艦これ、始まるよ。   作:マサンナナイ

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A「姫級の完成度はまだ80%と聞いているが?」
B「馬鹿言わないでください、姫は現時点でも外殻の性能を合わせれば人類を殲滅できる能力を発揮できます」
A「・・・それにしても足が無いな」
B「深海棲艦の足なんて飾りですよ、偉い人にはそれが分からんのです」
A「いや、姫級ならば足は必要不可欠だ、それを私が直々に貴様へ教えてやる!」
B「何をっ!? ぐぁ、離せ!?」
 


第八十話

 形を持たない闇の中に満ちた黒血に揺蕩いながら感じる外から殻を打って響く音、更なる力を自分に捧げるべき供物の気配と匂いにより多くの材料を求める体内の能力(欠片)に刺激された未熟な身体はその揺り籠ごと獲物を追う。

 

 だが、その供物共が逃げていく方向とは別、身の内に取り込んだと言うのに他の素材と溶け合うことなく揺れる幾つかの輝きを宿した結晶が指し示す(帰りたいと願う)方向へと向かいたいと感じる思惟にまだ完全に姿と形を成していないソレは一度身体と共に分解し繋ぎ合わせている最中の思考(自我)を不完全ながら目覚めさせた。

 

 より強い力を、より洗練された身体を、更に更にと自らに全てを取り込む事を求めて彼女(・・)が伸ばしたその手が黒泥の中で卵の内側を触れて黒鉄の爪が岩壁を浅く削る。

 

 そうしている間にも取り込んだ素材を基にして絶対者としての格へと至る為の二重螺旋で記された設計図に従って無形の血塊から鋳造された部品が彼女の身体を黒岩の卵の中で組み上げていく。

 

 断続的に繰り返す揺り籠の内外を揺らす爆音によって造られたばかりの耳が震わされ、黒の中で薄っすらと開いた瞳が赤い焔を揺らめかせ、淀んだ泥の様で未だ頼りなく目覚めたとは言えない朧な意識。

 

 女神の様に美麗な顔立ちをもった彼女は豊かな白い髪が繭の様に包む未完成な自分の身体を見下ろして不愉快(不安)そうな表情を浮かべる。

 

 卵の中を満たす黒い血肉から作られたと言うにはあまりにも白く無機質な肌を持った胴体の腰から下は作りかけの内臓が蠢き、やっと動かせるようになった腕は鋭い爪と黒鉄の装甲に太く逞しい二基の連装砲を備えているがまだ片腕だけしか完成していない。

 

 だが、その未完成の姿ですら彼女にとってそれまで自分が甘んじていた弱者としての格と枠(戦艦レ級)を大きく上回る力を感じさせる。

 

 そして、姫級深海棲艦としての思惟が覚醒した事で彼女の胸の内で鼓動を始めた動力炉(心臓)から供給される血と霊力の循環が腹の内に収まった領地を広げ今は使わない素材が分別無く詰め込まれていく。

 

 主が目覚めた(再起動した)事で黒血に溶け難い欠片などを放り込んだ彼女の体内の格納庫はその体積だけを変えずに内容量を急激に増やし。

 その括れた下腹部へ繋がった太いへその緒を通って外殻が取り込んでいる海水や空気がなだれ込み広大な異空間を造り上げる。

 

 そうして順調に自らが建造されていく進行具合を確認した継ぎ接ぎだらけの怪物は大きく口を開けて自分を身体ごと包み込む黒い血の淀みを一口だけ飲み込んで自らの身体に必要な材料を濃縮したその流動食の味に口元を満足げに緩める。

 

 彼女にとってどこか遠くから自分達の頭の中へと図々しい指図をしてくる忌々しい存在、そこへと繋がっているらしい小さな水晶の輝きから奪い取った最も優れた力を宿す支配者の姿を記した二重螺旋の通りの肉体(船体)衣装(艤装)を造る為の材料は既に十分揃っていた。

 

 だが、それはもっと優れた素材を自らへと取り込めば自分は奪い取った設計をも超えた何者にも脅かされない絶対者へと辿り着けると言う事でもあるのだ。

 その欲求に突き動かされ未完成の姫級深海棲艦は自身の身体と繋がった卵殻へと命令を下す。

 

