正直に言うと自分でも四章はやっちまった感が酷いと思・・・
(;´・ω・)つ「北方棲姫
(;^ω^)つ「吹雪の
(*'ω'*)つ「扶桑の
('◇')つ「遠くでも繋がる
(´・ω・)つ「三章の
・・・なんだ、前の章と比べたら大した事ないじゃん。(白目)
『ん~、なんだかドロドロ、なのにブニブニしてて気持ち悪いの~』
「イク、あんまり変に触るな、引き込まれでもしたらどうすんだよ・・・一方通行かもしんねぇんだぞ」
『そんなに心配しなくても大丈夫なのねっ、ほらっ、ちゃんと抜けるなの♪』
戦艦タ級とレ級による深海棲艦同士の殺し合いとその決着に起こったホラー映画も裸足で逃げ出しそうなほどスプラッターな光景にまだ平常心へと戻れていない中村は無警戒とも言える程の積極性で水深1000mに達する海底に存在していた深海棲艦の巣の入り口へと手を伸ばして触れる呑気な潜水艦娘へと注意を呼び掛け。
そして、彼は自分が座る指揮席を囲う全周モニターに触れながら目の前の限定海域を調べ上げる為に各種センサーから送られてくる情報を表示した小窓に目と耳を集中させている艦娘達の背中を改めて見回した。
(いつもながら参ったもんだ・・・この中であれに一番ビビってるのが俺なんだから立つ瀬が無いってもんじゃないぞ)
タ級が味方である筈の相手に攻撃を行っただけでも驚きなのにその蛇腹を伸ばす戦艦砲に噛みつかれたレ級の身体が果実の様に潰される様子に絶句させられ。
その直後にタ級が無数の口を生やし黒いアメーバと化した戦艦レ級に捕食されると言うグロテスク極まる光景をその場にいた全員が見る事になった。
だが、その深海棲艦達の共食いに顔を引き攣らせ悲鳴を漏らした駆逐艦娘の吹雪ですら十分も経てばまるで何事も無かった様な顔をして自分の仕事に向かっている。
そもそも見た目こそは少女の姿だが過去の戦闘艦を原型に持つ為か艦娘達は全体的に深海棲艦との戦闘で血飛沫だとか飛び散る肉片などが日常茶飯事となる通常の深海棲艦との戦いでも眉一つ動かさない場合が多い。
中には今までの戦闘の経験で何とか慣れた中村達、艦娘の指揮官ですら正気を削られ恐慌状態になっても可笑しくない凄惨な光景を前にしても好戦的かつ泰然とした態度で笑う艦娘すらいる。
とは言え中村が艦娘達から意気地無しや臆病者などと直接的な嘲りを浴びせられた事は無い。
たまに呆れを多く含んだ口調で馬鹿扱いをされるが少なくとも彼女らにとって指揮に従う価値も無い情けない男として侮られていると言う事は無い筈である。
そこまで考えてから恐らくは、と一言付け加えて誰にと言うわけでもなく心の中で弁解した中村は相対的に見ると年端もいかない少女達よりも臆病に見える自己評価に向けてままならないモノだと声無く呟いた。
「周囲に敵影無し、前方の限定海域から新たに出現する様子もありません・・・提督、これからどうなさいますか?」
「ホントにどうすっかなぁ・・・俺達は問題無くレ級の撃破に成功しました、他に怪しいモノもありませんでした、と言うわけにはいかないか?」
「いく訳がないでしょう、しっかりしてください提督」
伊19が持っている暗視能力やソナーなどに精神を同調させ警戒を続けている艦娘を代表して中村へと振り返った重巡艦娘は背筋を伸ばして振り返ったすぐ後に自分の指揮官が吐いた情けない言葉に呆れて首を横に振り首元のスカーフを揺らす。
そして、去年の年末に開催された艦娘達が主役の盛大な海上自衛隊主催の式典から中村の部下として彼の艦隊に配属された高雄型重巡洋艦一番艦を原型に持つ艦娘は蒼いブレザーに包まれた胸を強調する様に腕を組む。
