N督「なぁ~たのむよぉ~うまくやるからさぁ~」
T督「隊員、それも士官を見捨てて攻撃を優先したなんて話、自衛隊としては色々マズイ事になるんじゃないですか? まぁ一般論でね?」
海自上層部(こいつら後で覚えとけよっ・・・)
岳田内閣|ω・`)ソワソワ
雲一つない青空、しかし、その下に広がる海原は激しく波飛沫を空に打ち上げ高層ビルすら覆い潰す程の高さまで盛り上がった津波が一体の深海棲艦と一人の戦艦娘を中心に広がっている。
紅い灯火を両目から溢れさせツインテールと言うには長すぎる髪を振り乱して乱雑に巨大な三連装砲とそれに追従する無数の兵装が轟音を放ち、振り回される漆黒の凶器に絡まった銀色の線が煌めきと共に白い片袖と赤いスカートの金剛型戦艦娘が激しい旋風と慣性運動の中で弄ばれていた。
さっきまで俺達の事を完全に無視していたのになんなんだ!、と叫ぶ青年指揮官の怒号が無数の連絡が行き交う通信網に一際強く響く。
その声の主を乗せている戦艦娘、榛名は背負ったサルベージユニットから延びるワイヤーが南方棲戦姫の重機の様な指に絡めとられた事で宙吊りになり巨大な黒腕が軽く動くだけで発生する強烈な遠心力の中で身を捩る。
しかし、圧倒的な戦力差を持つ敵に自由を奪われると言う絶望的な状況ですら金剛型の三番艦娘は諦めず、反撃の砲撃による反動や深海棲艦の腹に向かって伸びる強化ワイヤーをヨーヨーの様に伸び縮みさせる事で至近距離から放たれる無数の銃弾に障壁や装甲を削られながらも致命となる砲撃だけはギリギリの回避し続けていた。
直径36cmの徹甲弾を何発撃ち込んでも南方棲戦姫の白肌には焦げ目が出来る程度にしかダメージは入らない。
だが、それでも、と彼女達が足掻き挑むそれは正式な文書にて自衛隊本部から艦隊へと通達された本来の役割から大きく外れた行動。
本土防衛の為の緊急作戦が自衛隊上層部に承認される直前に特務二佐の肩書を持つ二名の士官が滑り込ませた
その間に中村達が抱える
犠牲となった仲間の仇討ちに胸を燃やしながら出撃したと同時に秘匿回線でその作戦を通達され、その上に彼らが制限時間内に間に合わなければその艦隊は無いものとして攻撃を開始せよと命令された長門達連合艦隊の立場としてはたまったものではないの一言に尽きる。
司令部側もわざわざ日本を滅ぼせる力を持った最悪な深海棲艦に時間を与えて本土の近くまでおびき寄せる作戦などやりたくはないだろう、だが長門としては敵の手中に捕らえられながらも生存していた友軍に自分達の手で止めを刺せと言われて喜べるわけもない。
そんな無謀な戦いが繰り広げられているのは遠く彼方、味方の偵察艦隊から送られてくる戦闘と言うにはあまりに一方的な力の差がある大虎に追い回され必死に逃げるネズミとでも言うべき光景を閉じた瞼の裏に映し出しながら長門は足下へと押し寄せる高波に向かって腕を組み仁王立ちしていた。
日本沿岸まで到達すれば容易に港だけでなく近隣市街にまで被害が波及するだろう波飛沫が額に