 まだ完全に開かないけぶる様な長い睫毛の下にある赤眼は分厚い殻に閉じられた暗闇の中をしっかりと見る事が出来ない。

 まだ黒泥の羊水に満ちた耳鼻は鈍く設計通りの性能を発揮できずに完全には外の様子を聞く事も嗅ぎ分ける事もできない。

 まだ纏うべき衣も編み上げられておらず手足すら生えそろっていない身体は満足に動かせず卵の外へと進水するには不十分である。

 

 しかし、視覚も聴覚も触覚などの感覚どころか、装甲も手足すら未完成であったとしても彼女の内側にある昏い水晶へと変化した能力(欠片)は殻に阻まれた外で逃げ回っている供物が宿す霊力の輝きをハッキリと捉えて欲していた。

 

・・・

 

 真夜中の海面を激しく発光させる霊力の爆発、ネオン煌めく塔と言っても間違いではない水柱を後方に置き去りにしながら鋭い視線を更に鋭くした駆逐艦娘は波を蹴り両手持ちの12cm口径連装砲を構え直しながら海面下から迫ってきた敵の攻撃の正体を探る。

 

『魚雷じゃなくてまた触手かよっ、いい加減趣味が悪すぎんだろが!』

 

 自分が放った爆雷の不自然な手応えに眉を僅かに顰めた不知火は艦橋に響いた中村の声で後ろから迫って来る限定海域から放たれた攻撃の正体になるほどと声無く納得した。

 

《不知火からは見えませんでしたが、先ほどの攻撃はあの戦艦タ級を飲み込んだ泥と同じモノと言う事ですか?》

『んっ? ああ・・・、こっちではそう見えた、捕まったらただじゃ済まんだろうな、生きたまま喰われるなんて真っ平だ』

 

 指揮官の言葉に深く同意しながら不知火は進行方向から激しく身体を打つ向かい風へと抵抗する様に背中の推進機関を駆動させ、高雄からの旗艦の交代のせいで速力が0になった為に一km弱も距離を離された島風と古鷹の背中を追いかける。

 

『それにしても木村は何で古鷹を引っ込めないんだ? 通信は・・・ちぃっ、目と鼻の先に見えてんのに繋がらねえってどう言う事だよっ!?』

『それより海の下、まだ反応があるったら!! 不知火、気を付けなさい!!』

『この粒子の広がり方、限定海域から放出されて! まさかマナに指向性を持たせて私達を狙って撒く事が出来ると言うの!?』

 

 指揮官の苛立ちや慌てふためく仲間達の声に耳を傾けながら不知火は自分のスクリューの回転が生み出す光の渦が霊力の粒子を散らす度に目減りしていく燃料を感覚的に量り。

 加えて巨大な敵の速力とそこから向かってくる攻撃の範囲を自身の目、そして、電探とソナーによって測り駆逐艦娘は自分が戦闘の続行可能な時間を頭の中だけで試算する。

 

 気を抜けば足下を引っ繰り返されそうな程に暴れる海面、頭上は星の一つどころか月明りすら見えない暗幕が広げられた様な夜闇。

 光源が自分の身体を守る障壁と遠方へと離れていく閃く金髪の駆逐艦が放出する推進力の残滓だけと言う状況。

 艤装に標準搭載されている電探(レーダー)は既に気休めにしかならない上に限定海域から彼女達を狙ってばら撒かれているらしい高濃度のマナは古鷹や島風までもを包み込んでいるらしく通信も既に不能。

 

 つまりは霊力を消耗した艤装と自分の目と耳だけが頼りだと自己分析を終え肌に纏わり付く霧を思わせる夜闇の息苦しさで不知火は不愉快そうに小さく鼻を鳴らす。

 

『爆雷を再装填、つっても弾薬はもう残り少ない、無駄遣いはしてくれるなよ!』

《分かっています司令、そして、不知火にその様な落ち度はありえません》

 

 不知火達が使える高性能な魚雷と違って自ら推進する事は出来ず発射後の誘導も出来ない無骨な鉄色の円筒、接触信管と時限式を切り替えられる機能はあるが扱いにはそれなりの習熟が必要とされる爆雷だが艤装内で製造する際に必要とする霊力は魚雷一本分に対して五、六発を用意できる程にコストが低いと言う利点がある。

 そう言う意味では海へと数をばら撒いて潜水している敵をあぶり出すには便利な道具であり、現時点では潜水艦を狩る為に使うべきその兵装は艦娘の霊力を感知して襲い掛かって来る黒い怪物の触手を引き付ける道具として最適だった。

 

