艦これ、始まるよ。   作:マサンナナイ

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この物語はフィクションです。
実際の海上自衛隊はこんなにブラックな環境ではありません。

そもそも現実に深海棲艦なんかおらんし。


第六話

 始めて吹雪と共に深海棲艦を撃破した後に事件そのもの無かった事にされた日から三か月、中村と田中はクリスマスも正月も返上して鎮守府の環境と艦娘の立場の改善に奮戦していた。

 

「人手が足んねぇ・・・休みが足んねぇ・・・ココはブラック企業かよぉ」

「お互い今月に入ってもう六回目の出撃だからな、流石にコレは身体が幾つあっても足りないな・・・」

 

 2014年の年始めからめんどくさい手続きを必要とする無数の書類や頭の固い基地司令部との口喧嘩じみた舌戦や説得に時間を潰されながら徐々に再始動した鎮守府で深海棲艦退治に挑む生活に二人は疲れ切っていた。

 

「初出撃から数えれば叩きのめした深海棲艦の数がもうすぐ五十になるぜ・・・へへっ、嬉しくもなんともないけどなぁ」

 

 鎮守府の一画に作られた執務室でソファーに疲れ切った様子で座り込んだ二人の青年は呻くように弱音を吐き出す。

 中村は目の前のテーブルに置かれた冷めたインスタントコーヒーが入ったコップへと手を伸ばし、その途中で気が抜けた腕が垂れ下がってテーブルにべたりと落ちる。

 

「ぁ~、ホントなんで俺たち以外の司令官が増えねぇわけ?」

「艦娘側が相手を指揮官として認めて出撃を承諾さえすれば問題無いはずなんだが・・・まぁ、中には能力の発動と同時に外へはじき出されるなんて事もあるらしいが」

「それでも、なんとか説得して司令官候補と顔合わせした子達が全員出戻りしてくるって異常だろ。どんだけ俺が渋る艦娘達の説得に苦労したと思ってんだよアイツら・・・」

 

 その艦娘達が中村と田中以外の司令官を拒んでいると言うのが現在の彼らが置かれている苦境の原因とも言えるのだがそもそもは現状の自衛隊は艦娘の能力に対してに懐疑的である為だ。

 実際に過去の艦娘達が惨敗する戦闘の様子を知る士官からすれば今回のような大逆転劇を聞いただけの情報では信じられるものではない。

 さらに映像記録として提出された本来の力を発揮した艦娘達の姿ですら良く出来た特撮映画だ、などと揶揄され組織に見限られない為に若輩者と鎮守府に所属する研究者が組んで創作した狂言だと嘲笑する者までいる始末だった。

 

「これが艦娘否定派の仕組んだ妨害なら驚くほど俺達に効いているよ」

「三年で出来た意識の溝ってヤツか・・・手強すぎる」

 

 霊核から再生され目覚めたばかりの艦娘達が持っているのは大半が過去の大戦の記憶と国を守ると言う志半ばで倒れ、海に沈んだ悔恨の念である。

 そして、再び現世で汚名を返上できると意気込んで目覚めたにも拘わらず自分達を迎えたのが同じ国を守らんとする者達からの嘲笑であれば機嫌を損ねるのも無理のない話とも言える。

 

「それも政治家の鎮守府計画に反対する派閥のせいだったってんだろ? マジふざけんなよっ、なぁ?」

「彼女達の能力を疑問視する態度を隠さない自衛官は減らない、現在の自衛隊の意識と方針がひっくり返らない限りは疑心暗鬼になった艦娘の拒絶反応は消せそうにない・・・むしろ間を取り持った俺達にまで飛び火しかねない問題か」

 

 お世辞にも一枚岩と言えない政治の場では国を守ると言う目的は同じだがその方法と方針を一つに絞る事など出来るわけも無く、当然の顔をして自分の派閥と違う相手の脚を引っ張るためだけに情報戦だけでなく直接的な手段を取る事さえあった。

 

 その一つが吹雪も被害にあった艦隊護衛中に深海棲艦に襲われた際に積極的に艦娘を使い捨てにする囮作戦である。

 

