艦これ、始まるよ。   作:マサンナナイ

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元号が変わったとしても我が【艦これ始まるよ。】は一週間に一回は更新する。
(※できませんでした orz)

依然変わりなくッ! 誰も私の更新を止める事は出来ない!
(※でも更新が止まらないはホントにホントです! 頑張ります!)

ふふっ、令和元年だッ!

今、平成は過去となり新しい元号が結果としてここ(現在)に現れたのだ!
 


第七十九話

 夜闇に照明弾が花火の様に打ちあがりうねる暗雲より低い空に輝く霊力の結晶が六角形のガラス板の様に広がり荒波と暴風が渦巻く海上を広く照らす。

 

『お前らなっ! 帰れっつたのが聞こえなかったか!? なんでここに来てんだよ木村ぁ!!』

『そちらこそ合流すると連絡を送っておいて! 独断専行はいい加減にしてもらいたい!!』

 

 時化の暗闇の中で真横に並んで身体の向きとは逆向き向きに航行する二人の艦娘が自分達の艦橋に居る指揮官が怒鳴り合う通信内容に耳を傾けながら横目でお互いを伺いながらその身に纏う艤装が主砲へ再装填を終えるまでの時間を待っていた。

 

『ちょっと良いかな? そろそろ二人とも口喧嘩を止めて目の前の事に集中して貰いたいんだが』

『・・・はぁぁ、限定海域が九州方向へ向かっていたからそれを外洋へ誘引しなければならない、理由は分かりましたが田中二佐が居てなんでこんな乱暴な方法を採用する事になったんですか』

 

 深く不快感ごと吐き出す様な後輩指揮官の通信(恨み言)に蒼いベレー帽と同色のタイトスーツを身に纏っている重巡洋艦娘高雄がわずかに眉を顰めて自分の隣にいる丈の短いセーラー服の少女を横目にすれば。

 高雄と同じ重巡洋艦級でありその大型艦の名に見合った主砲を備えた無骨な鋼の機械で肩から右腕全体を武装している古鷹は恐縮する様に並行している高雄へと小さく頭を下げる。

 

『引き撃ちで誘導するだけなら一艦隊が残れば、それこそ島風が居る田中先輩の艦隊だけでも離脱して司令部への報告を優先するべきだったのでは?』

 

 敵からの反撃は無くその巨大さ故に適切な距離を保っていれば誘導そのものは危険と隣り合わせであるが難しいモノではないと判断出来たからこそ木村はわざわざ島風にUターンさせて二個艦隊による作戦続行が慎重すぎる判断なのではと口にした。

 

『はっはっは、木村のくせに珍しく面白い事言うよなぁ、なら今すぐ古鷹に命綱離してあの渦に足突っ込めって命令しろよ、もう一回最高のスリルを楽しんで来い』

 

 直後に木村達のいる艦橋に届いた妙に明るい(ヤケクソ気味な)中村の声で夜海の上で淡く光る障壁を身体に纏った古鷹が前方に見える巨大な浮島とその周囲に渦巻く半径数キロの黒渦を見て顔を真っ青にする。

 その震えあがっている重巡の真横でコミカルな顔に見えるデカールが砲塔部分に張られた有線式砲台を脇に抱えた高雄が笑顔を浮かべた無言で「どうぞ行ってらっしゃいな」とでも言う様に丁寧な仕草で手を振る姿に声も出せない古鷹は引きつった顔を必死に横に振った。

 そうでなくとも限定海域が発生させている渦の更に外側で荒れ狂う十数キロの巨大な円形の暴風域は下手な操舵を行えば簡単に彼女らを転覆させ、そして、船足を止める事になれば間違いなく奇妙な吸引力に自分達が引きずり込まれてしまうだろう事は容易に想像できる威容を古鷹達へと赤黒い歪な浮島(限定海域)は現在進行形で見せつけているのだ。

 

『確かに逃げるだけなら簡単だが・・・、少なくともアイツの進路が完全に変わったと言う確証が得られない限りは誘導を続けなければならないだろう、艦娘から見れば遅くとも40knot前後の航行速度は通常船舶ならば十分に快速だ』

『ぶっちゃけ昼間の大立ち回りで俺の艦隊、駆逐達の燃料が赤字になりかけてんの、だから下手に消耗すると誘導に成功してもあの怪物の感知範囲から一気に加速して逃げ切れなくなるんだよ』

 