『次、左下からくるぞ! そいつを迎撃したら面舵一杯、良介はともかくまごついてる後輩が逃げきるまでは足下の気色悪いのは引き付けてやらなきゃならない!』

 

 駆逐艦娘が背負った艤装の開いたままになっている爆雷格納部へ兵装内部で生産された円筒爆弾が再装填され。

 指揮官の命令に従って暗い海の下から自分を狙って近付いて来る敵の魔の手へとサイドスローで波に投げ込まれた爆雷が数秒後に内部の信管を爆ぜさせ海面がせり上がる。

 瞬間、海面を突き破って打ちあがった光る水柱の中、表面に無数の口を生やしたナマコにも見えるグロテスクな物体が千切れる様子を暴風の中で不知火の目が捉えた。

 

(なるほど、やはり司令のおっしゃられた通り、ならば私は自分の任務を遂行するのみ)

 

 敵の正体が戦艦級深海棲艦を一方的に貪り殺した危険極まりない怪異であると理解した上で不知火は指揮官の指示通りに自らの針路を友軍艦隊への直進では無く右に湾曲した航跡を海面に刻んでいく。

 面舵を切った事で敵が発生させる黒い渦が右舷へ近付いて見える様子を横目にしながら襲い掛かって来る風で暴れる肩掛けの連装砲を片手で押さえ、もう一方の手に追加分の爆雷を握る。

 

『後方から数は三つ、気を付けて!』

『あまり曲がり過ぎてはダメ、渦に吸引されない安全距離を確かめて!』

 

 自分の船体に残る弾薬燃料が共に底を尽きかけており、限定海域が原因のマナ濃度上昇は友軍との通信を妨害するだけでなく電探が測る距離感を狂わせ、夜闇の中で波飛沫と暴風を巻き起こしている嵐のせいで目も耳も頼りにならない、肌に纏わり付く不愉快な深海棲艦の気配はただただ不知火の苛立ちを掻き立てる。

 

『鬼さんこちらってか! 不知火、派手に手を鳴らすぞ!』

《ええ、不知火にとってはこの程度容易いモノです》

 

 だが、その自分を取り巻く不利な状況に対して威勢の良い指揮官の煽り文句が不知火の内側に燃える闘争本能を掻き立て、敵を討ち倒し戦い続ける為に陽炎型駆逐艦の二番艦として造られた艦娘の顔へ薄ら寒さを感じさせる笑みを浮かべさせた。

 

(確かに私に追いつけるほど速く、捕まれば戦艦タ級すら一方的に貪り喰らう事が出来る性質は危険極まりない・・・だが、その程度の耐久力と単調な動きでこの不知火を捕えようなどとは)

 

 推進機関の唸り声に背中を押され高波の間を縫う様に蛇行する不知火の手が二個、三個と無駄の無い動きで爆雷を海面に投げ落としていく。

 そして、あるモノは高速で近付いてきた敵の目の前に海上から滑り込む様にストンと立ち塞がり直接的な衝撃で水柱を上げさせ。

 またあるモノはあらかじめ艦橋で時限式に切り替えられて駆逐艦娘を追いかける触手が交差した点を狙い爆破して黒い半固体の胴体を数本纏めて千切り飛ばした。

 

《弱いだけじゃなく愚かね》

 

 マナ濃度が高くなればなるほどに相手は自分を捕捉する事は困難になり、爆雷や敵の残骸がさらに霊力の残滓を放てば戦場は混迷を深めて強大な敵を木偶の坊へと堕とし、小さく機動力を持つ者に有利な状況へと傾むかせるからこそ不知火は敵の位置を正確に知らせる中村の命令通り無駄なくそれでいて派手に爆発と水柱で海を荒らす。

 

《ふふっ、まったく木偶の坊が数だけ増やして、哂わせてくれるわ》

 

 普段から口さがない艦娘から何故貴女ほどの駆逐艦があの様に不真面目な昼行燈に付き従っているのかなどと言われるが今この瞬間、巨大な敵に怯む事無く辣腕を振るう(理想的な闘争を与えてくれる)彼の指揮下に就けば全ての艦娘は自分と同じく二度とかの司令官に対する敬意を忘れる事は無くなるだろう、と不知火は騒めく愉快さに嗤い。

 その整った顔立ちに浮かぶ笑みが深まるほど好戦的な色合いを強めていく大きく見開かれた目は海面下で爆雷によって処理されバラバラに砕けて黒色の血煙を広げる敵の残骸を確認し、駆逐艦娘は自らの感覚と人を見る目の正しさを改めて確信しながらその心身を戦いへと陶酔させていく。