 記録が正しければ中村と田中が着任する直前まで繰り返されており、過去にいた彼女達の指揮官として任命された士官達は刀堂博士が残した資料に目を通す事すらせず。

 伝言ゲームのように何処からともなくやってきた命令に従って、どこの誰が造ったかもわからないマニュアル通りに行動する事となった。

 さらにこの基地に所属する海上自衛隊の隊員たちが全体的に国防へと情熱を注ぐタイプではなく、仕事だけはしっかりやってますと言う態度を見繕うのが上手い人間ばかりが集められているのも問題と言える。

 

「刀堂博士が残した研究資料を常識を考えずに頭を空っぽにして読めば、俺達以外でももっと早く彼女達の正しい運用方法に辿り着けたはずだったんだがな」

 

 この二人も本当の所は日本国への忠誠心なんてものは人並み程度しかないし、国防よりも自分の命を優先したいと考える性格の持ち主達である。

 だが、なんだかんだ言って二人とも困っている相手を見ると放っておけないと言うお人好しな部分が妙に似通っていた。

 さらにその相手が可愛い女の子だと張り切ってしまうのも理由はあえて言わないが無理は無い事だった。

 

「『艦娘は指揮官と共にある事でその能力を十全に発揮する』なんて言われて艦娘に司令官が乗り込んで一緒に戦う事が正解なんです。って想像できる奴なんかいるわけないだろ、いい加減な事言うなよインテリロリコン・・・」

「だまれ、無計画オッパイ星人・・・はぁ・・・不毛だ」

 

 

 罵倒で返事をした相棒と睨み合うように顔を見合わせた中村は無駄に疲労感を増やしてから二人揃って深くため息を吐き出して項垂れる。

 

「ここまで来たら仕方ない・・・余計な先入観の無い、そもそも艦娘を知らないって連中を巻き込むしかないな」

「背に腹は代えられないか、手続きは俺から司令部にねじ込むから人員を選ぶのは頼むよ」

「人員って言ったって鎮守府に隔離されてる状態なんだから防衛大の先輩か後輩ぐらいしかいないだろ?」

 

 項垂れた顔に疲労を滲ませた中村がコーヒーの入ったカップを握り中身を一気に呷って苦味ばかり強い眠気覚ましを飲み下し、少し前から相棒である田中と検討していた腹案の実行を決意した。

 そんな男共による陰鬱な雰囲気の生産が続けられている執務室のドアがノックされ、田中の入室を許可する声で扉が開かれてセーラー服を纏ったぱっと見では田舎の中学生といった容姿の女の子が姿を見せる。

 

「司令官、失礼します! 本日午前の湾内演習の報告書を纏め終わりましたのでお持ちしました!」

「ああ、吹雪ありがとう、そこに置いてといてくれよ」

 

 四日前には陸自に無理を言って飛ばしてもらった輸送ヘリから東北の沖合に飛び降りて開始した戦闘で敵艦を三隻殴り殺した駆逐艦娘は元気と意欲に満ちた笑顔と返事の後に携えてきた。

 そんな吹雪は報告書を中村が使っている机の上に置いたが、その上に積まれている書類の乱雑さに顔を引き攣らせて彼らのいる方を伺う様に見る。

 

「あの、司令官・・・私、机の片付けをお手伝いしましょうか?」

「コイツの机が汚いのは昔からだから気しなくても良いよ、仕事自体もちゃんとこなしているから問題ない」

「そ、そうですか、あっ、お疲れでしたらマッサージでもいかがでしょうかっ? 私けっこう得意なんですよ」

 

 いかにも良いアイデアを思い付いたと笑顔を輝かせて前のめりで中村に詰め寄る吹雪。

 彼女の積極性に彼は眩しそうに目を細め仰け反るがすぐにふっと表情を緩め、すぐ近くにある少女の頭に手を乗せて軽く艶やかな髪を少し乱暴に混ぜるように撫でる。

 

「ははっ、心配かけたみたいだな、ありがとう大丈夫だ・・・さて、仕事を再開するか! 給料分は働かないと吹雪達にも恰好が付かないな」

「司令官、えへへっ・・・」

 

 ソファーに沈んでいた身体に気合を入れて立ち上がった中村は先ほど吹雪が書類を置いた執務机へと向かい、前髪が崩れるぐらいに撫でられたのに満更でも無い笑みを浮かべる駆逐艦娘の姿。

