IS~筋肉青年の学園奮闘録~   作:いんの

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今回は意外と早く投稿できました。・・・内容は薄いかもですが。

そしてまさかのUA10000突破!
これも普段から愛読してくれている皆さんのお陰です!
それと、いつも誤字報告をしてくれる方、本当にありがとうございます。いや・・・あれでも投稿する前にちゃんと見直してるんですよ?・・・いやマジで。

それと、今更クッソ恥ずかしいミスに気づきましたが、「滑空砲」じゃなくて正しくは「滑腔砲」でした・・・。後で修正しときます。大変申し訳ございませんでした。


第8話 来襲、中国娘

―――――4月19日(火) 夜―――――

 

 IS学園の正門前、一人の少女が仁王立ちしていた。

 女子の中でも比較的小柄で、茶色の髪は丁度両側頭部辺りで結んでいた。左右に伸びるそれは彼女の両肩より内側の部分で重力に逆らえなくなり、両肘より奥まで垂れるしかない。

 顔の各部位はどれも整っており十分美人の部類に入るのだろうが、彼女の表情からは勝ち気で血気盛んな雰囲気が伝わってくる。

 

 何故彼女が態々夜に訪問したのかと言うと、簡単に言えば道に迷ったのである。

 電車の乗り間違えが何度も重なった結果、日中に訪問する予定が大幅に狂ってしまったのだ。既に液晶携帯の履歴には学園からの着信が積み重なっていた。

 しかし彼女はそこまで動揺している様子は無く、寧ろ「遅れてしまったものはしょうがない」といった感じで開き直っていた。

 

「此処が『IS学園』ね」

 

 そんな彼女は、自身の身長に似つかわしくない巨大なボストンバッグを肩に掛けながら翡翠色の美しい瞳を輝かせていた。

 

「待っていなさいよ!一夏!」

 

 その名を嬉しそうに口に出すと学校の敷地に足を踏み入れるべく、歩を進める。

 

「……まっ、乗り越えちゃってもいいわよね。一応学園には遅れるって言っといたし」

 

 彼女自慢の身体能力で閉まり切っている正門を乗り越えると、センサーが反応して警報が鳴り響いた。

 

「うわっ!…ま、まぁアタシは明日から『此処の生徒』なんだし守衛さんたちも多めに見てくれるっしょ!」

 

 等と言った彼女の希望的観測は空しく駆けつけてきた警備隊からは厳重注意を受け、確認を取る為警備隊に呼ばれたIS学園の教員からもこっ酷く叱られ、彼女は転入前日から流したくもない涙を流す羽目になってしまった。

 

 

 少々みっともない登場を果たしてしまったが、彼女の名は『凰鈴音』。中国の代表候補生であり、此処IS学園の新たな仲間である。

 

 

 

 

 

―――――4月20日(水) 2時限目―――――

 

 その時刻は晴天。と言う程でもなく、見上げた先の青空と比較して4割程の雲が掛かっていた。

 

 場所はIS学園グラウンド。時々太陽の眼前を通過する羊雲が、ISスーツを纏って整列した1年1組の生徒たちの頭上を影となって覆ったり通り過ぎたりを繰り返している。

 そんな中、彼女たちの多くは何故か顔を赤くしながら目のやり場に困り果てていた。原因は寒さでは無く、ある人物の服装にあった。

 

「これよりISの機動演習を行う!まだ肌寒い季節だが辛抱してくれ!」

 

 白いジャージに身を包んだ千冬が、クラス全体にそう告げる。千冬の隣には昭弘、一夏、セシリアの3人が控えていた。

 すると千冬はクラスメイトたちの赤面に気付き、恐らくその原因であろう人物に訊ねる。

 

「…先の模擬戦時も思ったがアルトランド、ISスーツのデザインはもう少しどうにかならなかったのか?」

 

「オレはかっこいいと思うけどなぁ」

 

「えっ?…そ、そうでしょうか」

 