ついさっきまで支援艦隊の援護によって混乱していたとは言え高雄達は中村の指揮によって二十隻以上の敵艦隊を出し抜きその旗艦である戦艦レ級へと肉薄し撃破寸前まで追い詰めた。
その緊迫した戦場の中であっても安心感を与え高揚感に彼女の胸を高鳴らせる程の自信に満ちた声と的確な指揮を揮っていた青年と同一人物とは思えない程に気が抜けやる気が無くなっている指揮官の様子に高雄は眉を顰める。
まだ正式に彼の艦隊に着任してから三か月も経っていない高雄だが、その短い期間でも中村義男と言う自衛官の性質が一流の前線指揮官ではあれても司令部幕僚や上級将校にはなれない軍人として三流の人間であるのだ、と理解するには十分で彼を最高の指揮官であると思い込み舞い上がっていた重巡の頭は平常心へと戻っていた。
(あぁもぉ・・・予想外な事態とは言えこの程度の事で上の空になって、なんで私の提督はこうもちぐはぐな方なの)
旧日本軍の士官達の姿を直接知っている高雄から見れば国防への意気や祖国への忠誠心と言った部分だけでなく人の上に立つ際の立ち振る舞いの心得や将校として恥じない気品や思慮深さと言ったモノが中村には決定的に足りない上にその性格の基本は人心を引っ掻き回すイタズラ小僧である。
だが、優れたと言う言葉では到底足りない程に凄まじい直感と対応力、それを戦闘に応用し最大限まで生かす部下への指示と連携の練度、妙に豊富な特技と知識を利用して軍務に神経が偏りがちな艦娘の心を緩める心遣いなど、軍人としては残念極まる彼の持つデメリットを補って余りある多くに感じる好感は高雄にとって自分が中村の艦隊へ所属固定をした事が正解であったと確信させる程に大きな物だった。
そんな考えを脱力感と共に反芻してから、むしろこれで彼が日本国を背負って立つ軍人の鑑の様な大人物であったならと言うのは贅沢が過ぎるのかしら、と心中で無いモノ強請りをした高雄は頬に手を当てながら小さく嘆息する。
(いえ、諦めてはダメよ高雄っ、今の軟弱な海軍を正す為にも、彼の様な決断力が高く深海棲艦との実戦を知る将校が今後の軍上層部には必要なのよ!)
将来的に日本と言わず全世界が深海棲艦を代表とする霊的災害に等しく晒される未来が決定的となってしまった現状で戦場に立つ高雄から見て現在の日本を守る軍事組織の貧弱さと腑抜けっぷりは祖国の滅亡をありありと予見させる。
それに賢いと言うよりは狡いと言うべきだが中村は決して頭の出来は悪くない、そもそも彼の真骨頂とも言うべきなのは戦場で発揮される尖った才覚であり、それは正しく激変を始め海に現れた怪物との戦争が常態化するだろう近い将来において千載一遇の代物である。
それを貧弱な軍組織の一部隊の指揮官で終わらせるのは今後の日本にとってあまりにも大きな損失となると考えている重巡洋艦娘は何とか彼に今以上の手柄を立てさせ順調に出世してもらい行く行くは組織全体の改革にも口を出せる力を持った一軍を束ねる将となって貰いたいのだ。
(懸念があるとすれば・・・彼の価値を前線指揮者として優れた戦術家としか見ていないあの子達と、私の提督を過小評価をしている上層部の連中ね)
ただ同じ艦隊の軽巡や駆逐達は彼がずっと最前線の現場に居てもらう事が自分達にとって正しい事と考えているらしく口では中村へ棘の混じったセリフを言う軽巡艦娘の