 まるで他人事とでも言う様に簡潔な言い方で自分達の目的の終了条件を口にする田中と少し拗ねた様な口調で自分の艦隊の消耗具合を伝えてくる中村、二人の先輩士官が言う言い分に憮然としながらも一応の納得を示した後輩指揮官の返事と同時、高雄と古鷹が待っていた再装填の終了を艦橋に居る艦娘が知らせ。

 

『せっかく針路を変えても俺らがノロノロ逃げたせいでアイツが拠点まで引っ付いてきたら元も子もないだろ、分かったならそろそろお前も陽炎か朝潮に尻尾巻いて逃げる準備しとけって言っとけ』

『中村先輩、・・・せめてそう言う場合には緊急的な転進が必要であると言ってもらえませんか』

 

 どこか苛立った様子の顔をした長い金髪を嵐の中で靡かせる駆逐艦娘の背後、その背中から伸びるケーブルで繋がった遠隔砲台と共に二人の重巡が構えた主砲が一番二番三番と連続して爆音と炎を吐き出し夜闇に高熱量を抱いた光弾が放物線を描いて全長700m近い楕円形の側面で弾けて光粒と爆炎が数十の着弾点で立ち上る。

 

『生憎と俺が言葉遊びするのは相手が話の分からん奴の時にしかしない主義だ、良介とかお前とかにだったらそんなもん要らないだろ』

 

 そして、重巡二人が放った砲弾の着弾の爆音が鳴り響いたと同時に木村と田中の口から言葉にならない想いが籠った溜め息が吐き出された。

 

・・・

 

『そろそろ弾薬も底を尽きそうだ、魚雷抜きで全砲門二回分って所か・・・』

『・・・提督、残している燃料を霊力に変換し直せば更にもう一斉射できますが?』

 

 視界の中で十字印を表示させる砲照準を遠く黒い渦の中心にある浮島へと集中させ、連続する爆音の後に煌めく光弾が闇夜に描いた弧線とその先に見える着弾の様子を確認しながら相手を艦橋にだけ絞った会話で指揮官と高雄は相談を交わす。

 

『ただでさえ今の高雄は速力が出ないバック走してるのにこれでスクリューまで止めたら島風が今度こそキレる、間違いねぇ』

『先ほどからあの子の口癖が聞こえないのは我慢の限界が近いと言う事であると?』

『で、島風の堪忍袋の緒とその大砲ロボのケーブルが切られたら俺達はあの気色悪い鬼が島にご招待ってわけだ、まぁ、流石にマジで良介がそんな事をさせるとは言わんが・・・』

 

 ただでさえ一直線に拠点である護衛艦さわゆきへ走ろうとしていた島風を呼び止めたのは中村達であり、後方支援をしてくれていた木村艦隊との合流ポイントへ向かおうとした自分達とは違う方向へと針路を向けた限定海域の危険性を理解した田中の命令で口を尖らせつつも駆逐艦の中でも随一のスピードスターはわざわざ味方を牽引と敵が発生させている引力に足を引っ張られる状況に我慢している。

 だが、速い事が駆逐艦の正義であると信じて日頃から指揮官や仲間を超高速で振り回している島風は彼女が特に懐いている田中の命令であっても生来の堪え性の無さから勝手な行動をし兼ねない危うさがあった。

 

『重力までひん曲がってるらしいあの渦に掴まったらヤバいってのはさっきの陽炎を見たなら、分かるだろ? なら逃げる準備が済むまでは島風の機嫌が直角にならない様に立ち回らないとな』

 

 作戦開始前の予め決められていた撤退時の集合地点に向かって高雄が発した発光信号で撤退を指示されたはずの木村艦隊は何を思ったのか駆逐艦娘である陽炎を旗艦としたまま限定海域に対する攻撃とそれによる誘導を行っている中村と木村に合流すると言う返信を返して実行に移した。

 その際に黒渦の外円をなぞる様に走った暖色のツインテールを暴風に弄ばれていた駆逐艦娘は突如その身体ごとすり鉢状の海流側に引っ張られ、海面に立っていたその両脚が宙を掻き海面と並行して真横に自由落下する陽炎型ネームシップと言う怪奇現象を中村達は目撃する。

 

『私の速力ではあれからの離脱は無理であると?』

『それが正しい見方だなぁ、軽巡でもギリギリアウト、あの引力は駆逐艦なら何とか振り切れると言った程度に見え・・・あ、あぁ、そう言う』

『提督、どうかされましたか?』

 

 限定海域が発生させる奇妙な引力で宙に浮きかけた陽炎は咄嗟に砲や機銃を敵の本拠地方向へと放ち手足を振るその反動を利用して姿勢を制御し、その背中のメインと腰に増設されたサブ、全てのスクリューを咆哮させ大量の推進力を消費しつつもギリギリ黒い縁を踏み越えて蒼い夜の海へと戻り中村達と合流を果たした。