付け加えて言えば彼女達が立つ地点からさらに後方に待機している複数の護衛艦が日本沿岸を護る為に等間隔を維持しながら搭載された霊的障壁の発生装置を最大展開させて南方棲戦姫と榛名の戦闘によって僅かな被害すら出してたまるかと現場の自衛官達が悲鳴を上げる船体と動力機関を相手に奮戦している。
《・・・なんだ、砲撃命令が出るまで攻撃は許されん、先ほども言ったはずだぞ》
日本本土を守る為に戦雲渦巻く海原に二十人の戦乙女達が展開する防衛力と高火力を併せ持つ水上打撃艦隊、艦橋に控えている艦娘を含めれば海上の三倍以上の人数を戦線に投入できる大艦隊において艦娘代表である長門へと彼女に従い隊列を組む者達が頻りに強大な敵への早急な攻撃の必要性を繰り返している。
しかし、本土防衛艦隊における最大戦力の中心とも言うべき場所に泰然と立つ長門は先程から止まる事無く何度も通信を介してヒステリックに訴えかけてくる各艦隊の艦娘達へと岩の様に動じない返答を告げた。
今現在、長門達が連合艦隊を結成してまで撃破するべきと定められた目標である南方棲戦姫。
たった一体であっても容易に日本を滅ぼせるだろうと想像できる強大なそれを相手に友軍の救出を成功させんと奮闘している中村艦隊に所属する戦艦娘。
その榛名の姉妹艦でありその姫級深海棲艦に叩きのめされ重傷を負い鎮守府へと帰ってきた自分達の長姉である金剛の雪辱を果たして見せるのだと殺気立っている比叡は既に砲撃の準備は終え声高に機は熟したと主張し、その背の艤装から生える純白の四枚羽根からオーバーフローで足元に落ちる羽毛で海水を沸騰させ。
その隣にいる比叡と同じ金剛型戦艦である霧島は姉と違い無言ではあるが光の反射で白く目元を隠す眼鏡を指で押し上げながら不機嫌そう眉を顰め、プラズマ化したマナで形作られた天使の羽根を無為に羽ばたかせては陽炎と蒸気を立ち上らせている。
《繰り返すが、我々、本土防衛連合艦隊の攻撃目標である南方棲戦姫への総攻撃は本日ヒトマルヨンマルの経過もしくは敵勢力の領海侵犯の確認をもって承認される、よって、条件を満たしていない現時点では攻撃は許可されん》
まったくこれで何度目だ、と胸の内にある艦橋にだけ愚痴を漏らしながら四角張った宣言を改めて連合艦隊に属している全ての艦娘へと通達すれば血の気の多いメンバーが「それが悠長なのだ! 何より攻撃は早い程良い!」だの「戦艦長門ともあろう者が怖気づいたか?」だのと口々に不満を通信に乗せて飛び交わせ。
どれだけお役所仕事じみた理由が不条理に感じようと命令順守は軍人の基本であろうに、と稚拙な反論の群れへ内心で吐き捨てた長門であるが実の所は自分自身もまたこの状況に焦れている事を理解していた。
《なにより、この長遠距離から中村艦隊を巻き込まずに砲撃を成功させる事が出来る者がどれほどいると言うのだっ!》
長門の前方に展開している第一艦隊の護衛を行う第二艦隊の重巡達ですらそんな声を上げるものだから司令部から彼女達を大人しくさせろと要求が届く事になり、艦娘の代表として彼女達を取り纏める
(後五分少々が何故待てん・・・しかし、中村中佐、流石にそれ以上は待ってやれんぞっ!)