時には同じことを繰り返させない様に時に断固たる態度をもって上司の行いを正す道を無意識的に避けている仲間達の態度は指揮官の遊び好きが過ぎる気分屋な気質を根本的に是正して一段上の軍人に成長させるつもりが無いのだと高雄の目に映っていた。
(ただ吹雪に関しては立ち位置が読めないのよね・・・霞の様に提督の右腕になりたいというわけでも、浜風の様に彼の歓心を得たいと言うわけでもなさそう)
五十鈴に関しては無意識では無く中村が前線から退くほどの昇進をした場合に自分の直接の指揮官でなくなる可能性を考えてワザとそうしている節がある、と高雄は自分の分析に付け加える。
(かと言って提督への甘え方は時津風とも違い、不知火の様に忠誠を捧げる相手と考えているわけでもないのが分かる、なのに秘書艦と勘違いされるほどいつもこの子は彼の近くに居る、居ることを許されている)
声に出さずにそう胸の内で呟きながら自分と同じ艦橋で中村の座る指揮席に寄り添う様に控えている特型駆逐艦娘の吹雪を横目で窺う高雄の脳裏に普段の彼女の姿が浮かんだ。
五十鈴達と違って中村を甘やかす様な仕事を肩代わりなどはせず手伝いもあくまでも部下として適切かつ控えめなモノだけを請け負う。
だがその彼との距離感は部下と上司と言う立場から考えると非常に近く暇さえあれば非番の日ですら中村のすぐ近くにおり、自分が彼の隣に居るのは当然であると言う妙に自信に満ちた顔をしている。
高雄の妹である愛宕が特型駆逐艦達との世間話で中村と吹雪が非常に親密な関係になっているなどと言う妙な噂を聞いたと言うが、しかし、高雄が直に見た普段の二人の姿は手のかかる面倒臭がりの兄と年の離れた世話焼きの良い妹程度だった。
(まぁ、所詮は噂かしらね・・・吹雪に関してはたまに淀んだ目でこっちを見つめて来るのを止めて欲しいってぐらいだし・・・何考えてるのか分からなくて恐いのよね、あれ)
最近、艦娘の間に流行っている
(それはともかく中村提督の意識改革と自衛隊の組織体系の是正は必須、日本の将来の為にも私は退くわけにはいかない! そう! 時間さえかければ私達の誠心誠意はきっと彼にも届くわ!)
そんな希望的観測と漲る決心を新たにして高雄は自論に理解を示してくれた同艦隊の空母二人だけでなく別艦隊ではあるが頼もしい味方達の顔を思い浮かべながら中村を軍人の名に恥じない男にする為に地道な草の根の活動を続けて行こうと改めて強い決意を込め。
将来、将兵を束ね立つ名実ともに理想の
「まっ、第一目標は見ての通りロストしちまったし、俺達全員も消耗している以上今はどうしようもない、目印を付けて一時撤退ってのが当然だな」
目の前にいる高雄が協力者達と共謀して自分の性格矯正を企んでいるとは夢にも思っていない青年は指揮席に深く腰掛けてもう自分の仕事は終わったからこれ以上は何もやる気がありませんと言う態度を隠さず脱力と共に手を軽く振って見せていた。
「はいっ、司令官! それにソナーの反応を見るとあの中も海水でイッパイみたいですし水上艦の私達が突入するのは危険ですね」
「ぇえ、もしかしてまたゴーヤが限定海域に行かなきゃダメって事? 冗談はやめて欲しいでち・・・ぅ、いたた・・・」
ソナー機能の表示がされているモニターに触れながら振り返った指揮官の言葉への疑いを少しも持っていない吹雪が真面目な顔で中村へと強い同意の頷きを見せれば、そのすぐ近くで床に座り込み破れた水着の穴から見える赤く腫れた肌へと炎症止めの軟膏を塗っている伊号潜水艦がいかにも嫌そうな声を上げげっそりとした表情を浮かべた。
