艦これ、始まるよ。   作:マサンナナイ

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Q.来月から私もダンスの授業も取っておくべきかしら。
 だって秘書艦になったら提督のお供をする事もあるかもしれないんだもの。
 でも今年は危険物取り扱いの学課も受けたいのよね。

 えーと・・・どうしようかしら?



A.そう言うのはその時になってから考えるべきなのです。
 いな・・・私ですか?
 私は那珂ちゃんさんのファンですから、それなりには、なのです。
 


第六十六話

 まだ春は遠い冬であったとしても太陽の届かない深海域では季節など関係なく、しかし、数百、数千年の時間をかけてゆっくりと変わっていく深層海流は魚類は言うに及ばず全ての生物の命を育み、同時に理不尽な影響力を振るって奪ってきた。

 

『・・・提督、見つけたわ』

 

 その海水の動脈が流れる暗闇の岩場に十数mと言う人間と言う枠からは大きく外れた人型が伏せ、眼下にあるさらに深い領域の入り口で闇に染まった世界で赤い髪を揺らめかせ1mm以下の生物発光すら捉える暗視能力を持った蒼い瞳が海溝の奥にソレを見つけ出す。

 

『ええ・・・でも今は寝てるみたい』

 

 無線封鎖されている為に自分の内側にしか伝わらない声で自分の指揮官と会話する潜水艦娘、伊168は水圧でジリジリと出力を落とした(発光を抑え込んだ)防御障壁を消耗し霊力が削られていく痛みを耐えて偵察任務を続行する。

 

『そう、周りの残骸は空母級だと思う、ヲ級の傘かヌ級の死骸か原型も分からない・・・酷い食い散らかし方・・・』

 

 深海棲艦の残骸が溶ける仄暗い光が揺れる海峡の底で岸壁に巨大な尾を巻き付けて胎児の様に身体を丸めて眠っている怪物を遠く離れた岩陰から覗き見る。

 悍ましい、不気味、伊168にとって見ているだけで正常な精神を蝕むような気持ちの悪い光景の中を眠る戦艦レ級の周り、巡回する様に泳ぐ赤い目の駆逐イ級が数隻、昏い光へ分解していく他の深海棲艦の残骸からマナを補給しているらしい軽巡や雷巡の姿が水底の闇で揺れ動く。

 

『この前、空母機動部隊と戦った時の損傷を直してるのかしら・・・』

 

 しかし、数日前に艦娘達との戦闘で半分以下まで減った戦力を群れの長である戦艦レ級は少しも気にした様子もなく食後の昼寝とでも言うつもりなのかその身に秘めた凶暴性を裏切る呑気で無防備な顔で海底(地球)から染み出してくるエネルギーの流れに身を委ねていた。

 

『提督がやれって言ってくれるならアイツら全部、海峡の底に沈めて見せるわ・・・ううん、言ってみただけ、冗談だって』

 

 周囲への注意を怠る事無く観察を続けつつ敵対者への攻撃を提案する伊168はすぐさま返ってきた指揮官の制止の言葉によって口を噤む。

 

『ねぇ・・・この発信器、本当に使えるの? マナ濃度が高くなったら電波なんて役立たずになるじゃない』

 

 続く指示を受けて腰に取り付けられていた黒塗りの金属筒(ドラム缶)を取り外して海峡の底に向かう海流へと乗せ、それがゆっくりとレ級の方向へと吸い寄せられる様に漂っていく様子を確認した伊168は推進機関を使わず海底を這う様に敵の住処から離脱を開始する。

 

『それに、本当にソナー使わなくても良かったの? 相手の戦力が分からないまま帰るんじゃ偵察の意味が無いでしょ?』

 

 海峡から離れ敵の索敵範囲から完全に離れた事を艦橋から知らせられた潜水艦娘の身体の表面に薄っすらと光る膜が広がり、その背中に装備した推進機関の始動と共に身体にかかっていた水圧から解放された伊168は伸びをする様に手足を伸ばし水を掻く。

 

『・・・そう? 提督が十分だって言うならそれでいいけど、ええ、伊168海面への浮上を開始するわ』

 

 暗視能力があるとは言え周りが徐々に明るくなり光の見える海面に近づいていく感覚、そして、何より暗くおどろおどろしい深海棲艦の縄張りから離れられた事で海水の中で赤色のポニーテールを泳がせる少女は両手両脚で海流を撫でながら表情を緩め口元から漏れた泡粒を追って海面を目指す。

 

