深海棲艦が水底から生まれ出たと同時に囁き続ける声。
その個体も生きる上で必要な事を教えてくれるそれに従う事への疑問を抱く事は無かった。
他の同胞達と同じ様に。
いや、そもそも自分の意識の一部であると思い込んでいたと言うべきか。
その深海棲艦の身の内で一番初めに湧き起った明確な欲求は地上に生きる生物ならば当然に持つ、生き残りたい、と言う死への恐怖。
とは言え、その個体も海の底から駆逐艦級として生まれ出でた時点では他の同胞と同じくその感覚を持っていなかった。
それが芽生える原因となったのは突如としてその個体達が縄張りとしていた海に現れた外敵、深海棲艦と似通った力を利用しながら人間と共生する者達。
船体の大きさも蓄えた力の量も、数ですら自分達の劣る筈の敵に撃破されていく同族の姿に驚愕させられながらその敵が海中へ落とした爆雷の威力で海底に叩き付けられた。
だが幸か不幸かその深海棲艦は激しいダメージを受けながらも舞い上がった砂塵や岩石に埋もれた事で敵の索敵から逃れる。
そして、損傷により身動きが出来なくなった小さな深海棲艦の中で理解不能な敵に対する未知の感覚が溢れ。
死とそれを自分へ運んでくる敵への恐怖は、生存を求める強く直向きで純粋な欲求は遠く離れた地の底に根を張る水晶の樹にまで届き、その欠片を傷付いた深海棲艦の中へと引き寄せた。
その個体に組み込まれた力は霊力を内包する素材を取り込み混ぜ合わせ、自らの身体を取り巻く環境に最適なかつ強力な形へと作り変える能力。
それでもその欠片を得ただけなら能力の使い方に気付かず小さな深海棲艦は他の同胞より少し臆病な個体と言うだけで終わっていただろう。
その時、傷付いた深海棲艦が身体を癒すための
その日、深海棲艦との戦闘で軽巡艦娘から千切れた腕が目の前に落ちて来なければ。
その際、艦娘達の指揮官が海底に転がる瀕死の駆逐ロ級を見つけ出し始末を着けていれば。
あの
・・・
二隻の空を飛ぶ不思議なチビ共を自分の艤装に格納されている飛行端末で追い落とし、配下に張らせた弾幕に乗じてかぶり付いた光る板を身に着けた獲物達の味は直後に受けた反撃の痛みを忘れさせてくれる程の美味であり、その成果から戦艦級深海棲艦はその
瞬きする間に
駆逐艦や巡洋艦の同族程度ではもう味気ないと感じるがそれらと同じ艦種でも奴らの肉は絶妙で鮮烈な味で楽しませ取り込むだけで強くなれる
そして、なんの疑問も持たずに艦娘との
頭上から襲い掛かってきた緑色に赤い丸が付いた飛行端末に気付かず先制攻撃を受けた事は不愉快だったが腰に光る板をくっ付けた下位個体の形はこの前に腕を板ごと食い千切ってやった相手と似ており。
深海棲艦と艦娘、空母の欠片を二つ食べた事で以前より格段に強くなった戦闘機によってそれが勝てる相手であると踏んだレ級は配下に総攻撃を命じて空を舞う細っこいが美味そうな香りがする獲物へと舌なめずりをした。
だが、その頭上の敵は中々に艦載機の扱いが上手く、さらに前に戦った長い黒髪に赤いヒラヒラを腰に巻いた空母ほどではないがすばしっこく空を飛ぶ。
思い通りにいかない狩りに苛立ったレ級へ今度は遥か遠くから音を置き去りにして光弾が襲い掛かり、その身体を守る障壁の大部分を破壊した爆炎に弾き飛ばされ戦艦級は尻尾と身体を海原に叩きつけられた。
それから遠くから狙撃してくる敵へと反撃しようと勝手な行動を始めた配下の隙を突いて海へ降り立った敵が金色の輪を通って別の形へと変わり。