「でも、目印って言ったってどうするのよ? 発信機なんて持って来てないったら、それとも近くの港にブイを貰いに行くとか馬鹿言い出すんじゃないでしょうね」
「あ~、まぁ・・・、あの潰れたゼリーみたいな限定海域はここから動きそうにないから座標を海上の艦隊に記録して貰ってだなぁ・・・」
「司令、我々は現在友軍との通信が全て不能となっています、そして、復旧の見通しも立っていません」
朝潮型と陽炎型、種類は違うが鋭さは負けず劣らずな視線を持つ二人の駆逐艦からの指摘に中村は顔を顰めつつ頭の上に乗せていた帽子を手に取って顔に被せて隠し小さく唸る様に息を吐いた。
凄まじい水圧にも負けず光を維持する障壁と優れた暗視能力を持つ潜水艦娘だからこそくっきりと視認してその艦橋のモニターでも確認できる。
だが水深1000m付近と言えば夜闇に負けぬほど暗く前人未到と言っても過言ではない深海域なのだ。
深海棲艦が住み着いているせいかはたまた海上の戦闘の余波か、めぼしい深海魚の姿は伊19の周りには見えず辛うじて小さな海洋生物の生物発光がぽつぽつと見える程度の光源しかない暗闇の海底。
その岩場と砂地が入り混じる海の底に盛り上がった黒く半透明なドーム状のそれは直径500m前後と大きさは巨大であっても正確な座標を記録せずに浮上して場所を見失えば再度発見するにはそれ相応の時間と労力が必要となるだろう。
「ん・・・あれ? あの提督、少しいい?」
「ああ、なんだ大鳳、あの限定海域に何か変化でもあったか?」
「いえ、限定海域じゃなくて海上からなにか・・・これってトンツーじゃないかしら?」
どんな些細なものでも異常のが見つかればそれを理由に逃げる算段を頭の中に浮かべ中村は海自のワッペンが着いた白い帽子を頭の上に戻して小さく手を挙げて自分を見ている大鳳の言葉に片眉を上げ。
メインモニター上に表示された通信機能に指を滑らせ操作した彼女から彼の手元のコンソールに送られてきた音声が長く短く断続的な単音を繰り返した。
「・・・ぉ? おっ! これ海上で制空と通信を確保したって事か!? しかも俺達を探してくれている、良いぞこれはっ!」
少しの間、沈黙が落ちた艦橋で繰り返し聞こえるトン、トン、ツー、ツーと鳴る音に黙り込んでいた中村はそれが海自でも使われている国際規格のモールス信号を海上の友軍艦娘が発する霊力の波に乗せて伝えてきている事に気付き両手をパンッと強く打って喜びに声を上げる。
「追撃は失敗したがこれで俺達が手に入れた深海棲艦の巣の情報を伝えられそうだ・・・って音声の方は無理なのかよ、ならこっちからもモールスで返信しなきゃなんねぇのか・・・」
「それにしても随分と低出力で中継しているのね・・・もう少し通信系に供給を増やしてくれていればモールスなんて使わなくても・・・」
「いや、何処に居るかも分からない俺達を探す為に艦載機の航続距離と防御を優先するのはむしろ賢いやり方か・・・、それにモールスは面倒臭いが単純なだけに伝達の信用度が高い、現にこうして海の底まで届いてるわけだしな」
なによりこれで現在の自分達が置かれている状態を味方に知らせて目の前のイレギュラーな事態から撤退出来ると喜んだ中村はコンソールの通信機能へと触れて通信用のボリュームなどを操作するツマミやスイッチを操作し始める。
「・・・司令官、そこ符号間違ってますよ、ここも短音が繋がって長音になっちゃってます」
それから数分間、状況報告を単音符号に変換する為に防衛大時代に覚え込まされたモールス信号の符号表に中村は頭を悩ませpiPiっと最新規格の通信系統に対応できるコンソールパネルに何故か備え付けられている妙にレトロなデザインの電鍵を操作する。