 そんな二人の様子に口の中に大量の砂糖を押し込まれたようなウンザリ顔を見せた田中は気を紛らわせる為に冷めたコーヒーの入ったコップに口を付けた。

 少しだけ部屋の重苦しい空気が紛れ中村がゴチャゴチャと散らかった執務机に着いてペンを片手にしたと同時に甲高いサイレンの音が鳴り。

 そして、『何処其処の海上哨戒網に深海棲艦が何隻侵入したので艦娘艦隊の出動が要請されました』と言う事務的な知らせが部屋に備え付けられたスピーカーから届いた。

 

「・・・田中三佐、自分は緊急を要する事務処理の最中でありますので」

「さっきまでダレにダレてた奴が言って良いセリフじゃないぞ!? いや、俺も昨日出撃してたからな!?」

「失礼します、提督」

 

 仕事の押し付け合いを始めた指揮官達の姿に困り顔を浮かべた吹雪の背後でドアが勢い良く開く音と共にハキハキとした通りの良い声が執務室に飛び込んでくる。

 豊かで艶やかな黒髪を長いポニーテールにしたキリリと鋭く整った顔立ちの18歳前後に見える美女が入室と同時にビシリと音したかと思うほど形の良い敬礼を二人の指揮官へと向けた。

 

「出動する部隊編成と指揮をお願いします!!」

 

 ノースリーブのセーラー服の丈は彼女の豊かな身体つきに合っていないようで裾からは滑らか曲線を描く括れた腰と臍がちらちらと見える。

 少し屈めば中身が見えそうな臙脂色のミニスカート、左足だけ履いているニーソックスが几帳面で真面目な雰囲気と表情のアンバランスさが良い意味でギャップとなってその存在感を強めていた。

 

「いや、矢矧、我が部隊は先日の出撃で消耗しているだろう、ならここは中村三佐に、だな・・・」

「さて、今日はどんな戦略を立てるの? 提督、今回も頑張っていきましょう! 皆も準備を始めてるわ!」

「お願いだから少しは話を聞いてくれぇっ! 義男、お前からも何かっぐぉっ!?」

 

 街を歩けば確実にすれ違った男は十人が十人振り返るだろう美人が満面の笑顔と共に田中の悲痛な叫びを意図的に無視して彼の腕に腕を絡めて関節を極めソファーから立ち上がらせる。

 

「悪いが俺は勝手に陸自の助け借りたからって基地司令部から出動禁止くらってんの知ってんだろ・・・クッソ面倒な関係資料と報告書を纏め終わるまで基地の外にも出れないんだってよ」

 

 飲みかけのコーヒーがこぼれそうになったカップを慌ててテーブルに戻した田中は組まれた腕を引き離そうと抵抗するが特に筋肉質と言う見た目では無いはずの矢矧の腕はまるで鋼の万力のような力で挟み込んで彼の脱出を許さない。

 そして、日本軍に置いて軽巡洋艦の最終型と言える阿賀野型軽巡姉妹の三番艦を原型に持つ美女は有無も言わせぬ勢いで田中を引きずるように執務室から出ていった。

 

「提督にはもっと私達の運用に慣れて頂きたいんです! 実戦こそ最良の教師とも言いますよ!」

「矢矧離せ、痛いから一旦離して!? 分かったらからっ、引っ張られなくても自分で歩けるからぁ・・・」

 

 ドアが開いたままになった廊下から張り切った矢矧の声と腕を極められたまま引っ張られる痛みを訴える田中の悲鳴が遠ざかり徐々に聞こえなくなっていった。

 

「あのぉ・・・司令官、私達はどうしましょうか?」

「軽巡と駆逐しかいないったってよっぽどのヘマしない限りは問題無く片付けるだろ、さっきの放送聞く限りは近場で数も少ないみたいだからなぁ」

「今の鎮守府、戦艦も重巡洋艦もいませんからね、長門さんや金剛さんが起きてくれればありがたいんですけど・・・」

 

 艦娘の心臓部である霊核は肉体が生命活動を停止した時点で粒子状に変換されてSF染みた転送技術で鎮守府にある艦娘の再生と蘇生を行うクレイドルの真下に存在する中枢機関と呼ばれる巨大な円柱へと回収される。