『ええ、安全距離確保を確認、無線封鎖を解除・・・木村艦隊へ応答を願います。こちら田中提督旗下、伊168です。偵察任務を終了し帰投します』

『こちら潜水母艦大鯨、通信は問題無く・・・え、ぁっ! し、失礼しました。 こちら木村艦隊所属、空母龍鳳、私達も貴艦隊と合流後に拠点母艦へ帰還しますっ』

 

 帰ってきた二つ目の名前を手に入れた艦娘からの通信に口元を綻ばせた潜水艦娘の頭が海面を押し上げる様にして水飛沫を散らし、海水を押しのけて空気の中、太陽の下へと戻ってきた艦娘は小さく掛け声を呟きながら両手を海面に突いてずぶ濡れになったセーラー服が張り付いた身体を海中から完全に脱出させて両足で海原に立った。

 

『ふふっ、まだその名前に慣れてないの?』

『揶揄わないでイムヤちゃん、だって飛行甲板着けてる時しか使わない名前なんだもの、やっと今日で一カ月なのよ?』

 

 軽く手で赤髪を絞れば滝の様に海水が滴り落ち、伊168の目が通信が飛んでくる方向へ向けば緋色に桜の模様が袖を飾る和装の美少女が胸元で赤いスカーフタイを揺らしながら手を振っている。

 

『龍鳳さん、艦載機はちゃんと使えてる? 無理してない?』

『ええ、一度にたくさん発艦させると少し頭が痛くなる事もあるけれど提督たちのお陰で何とかなってるわ』

『あんまり無理しちゃダメよ、貴女は空母の適正があったけど本当は戦闘艦じゃないんだから』

 

 龍鳳と呼ばれた艦娘の近くまで近寄った潜水艦娘は相手の左肩に装備された飛行甲板を模した肩当を濡れた指で突っつき、相手を心配する心中を隠す事無く鎮守府で開発された後付けの航空甲板を装備して空母としての戦闘能力を得た潜水母艦娘を見上げる。

 

・・・

 

 分類上は補給艦に近い潜水母艦と言う艦娘全体から見ると数人しかいないレアな存在であるがイムヤを含めた戦闘艦娘達にとっては他の輸送艦娘などと同じく自分達が守らなければならない非戦闘員として認識されている。

 

「確かに戦力は多いにこしたことは無いんだが、まさか戦闘艦よりも先に彼女達用の増設カタパルトが作られる事になるなんてな・・・」

「それはあんまり嬉しくないよ、・・・ねぇ、提督、本当に彼女を戦いに連れてくる必要はあったのかい?」

 

 この試みそのものはあくまで実験的なモノであると研究室から説明されているし、その協力を求められた大鯨本人がかなり乗り気でそれを承諾した為に今回の偵察任務に彼女が同行する事になった。

 もっとも同行すると言っても龍鳳は完全に安全が確認できた状態で観測機を空に放ち周辺警戒をするだけ、もしその最中に敵艦が確認された場合には彼女の艦橋に控えている本職の戦闘艦娘が即座に旗艦を交代する手はずになっている。

 

「時雨、あっちには重武装の古鷹だけじゃなく頼りなる艦娘達がいる、それは心配しすぎだ」

「でもさ・・・」

 

 母港からの出航前に見た過剰武装と言えるほど大砲と機銃の増設でハリネズミになった重巡の姿を思い浮かべながら俺は苦笑するが、むしろそこまで彼女の安全確保を保証しておかないと時雨達が絶対に今回の事を承服しないと言い切った程なのだ。

 だからこそ此処に居る大鯨の任務はあくまでも自分に増設された新型装備(飛行甲板)がちゃんと海上行動中に動くかどうかを確かめる為だけのテストと言う事になっており、彼女に実際の戦闘をさせるわけにはいかないと言う強い意思はイムヤだけでなく俺がいる艦橋に立っている時雨達、そして、龍鳳の艦橋に居る艦娘達からまで伝わって来ている。

 

「この成功で他の輸送艦娘まで改装空母にして駆り出すなんて事にならないと良いのですけれど」

「非戦闘員を兵員扱いなんてあの時代の日本を思い出して・・・嫌ね」

 

 複雑そうな心境で揺れる顔の眉を僅かに顰めて三隈と矢矧がモニターに映る朗らかな笑みを浮かべた龍鳳の姿を眺めている。

 

《その航空甲板、他の空母の人のと違って空飛べないんだから本当に気を付けてよね》

《分かってますって、ふふっ、イムヤちゃん達って心配性なのね》

 

