でシートに背中を預かながら頭の後ろで腕を組んでいた中村の独り言に呆れで眉を寄せて肩越しに振り返った駆逐艦娘に彼は本人ですら信用していない情報を盾に屁理屈を並べる。
『島風ちゃんの公試で使われた時はちゃんと波も衝撃も試験海域への封じ込めに成功したらしいですよ?』
「あのなぁ、吹雪ここからでも見えるだろ、あのレーダーマストが吹っ飛ばされた船がよ」
艦橋の全周囲モニターから見える佐世保の港から出航し所定の位置へと向かっている数隻の特殊な装備を施された護衛艦、中村の指摘によってモニターに小さなウィンドウが幾つか開いてそれぞれの船体の一部が拡大される。
「商船じゃないって言うのに・・・、ホント
『ちゃんと修理してあげる事は出来なかったんでしょうか・・・?』
とある韋駄天少女が原因の突風によって破損した艦上構造物の一部をビニールシートやロープなどで簡易補修された護衛艦。
まるで絆創膏を貼っただけの様に見える船の姿に霞が不満げなため息を吐き、吹雪がまるで人間相手を心配するかの様に声を揺らす。
(はつゆきの時もそうだったが吹雪達って護衛艦を見ると輸送艦娘を相手にする保護者って顔とは違う、なんて言うか、手の掛かる後輩を気にする先輩って表情するよな・・・)
おそらくは自分達の原型である軍艦が沈んだ後に国の守りを任された船達、現代の護衛艦へ何かしら思う所があるのだろう。
「提督、本部から入電・・・出航して指定区域に移動後、演習の開始を待てとの事です」
「ああ、それじゃぁ、行くか・・・吹雪出航だ」
中村は旗艦として佐世保の港に腰掛けていた吹雪へと船出を合図し、テレビカメラとレポーターが顔を突き出しているヘリが飛び交う空の下で立ち上がった駆逐艦娘が肩掛けベルトに吊られた連装砲のグリップを握り立ち上がる。
流石に演習海域までついて来る許可は出ないが立ち上がった駆逐艦娘の頭に風を吹き付けるぐらいの低空飛行に艦橋に座る中村はスピーカーで怒鳴って追い払ってやろうかなどと考えながら鬱陶しい連中を見上げた。
《はいっ! 駆逐艦吹雪、出撃します!》
吹雪の背中の艤装がスクリューを回転させ、うっすらと煙の様な光粒が背面装備の煙突部から立ち上り、甲高い汽笛の音とともに身長14mの少女が青い海へと漕ぎ出す。
徐々に加速を始めた吹雪の姿を見送るように港に面した見学席や巨大なモニターが設置された広場で無数のフラッシュが瞬き、演習会場へと向かう艦娘の姿にその場にいたほとんどの人間が目を丸くしていた。
《吹雪、おっそーい!》
《きゃっ!? 島風ちゃん!?》
湾の出口まで進み多くの人間が向けてくる視線に緊張して背筋を伸ばしていた吹雪の真横を煽るように金色の髪がひらめき。
すり抜けざまに鼻で笑う様な声を掛けてきた島風型駆逐艦娘がその体をさらに加速させ過剰に短いスカートを風にはためかせながら両足で波を割り海原に白線を泡立てる。
「・・・島風、改か」
「あらあら、元気な子ね・・・たしか、どんな能力が発現したかはまだ調査中だったかしら?」
「資料ではそうみたいだが良介、いや、田中二佐に直接確認した訳じゃないが霞みたいな体と艤装の強化ではななさそうだな」
中村の座る指揮席の背の後ろから手を掛けてもたれる戦艦娘が艦橋のモニターに映る島風の背中を感心した様な顔で眺め。
「なによっ、異能力に目覚めなかった私が出来損ないとでも言いたいわけ!?」
「貶してねぇよ、特殊な力を持った艦娘と単純に強い艦娘はどっちも同じぐらい頼りになる、どんな艦娘でも一長一短があるんだから要は相性の問題だ」
口元をへの字にした霞が睨みつけるように指揮官へと振り返るが、それに対して中村は気負った様子無く手を横に振り彼女の言葉を否定する。
「まっ、確かな事は前も今も霞が頼りになるのは変わりないって事だな」
「ふ、ふんっ・・・どーだかね、口ではなんとでも言えるったら」