 そして、回収された霊核は安定状態に戻った時点でクレイドルの治療槽へと移し替えられオカルトに足を突っ込んだような特殊な性質を持つ不思議物質を用いて新しい身体を得て蘇生させられる。

 

(研究主任曰くアミノ酸とタンパク質を科学的に合成した真っ当な物質らしいが、艦娘の手足どころか内臓まで作り直す代物がマトモとは到底俺には信じられんな)

 

 だが身体が再生されればすぐに目覚めると言うワケでもないらしく現在鎮守府に存在している艦娘は54人であるが、過半数である31人は霊核のみもしくは再生が終わってもクレイドルの中にいる者達である。

 ゲームだった艦これと違い鎮守府の設立と始動時点では400人を越える霊核と艦娘が存在していた事から考えれば十分の一以下まで減ってしまっている。

 その中で戦艦に属している艦娘は長門型戦艦の一番艦長門と金剛型戦艦の一番艦金剛だけな上に両名とも肉体の再生は終わっているが二年近くクレイドルで眠りに就いているという有り様だった。

 

「それは無いモノ強請りだなぁ・・・吹雪、コーヒーでも飲むか?」

「あ、それなら私が入れますから司令官は座っていてください」

 

 大多数の同胞が帰らぬ人となった状況を思い出し言葉に出来ないやるせなさい悲しみに顔を曇らせた吹雪の様子に、居心地悪そうに自分の顎を撫でて思案した中村は強引に話題を変える。

 そして、彼の思惑通りに取り敢えず精神的な落ち込みから脱した吹雪は部屋の隅の棚に置かれているコーヒーメーカーへと歩いて行った。

 しばしの無言となった二人のいる執務室に書類にペンが走る音と湯気を燻らせるコーヒーメーカーの音だけがゆっくりと時間を進めていき、突然に窓の外から鈍く響く出航を知らせる鋼の音が二人の耳へと届く。

 

「・・・あれは、時雨か、駆逐艦で出撃とか良介のヤツ大丈夫かよ」

「時雨ちゃんは射撃も格闘もとても上手ですよ? 艦娘同士の戦闘訓練でも勝てる子の方が少ないぐらいです」

「そうじゃ無くてな、アイツは頭も運動神経も良いし剣道なんかは有段者だけど、子供が乗る様なジェットコースターでグロッキーになるぐらい乗り物に弱いんだよ・・・」

「・・・ええぇ、でも田中三佐、ちゃんと今までも出撃出来てましたよ?」

 

 頼りになる仲間を我が事のように誇る吹雪に中村は自分の懸念を言葉すればコーヒーメーカーからガラスのポットを取り出した状態で少女は困惑で気の抜けた様な声を漏らした。

 

「指揮官が気絶さえしなければ艦娘の戦闘形態は解除されないからな、良介んとこの艦娘達はアイツの限界点を見極めた上で叩いて鍛える方針を取ってるらしい」

「・・・ええぇ」

 

 時雨のスクリューが轟音をまき散らして猛スピードで港から出撃していく。

 

「ちゃんとアイツが早い乗り物に弱いって伝えた上でもうちょっと容赦してやってくれって言った事があるんだが、全員がそんな事を口を揃えて言ってたよ。良介のヤツ期待されてんのな・・・全然羨ましくないけど」

「うへぇ・・・あつっ」

 

 遠ざかっていく時雨の背中を執務室の窓から見送る中村と吹雪は戦友達の健闘と成長を祈りながら淹れたてのコーヒーが湯気を燻らせるカップに口を着けた。

 

「艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよ~! 今日のお仕事は何ですかぁ? そろそろロケにもいきたいなぁ、キャハッ☆」

「俺らは待機だ、待機っ! この前の出撃の後に言っておいただろ」

「あ、那珂ちゃんさんもコーヒー飲みますか?」

 

 何処かのんびりとした空気が漂い始めた執務室の緩さを無理やりミキサーで引っ掻き混ぜるように開いたままだったドアの向こうから無意味に明るくあざとい声が聞こえ。

 オレンジ色を基調としたセーラー服に黒いスカーフタイで襟を整えた軽巡洋艦娘がお団子頭を揺らしてスキップしながら入ってきた。

 