遠くの敵が放った強力な榴弾で怯んでいたレ級へと近付いた敵艦がありったけの砲弾と魚雷を軽巡から重巡へと早着替えの様に艦種を切り替えながら叩き付ける。
不意に戦艦である自分が格の劣る相手に一方的に責められる戦いをさせられているのだ、とそんな考えが頭に過りレ級の苛立ちが最大まで高まって目の前の敵へと自分の威力を見せつけてやると言う様に戦艦級は持てる限りの艦載機を放ち全ての砲門を開き忌々しい敵への突撃を行おうとした。
その煽てる様な考えがまさしく自分にふさわしいのだと、思いかけた戦艦レ級は敵の姿がオレンジ色から白と紺色の胴体と駆逐艦の格が見える艤装に代わった途端に尻尾型の艤装を海に突き立って急ブレーキをかけた。
海風に揺れる黒い髪の下から自分を睨み上げる瞳の奥には青白く光る菱形が刻まれ、その身体がぶれた一瞬後にレ級が放った艦載機が残らず撃ち落され、端末との接続が切れた痛みが頭を走るが海原に立ち止まった深海棲艦はそんな痛みが些細な事に感じるほどの恐怖に顔を青ざめさせて踵を返す。
そのレ級の頭の
力自慢の重巡は足下から伸びてきた
空に黒い渦を作れるほど大量の飛行機を操り海上や島の上に火の海を作れる力を持っていた空母は空から風を裂いて襲い掛かってきた
かつての自分と同じ駆逐艦やその一段上の巡洋艦は暗闇でも迷わず追いかけてくる
そして、逆らうと言う発想どころか思惟を交える許しを貰える事すら出て来ない程の上位者だった白いマントを羽織った戦艦の身体を駆け上ってその胸に一瞬で大穴を開けた青白く光る左目。
駆逐艦の格しか持っていないはずなのに、至近距離であったとは言えたった一度の砲撃で上位者を屠った
追撃してくる魚雷を何とか防ぎやり過ごして逃げた先で偶然に迷い込んだ別の支配者が君臨する同族の領地で傷を癒し、配下の修理が終わった頃にレ級は自分の頭の中に妙な違和感を覚えた。
何としても艦娘を撃ち殺してその肉を喰らってやると言う決意、下位であるクセに格上である自分へと逆らう不遜は決して許すべきではないのだ、と岩山に座する眠り姫の領地で身体を癒していた時に宿った
だが、そもそも・・・艦娘とはなんだ?
アレは出来損ないの下位個体ではないのか?
もしかして、自分達と別種なのか?
そもそも何故、わざわざ危険な力を持った相手へと戦いを挑まないといけない?
狙うなら島の近くに居る下位個体や虫を襲った方が楽に旨味を楽しめるではないか?
など、と頭の端っこに追いやられながらもしがみ付く戦艦の格にあるまじき弱い考えとも感じる
しかし、その疑問に対する確たる答えは出せず彼女は領地の支配者から受けた傷が癒えるまでの滞在の許可が期限を迎えた事で同じく傷の癒えた配下を引き連れ。
ついでに姫の領地で不満を燻らせていた底辺や暇を持て余していた連中にも思惟を掛け。
瞳に宿った赤い灯のお陰か思ったよりも多くが呼びかけに応じ、それらを引き連れながら戦艦レ級は海上へと戻る事にした。
・・・
お前は誰だ、そう頭の中で問いかけるレ級の思惟に答える何かは既にそこには居ない。
少し寝ていただけなのに宿った新しい力に気を良くしながら海底の領地から海上へと顔を出した途端に待ち伏せしていた敵の攻撃にさらされたレ級は配下に命じて自分を守らせながら艦載機を空にばら撒く。
空に飛ばした目で見つけた敵を砲撃しながら、魚雷管から放った沢山の魚雷で近付いて来る船足の速い灰色の服を纏った小柄な駆逐艦娘を狙うがその全てが敵の手にある小口径砲の迎撃によって処理されて水柱に変わる。