 昭弘のISスーツは、言うなればかなり際どいデザインをしていたのだ。

 全体的に黒色で、丁度心臓の部分には「白い炎」のようなイラストが描かれていた。そして、右脇腹付近には『T.P.F.B.』のロゴマーク。

 下半身はレギンスの様なモノを履いており、丈は足の踝まで伸びていた。しかし女子のまるでスクール水着の様なISスーツ同様素肌との密着率は極めて高く、昭弘の麗しい筋肉がそのまま浮き彫りになっていた。流石に()()()()()()まではその限りでは無かったが。

 上半身は更に凄まじい。最早タンクトップとほぼ同形であり、本来襟で覆われている筈の部分からは昭弘最大のチャームポイントでもある大胸筋が姿をチラつかせていた。そして何よりスーツ越しに筋肉が浮き彫りになっているどころか素肌に色を塗っただけなのではという程に、スーツが昭弘の筋肉に減り込んでいた。

 

 要するに途轍もなく“ガチムチ”な状態なのだ。

 

 因みにこのスーツの発案者はデリー本人である。何でも見る者にインパクトを与える為とか。

 

「…同種のISスーツしか持ってませんが」

 

 一体何の問題があるのだろうと、昭弘はキョトンとしながら訊き返す。

 

「年頃の女の子に見られて、何か思うことは無いのか?」

 

「いえ特には…」

 

 前世では上半身裸で過ごすことも多かったからか、この程度の露出なら気にもならない昭弘。例えそれが異性の前だったとしてもだ。

 余りにも昭弘があっさりと否定するので、千冬は最早問い詰める気も失せたのか溜め息交じりに次へと進む。

 

「…まぁいいだろう。さて諸君!先ずはこの3名による飛行演習を見学してくれ。それが終わり次第、諸君らにも訓練機『打鉄』に搭乗して貰う!」

 

 グラウンド脇には、訓練機『打鉄』が10機程並んでいた。

 

 先ず千冬が3人に出した指示は、IS及びMPSの展開であった。

 各々がIS・MPSを展開する中、皆まじまじと昭弘によるMPSの展開を凝視していた。

 

 各々が小声で感想を述べている中、昭弘とセシリアの展開は完了した。

 しかし、一夏だけは多少時間がかかってしまった。

 

「少し遅いぞ織斑。実戦じゃ相手はお前の準備を待ってはくれないのだぞ?」

 

《はい!すいません!》

 

 千冬の叱責に、一夏は素直に返事をする。クラス代表である彼は、こんなことでへこたれる訳には行かないのだ。

 更に千冬が次の指示を飛ばす。

 

「今度は3人揃ってその場から急上昇しろ!上空300mの所で静止。そこまで到達したら3分程好きな様に空中機動をやってみろ」

 

ドヒュゥッッ!!

 

 ブルー・ティアーズとグシオンリベイクはほぼ同時に離陸をし、ほぼ同時に目標地点に到達した。

 白式は最初の加速が遅れた為か、若干後に目標地点に到達する。

 またもや、千冬から叱責を受ける一夏であった。

 

「頭に角錐を思い浮かべる…上手く行かないなぁ…。スペック上は、加速やスピードなら白式がこの中で一番上な筈なのに…」

 

 自身に何が足りないのだろうと思い悩む一夏に、セシリアは優しく声を掛ける。

 

《焦る必要はございませんことよ一夏。さぁ?私と手を繋いで、少しずつ空中機動に慣れて行きましょう》

 

 がしかし、そのセシリアの提案に昭弘は反発する。

 

《いや逆だ。一夏、厳しいかもしれんが今の内に少し無茶な機動もやるぞ》

 

 セシリアが折角一夏と良いムードになろうと思っていた矢先に昭弘からの横槍が入ったので、当然彼女は気分を害する。

 

《お前の意見は聞いていませんことよアルトランド。大人しく私と一夏のフォローに入っていれば宜しいのですわ》

 

《放課後のアリーナ使用時間は限られている。こういう時に少しでも激しい機動に慣れておくべきだ》

 

《お前は教員でもない癖にそんなことを初心者同然の一夏にやらせて、彼や地上に居る皆様の身に何かあったらどう責任を取るつもりですの?》

 

《寧ろそうならない為のオレ達だろうが。そろそろいい加減にしとけよ?》

 