おべっかと言うには素っ気ない彼に言葉に一瞬だけ目を見開いて、視線を居心地悪そうに反らした霞が表情を隠し、何かを誤魔化すように咳払いしてモニターへと体を戻す。
そして、真横を通り抜けた際に見えた島風の横顔、鳶色の左目にきらめく花菱に秘められた力の正体を無言で探る中村は推進機の制御レバーに第一戦速を表示させて腕を頭の後ろで組み背もたれに背中を預けた。
口では可愛いげの無いセリフを言っているが傍目には非常に分かり易い照れを見せる霞の態度に鳳翔と陸奥があらあら、と微笑み。
「それで提督はあの子の能力に何か心当たりがあるのかしら? お姉さん気になるなぁ~」
「改造じゃなくて戦闘中に発生したらしいからな・・・勘だ、ただアイツは得体の知れない物をそのままに使おうとする事だけは無い」
指揮席の後ろから自分を見下ろしてくる長身美女の悪戯っぽい微笑みとセリフを軽く受け流して正面を見据える中村は吹雪との速度差で徐々に離れ小さくなっていく島風の背中、その中にいるだろう友人であり同僚の姿を脳裏に浮かべる。
自分と同じ転生者であり日本海の戦闘後に
「アイツは嘘を吐くのは下手だけど隠し事をするのは上手いんだよ・・・昔からムカつくぐらいにな、研究室の連中をどうにかして口止めしてるんだろうさ」
「それは穿ち過ぎではありませんか、提督?」
「いんや、間違いないね、わざわざ島風にあんな代物を用意するぐらいだ・・・つまり俺らに勝ちたいのさ」
佐世保や護衛艦との通信を担当してくれている鳳翔に苦笑を向けられながら中村は小学生の頃に偶然自分と同じ境遇であると知ってから無二の友人となった田中に対してのライバル心を疼かせ、おそらくは相手も少なからず自分に対しても同じ思いを向けていると彼は予感する。
(・・・んで、何で島風の情報をくれないんですかね、博士?)
指揮下の五人と共に吹雪の艦橋に乗りながら意識を島風の能力への疑問に向けた中村の脳裏に中枢機構に住む妖精からイラスト一枚分のイメージが送られてきた。
薄いベージュ色の水兵服を着た三等身の少女が少し嫌みっぽく口角をあげた笑みを浮かべ、やる気の無さそうな面をした猫を両手でぶら下げている映像。
正々堂々と戦いなさいとでも言う様な上から目線の意図を感じる妖怪猫吊しの返事に中村は憮然とした顔を浮かべ、不意な彼の表情の変化に指揮官の顔をシートの後ろから覗き込んでいた陸奥が首を傾げる。
「提督、私達も速度を上げるべきでは? もう大分と田中艦隊との距離が離されているのですが・・・」
「いや、まだ演習は始まってない、全力を出すのは審判がピストル打ってからでいいんだよ」
試合とは言え戦いの前であるのに指揮席に座る中村が見せる些か覇気の無い態度に旗艦の増速を提案した高雄は釈然としない表情で周りの仲間を見回すが指揮官を咎めようとする気配は微塵もない。
「そんなに焦らなくても那珂ちゃん達のステージはもうすぐだからぁ、タッカおんもリラックス♪ リラックス♪ きゃはっ☆ミ」
モニターと円形通路を隔てる柵に腰掛けて右手の指で作ったV字を横向きに自分の顔に重ねた那珂が中村以上に戦いの空気と無縁な雰囲気を艦橋にばら撒く。
艦娘として妹である愛宕と共に目覚めてから何度か交流した彼の気さくさに感じた好感、そして、多くの戦場で目覚ましい戦果を上げてきたと言う実績から意気揚々と中村の指揮下へと来たのだが、現状を見るにもしかして自分は所属する艦隊を間違えたのかも知れないのではと高雄は乾いた笑いを漏らした。
・・・
数隻の護衛艦の動力を伝達された無数のブイが発生させた不可視の障壁が直径100kmの巨大な円筒を作り上げ、その中心で二人の駆逐艦娘が3kmの間隙を挟んで互いを緊迫感を秘めた瞳で見つめ合う。
味方同士である事は百も承知だが今だけは競い合い打ち倒すべき敵として立っている相手へと吹雪はその手に握った連装砲を向け、無骨な拳銃に見える二丁の12cm口径単装砲を両手にぶら下げた島風が海風の中で黒いリボンと金糸の髪を揺らめかせ自らの障害と認めた少女へとライバル心が滾る瞳で見据える。