 それでもケーブルを最大まで伸ばした連装砲ちゃん(島風による命名)が届か無ければ失速した陽炎は木村達と共に得体の知れない怪物の巣へと引きずり込まれていただろう。

 

『いや、今はあんまり関係ない話だと思うが、・・・深海棲艦に支配された海域ではある特定の艦種だけが突破できる海流があるとかそう言うのが前の世界の公式発表にあったな、と』

『・・・いえ、関係は大有りです、提督、そう言った情報はもっと早く教えていただきたいものですわ』

 

 指揮官がふと思い出した様に呟いた後出し情報で口元をヒクつかせながらも高雄が努めて丁寧な口調で要求を行えば、彼女の艦橋に居る特型駆逐艦娘の長女が艦隊編成による針路の影響や速力に関する条件などを諳んじ始め。

 自らの初期艦が事細かに話す内容に中村が良くもまぁそこまで詳しく覚えていたな、と驚きの声を上げる。

 

 そして、駆逐艦娘が艦隊に居ないと外へと弾き出される海域もあったらしい、と話を締めくくり少し誇らしそうに中村が自分に教えてくれのだと胸を張る吹雪の言葉に耳を傾けていた高雄は帰ったら彼女や他のメンバーからそれぞれ聞き取り調査を行って自分の指揮官が仲間達へと適当にばら撒いた重要情報の整理を行わなければならないと頭の中のメモ帳に書き記す。

 

(それと、提督には自分が持っている情報(前世)の価値を正しく認識していただく必要もあるわね)

 

 田中と共に彼が行った鎮守府での活躍が艦娘達の間では話題になる事が多いがそれ以上に中村個人に関しては事ある事に前世の知識をひけらかして迷惑と混乱を鎮守府にばら撒くと言う話が今の艦隊に来る前の高雄の耳にも届いていた。

 その大半が真実と微妙に違ったりする為に周囲を困惑させ主任や研究員だけでなく艦娘達からも呆れられる事が多いものの彼の与太話を詳しく調べた結果としてそれが戦闘を有利にする技能や艦娘の根幹に関係している情報の発見に繋がり。

 その無責任な与太話が原因で起こったトラブルに巻き込まれて火消しに走り回る田中の奮闘や、その後に押し寄せる自業自得で増えた仕事に押し潰される馬鹿な指揮官(中村)などの姿(オチ)は笑い話として艦娘達の話題の中心になる事が多いのだ。

 

 だが、その話の本質、もしかしたら彼ら二人が重要だとは全く気付いていないだけで艦娘や鎮守府を取り巻く環境(自衛隊の上層)を激変させてしまう(部にすら食い込める)前世の知識(交渉の材料)がまだ存在しているのではと。

 その可能性に気付いた高雄は自らの指揮官に自分と言う腹心が必要不可欠なのだと確信を深める。

 どうすればアメとムチの加減を間違えずに自らの提督の中へ最も信頼できる艦娘(パートナー)として自分を位置付けられるかを思案していた高雄は不意に身の内にある艦橋で薄ら寒さを感じるドロリとした淀みが揺れながら自分を見つめている様な錯覚に身震いした。

 

『ともあれ、木村艦隊が来てくれたおかげで思ったより簡単に引き寄せは成功した、このままアレの針路が完全に太平洋に向かった後、一気に察知される範囲の外へ離脱すればその場しのぎは出来る』

『司令官、それではあの限定海域が他国に流れ着く可能性が出てくるのではありませんか? 私としては日本以外の国がどうなろうと知った事ではありませんが、政治的な影響が我々の国防に関わるのは過去も現代も変わらないでしょう』

 

 しかし、次の瞬間には消えていたその不可思議な感覚に高雄は首を傾げ、その艦橋で指揮官に向けてそこの所はどうお考えですか、と呟いた陽炎型二番艦の疑問に中村は濁点の付いた短い呻きを漏らした。

 

『・・・接触通信は、S4経由でも繋がるか・・・なぁ、良介聞こえるか?』

『まったく、悪だくみの相談は終わったのか? 必要が無くても戦闘中は通信は切るんじゃない』

『発信を止めてただけで受信は出来る様にしてたっての、所でアレを外洋にほっぽり出した場合ってどのくらいで国際問題になると思うよ? 流石に他の国のEEZに侵入しなきゃセーフだよな?』

 