そんな短長音を通信機へ入力していた中村の横から吹雪の指が伸びて来て音声の波長を波線で映すサブモニターの一部をなぞり間違いを指摘した。
「ぇ、マジ・・・? ぁ、いや、長文をモールスで打つのには慣れてなくてだな、はぁ、やり直しか・・・なんで自動電鍵じゃねぇんだよ、これ」
中学生にしか見えないが元は船舶である為に自分よりモールス信号に詳しい相手から間違いを指摘された指揮官は少し気恥ずかしそうに頭を掻きあまり意味の無い言い訳をしながら送信前で一時保存されていた間違い信号を消去する。
「もおっ、もたもたして見てらんないったら! 要するに現在地点と一時撤退の報告だけでしょ、代わりなさい!」
しかし、新しいモールス音声の作成を始める指揮官の頼りない様子に吹雪と同じ様に彼の手元を覗き込んでいた霞がまた十数分も待たされては堪らないと焦れた声を上げて中村から通信役を代ろうと手を伸ばしかける。
「いいえ、待ちなさい霞、これは私達が出しゃばって良い事ではないわ」
「えっ? 大鳳、な、なによ・・・いきなり」
その指揮官を自発的に手助けしようとした駆逐艦の手を横合いから大鳳が遮り、少し驚いた顔をしている霞に向けられた生真面目な顔をした装甲空母の言葉にその横に立つ重巡艦娘が微笑みながら頷いた。
「ええ、予定外の敵増援と深海棲艦の本拠地の発見、これは間違いなく私達の艦隊だけでなく今回の作戦に関わっている全員にとっても重要な情報だわ」
指揮官による本部への戦況報告と言う重要な行為を部下が手助けする事は悪く無いが、だからと言って全部丸投げして良いわけでは無い。
少なくとも司令部へと伝える内容の原文と言える部分は艦隊の責任者である提督が作ってから指揮下の自分達はその後に誤字脱字などの間違いが無いかを調べる程度の補助に収めて置かねばならない。
万が一に信頼して任せた結果として提督が把握できない通信内容を艦娘が意図せずとも勝手に報告してしまいその後に責任問題が発生すればそれは艦隊全体に降りかかる、と高雄はまだ少し不満そうな顔をしている霞へと優しく言い聞かせる様に話す。
「だからこれは提督の手で行われなければならない通信なのよ」
「・・・そこまで言われたらしょうがないって言う以外にないったら、アナタはコッチ見てないでさっさと終わらせなさい、グズって言われたいのっ!?」
渋々と口を尖らせつつ自分よりも格上の艦種が言う事が正しいと認めた霞は指揮席から離れて全周モニターと足場を隔てる手すりに腰を凭れかけ。
「・・・いや、これ、そんなに重要な事じゃねえと思うんだけど、霞に任せれるなら任せても」
「頑張ってください、提督」
「大丈夫よ、私達も手直しはお手伝いします」
困惑する中村の知らない場所で共通の目的の為に結託している重巡艦娘と装甲空母があえて有無を言わせぬ態度と笑顔で指揮官を鼓舞する。
手持ち無沙汰となった意地が取り柄の駆逐艦娘は指揮官の横で素朴な顔立ちに微笑みを浮かべて中村の横に居る吹雪とメインモニターを背にして腕を組んだ直立不動で鉄面皮を顔に張り付けている不知火が無言で指揮官を
「って・・・アンタは、暇だからって寝てんじゃないったら」
「ぁいたっ、もぉ、霞ったらてーとくに構ってもらえないからってゴーヤに八つ当たりはダメでち、いたっ」