『演習海域の障壁展開率98パーセントとの事です、艦隊演習が実行委員会から承認されました・・・予定通り開始時間は1030です、残り120秒、秒読みを開始します』
その二人の耳の中で戦闘開始に向かう秒読みが始まり、その数字が一つ、また一つ減っていくほどに二人の身体に備わった動力が鈍く唸り、吹雪の背中で、島風の足で一対のスクリューが燐光を渦巻かせ始める。
『あと10秒、吹雪ちゃん備えて!』
『島風、五秒や、さぁ始まるでっ!』
それぞれの艦橋で通信手を担っている艦娘が声を上げ、相対する二人の駆逐艦娘がその姿勢を前傾させてその手の主砲の照準にお互いの姿を捉え。
《吹雪、行きます!》
《しまかぜ、出撃しまーすっ!》
それぞれの指揮官の声が少女達の頭の中へと戦闘開始の命令を下し、暖気運転していた動力が風と水面を弾く様に光の渦を吐き出し、急激な加速と共に戦闘速度へと踏み込んだ駆逐艦がその顔を相手に向けながら半円を描くように穏やかな海を斬り走り波立たせる。
睨み合いながら弧を描きまるでお互いの立ち位置を交換する様に演習の開始時に島風が立っていた場所を吹雪の足が踏んだと同時にその背の艤装が数段激しい振動と轟音を吐き出してセーラー服に包まれた身体を押し、片足を軸にして島風へと吹雪の体が半回転して矛先を正面に向けた。
駆逐艦達の艦橋で推進機の制御装置が第三戦速を表示し、二つの巨体が更に加速して空気を引き裂き、白い壁のような水柱をその背後へと置き去りにして海原を駆ける。
向かい風の様に押し寄せる空気の中を突き進む島風が腰だめに構えた二門の単装砲の撃鉄が引かれ、吹雪が体の正面に両手で支え構える12cm口径が内部に装填された砲弾を放つ時を待つ。
船と言うより航空機に近い速度で海上を走る二人の艦橋で指揮官が砲撃を命じる声が奇しくも同時に行われ、猛スピードで迫る相手へと正面衝突する寸前、計四門の大砲が火を噴き咆哮を轟かせ海面をはじけさせる。
《私より早く撃つなんて許さないからっ!》
《それは命中させてから言って!》
砲撃の反動で上体を反らし、その動きを滑らかに回避へと繋げた吹雪と島風の体がまるで磁石の同極を合わせた様に反発し正面衝突を回避する。
たなびく金髪に掠りもせず二発の砲弾は海を穿ち、二連射は頬にかすり傷を付けはためくセーラ服の裾の真横を素通りして青い空へと飛び立つ。
目と鼻の先を通り過ぎる十秒未満の反航戦の直後、吹雪の太腿に装備された二基の三連装魚雷の片割れがその頭を反転させて後方へと離れて行く島風へと61cmの弾頭が空気の抜ける音と共に海面へと飛び込み200ノットの駆逐艦を追尾する。
《連装砲ちゃんっ! やっちゃってっ!》
自分を追いかけてくる三本の雷跡を肩越しに見た島風が声を上げたと同時にその背中と腰に増設された装備、【Strike‐Sub‐Screw‐System】の三機が艦橋にいる艦娘の操作によって後方へとコミカルな目と口か描かれた砲塔を回転させ、その内側から短機関銃が突き出し追尾してくる魚雷へと曳光弾の様に輝く弾丸をばら撒く。
『そんなもんまで仕込んであんのかよ!? くっそ便利そうじゃねえかっ! 羨ましいなぁ、おいっ!』
《私の装備だって島風ちゃんには負けてません、司令官!》
魚雷が目標の手前で処理された様子に吹雪の艦橋で中村が新型装備への妬ましさに声を上げ、指揮官が自分ではない他の駆逐艦を褒める言葉に吹雪が口元をへの字にして身体を反転させ島風の背中を追う。
《へぇ、駆けっこするの? でも、吹雪じゃ私には追い付けないよ!》
同航戦に持ち込む為に更に加速し、第四戦速まで出力を上げた吹雪の背中のタービンがジェットエンジン並みの騒音を吐き出すが島風の背中を追い越す程には届かず特型駆逐艦は次弾装填中の連装砲から手を離して肩に掛け、左の二の腕にケーブルで接続された7,7cm機銃を前方へと向ける。
《当たってください!!》