 そして、中村が発した国際問題が発生すると言う前提の問いかけに対して数秒の沈黙の後に田中は深くため息を吐き出してから公海上に出た時点でアウトに決まってるだろう、と言い切り高雄の艦橋に通信回線が切れる音が短くなった。

 

『よし・・・そろそろ前の照明弾の効果から外れるな! 一番と二番の高角砲に障壁弾を装填するぞ、高雄!』

 

 数分と言う短くて長い躊躇いの間、その後に目先の仕事に向かって現実逃避を行った中村が高雄と艦橋に居るメンバーへと妙にテキパキと指示を出し、彼と共に征く前途に待ち受ける多難を容易に想像できた高雄だが、しかし、彼女はその困難さに対してむしろ望む所だととでも言う様な笑みを浮かべる。

 

《了解、針路上空に角度を調整・・・照明弾を、きゃぁっ!?》

 

 隣で全兵装を限定海域へと向けている古鷹や自分達を引っ張って走っている島風の艦橋へと新しい照明弾を打ち上げると連絡した高雄だがその投射障壁が12.7cm連装高角砲に装填されたと同時に彼女の身体が急激に後ろへと引っ張られてバランスを崩した重巡艦娘は海面へと尻もちを着いて引き摺られるように波を割った。

 

《何、何でいきなり加速をっ!? ちょっ、スカートの中に水ががっひゃぁっ!?》

《島風はどうしたって言うの!? 田中二佐、説明を!》

 

 戸惑い立ち上がる事も出来ずに小脇に挟んでいるS4に引っ張られ波飛沫が襲い掛かり深いスリットがはためくスカートを手で押さえる高雄と違って何とか転ばずに済んだ古鷹が島風に繋がるケーブルを手に身体を反転させて急激に加速を始めている駆逐艦娘へと戸惑いに満ちた疑問の声を上げ。

 だがそれに対する返事代わりとでも言うのかStrike‐Sub‐Screw‐Systemの端末であるロボット型の砲塔が島風と繋がったウィンチを巻き上げて二人の重巡との距離を引き寄せそれに伴い高雄達は更に振り回される。

 

『良介、てめぇっ!!』『田中先輩!?』

『海面下! 限定海域から何かが来る!! 早い!! 艦種を変えて加速してくれ!!』

 

 怒声を上げる中村とただひたすら困惑する木村の声は直後に通信機へと届いた冷静さをかなぐり捨てた田中の叫びで押し留められ。

 常に余裕を持てるように一歩引いた場所から事に当たる穏やかな気質の青年の切羽詰まった声にその場に居る全員が驚いたと同時に高雄の身体が光粒に分解して彼女の手から解放された遠隔砲台が島風の腰にある定位置へと引き戻されて合体する鋼の音を立てた。

 

《中村艦隊所属駆逐艦、不知火、出る!》

 

 暗闇を照らす様に現れた光の輪を突き抜け、表面に浮かんだ銀の文字を打ち破る様に両腕を顔の前で交差させた駆逐艦娘が輝く茅の輪から飛び出して勢い良く革靴が荒ぶる波を踏みつけ。

 白い半袖シャツの襟を赤いリボンが蝶結びで締めグレーのベストが同色のスカートと共にその細身を包み込む。

 光粒が構築していく艤装が勢い良く汽笛を鳴り響かせ駆動の唸り声を上げる推進機関が背面のスクリューを高速回転させて前方で古鷹を引きずっている島風を追走した。

 

『限定海域方向から反応!? 本当に早いぞっ! 不知火、左舷後方! 爆雷浴びせろ!!』

 

 まだ旗艦変更できずに戸惑っている後輩とその部下である古鷹の姿を見た中村が照明弾の光が無くなり完全な夜となった海面に向かって不知火へ攻撃を命じ。

 

《了解!!》

 

 短い桜色のポニーテールが風の中で暴れる様に揺れる下で動力機関を唸らせる駆逐艦娘の背部艤装が爆雷の格納筒を開き後ろ手にドラム缶サイズのそれを掴んだ白手袋がソナーと同期した視界に映る正体不明の何かに向かって水中用爆弾をばら撒いた。

 

『さっきまで殴られまくってもまともな反応しやがらなかったクセになんだってんだっ!?』

 




・・・マジで書き溜めが尽きた、これ、来週の更新に間に合うのか?

あ、でもゴールデンウイークだし割と何とかなりそうかも?

続きを待ってくれている読者さんの為にも頑張るのです。
多分、読者さんの百人に一人ぐらいは待ってくれてると信じてる。(自惚れ)

なにはともあれ平成、お疲れさまでした。

令和でもよろしくお願いいたします。
 
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