 造っちゃったんだから仕方ないなんて言いながら研究室が改良に躍起になっていた艦娘用のカタパルト(金食い虫)

 それは硫黄島から帰還した義男が鎮守府に持ち込んだ艦娘との接続を前提としたコンピューターと言うブレイクスルーによって精密機械の塊である無人機の製造と搭載が不要になった事に加え航続距離の増加だけでなく戦闘能力の付加まで可能となり、運用のコストとハードルが格段に低くなった。

 

 龍鳳が装備している飛行甲板の内部、機械の鳥を必要としなくなった格納庫部分には基盤と電子部品が無数のケーブルで繋がり、彼女のうなじにある増設端子からのエネルギー供給によって電子データとしての記録されている艦載機は彼女の手の上で矢となって現実となる。

 とは言えそれを装備すればどんな艦娘でも艦載機が使える様になるのかと言うとそうでは無く、性能的にも劣化コピーの域を出る事は出来ておらず装備する艦娘側にもある程度の適正が必要である。

 例えば戦闘機と爆撃機は極論すればプロペラと翼で飛ぶ機械と言う意味では同じモノであるはずなのに戦闘機だけなら使える、もしくは逆なら可能など研究室が艦種問わず手当たり次第に艦娘達へと行った適正調査の結果は運用可能数や種類など千差万別となった。

 

「むしろ大鯨の艦歴から考えると龍鳳として艦娘になっていない方が不自然なんだが、祥鳳や瑞鳳みたいにな」

「提督、それとこれとは話が違うよ、現に今の大鯨の艦種は補給艦なんだから」

 

 給油艦から空母へと改装された経歴を持つ原型から生み出された祥鳳達は何故か初めから空母艦娘として現代に目覚めたが似た経歴の艦娘である大鯨は何故か改装前の潜水母艦の艦娘として現れた。

 そして、艦娘としては補給艦である筈の大鯨は空母艦娘が扱う戦闘機、艦上攻撃機、艦上爆撃機、偵察機、全ての艦載機に対する装備適正を持っており、彼女専用に改造され接続された飛行甲板は光の滑走路を広げて空を舞う翼達を迎え入れる事が出来る。

 

 険しい視線を投げてくる時雨から顔を反らして前世で遊んでいたゲームでは自然な事かもしれないが艦娘と深海棲艦が現実となったこの世界では戦没した日、もしくは解体された時点での艦種や名前で艦娘となって生まれるべきなのでは無いだろうか、とそれに気付いてから何度目かになる疑問が俺の脳裏に浮かび上がる。

 

(駆逐艦の響もヴェールヌイじゃないしな・・・なんでなんだ?)

 

 刀堂博士にとって何らかの必要性が有るからこそゲームに合わせて調整しているのかそれとも彼の個人的な趣味の結果なのか、と心の中で呟けばどこかやる気の無さそうな顔をした猫を連れているベージュの水兵服を着た三等身の少女が心外そうな表情を浮かべて両手を突き出し頭を左右に振っている様子が一瞬だけ見えた。

 

「全く・・・一体全体、誰のせいなんだろうな」

「えっと、別に僕は提督を責めてるわけじゃないんだよ?」

「ん、ああ、それは分かってる、さっきのは独り言だから気にしないでくれ」

 

 何か事情があるのかそれ以上の情報を寄越さない妖精へ向けて何が原因かを説明してくれないのでは何の解決にもならないのだが、と内心で愚痴りながらこちらを振り返って首を傾げている時雨へと何でもないと返事をする。

 

 そんな会話をしている間に少し離れた海面から黒いリボンの白ベレー帽がぽこりと現れ、輝く金髪のスク水少女が現れたのを切っ掛けに彼女と同じスク水やセーラー服の上を羽織った水着少女達が次々と海面下から浮上して水飛沫を自分達の身体から払い落しながら海原に立ち上がりこちらに近づいて来た。

 合流してすぐに龍鳳の周りを囲んで挨拶と同時に心配の言葉を彼女へとかける伊号潜水艦達の艦橋へと矢矧に通信を繋いでもらう。

 

「・・・さぁ、帰ろう、旗艦は時雨に変更するぞ」

「「「了解!」」」

 

 敵勢力の調査任務に就いていたそれぞれの潜水艦娘の艦橋と一通りの諸連絡を交わしてから旗艦変更を行えば夜明けの日差しに似た輝きがモニターを染め、コンソールパネル上に浮かんでいた立体映像がイムヤから時雨へと入れ替わり。