タタタッと乾いた破裂音と共に炎の礫が吹雪の左腕に装備された機銃から放たれて青、白、金色をはためかせる島風の背中へと殺到する。
《おっそーい! お返しだよ!》
だが、時速500kmの世界に踏み込んだ島風は後ろから迫る全ての弾丸を踊る様に身を翻し避け切り、後方へと突き出した左手の単装砲と三機のS4がその砲口を背後の吹雪へと向け一斉に砲撃を放つ。
轟音を放つ七発の砲撃によって立ち上った水柱が吹雪の姿を覆い隠し、ドリフトするように波を蹴りながら速度を落とした島風が勝ち誇った様な顔で命中を確認する為に視線を白い帳へと向け。
即座に上半身を仰け反らせ、まるで何もない場所でリンボーダンスを始めた様な姿を見せる島風の胸元を熱された霊力の砲弾が掠めて遠くへと飛んでいく。
《避けた!? 何で!?》
水柱から数百m以上離れた場所で水滴一つ付いていない吹雪が前方へと構えた連装砲の照準の向こうで青白い炎を揺らめかせる左目を驚きに瞬かせた。
《あはっ♪ 吹雪、使ったね? それをっ!》
仰け反った身体を上半身の力だけで戻した島風が渇望した瞬間の到来に笑みを深く深くその顔に刻み、金色に飾られた整った顔立ちが左目の輝きと相まって凄絶な迫力となって叩き付けられて吹雪がそれに対して怪訝そうに眉を顰める。
《その力をっ! 私はそれを追い抜く為にこの力を手に入れたんだからぁ!!》
周囲の時間を停止させ絶対的な速度差で相手に一方的な攻撃を行う、吹雪の左目に宿る力への羨望と対抗意識を押し固めて燃料にして少女の左目が青白い光を宿した菱形の花弁を燃え上がらせる。
左目に花菱を輝かせる島風の手が単装砲を海面へと落とし、落下しながらガチャガチャと金属音を立てながら変形していく二丁の巨大な拳銃が海面を泡立てている脚部艤装と接触し撃鉄を引く重苦しい音と共に組み合い別の形へと作り変えられた。
『さて、吹雪は島風に勝てるかな? 中村二佐、いつもみたいに賭けでもしてみるかい?』
『いや、そりゃ、賭けになんねぇな・・・田中二佐さんよ』
『まぁ・・・、確かにその通りだね、これは賭けをする意味が無い』
異なる力を宿し青白く燃える左目と共に相手と向かい合う二人の駆逐艦の艦橋でそれぞれの指揮官が軽口を叩き合う。
『玩具と付け焼刃で、俺らにお前らが勝てるわきゃねぇだろ!』
『悪いが、もう君達の敗北は僕達の目に見えているんだよ!』
対抗意識を剥き出しにして吐き捨てる様に告げられた指揮官二人の言葉と同時。
吹雪が艤装から突き出してきた錨を引き抜き、海面に倒れ込む寸前まで前傾した島風の身体が近接武装へと変形した両足の爆発力で急加速し、鉄斧で迎撃する吹雪型駆逐艦一番艦へと人型ミサイルと化した島風型型一番艦が襲い掛かる。
《早い! でも、これなら!》
《遅い、
吹雪の振るった斧が空を切り海面へと叩き付けられて夥しい水飛沫を上げ、紙一重でその一撃を避けた島風が身体を捩じり鞭の様に撓らせた右足を最上段へと向けて振り抜く。
島風の手持ち主砲だった単装砲と合体して
『左舷側頭部! 障壁集中っ、急げ!!』
即座に返す刃で目の前の敵に反撃を試みようとした吹雪の指揮席に座る中村の叫びがその耳に響き。
一拍の間、目を見開いた彼女の目に青いスカートをはためかせ、その背中のS4が放出するバーニアの様な推進力で身体を駒の様に空中回転させている島風の姿が映る。
《えっ?》
一撃目から瞬きする時間も置かずに吹雪の頭へと黒鉄の軍靴が風を唸らせて迫り、直前にその頭を守る為に展開された小さな障壁と接触した質量兵器が内部から衝撃波を放出させて急造の壁を打ち砕いた。
ちょっとした解説
Q 限界突破って?
A ゲーム的に言うと一回目の改造を受けた艦娘の事です。
【例】
吹雪・対空カットイン(時間停止)、障壁の強化、身体能力に変化無し。
霞・障壁の強化、基本艤装の性能上昇、装弾数の増加、+身体能力の強化(
島風・???(命中、回避、索敵、上昇補正)、障壁の強化、身体能力に変化無し。