IS~筋肉青年の学園奮闘録~   作:いんの

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 皆さん初めまして、いんのと申します。正真正銘の初投稿です。未だ右も左も分からないような状態ですが、どうぞよろしくお願いいたします。感想・指摘等じゃんじゃん送ってくれると嬉しいです。
 鉄血のオルフェンズのキャラクターである昭弘・アルトランドくんが、インフィニット・ストラトスの世界に行ってしまうというお話です。各キャラクターの心理描写には特に力を入れていきたいと思っております。

 ちなみに、この戦場ではあくまで昭弘視点なので、鉄血本編とは若干異なるシーンや描写があると思いますので、ご了承ください。


序章 新世界
第0話 生の終わりと死の始まり


 その時、二人の少年は戦っていた。

 

 モビルスーツという名の鋼鉄の巨人を駆使し、無数の銃弾と砲弾が荒れ狂う荒野を縦横無尽に駆けていた。

 その様は、安直な言葉を使うならまるで“悪魔”そのもの。

 

 阿頼耶識。

 それこそが、2人の“強さ”と“力”とを今この瞬間も繋ぎとめていた。彼等2人の脊髄には特殊なインプラント機器が埋め込まれており、操縦席側の端子と神経を直結させている。つまり、文字通り機体と繋がっているのだ。

 人々はこのシステムを『阿頼耶識システム』と呼んでいる。由来は解らない。

 兎も角これによりモビルスーツをより生物的に動かす事ができ、更に、2人の極めて高い操縦技術も合わさって2機の巨人は最早誰にも手に負えない強さを振るっている。

 既に荒野には数えきれない程の敵モビルスーツが鉄屑と成り果てて倒れ伏しており、それらのコックピット周りは血とオイルと鉄で綯い交ぜになっていた。

 

 しかしそれでも尚、2人を取り巻く戦況は余りに絶望的であった。

 元々数的に圧倒的不利な戦況下で彼らの仲間の多くは死に絶え、残りの仲間も後退させていた。対して敵の数は未だ多く、今現在荒野に転がる屍など敵の総数の5%にも満たない。

 つまり勝てる可能性は最早0なのだ。

 それでも2人の闘志はまるで衰える事を知らず、獣の如く喰らい付くその姿に敵の有象無象は例えようのない恐怖を抱いていった。

 2人は決して諦めない。2人が戦えば戦う程、今後退している仲間もとい「家族」の生存率は上がっていく。

 2人はその事を良く理解しているのだ。自分たち2人が助からない事も。

 

 すると戦場に変化が訪れた。

 敵が少しずつ引いて行くのだ。2人のうちの1人『三日月・オーガス』は通信越しに疑問を口にしたが、2人のうちのもう1人『昭弘・アルトランド』は「敵さんも勝ち戦で死ぬなんざ御免蒙るんだろうぜ」と通信越しに三日月に返した。

 

 その解答は半分正解、半分不正解であった。

 2人は何だか全方位から見世物にされている様な“何か”を感じると、思考するより早く咄嗟に空を見上げる―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――光った―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そう感じた直後、避ける事など到底できないような速度の“何か”が2人を貫いた。その衝撃たるや凄まじく、槍の様な何かは2人の足元に広がる荒野にそのままの勢いで突貫し、下へ下へと突き進む。砂埃がまるで爆風の様に舞い上がり、遥か遠くにまで激しい揺れが行き渡り、2人の居た荒野は最早完全に地形そのものを変えてしまっていた。

 

 敵兵たちは今度こそ安堵の息を漏らした。

 アレを喰らって生きていられる生物など居ない。専門知識の無い一般人でも、今の荒野の状態を見ればその位の事は解る。例えモビルスーツに守られていたとしてもだ。

 

 がしかしその安息の時間は長く続かず、再び彼等の表情が恐怖で塗り固められる事になる。

 

 

 

 

 

 

 昭弘は薄れゆく意識の中、これから確実に訪れる“”と言う事象について考えを巡らせていた。

 彼はここ数年、戦場に赴く度に「死んだらどうなるのか」が非常に気懸りになっていた。切っ掛けは過去の戦場で生き別れとなってしまった、彼の弟の発言にあった。

 

死んだら新しい命となって生まれ変わる

 

 その言葉が、昭弘の頭にしがみ付いて離れない。

 そして何と言う巡り合わせか、今正に彼は「死」へと近づいている。

 

 死んだらまた別の自分となって生まれるのだろうか。

 今まで死んでいった家族達に逢えるとでも言うのだろうか。

 唯々消えて無になるだけなのか。

 

 いくら考えを巡らせようとも、それらは所詮「死ななければ解らない」のだ。

 ただ一つ、解る事がある。そう、死んだ所で「今までこの世界で過ごしてきた家族」だけは、永遠に再現する事なんて出来ないのだ。同じ過去を繰り返す事なんて不可能なのだから。

 そんな、今においてはやった所でしょうがない自問自答を続けていると、一本の通信が昭弘の耳を通じて頭の中に響いた。

 

《昭弘ォ、まだ生きてる?》

 

 普段と何ら変わらない声量で発した三日月のその言葉を聞いて、昭弘の思考は自身でも驚く程早く現実に引き戻された。

 

「……ああ、どうにかなぁ…」

 