遠距離から雨の様に降って来る砲撃は直撃こそ無いが視界を確保するのも難しい程に濃くなった自分達とは色違いの霊力を含んだ旋風が波を荒立て、命中弾を受けて砕ける眷属の悲鳴や破片と同時に降りかかり装甲を削る光の粒でチリチリとする肌の痒みにレ級は顔を顰めた。
頭の中に何かが居る。
否、さっきまでは居た。
その存在は自分に気付かれたから何処かに逃げた。
そして、今も自分以外の眷属の中に紛れ込んで無自覚にそれらを敵へ突撃させてその命を差し出させようとしている。
その考えを証明する様にレ級の思惟を妙な形で曲解した配下の深海棲艦達はまるでわざとしているかの様に旗艦を守る筈の防御陣に穴を開ける様な戦い方と走り方をしていた。
まるで見えない紐で縛られ自分の望まない方向へと引っ張られていく様な感覚に苛立ったレ級はもう自分以外の同族も巻き込んででも敵を始末してやろう、と決断し艤装の主砲を水平射させようとしてさっきまで自分に凄まじく早い船足で接近してきていた敵を探す。
しかし、目を皿の様にして見回しても、空から端末が送って来る視界にも少し前まで目に見える範囲にいた筈の敵駆逐艦の姿は無く、困惑するレ級の周りに居るのは馬鹿みたいに右往左往して遠くから砲撃してくる相手へと当てずっぽうに反撃する随伴艦だけだった。
次の瞬間、それは些細な事だから気にする事ではない、と頭に走った
まだ
そして、未だにその声に反応して従ってしまう自分の艤装が勝手に遠くに居る狙い易い敵へと砲を向ける。
その気味の悪い怖気に全身を強張らせ歯を食いしばって砲弾を装填して弾底を叩こうとしていた艤装に無理矢理に砲撃の中止を命じたせいでレ級はその場で急減速してタタラを踏み。
速度を落とした戦艦の周りで旗艦に速度を合わせようとした者とそれに気づかなかった者が追突し合い。
その動きによって
その味方艦の動きに赤い炎を宿した目を見開きつつ攻撃を思い止まった戦艦級の背後で荒立つ水面からするりと音も無く艦娘の素手が現れて海面に下ろされていた深海棲艦の尻尾へと触れて掴む。
足を止めてしまったとは言え頭の中に囁く奇妙な声を今度こそ追い払ってやった、と確信したと同時に奇妙な重みが自分の尻尾にかかった事に気付いた戦艦レ級は背後を振り向き、そして、自分の艤装にくっ付いている潜水艦の姿に目を見開いて悲鳴を上げた。
見覚えのあるピンク色の頭と白と紺の胴体、前触れなく現れたその恐るべき死神を何とか振り払う為に周りの随伴艦への被害も構わずに艤装を振り回したレ級だったがその努力も虚しく。
甲高い身体の内側を直接に斬り付ける様な高音と波動が深海棲艦の尾に抱き付いている潜水艦娘から放射され。
その凄まじい振動と音波によって身体中を走り回る痛みと熱に悲鳴を上げのたうち回るレ級は自分の周りを覆っていく白い煙の中で必死に自分が生き残るための手段を探し。
この姿になってから沢山の同族、下位個体、小虫を喰らって力を溜め込んできた自慢の艤装の根元へと血走った眼を向けた深海棲艦は必至の形相で腕を振るい。
敵の攻撃によって各部から火を噴き歪に膨れ上がり自爆寸前となった武装の根元へと爪を食い込ませて無理矢理に自分の尻から引き千切った。
あと数秒その判断が遅れていればレ級は自分の艤装の爆発に巻き込まれて骨の一欠片も残さずに消し飛んでいただろう、しかし、その爆発は本体である少女部分を霧の中から海中へと叩き込むだけに留まり。
艤装を千切った尻から大量の黒い血を吹き出しながら海中へと逃げ込んだ戦艦級は随伴艦の事など気にも留めずに酷い痛みを発している両手と両足で水を掻き海底を目指す。