そうしてため息を吐いた後に霞は円形通路の後ろ側で中村が座る指揮席の後ろに凭れながら船を漕ぐように頭を揺らしてウトウトしている潜水艦娘の姿を見つけ眉を顰めながら近付き、その破れた水着を纏う身体を暇つぶしと八つ当たりを兼ねて人差し指で吹雪の様に自分の思いを素直に口に出来ない羨ましさをぶつける様に突っつく。
「そこ触らないでっ、痛いでち、ぁ、ぁっ、いい加減にして、今日一番頑張ったゴーヤを少しは労るでちっ、やめぅっ、何で強くするでちっ!?」
そんな部下達に
それを胸の内に収めて深海で身体を淡く光らせながら浮かんでいる伊19は頭の左側にある髪飾り型のアンテナを海上へと向け指揮官が打電したモールスを発信しながら仲間達の様子を楽しむように嬉しそうな笑みを浮かべた。
「あっ、まずい・・・」
そして、高雄達による添削を終えたモールス信号の発信が終わったと同時に中村が苦虫を噛んだように顔を歪め。
その場に居る艦娘達が揃って首を傾げて自分達も確認したから通信内容には何の不備も無いはずだと口にする。
「イクは拠点艦の待機組になってんのに、通信使ったから戦闘部隊に居たって記録が残っちまう・・・やべえ」
本来なら事前の作戦会議で拠点である護衛艦で深海棲艦との戦闘による周辺への被害を抑える為の人員として待機する事になっている艦娘が戦闘が行われている海域から通信を送る問題点に通信機能の録音の再生を行ったと同時に気付いた中村が額に手を当てて呻く。
リズミカルに単音を繰り返すそれが友軍に不備無く受け取られて記録されてしまうと中村が敵である戦艦レ級がまた逃走した際に追撃要員として事前に決められた定員以上の
そして、後で始末書書かされる事になってしまう、などと目の前にある深海棲艦の巣と比べると些細と言える問題に頭を抱えて締まらないセリフを吐く指揮官の姿へ高雄を筆頭に艦娘達は多少の表情の差はあれど、それがどうした、と異口同音に声を揃えて返した。
・・・
『・・・提督、提督っ! 大変なの!』
『あ~? どうした、今、返信待ちだからって遊び相手はしてやれんぞ』
せっかく装填した魚雷も使う事なく後は少し遠くで丸く盛り上がり表面を揺らめかせる巨大な黒いゼリーにも見える領域の情報を海上の友軍に伝えた事が確認出来たら後は浮上して拠点である護衛艦に帰るだけと考えていた伊19は自分の身体や髪を揺らめかせていた海の動きが不意に変化した事を文字通り肌で感じ取って声を艦橋に伝える。
『違うのっ、提督っ! なんか周りが変なのね! 海流がっ!?』
『おま、何言って! おわっわっ!?』
身体を取り巻く水の流れの僅かな変化に危険を感じた潜水艦娘は完全に気が抜けている指揮官の了承を取らずに身体を翻して徐々に勢いを強めながら深海棲艦の巣へ向かい始めた海流に抵抗して身体を捩り。
戸惑いの声が上がる艦橋の声を他所に手足で水を押し掻きすぐ近くにあった岩肌に手を伸ばして掴んだ伊19は小さく息を吐く様に泡を口から漏らしつつ肩越しに黒いゼリーの小山へと振り返る。
その手が岩を掴み限定海域から見て少し高い位置に潜水艦娘が伏せた時にはその周囲の海水はまるで底が抜けたプールの様に深海棲艦の巣へと海底の砂礫を巻き上げ大蛇の様なうねりを作っていた。
『あの黒いブヨブヨ、いきなり水を吸い込み始めたのね!』
『ちっ! さっきまでの大人しさはどうしたんだよ!? 呑気に返事を待ってる暇は無いな、イク、離れるぞっ!』
『りょーかい、なの!』
海上へと通信を送る為に手を伸ばせば敵の本拠地に触れられる程近い所から一段高い十数mほど上から見下ろせる岩場まで離れていた事が幸いして海底にしがみ付く事が出来た伊19の周りで海流がさらに激しくなり彼女の紫髪の房を身体ごと引っ張り、強くなる引き込む海流の圧力に呻きながら背中でスクリューを回し始めた推進機関の助けを借りたスク水少女は這う様に岩の上を進む。