一応は長門に呼応して血気盛んな周囲を諌めようとしてくれている扶桑達の声も小さく聞こえるが大人しい気質である為にその艦娘達の声は姉妹艦ぐらいにしか効果は無い様で大人数の弊害から艦隊全体を飲み込みそうな熱気を冷ます程の力はない。
そうして長門が味方の相手に手をこまねていたその時。
最前線からの航空映像を受け取っていた瞼に文字通りに火を吹いた巨大砲とその射線上で弾けた炎、そして、砲撃の直撃で榛名の艤装だけでなくその手足までもがバラバラと宙に飛び散り細かく砕けて光に消えていく様子が映った。
アストラルテザーのワイヤーを南方棲戦姫に捕まれ宙を振り回されていながらも果敢に反撃と回避を続けていた榛名がついに赤く燃え盛る爆炎に飲まれる。
自らの同胞たる艦娘が敵に撃たれたと言う事実を認識したと同時に長門の胸中に筆舌に尽くし難い怒りと屈辱が溢れかけるが、しかし、自らが代表旗艦として此処に立っていると言う矜持に長門は強く強く歯が割れんばかりの力で奥歯を食いしばって決壊しそうなその激しい感情を抑え込む。
その直後、長門と同じ光景を見て姉妹の名を叫ぶ比叡と霧島の悲鳴に共感してしまった艦娘達の間で南方棲戦姫に対する殺気が膨れ上がりそれぞれの艦橋で落ち着けと静止の声を上げる指揮官達の承諾を取らず一斉に水平線の向こうにいる敵へと顔を向け。
戦艦娘が四基のレールキャノンに電光を纏わり付かせ。
重巡艦娘の構える200cm口径の長距離砲が安全装置を外し。
空母艦娘が弓に矢を番えて矢じりを空へと向ける。
一瞬で一触即発の構えとなった仲間達の姿に全員の顔を引っ叩いてでも正気に戻すべきかと考えかけ、しかし、下手な真似をすれば確実に全員が暴発すると言う危機感に冷や汗を浮かべ長門は深く息を吸い込み狂奔に走ろうとする連合艦隊を押し止める為に先程よりも強く声を張ろうと口を開きかけ。
大丈夫です!
不意を突く様に響いた複雑な想いが幾つも交じり合いながらその全てが一人の青年へと向けられている鋼の意思が宿った声、それを浴びた長門はまるでハンマーで後頭部を殴られたかの様な精神的な衝撃にどんな嵐の中であっても怯む事無く長門型戦艦の名に相応しくあれと己を律してきた自信が身体と共に揺らぎ。
榛名はまだ大丈夫です!!
額に手を当てながらその場でふらついた長門の周りで彼女と同じ様に驚愕に目を見開いた艦娘達が出鼻を挫かれた事で指が引き金から外され、引き絞った弦が戻って鏃を下げる。
その場にいる長門を含めた全員、さらには最前線の余波に耐える偵察艦隊、日本沿岸で防壁となっている護衛艦に乗る自衛隊員達、その全てが最前線の水上偵察機から送られてくる信じ難い光景を前に絶句して身体を硬直させた。
深海棲艦が容赦なく放ち戦艦娘に直撃して空中で炸裂して熱波を広げる業火球が不屈の宣言と同時に白い翼に切り裂かれ、顔と髪の大半を焼かれ左腕と下半身までもを失った榛名が現れ。
アストラルテザーを守る為に艤装が接続部から悲鳴を上げるのも構わず無理やりに殲滅戦形態に変形した榛名が敵の必殺を耐えきって見せた事への笑みを焼け爛れた顔に浮かべ、天使の片翼が砕け散りながら重力に従って南方棲戦姫の足元へと落ちていく。
そして、白い羽根と共に無数の破片を散らしながらもアストラルテザーは長年の回収任務を一度の失敗も無く勤め上げた意地を見せるかの様に南方棲戦姫の腹の中へと伸ばしたワイヤーは切れる事無く弦を張り詰め。
最期の任務に挑む装置と一緒に海面へと落下していく榛名の身体が限界を迎えて光粒へと解け、眩い日輪の輝きが中空で金の錨と枝葉の紋章を広げる。
直後、朝潮型の名が刻まれた金の輪が鈍い灰銀色のサイドテールに撃ち破られ、飛び出た人影が重力に従って海へと落下する壊れかけのサルベージユニットへと体当たりする様に抱き着き。
ランドセル型の艤装が汽笛を高らかに吹き鳴らし裂帛の気合を込めた出撃の宣言を受けて始動したスクリューが駆逐艦娘の身体を猛烈に加速させた。
瞬きも許さぬ程の合間に急加速した12m弱の身長を持った少女が一直線に海面へと衝突して姫級深海棲艦すら怯み仰け反る程の水柱が青空へと聳え立ち。
南方棲戦姫の身体すら隠す程の海水で出来た巨塔からアストラルテザーのワイヤーを巻き取る基部をしっかりと抱きしめた霞が海水の壁を突き破って荒波を踏みしめ自らの推進機関へとさらに火をくべる。