『尻尾を切って身代わりにしたっ!? なら、追撃だろ!』
『てーとくっ、身体も水着もボロボロでゴーヤもう戦えないよぉっ!』
『後は心配すんなっ、ゴーヤ、今回のMVPは保証してやるからボーナス期待して休んでろ!』
イカ墨の様に広がる自分の血の向こう側にある海面から聞こえたピーピーと五月蠅い鳴き声にレ級は恐怖で顔を引き攣らせ。
血の煙幕を抜けてイルカの様に全身を波打たせながら自分の方向へと目掛けて急速潜航してくる桜色の髪を揺らめかせる潜水艦から逃れる為に身体に残った推進力を両足に込めて逃げる。
『その為に定員外を連れてきたんだぞ! 旗艦変更、イク出番だっ!』
一目散に撤退するレ級の背後、黒い血の残滓を照らし打ち払う様に日の煌めきに似た光が金輪を造り出し、中央に刻まれた銀色の文字を打ち破って海中に薄紫の花びらを舞わせるように潜水艦娘が現れ。
その滑らかな肌へと塗り広げられていく光粒が紺色の布地を織り上げ海水を含んで身体のラインに張り付いて女性らしい曲線を際立たせ。
その背中に伊号乙型潜水艦共通の魚雷管と推進機関、右の太腿に単装砲が部品を組み合わせて形成していく。
『んふふっ! イクにお任せなのね~っ♪ あんなの直ぐにやっつけちゃうの!』
近付いて来る敵の鳴き声と追撃に恐れ戦き、主兵装を失い身体が徐々に分解を始めている戦艦レ級が必死に目指すのは海底で霊力の結晶を大量に溜め込んだ瓦礫の山に座する姫級深海棲艦の領地だった。
『って、あんな無茶な潜り方したら深海棲艦でも潰れて死んじゃうのね・・・、イクのお仕事無さそうなの~』
『気を抜くんじゃないったら! 今回こそ逃がすわけにはいかないんだから!』
身体を押し潰す水圧の事など考える事も出来ずにがむしゃらに深海へと向かう戦艦レ級に気付いたのか海底の姫が自分の領地へと傷付いた深海棲艦の侵入を拒絶する思惟を叩きつける様に放ってくる。
『ぇっ!? 司令官っ、海底方向に異常なソナー反応がっ!』
『おいおいおい・・・なんだ、そりゃ・・・なんであんなのがあるんだ・・・』
その怒りすら感じる上位者の思惟にすぐさま跪き命令に従わなければならないと怯え悲鳴を上げる自らの本能にレ級は砕け始めた手足から黒い血を靄の様に溢れさせながら敢えて自分の意思で逆らう。
その命令に従って立ち止まれば敵に追いつかれて殺されてしまう。
補給が必要、修理が必要、足りない物を欲しがるレ級の身体の奥で飢えと恐れが疼く。
これより痛いのは嫌だ、これ以上の恐いは嫌だ・・・、死ぬのは嫌だ!!。
強い死への恐れを浮かべる顔で声無き叫びを上げるレ級の意志に応じて彼女が
そして、必要のない無駄な部分へのエネルギー供給が止まり、それによって出来た余剰霊力が生命維持に必要な機能へと集中し、潰れて使えなくなった部品同士を混ぜる様に継ぎ接ぎして現状で最も生存に適した構造へと組み変え。
そうして自分の命令に従わないレ級の思惟を感じ、今度こそ間違いなくそれが不良品であると姫級深海棲艦は判断した。
レ級に唆され連れ出されただけでなく領地の近くで遊び始めた下僕達の五月蠅さに機嫌を損ねた姫級深海棲艦に下位個体への懲罰の執行を命じられて海上へと向かい海底に重なる様に存在している巨大な空間から上ってきていた戦艦タ級は限定海域の入り口から顔を出したと同時に艤装に火を滾らせる。
そして、主が玉座から放った追加命令を受け取り瞳に黄色い灯火と強い殺気をみなぎらせた戦艦タ級の背から戦艦砲を備えた蛇が顎を打ち鳴らして鎌首をもたげその白色の蛇腹が勢い良く伸び。
不敬なる不良品には