 大小様々な破片が突き刺さって血塗れになっている己の身体を辛うじて起こし、どうにか三日月に言葉を返せた昭弘。

 そうだ、俺は、俺達はまだ生きている。確かに俺達はもうじき死ぬ。だが、それでもまだ生きている。そして、まだ生きているのならば―――

 

「しょうがねぇ…死ぬまで()()を…果たしてやろうじゃねぇかぁぁぁぁッ!!!」

 

 自身に微かに残っている生命力を振り絞って、昭弘は叫ぶ。先程まで考え込んでいた自分を怒鳴り飛ばすかのように。

 

 今は亡き彼等の団長が残した「最後の命令」。

 

 

 

止まるな、唯々止まるな。

 

 

 

 言われるまでもない。俺だってまだ止まりたくはない。進み続けたい。生きたい。

 そんな想いを巨人の全身に乗せながら、昭弘は自身のモビルスーツ『グシオン』を辛うじて大地に立たせる。グシオンもまた、昭弘と同じく身体中から血と言う名の赤黒いオイルを垂れ流し、原形を辛うじて留めている程度にボロボロになり果てていた。だがやはり両者ともそんな状態では、機体を立たせるのがやっとだった。

 

 その一方で三日月と『バルバトス』は、ズタズタになりながらも縦横無尽に荒野を駆けていた。それは今まで以上に凄まじく、まるで狂獣の様だった。

 

 朦朧とした意識の中、昭弘はそんな三日月とバルバトスを目の当たりにして、悔しさと誇らしさを捏ね合わせた様なモノを感じた。

 昭弘自身が背中を預けられる数少ないパイロットの一人、戦場において絶対の信頼を乗せることができる親友(ライバル)、それが彼にとっての三日月・オーガスだった。

 やはり三日月(あいつ)は凄い。だが、この最後の瞬間くらいは奴と並んで戦いたかった。そして、もし可能であるならば奴を超えたかった。それができない自分自身が腹立たしくて仕方が無かった。

 

 そんな昭弘の願望を無情にも踏み躙るが如く、一機のモビルスーツが接近してくる。どうやら、カラーリングからして指揮官機らしい。

 指揮官が単騎で突っ込んで来るなんて阿呆かと一瞬昭弘は思ったが、直ちに意識を冷たいものに切り替えた。

 

―――こいつを殺す

 

 もし指揮官クラスであるのならば、ここで殺せば現場の指揮系統は多少なりとも混乱する。それにより、今逃げている家族達への追撃を大幅に遅らせる事ができるかもしれない。

 それに先程から自分自身にイライラしていた所だ。なら猶更丁度いい、こいつには自分の憂さ晴らしに付き合って貰うとしよう。こんな状態のグシオンでも、一機位なら殺れる筈だ。

 

 その指揮官機は馬鹿正直に正面から突っ込んで来る。恐らく、既に瀕死のグシオンに対して多少なりとも慢心を抱いているのだろう。

 昭弘は微かに残っている意識を「その一点だけ」に集中させ、相手と自分との距離を見極める。そして、自身の間合いに入った瞬間、巨大な鋼鉄の塊が左右からその指揮官機を包んだ。グシオンに装備されていた『シザーシールド』である。

 昭弘は指揮官機をシザーシールドで挟んだまま地面に叩きつけると、串刺しまみれな己の肉体をそのまま引き裂いてでも動かし、圧殺しようとする。

 

 しかし、正面から更に2機の敵モビルスーツが急接近してくる。最早今の昭弘に周りを気にしている様な、はっきりとした意識は残っていなかった。残っていたとしても、どの道こんな状態のグシオンでは逃げ切れない。

 当然の帰結として、敵モビルスーツの剣が昭弘のコックピット付近に深々と突き刺さった。鋭利で長大な金属片が、昭弘の胴体を貫通していく。

 

 それでも昭弘は止まらなかった。敵指揮官機のコックピットをシザーシールドでじわりじわりと、丹念に確実に潰していく。

 その光景は宛ら、ライオン数頭に囲まれた手負いの小さなハイエナ。だが侮る事無かれ。ハイエナの顎の力は、ライオンのそれを優に凌ぐ。例え身体中をズタボロにされようと、家族(クラン)の為ならその身を犠牲にしてでも噛み付く。

 

《うぅ…あぁ…!わ、わだじは、こ、こんなっ所で!!ぅぐ…ぁぁぁああアアア゛ア゛!!いぎィィエ゛ッァ゛ァ゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア!!!!》

 

 

 

 今正に消えかかっている意識の中、最早身体中に突き刺さっているモノの痛みすら分からなくなっていく意識の中、敵指揮官の無様な叫び声が聞こえた…様な気がした。

 

 そして、死は、もう目前だった。

 

 

 嗚呼、漸く死ぬ。ずっと気になっていた疑問の答えが、もうすぐ解る。けれども―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もっと家族(あいつら)と生きていたかったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして2人の少年の内の1人『昭弘・アルトランド』は、一つの戦場にて短い生涯を―――終えた。




 いかがでしたでしょうか。というか、SS書くのって物凄い時間かかるんですね・・・。これしか書いてないのに丸一日分くらい消費した気がします。
 
 さて、次回は遂にあの「天災兎さん」が登場します。やっとだ・・・やっと昭弘とISのキャラクターを絡めることができる。

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