 そして、同じ光を発した龍鳳や他の潜水艦娘達がモニターの向こうで金の輪へと変わり一番近くにある輪からハイソックスに包まれた後に革靴を履いた足を踏み出して陽炎型駆逐艦の長女がオレンジ色のツインテールをなびかせながら海に立つ。

 

『それじゃ、皆、警戒を厳として』

『ええ、さっさと帰投しましょっ♪』

 

 六人の駆逐艦の艤装の汽笛が晴天の下で鳴り響き、南の海に近いせいか本州よりも先に春の気配を感じる風を受けて時雨を先頭にして艦娘達は縦一列となって海上を走りだす。

 

(同族を捕食する事で成長する深海棲艦、単に共食いするだけなら放置していても良いんだろうけど・・・人間や艦娘が好物なんて言われればあれとの戦いは避けられない・・・)

 

 海底にひしめく深海棲艦の群れ、数日前の赤城と加賀を主戦力とした艦隊との闘いで確認されたのは駆逐級と軽巡級が十四隻、ついさっき遠目に見た海底で確認できたのはレ級を含めて五隻ほどまで減っていたので単純な戦力だけなら二百隻の大艦隊なんて冗談みたいな事をやってくれた日本海に現れた限定海域よりもマシと言える。

 岸壁に噛みついた尾を支えに身体を丸めて眠っている戦艦レ級を見たと同時に鎮守府の中枢機構から頭の中に直接送られてきた分析が事実なら義男が戦った鬼級戦艦や箱庭の女王並に厄介な相手。

 だが、俺自身が半信半疑な事を時雨達や事情を知らない他人に伝えても信用を得るのは難しいだろう。

 

(それにしても・・・捕食した相手の特性までもを取り込んで自らを強化する異常個体(イレギュラービルド)、まるでゲームの中にあった近代化改修そのものじゃないか・・・)

 

 しかし、確実にあの戦艦レ級は撃破しなければならない、それも残骸一つ残さず完全に。

 

 鎮守府の研究室の主任である男性は霊的技術に対する研究に関して他の追随を許さない程に研究熱心であるが倫理観は辛うじてまともな分類に入る人だ。

 しかし、他の艦娘を材料に戦力強化を行う技術が発見されたとしてそれを彼や他の研究者は絶対に試そうとしないのか、と問われれば間違いなく俺は首を横に振る。

 趣味(ロマン)実益(スペック)を両立させた得体の知れない技術で作られた武装を実用試験して欲しいと頼まれるのはもう慣れた。

 

 だがこれに関して、使用すれば間違いなく艦娘達のその後の人生を決定的に左右するだろう技術、単純に人間になるだけならまだしも、もしかしたら彼女達に命の犠牲を要求するかもしれない業の完成は龍鳳の肩に装備されたびっくりドッキリメカと一緒にして良い話ではない。

 

 今の俺が手段を選り好みと出し惜しみをした事で近い将来の人類は制海権を失うかもしれない。

 今、その存在を無かった事にしてもいつかは誰かが別の方法でそれに辿り着き完成させるかもしれない。

 

(それでも俺はこれを誰にも伝えず個人的な理由でその技術の進歩を堰き止める・・・勝手か、勝手だな、まるで義男みたいな考え方だ)

 

 戦艦レ級を倒さなければならない敵であると再確認して鎮守府に帰投する為の青い空と青い海の間を時雨達が走る航路、指揮席に背を預けて自分の身勝手な考えに呆れる。

 しかし、それでもそれを認めなければ俺は自分の命だけでなく鎮守府の同僚やお互いに命を預け合う仲間である時雨達を含めた全てを失う事になるのだ。

 

 どれだけ自己中心的な奴だと貶されても僕は仲間の犠牲を絶対に認めるわけにはいかない。

 

(そうだ、皆と生きている現在(いま)を壊してしまうかもしれない未来の事情なんて僕の知った事じゃないんだ)

 

・・・

 

 戦艦レ級を捜索する為の索敵を行っていた護衛艦が鎮守府の港湾区へと入港し、夕陽のオレンジ色に照らされた港に接舷したタラップの上で軍帽を被り直した田中良介は自分の部下である艦娘達へと休息の許可を出しながら数日ぶりの地面に立つ。

 

「ヘーイッ♪ Welcome back! テートクゥ! 会いたかったデース!」

 