 

『望遠で見ても上も下もぐにゃぐにゃしてもう何が映ってるか分からないのねっ!』

『周囲の霊力力場がさっき以上に強まって空間自体が歪み始めてます! 不知火ちゃんは限定海域との距離を見間違えないで!』

『電探も使用不能、もう何が映ってるのかさっぱり分からないったら!! このままだとソナーも使えなくなるわ!!』

 

 外側(海上)内側(艦橋)も嵐の様に慌ただしい、しかし、むしろそれこそが戦場の空気と言うモノだと言う意志と燃える様な殺気を不知火は身体中に昂らせ。

 激しい向かい風に立ち向かう前傾姿勢で敵を求めて視線を振り次の爆雷(攻撃)に備えて手を伸ばしかけた不知火は不意に感じた頭を軽く撫でられる様な感覚にギラギラとした色を宿していた目を瞬かせた。

 

『こりゃそろそろ潮時か、まぁ、時間は十分稼いだろうよ・・・退くぞ不知火』

《・・・了解しました、司令》

 

 コンソールの立体映像ごしに指揮官に頭を触れられた感覚(撫でられた温かさ)に一瞬だけ瞠目した瞳からそこに宿っていた狂奔の熱が抜けていき普段通りの鋭く睨む様な視線を乗せた涼し気な顔へと戻り。

 心の底から溢れ出していた抗い難い興奮で薄っすらと紅潮した頬を吊り上げる口角がわずか数秒で感情を消していつも通りの一文字に引き直された。

 

 そして、闘争が生み出す充実感による熱に酔っていた戦士から指揮官に忠実な部下へと戻った少女は灰色のスカートと桜色の髪を撫でる風にはためかせて背後から迫る限定海域から直線で離れる向きへと変針する。

 

『と言っても見た感じちょいと近づき過ぎているか? 念の為に少し距離を離してから霞にバトンタッチしてもらう、不知火には後少しだけ頑張ってもらうぞ』

《いえ、問題ありません、不知火はこれより戦闘領域からの離脱を開始します》

 

 自分の指揮官は常に正しい判断を下す事が出来る戦巧者(いくさこうしゃ)であると信じている不知火はその命令に対して忠実である為に無機質な返事を返しながら自らの中で燻る更なる戦いを求める性根を律して抑え。

 その艦橋に座る指揮官がついさっきまでの彼女が浮かべていた狂戦士を思わせる嗤い顔と普段通りの鋭い視線の仏頂面の落差に内心で冷や汗をかいているとは露程も知らず不知火は頭を撫でられた事に緩みそうになっている頬を引き締めながら高波を強引に蹴り破り走っていく。

 

『さてと、やっぱり通信は繋がらないか・・・やべえな暗すぎてマジで何も見えねえ、まったく星の一つぐらいは見えても良いだろうによ』

『航行記録(ログ)が正しければ少なくとも南ではないはずです、司令官、羅針盤の方はどうなってるんですか?』

『残念ながら針も台座も大回転中だ、完全に役立たずになってやがる、こんだけ離れりゃ危険なんか無いだろうに・・・もしかして、こいつも外のマナに影響受けてんのか?』

 

 指揮官の言う通りだと不知火も自分の第六感覚に同期したレーダーやソナーだけでなく全索敵機能が不調を訴えている事を理解する。

 その上に薄っすらと光る障壁の頼りない灯りで辛うじて見える闇と荒波には不鮮明なざらつきを感じ、耳や肌も吹きすさぶ風に叩かれ続けたせいで掠れた痛みだけを訴えてくるとなれば闇の中に自分一人だけになった様な錯覚にすら包まれる。

 

『一応はあのデカブツから離れる方向を走っているはずだけど西か東かも分からないのは流石にまずいな、念の為にパスポートでも持ってくれば良かったか?』

『いえ提督、海外旅行は私達と共に平和な海を取り戻すまでは我慢していただきます』

 

 離れるだけなら高々40knotの限定海域が消耗しているとは言え原速ですら90knot以上で航行できる駆逐艦娘にかかればそう難しい事では無く。

 いくら早く繰り出される敵の攻撃も巨大な浮島に繋がった(触手)である以上はその射程距離にも限界がある。

 その範囲から離れてしまえば触られただけで呑み込まれる不定形の大蛇も無害な海藻も同然となるだろう。

 