(でもこれ、ちょっとピンチかもしれないの~・・・)
普段から緊迫感と言うモノと縁が無い能天気な性格をしている潜水艦娘は笑みを若干引きつらせながら推進機関だけでなくバタ足をする両脚からも推進力を放出して限定海域から全力で離れ様とするがその動きはまるで陸地を這う亀の様に遅々として進まない。
『提督っ、出力をもっと上げて欲しいの、このままだと引っ張り込まれちゃう~!』
『上げ過ぎると海底に擦っちまうがっ、この際、深海棲艦のパーティに招待されるよりはマシってか!?』
その伊19の悲鳴もどこか緩い雰囲気を漂わせていたが彼女が抱える危機感を察した中村が推進機関の出力を最大戦速へと切り替え、潜水艦娘の背部艤装が二軸のスクリューを最大加速させスクール水着の上で光の渦がバーナー炎の様な尾を作る。
出力を増した艤装に押されて身体を引っ張る海流から逃れる推力を得た伊19だが背を押す力が強くなったせいで下方向へ働く力により岩場に突いた腕だけでなく豊かな胸やバタ足する脚が突き出した岩に擦り。
伊19の水着と身体の表面を覆って広がっている防御障壁が海流に引き込まれて飛んでくる岩石や海底に擦り、ガリガリと耳障りなガラスの表面を削る様な硬い音を立て他の艦種よりも強度の低い削られた光の装甲片がスク水少女の背後へと飛び散り流され限定海域へと舞う氷の結晶にも見えるそれが暗闇へと吸い込まれていった。
『推進力、障壁ともに激しく消耗しています! このままだとっ・・・イクちゃん、早く離脱して!』
『必要経費だ! 離脱するまでの消費はいちいち気にするな! それより後ろはどうなってる!?』
『限定海域がさっきより膨らんでるでち! どんどん海水吸い込んでるみたいっ!』
言われなくても全力で逃げてるの、と艦橋に向かって返事をしたくともそんな余裕は伊19には無く、今まで経験した事がない程に強烈な海底潮流の動きに振り回されかけている身体を必死で制御しながら渾身の力を振り絞りスクリューを回して次に岩場へと手を掛けた。
『・・・ぇっ? ぇえっ! えええっ!? なっ、なのぉ~!?』
だが、その伊19が掴んだ岩が岩盤ごと剥がれる様に割れて飛び、海底から引き剥がされるように限定海域に向かって流れ落ちる様に向かう海流に支配された海中へ放り出された潜水艦娘が両手と両足をじたばたと振り回す。
しかし、その必死の抵抗も虚しく巨大な龍にも思える程になった海流に呑まれ振り回されて悲鳴を上げる潜水艦娘は離れる為に使った時間の数倍の早さで領域へと引っ張られていく。
『ひぃーぁあ~っ!?』
海底から引き剥がした岩石もろともに海を飲み干さんばかりの勢いで海水を取り込んでいく巨大な流れの中で揉まれる木の葉と化した艦娘が悲鳴を上げ。
身体を打つ石礫が舞う中で成す術なく伊19が限定海域と通常の海を隔てる揺らぎへと引き込まれ海底の奈落に落ちていく。
『誰か、助けてなのぉ~!!』
その寸前、暴れる海流に振り回され完全に恐慌状態となり涙目で来る当ての無い助けを求める伊19の頭上から急速に迫ってきた影が彼女に掴みかかり抱き付く様に覆いかぶさった。
(祝)高雄さん冷静になる@なお症状は悪化した。
そろそろ自分にすら言い訳出来なくなってきたのでタグに【独自設定】を追加するべきかと検討します。(検討はするが付けるとは言っていない)