(戦艦すら容易く砕く大敵を前に何たる気迫っ、駆逐艦とはかくも気高い戦船であったか・・・だが、だがっ)
霞の奮戦を見ている事しか出来ない長門が心の底から彼女の行動が報われる様に願っているとしても。
必死に波を蹴る朝潮型駆逐艦娘がどんなに気高く勇気を胸に湛えるで戦士であろうとも。
姫級深海棲艦と駆逐艦娘、その持って生まれた体格と戦力の差は覆らない。
海に戻っていく水柱の中から悠然と現れた南方棲戦姫が足元で背中から猛然と光の螺旋を噴きながら鋼の綱を必死に引っ張る駆逐艦を見下ろし、
本来ならば赤子の手を捻るよりも簡単な行為である事は誰の目にも明らかで傍観者で居る事を強いられている艦娘連合艦隊の全員が先程の榛名の様に霞も宙吊りにされてしまうのだと悔し気な声を漏らす。
どれだけ美しく崇高であろうと非力な者の熱意や理想では非情な現実は覆らない。
だが、その駆逐艦娘が十人集まってもなお足りない程の大きさと重量を持った武装の塊がピクリとも動かない事に、指に食い込んだ銀色の線がギリギリと金切り音を立てながら摩擦の火花を散らしている様子に姫級深海棲艦は瞳に宿る紅い灯火を瞬かせる。
味方である筈の長門までもが
さらには朝潮型駆逐艦が抱える壊れかけの大型ウィンチとワイヤーリールまでもがギシギシと痛々しい音を立てながらも確実に銀の線を引き戻していた。
《こんな事が・・・》
ワイヤーによって引っ張られている腕を力任せに引き戻そうとロケット型の推進機を逆噴射させ顔を歪める南方棲戦姫の腕がたった一人の駆逐艦娘によって金縛りにされて肘すら曲げられずに突っ張るだけに留まらず。
次の瞬間にはまるでリードを引っ張る犬の勢いに負けた飼い主の様につんのめり引き倒された天を衝く巨体が海原に片腕と膝を突いた。
《こんな駆逐艦があり得ると言うのか・・・》
その物量と言う戦場に置いて絶対と言っても過言ではない指標が覆される様子に口元を押さえ
私達を舐めるな、と髪を振り乱して叫んだ霞の声と共に花菱の模様が刻まれた左目から青白い炎が溢れ出し、その背のスクリューから放たれる二本の墳光の尾を倍に、さらに倍に、さらにさらにと300mの巨人の顔を直接炙るまで膨れ上がり一層強く強化ワイヤーを力技で深海棲艦の腹の中から引きずり出す。
そして、駆逐艦娘の加速に比例して火花が散る黒鉄の指先に食い込んだワイヤーの摩擦は光と熱に怯んで顔を背けてしまった姫級深海棲艦の握力では止められず、火花を散らす糸鋸によって強固な装甲が見る間に削り取られ黒い血が飛び散る断面が僅かに覗いた次の瞬間。
一気に切り落とされた黒鉄の指が宙を舞い、大重量の抵抗から解き放たれた霞が空気の壁をその身体で突き抜き、その背に続く強化ワイヤーが南方棲戦姫の腹の奥から血肉に塗れた銀の錨を引き抜いた。
深海棲艦の中から飛び出た黒い塊が霞の勢いのままに海の上を引きずられ、暴れうねる荒波を幾つも破って血糊を弾き飛ばし銀色を取り戻していく錨とそれにしがみ付く艦娘としては小柄な体躯。
飛び散る波飛沫に洗われていく服や肌は深海棲艦の血によってところどころ焼け焦げている、だがアストラルテザーの上には黒髪を肩の上で強風にたなびかせる五体満足の朝潮の姿が確かにあった。
《お、おぉ、おおおおっ!!》
見事、正に
しかし、直後。
燐光を撒き散らし海上を駆ける霞とそれに引っ張られている朝潮の頭上を巨大な影がかかり、その二人の頭上で明確な怒りを端正な顔に浮かべた南方棲戦姫が牙を剥き出しに巨大かつ歪な
なりふり構わず深海棲艦の巨体が大口を並べる巨腕をもって駆逐艦達へと覆い被さろうとしていた。
(いかん、攻撃をっ!? だが、まだ時間はっ! )
長門の視界に映る攻撃承認までの時間を知らせるデジタル表記は一分強を残し、あまりにも目まぐるしい展開に精神が高ぶってしまっているのかゼロコンマの桁がナメクジの歩みよりも遅く感じる。
今作戦においては既定の時刻が経過した後に後方の護衛艦にある指揮所からの攻撃命令を受けると言う流れで連合艦隊による南方棲戦姫への総攻撃が許される事になっていた。
《いや、そんなものは・・・知った事かっ!!》
連合艦隊旗艦に任命されその責務と誇りに胸を熱くしながら他の艦娘の規範となるべく現代の複雑化した指揮系統を頭に叩き込んで皆を律していたのは長門自身であると言うのに自分の
(間に合ってくれ!!)