「今日はオフなんですかぁ・・・那珂ちゃんレッスンばっかりはヤダなぁ。吹雪ちゃんっ、アタシのにはミルク入れてねぇっ♪ 霞ちゃんはお砂糖もだよねー☆」

 

 不意に那珂がドアの方へと振り返って声を掛けると彼女の後に続いて灰色の髪をサイドポニーに結った小学生にしか見えない容姿の少女が部屋の中にいる中村の様子を見てから柳眉を立て気の強そうな琥珀色のツリ目で睨み付ける。

 

「別にお茶しに来たわけじゃないったら。 でっ何? このクズ司令官はまだ四日前の仕事終わらせてもいないのにサボってるのよ? ふざけてるの?」

「霞、お前な入ってきて早々に毒吐くなよ。目の前でちゃんとペン動かしてるだろが、クズ言うな」

 

 見た目は可憐な乙女達である艦娘だが実際に相対し少なくない時間を共に過ごせば彼女達がその見た目に似合わないほど好戦的で正義感に満ち溢れた仕事中毒者の集団であると知る事になるだろう。

 現に中村と田中は身をもって思い知る事になり、今では出動となれば自分達から喜び勇んで執務室に押しかけてくることに最近の彼女等に悩まされている。

 

「ふんっ、サボるのだけは上手いんだから信用できるわけないでしょ、また机の上散らかして、だらしないったら!」

 

 グイグイと迫る様に詰め寄ってきた霞は止める隙無く中村の座っているデスクの上に素早く手を伸ばして乱雑に置かれている書類を集めて揃え、重ねられているファイルを流れる様な手さばきで纏めていく。

 

「あ、霞ちゃん、私も手伝うね。このファイルはあっちの戸棚だよね」

「日付順に揃てね。もぉ、クズ司令官だからってゴミぐらい机に置きっぱなしにしないでちゃんと捨てなさいよ」

 

 そんな彼女達の言動を無暗に抑え付ける事が出来ないのは艦娘と鎮守府の基礎理論を造り上げた刀堂博士が残した艦娘の運用原則に含まれていた『あくまで彼女達は過去の日本に対する義理で協力してくれている英霊の具現である』と言う注意書きのせいであり。

 ある意味では艦娘達に依存する形で現在の地位を得ている自衛官一年生共にとって安定したとは言い難い自分達の立場を下手な真似をして崩壊させないよう彼女達の機嫌を損ねるような言動に少々過敏になっているからだった。

 

 そのせいかは不明だが彼らの指揮下にある艦娘は三佐、少佐、プロデューサー、司令官、提督、クズ司令官、しれぇ、などと上官に対する呼称すら一定しないと言う政府に公認された軍事組織に有るまじき状態となっている。

 

「・・・だから、クズ言うな。俺はちゃんと給料分は働いてる」

「だったら、ペンを動かしなさいったら! 私も手伝ってあげるからいい加減にしっかりなさいよ」

 

 三人の艦娘に囲まれた中村はどんどん整理されていく机の上の様子に観念して書類仕事を終わらせなければならないらしいと悟る。

 そして、コーヒーの入ったコップを机に置いて書きかけの書類へとペンを向け、吹雪が差し出してくれた資料に目を通し、なぜか真横からあれこれと指図してくる霞に面倒臭い性格しているなと呟く。

 

「ワンツー、ターン♪ 那珂ちゃん今日も可愛いっ☆」

 

 執務室の窓際でリズミカルなステップを踏み始めた那珂の目の前で霞のアンテナ型の髪飾りが中村の顎や頬をグリグリと突き上げるように攻撃した。

 

(本当にここは軍事施設なのだろうか・・・なぁ、良介)

 

 時雨に乗せられて近海に侵入してきた深海棲艦を追い払うための現場への400ノットに達する超高速移動と言う耐G訓練並の重圧に耐えている友人を想い、中村は吐きそうになった溜息を飲み込んだ。




実際のところ、ミサイルを防ぐ謎バリアとか使う侵略者が来たらどうするんやろ。
法律とか憲法が原因でバ〇ージ君みたいな「撃てませぇんっ!!」状態は勘弁してほしい。
可能性には殺されたくないのです。
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