『次から次になんだよ!? 今度は同士討ちなのか!?』
『と、共食いするのはレ級だけじゃなかった!?』
海中で強く石を打つ様な音が水を揺らし、艤装を失い深海棲艦と言うよりも艦娘に近い大きさになった戦艦レ級がその身体とほぼ同じ大きさの連装砲を備えた蛇の顎に咥えられ捕まる。
鋭い牙並ぶ顎の間で両手を付いて抵抗する満身創痍の黒合羽が次の瞬間には呆気無く噛み潰され黒い血が海中に飛び散り煙の様に蛇の顎の近くで揺らめいた。
『新しい敵艦なの!? でも海の中ならカモネギさんなのね!』
死にかけの不良品を処分すると言う他愛ない主の命令を遂行した戦艦タ級フラッグシップはふと自分の艤装の長さが届かない程度に離れた頭上に見える敵の姿に思案する。
質も力も自分よりも劣る上に先ほど処分した不良品とほぼ同じ小さな下位個体や下僕の為に自分が出向く必要があるのか、むしろ後から領地から上がって来るだろう他の下級共に処理を命じて今すぐに姫の下に戻り侍る方が有意義なのでは、と考えかけた戦艦級はふと敵が纏う光の色に気付く。
『魚雷六発装填、・・・イク、イっちゃうのね~!』
『待て、イク! 今は攻撃するな! 何かがおかしい!』
『ふぇ?』
あの奇妙な色の光が自分の主がいつも手元に置いている瓦礫とガラスの玉に宿っている
頭上のあれを捕まえて姫級に献上すればその褒美は力の結晶だけでなく思惟を交え抱いてもらう栄誉までもを得られるであろう。
そう思い至った戦艦級の深海棲艦は下僕に大きな手柄をくれてやるのが惜しくなり。
あまつさえ自分と同じ色の灯火を宿し艤装に蓄えた魚雷の数を自慢する鼻持ちならない
『嘘だろ・・・あんなの俺は知らないぞ!?』
そして、海上でまだ遊んでいる愚か者達の粛清と言う簡単な仕事のついでに手土産を手に入れようと思い立ったタ級が獲物に向かって浮上しようとした時、その腰に繋がった大蛇の様な艤装が異常を知らせる痛みを本体へと伝え。
突然の痛みに困惑した戦艦タ級が目を自分の艤装へと向ければついさっき不良品を噛み潰した主砲の一つがまるで無理矢理に水を注入されているかの様に歪に膨張しており。
その牙が剥き出しになっている大蛇の歯茎の間からタールの様な黒い粘液が溢れて海水の中でイソギンチャクの触手の様に揺らめいていた。
痛みと未知の現象に硬直したタ級の目の前でついに膨張の限界に達した大蛇が内側から破裂し、マナの粒子に解ける事なく存在を維持する深海棲艦の血液が意思を持って間近の戦艦へと絡み付き襲い掛かる。
闇に覆われた深海の泥土を思わせる黒い粘液が足掻く戦艦タ級の上半身を瞬時に呑み込み、何とか戦艦タ級は残りの主砲をタールへと向けたが攻撃を行う暇無く残りの蛇の頭に飛びついてきた黒血はその口へと押し寄せタ級の体内になだれ込む。
内側と外側から同時の侵食に襲われ抵抗も虚しく戦艦級深海棲艦の身体は原型を失い部品として取り込まれていく。
『提督・・・あれも深海棲艦・・・なの?』
『正直言って自分の目を信じたくないが・・・見た通りだろうな』
絶命した深海棲艦の身体を溶かし自らの部品として取り込みパッチワークの様に組み換え作り変えていく黒い泥の塊が海底へと堕ちていく様子への畏怖を漏らす様に伊19と彼女の指揮官が呻いた。
その
本来ならば艦娘であっても、深海棲艦にすら与えられるべき力では無かった。
だから、誰一人としてその歪な生命の誕生を祝福する事は無い。
人間も、艦娘も、そして、同族ですらあの
・・・そうなる前にその器を討ち果たし、その魂を鎮めねばならない。