長門の艦橋で彼女が砲撃を開始しようといる事に気付いた厳つい顔の指揮官が驚きに目を見開いたが規則と命ならば比べるまでもないとすぐさま憮然とした表情を取り戻し部下である生意気な口を叩く軽巡へ戦艦娘の砲撃補助を命じ。
極限まで引き上げられた集中力によってスローモーションとなった長門の視界に三次元的な主砲の予測射線が描かれていく、だがそれよりも彼女の意識を釘付けにしているのは最前線の偵察機から送られてくる巨大な怪物の姿とそれによって窮地にある朝潮型駆逐艦姉妹の姿だった。
そして、実際には数秒も経っていないと言うのに胸が潰れるかと長門が錯覚する程のもどかしさは突然に連続して響いた砲声によって解かれる。
唖然とした戦艦娘は周りで自分と同じ様な顔をして戸惑っている戦艦娘達の姿を確認するが、自分を含めた大型艦娘の誰一人としてその身に抱える主砲の引き金を引いた者はおらず。
砲撃準備までまだ一分を残す自らの主砲を見下ろした長門はその視界に重なって映る南方棲戦姫のロケット型の推進機関が左脚の装甲ごと爆ぜ砕ける様子に言葉を失った。
そんな時、あまりの事に呆然と立ち尽くした艦娘達の耳にとある戦艦が上げた攻撃の宣言が高らかな通信音声となって届く。
《ああ、そうか・・・榛名以外にも居たな、我々と違いルールを初めから無視できる場所にいる戦艦がもう一人だけ居たっ!》
砲撃の直後を示す光粒の硝煙を鼻息の様に吹く六本の砲身が下げられ、それと交代する様に六つの砲口が滑らかに仰角を上げてスムーズに爆炎と輝く砲弾を撃ち出し。
音速を軽く超えた大口径砲弾が風鳴りと深海棲艦の外部に展開する巨大障壁を硬いガラスを割る様に貫き穿った六発が南方棲戦姫の顔や黒腕へと着弾して激しい爆音と炎を上げる。
火柱となる程に大量の燃料投入を行っていた左脚への不意打ちで推進機関を破壊されて船体を横倒しにされた赤い瞳が怯み。
倒れ込み津波を巻き起こしながら重い動きで身体を起こす南方棲戦姫は追撃で放たれた砲弾を再び浴びる事になったが直ぐにその艦娘の砲弾には自らの肌や武装の装甲を撃ち抜く程の破壊力が無いと悟る。
しかし、南方棲戦姫は湧き上がる不愉快さから歯軋りと共に眼下の獲物から水平線よりも近い海上に立つ和装の戦艦娘、伊勢へと苛立たし気な顔と片腕を向けてその注意力を分散させて
その高層ビルを連ねた様な三連砲を聳え立たせる黒鉄の凶器を向けられても戦艦娘は怯むどころか不敵な笑みを浮かべたまま返事代わりの砲弾を再び放ち。
霊力が徹甲弾まで圧縮される事無く爆発力だけを求めて早込めされた36cm榴弾が次々と外部障壁を撃ち抜き爆発し白黒の巨体やその足元の海面で派手な黒煙と水柱が巻き起こる。
(あんな集弾率の低い砲撃ではヤツの装甲に効果などない! 田中艦隊は何をやっている!?)