 そんな時、荷物の積み下ろしを始めた作業機械の音や潮騒が聞こえる少し穏やかな港を全力疾走で走り、白い袖をひらめかせ近付いてくる戦艦娘の姿を見た田中は小さく肩を竦めてから腰を少し落として構えた。

 こちらへどんどん近づいて来る金剛に身体を向け少し蟹股になって身構えた田中の姿に彼の後から船を降りてきた特務士官の青年とその部下である陽炎型ネームシップが呆れ顔になり、またか、と二人揃って呟いた。

 

「テイトクゥッ♪」

「おふぅっ」

 

 両腕の白い袖を振り上げスキップしながら走って来た金剛が身構えていた田中に勢い良く抱き付き頬擦りをして満足げな声を上げ、彼女との衝突による衝撃と頬と胸元に当たる柔らかさで田中は息を詰まらせて小さく呻く。

 

(こ、これは何回やられても慣れないな・・・)

 

 美人だがエセ外国人そのモノな言動をする陽気な艦娘であるのだと前世の記憶、そして、今の世界で実際に出会った彼女の態度からそう思い込んでいた田中は金剛に対して少々気後れしていた。

 だが、半年ぶりに南の島から帰ってきた中村が何の進展も無い金剛と田中の様子にまだ気付いてないのか、と呆れ声を漏らし数日後に一つのビデオテープを差し出してきた。

 そのビデオテープに録画されていたのは彼が知らない普段の金剛型一番艦の様子、静かに授業を受ける姿や勇ましく仲間を指揮する演習の様子、そして、姉妹艦達とティータイムを楽しむ淑女然とした金剛などを少し遠くから撮影したその映像に田中は目を丸くし。

 そのすぐ横で神経を逆なでするタイプのドヤ顔を向けていた中村とまともな日本語をしゃべっている金剛が映るモニターの間で視線を行き来させる事になった。

 

「ああ、ただいま金剛、あと満足したなら放してくれ、周りの目があるだろう?」

「ohッ! ゴメンナサイ、ちょっとexciteしすぎてましたネ」

 

 すぐ近くから漂ってくる田中の好みに合わせた控えめながら清潔感のある香り、身体を押し付け女性特有の柔らかい感触を伝えてくる金剛を軽く撫でて正面から相手へ顔を寄せ囁くように声を掛ける。

 すると戦艦娘はハッと目を瞬かせて頬を赤らめて彼から離れ、少し気恥ずかしそうに全力疾走で乱れた前髪を指で梳き耳の上に戻す。

 

 噂では聞いた事があったが実際には見た事が無い普段の(レディな)金剛を見せられた後に中村から告げられたアドバイス。

 変に避けて離れようとすると余計に引っ付いて来るからある程度はスキンシップをこちらから行った方が艦娘と適度な距離を保てると言う言葉。

 

(なんでアイツそんな事知ってるんだよ・・・まさか・・・いや、しかし、艦娘相手でもセクハラは適用されるんだぞ?)

 

 そんな事があり金剛の過剰な馴れ馴れしさにいつも振り回されていた田中は友人のアドバイスに従ってあくまでも節度を守った方法でだが彼女とスキンシップをやってみた。

 すると今までは子供の様に一度彼に抱き付いたら離そうしなくなる美女がそわそわとした様子となりつつも田中のお願いを素直に聞き嬉しそうな笑顔をする様になった。

 

 田中とて自衛官として斯くあるべき理性的な振る舞いを心がけているとは言え健全な男である。

 

 なんとか平静な顔と態度を保てているがそれまでの過剰な賑やかさを裏切る可憐な金剛の姿に内心では何も思わないなんて事は無い、と言うかかなり深く彼の胸に刺さるものがあった。

 

(なんかもう、いろいろ柔らかくて、変な声出してしまった・・・今、顔弛んでないよな・・・?)

 

 彼は見合い結婚をした前世を含めれば女性に関して全くの無知というわけでは無い。

 だが、お付き合いの経験が見合いだけである為に自らチャレンジした恋愛の経験は無く自分にはそう言った感覚が無いのではとすら田中は思い込んでいた節があった。

 しかし、その油断を狙う様に少しずつだが田中の前で暴走する性質を抑えて淑女と言う程ではなくとも比較的大人しい態度で金剛は彼と会話する事ができる様になってきた。

 

 要するに、前世の失敗と相手の勢いによって引け腰だった田中は悪友に唆されて一歩踏み出し、奇しくもそれと同時に可憐さとハイテンションを足して二で割る事に成功した金剛のギャップ萌えが繰り出され、その相乗効果は鉄鋼弾並の強烈な威力を彼の心理へと発揮したのだ。