『そりゃ、何年後の話になるんだろうな・・・』

 

 そうして遭難一歩手前であるが何とか敵の進路を変えると言う目的を果たして作戦海域からの離脱を開始した不知火は第三戦速で回転する推進機関の音を背負い。

 少しだけ心内で揺れた居心地の悪さを他愛ないモノだと感じさせてくれる司令官達の軽口に自然と不知火の肩の力が抜けた。

 

『なに言ってんのよ、まったく、このまま漂流なんて冗談じゃないったら、・・・んっ?』

『あ、あれは照明弾、照明弾ですよ! 司令官っ!』

 

 他の好戦的な艦娘と同じ様に兵器として生まれたが故の戦狂いに飲まれかけたとしてもこの指揮官ならば自分を必ず艦娘へと戻してくれる。

 その根拠はないが信頼できる感情に小さく頷いた不知火の擦り傷が多く見える顔を遠くで弾けた光が夜闇の海の上に照らし出す。

 そして、彼女の艦橋に居る霞が驚きで中村への愚痴を途切れさせ吹雪が友軍が打ち上げた照明弾だと遠くの空に輝く幾つかの六角形を指差し歓声を上げた。

 

『・・・誰が打ち上げたかは確認できないけどあの色と形は深海棲艦ではないわね、それにしても夜空はもう見飽きたわ、そろそろ広くて良い風が吹く青空が恋しい』

『ははっ同感だ、まぁ良介の奴が俺達を置いてけぼりにするわけ無いのは分かってたけどな、不知火、アイツらと合流するぞ』

 

 打ち上がった照明弾を頼りに針路を定めた不知火は暗闇から仲間が待つ拠点への帰還出来る事への安堵感から口調を緩めていく艦橋に軍人としてはだらしないが仕方ない事でもあると仏頂面の下で小さく微笑み。

 仕方ない仲間達だ、と溜め息を吐いて肩掛けにしていた自分の主砲へと触れる。

 

《はい、了解しました、・・・?》

 

 戦闘中では自分の速度と周囲の暴風に振り回されていた12cm口径の連装砲はいつの間にか行儀よく腰の定位置にぶら下がっており、それを撫でる様に軽く叩いた不知火はふと過った違和感で遠くから自分を照らす光から自らの身体へと視線を下ろす。

 

『て、てーとく・・・てーとく!? 上ッ! うえっでち!!』

『提督、こっち見るの!! 早くするの~!!』

 

 改めて確認するとばら撒かれた霊力の粒によって削られた血が滲む肌を今以上に掠る痛みは無く。

 所々小さく破れてはいるが姉艦娘とお揃いの制服のベストとスカートは落ち着きをとりもどした様に控えめに揺れるだけ。

 そして、艦橋で前方の照明弾では無く後方確認を行っていた二人の潜水艦が上げた叫びを聞く不知火はいつの間にか自分の周りを取り巻く海風が嵐とは言えない程度まで弱まっている(・・・・・・)事に気付いた。 

 

《不知火ぃいっ!!》

 

 騒ぐ潜水艦二人の叫びと周囲の変化に戸惑い瞬きする駆逐艦娘の頭上では網目模様の巨大な天蓋が広がり、その帳に阻まれた照明弾の光が疎らな灯りへと変えられていく。

 そんな様子が不自然に感じる状況に不知火は顔を上げ自分の向かう方向から光粒を撒き散らし最大出力で駆けてくる姉妹艦の大声を聴いた。

 

 何故、ここに陽炎が居るだけでなくさらに接近してくるのか?

 

 自分達は彼女達が撤退するまでの時間を稼ぐために戦っていたのではないのか?

 

 何故、姉は自分に向かって主砲を向けて引き金を引こうとしているのか?

 

 必死の形相を浮かべた陽炎の叫び声、両手持ちの主砲が自分へと向けられている様子がどうしても理解できずに不知火は一拍の間、呆気にとられた顔で首を傾げた。

 

 その困惑する駆逐艦の胸の内(艦橋)で古めかしい羅針盤が回る。

 

 カラカラ、カラカラ、と止まる事無く白と赤の針が回る音がなっていた。

 




 
A「な? 良いモノだろう?」

港湾棲姫「///」(汗

B「実に良いぃ・・・」






 ぶっちゃけ欄外でアホな小話でもやらないと本編のテンションを保てないんです。
 ホントにすみません。反省してます。orz
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