しかし、伊勢がどれだけ攻撃を繰り返そうと強固な肉体を持った姫級深海棲艦にはダメージなどあって無いようなもの。
榛名が宙吊りにされながらも至近距離から撃ち込んだ徹甲弾ですらかすり傷程度であったのだからいくら派手に爆炎を上げる榴弾であっても目くらましにしかならないと長門は呻き。
《いや・・・目くらましにしかならない、・・・だと?》
そう呟きを漏らした長門は視界の中に浮かび上がる小窓の一つ、伊勢の姿を上空から捉えるものではなくついさっき朝潮を敵の腹の中から助け出した霞の姿を追う映像へと焦点を合わせ、そこにあった光景の愉快さに長門型一番艦は意図せず小さな笑いを漏す。
伊勢が行った数を撃てば当たると言う一見して無駄に見えた攻撃によって南方棲戦姫がその巨体を中心に展開している透明な檻が見事なまでにひび割れと穴だらけになり、その不可視の鉄壁に開いた脱出口の一つからアストラルテザーの残骸を担いだ二人の駆逐艦娘が高波をジャンプ台にするかの様に全速力で飛び出していた。
伊勢を追いかけて副砲を小口径砲を乱射しながら鈍い動きで自らの最大の兵器に仰角調整させていた南方棲戦姫が横目に見えた遠ざかっていく駆逐艦娘のきらめく推進力の残滓と荒波に揉まれて消えていく航跡に気付き紅い瞳を見開き地響きの様に低く響く呻きを漏らし。
姫級が伊勢へと放った無数の砲弾の雨で水柱と言うより海水に壁となった着弾点から飛び出した黒い三つ編みを暴風の中で巻き上げられながらニコリと微笑む白露型艦娘の艤装が空の果てまで届けとばかりに甲高い汽笛を吹き鳴らし急加速を駆ける。
最早お前に用など無い、とでも言う様に反対方向に向かって走り去っていく駆逐艦達の後ろ姿に白髪の房を振り乱して怒りで歪んだ顔を右往左往させる姫級は無為に両腕を左右へと広げて攻撃を放とうとするが主砲である超巨大三連装砲はもちろん強力無比な艤装の中で一番装填が早い砲すら間に合わず。
一目散に逃げ出した艦娘達が水平線の彼方に米粒となって南方棲戦姫の目視と電探の範囲から消えさり、
《さぁ、これで後顧の憂いは無くなった・・・皆、待ちに待った艦隊決戦だ!》
悔し気に吠える姫級深海棲艦とは対照的にこれ以上ない程の笑みを浮かべ連合艦隊代表旗艦が堂々と胸の前で腕を組み。
止まる事無く進んでいた時計の針が作戦開始時間をその先端で指し示し、海原を征く艦娘達が自分達に課せられた任務を果たす為に動力機関を唸らせそれぞれの艤装の煙突部からその興奮を示す様に大量の光粒が噴き出す。
そして、後方に置かれた総合指揮所からGOサインが発令され、艦列に肩を並べる赤と青の正規空母二人が最大仰角で空に向けた弓に番えた開戦の鏑矢を連続で射ち上げる。
《全艦隊! この長門に続けぇっ!!》
白亜に輝く竜の翼を背負う黒鉄の戦乙女の声とそれに応える仲間達の歓声が海原に響き渡った。
しまったもう夏イベ始まってるじゃん!?
時期的には秋だと思うけど皆が夏って言ってるから多分夏イベだっ!
小説なんて書いてる場合じゃねぇ!!
・・・でも、いつも通り、先行組の人達が攻略法見つけてくれるまで様子見する。
だから、それまでの間、やっぱり続きを書くしかねぇな!!