 

「提督っ! 帰ったら私と酒保で買い物する約束でしょっ! 早く行きましょ!」

 

 しかし、相手の好意があるとは言え調子に乗った真似をすれば、いつの間にか陸自側に出向していた元陸軍属の揚陸艦を原型に持つ艦娘が飛ばす光る竹とんぼによって捕捉され、通報を受けたカーキー色の隊員達によってセクハラの現行犯として左右を挟まれる事になる。

 

「え、あ、ちょっ、イムヤって、うぉ、時雨まで押さないでくれ!?」

「僕は何を頼もうかなっ♪ 金剛も一緒に行くかい?」

 

 そんな田中の危機を察したのかそれとも別の理由からか、嬉しそうに微笑む金剛とその姿に一時だけ見惚れていた(鼻の下を伸ばしかけていた)指揮官の腕を強引に引き潜水艦娘が自分の方が優先であると主張し、さらに戸惑う彼の背中を笑いながら白露型駆逐艦が押していく。

 

「off course! テイトクがsponsorになってくれるならシマカゼやリュージョー達も呼んだ方が良いヨ!」

「なるほど任務前の景気付けって事かしら、悪くないわね!」

 

 余談であるが、そんな指揮官(田中)戦艦娘(金剛)の急接近を面白く思えない一部の艦娘にとってその事態を招いた(余計な事をしやがった)中村の評価は著しく低くなる事となった。

 

「い、いや、まずは帰投後の手続きをだな、キミ達っ、だからそんなに強く引っ張らないでくれぇっ! それに俺は奢るなんて約束はしてなっ、うあぁっ・・・

 

 ちなみにとある伊勢型戦艦娘の名誉の為に記しておくが彼女が今回の任務において中村の指名を断ったのは先約があったからであって決して私怨からくるモノではない。

 

「・・・司令、私達にもご褒美くれても良いのよ?」

「バカを言うな、出撃の度にそんな事をするなんて冗談じゃない、後の手続きはやっておく・・・お前たちは装備を返却してからさっさと休め」

 

 賑やかな一団を見送っていた陽炎が隣に立っている特務三佐に物欲しげな視線を送るが軍帽を目深に被った青年はそれを一蹴してその場を後にした。

 

「ちぇー、もうちょっと優しくしてくれても良いじゃない、ね? 古鷹さん、龍鳳さん」

 

 大して気にしていない様子で自分の指揮官を見送ってから陽炎は背後を振り向き。

 

「もぉ、陽炎、田中二佐が甘いだけで提督もちゃんと優しい人でしょ、そんな言い方しちゃダメよ」

 

 肩や太腿に幾本ものケーブルが刺さり背中や腰、腕と身体の至る所に増設武装を身に着けた古鷹が護衛艦からタラップを重々しく軋ませながら下りて来て腰に手を当てながら同僚艦娘を嗜めた。

 陽炎と古鷹の様子にクスクスと小さく笑い、自分の提督が怖い人でなくて良かったです、と返事をした補給艦兼空母艦娘は桃色の袖を引っ張って先導してくれる潜水艦娘達に続いて装備を返却する為の港湾施設へと歩き出す。

 

「所で古鷹さんのそれ、重くないの? なんか歩き難そうよね」

「実はかなり・・・、全部合わせたら私の体重より重いかな、もしかしたらもっとかも・・」

「うへぇ、私、駆逐艦で良かったわ」

 




 
N督「これが小笠原で俺が鳳翔と作った最高の烈風だ! すげえだろぉ?」

空母組<おぉ! 流石、ホッショさんとN督!!

主任「これじゃ、ダメだな・・・この烈風は出来損ないだよ」
明石「え、主任さん今なんて・・・?」
主任「よく見るんだこのいい加減な基盤の配列を、CPUもジャンク品ばかりで処理速度がバラバラ、これじゃ艦娘に負担がかかり過ぎて使えたもんじゃないよ」
明石「ホントだわ!? それにこの艦載機のCGも史実と創作がごちゃ混ぜで塗装の配色バランスが悪いわ・・・」

空母達<え、これ使っちゃダメなの?

主任「二ヵ月待ってください、我々が最高の装備を用意しますよ」

N督<ぐぬぬ


二か月後・・・

|飛|
|行|⊂( ・`ω・´)bグッ!
|甲|
|板|

T督「で、大鯨が龍鳳になった、と?」
三隈「くまりんこのカタパルトが・・・」
 
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