 ジワリジワリと、2人の間に存在する大気が歪んでいく様に一夏には見えた。

 セシリアはまるで蛇の様な鋭い視線を昭弘に送り、昭弘はグシオンの表情無きツインアイを不気味に光らせている。

 一夏はただオロオロしながらそんな2人を見ている事しかできなかった。

 

《おいお前らぁ!!喧嘩も良いがもう1分が過ぎたぞぉ!》

 

 ハイパーセンサーが拾った千冬の一声に、2人は我に返る。

 

《…すまなかった一夏。オレ達がフォローに入るから好きな様に動いてみてくれ》

 

《申し訳ございませんでした一夏…》

 

「お、おう!」

 

 一夏は内心千冬に感謝の言葉を送りながら、改めて2人の気の合わなさに戦慄した。

 

 

 3人の空中機動が終わった後、最後に千冬は急降下からの急停止を3人に命じた。目標は地上10cm。

 ティアーズとグシオンは丁度いいタイミングで態勢を立て直し、脚部スラスターを上手く利用して地上10cmでの急停止に見事成功した。

 一方の白式は完全に初速を誤り、猛スピードでグラウンドへと突っ込んで行ってしまった。地面に激突しそうになるところを上手いことグシオンとティアーズがキャッチしたお陰で、グラウンドに穴を開ける様な事態にはならなかった。

 

 その後は、打鉄を使っての本格的な機動演習へと入っていった。

 昭弘たちも他のクラスメイトを教えるべく、グラウンド内を行ったり来たりしている。

 

 

 

《浮いた浮いた~!。セッシーあっちの方行ってみるね~~》

 

《ちょっとお待ちなさい布仏さん!勝手にウロチョロしないで下さいまし!》

 

《えへへ~こっちこっち~~》

 

《お待ちなさいったら!!》

 

 

 

《緊張すること無いぞ谷本。いざISに振り回された時はオレが力尽くで押さえ付ける》

 

《はっはいぃぃっ!!》

 

(…増々緊張させちまったか?)

 

 

 

「ISを動かすことに慣れていない内は、先ず両腕両脚に重しを付けている状態をイメージしろ。いきなり生身の時と同じ感覚で動こうとすると、ISに振り回されるだけ振り回されて終了だ」

 

《はいっ!織斑先生!!》

 

 

 

「だっ大丈夫ですよ!?篠ノ之さん!こ、怖がること無いですよ!?」

 

《分かりましたから山田先生こそ落ち着いて下さい!》

 

 

 

 等と言った具合で、どうにか時間内に全員ISに乗ることができた。

 

 

 

 

 

 2時限目が終わった後の休み時間、1年1組はある話題で持ち切りだった。

 何でも今月末にクラス対抗戦があり、優勝クラスには学食のスイーツが半年間食べ放題になるとか。

 

「昭弘、確かクラス対抗戦って各クラス代表によるトーナメント戦だったよな?」

 

「ああそうだ。スイーツだかには興味無いが、お前にとっても今後に向けての良い刺激になるんじゃないか?」

 

「余り気負いすぎないことだ。だが普段世話になってる皆の為にも、無様な試合をしたらぶっ飛ばすからな?」

 

「箒お前!そんなこと言われたら嫌でも気負うわ!」

 

 3人が普段通りの会話をしていると、最近ではすっかり昭弘グループに入り浸りなセシリアも混ざってきた。

 

「一夏。どちらにしろ現時点で他クラスに専用機持ちは存在しません。訓練通りに戦えば、十分勝ち越せるかと」

 

「そんなに凄いのか?専用機って…」

 

 そう、それだけ専用機は桁違いの性能を有している。誰にでも扱える汎用型で生産性を重視している量産機とは異なり、その一個人の為だけに創り上げ、生産性をまるで無視した最新科学の“結晶体”。それが専用機と呼ばれる所以なのである。

 他のクラスメイトも、セシリアの発言に便乗する。

 

「セシリアさんの言う通りだよ!アタシたちなら楽勝だって!」

 

「そうそう!例の転校生の話も気になるけど、スイーツ無料券は1組のモノも同然!」

 

 その「転校生」という単語を聞き、昭弘たちは「この時期に?」と疑問を浮かべる。

 

 直後…

 

 

「その情報!古いよ!!」

 

 

 突如1組の右前方出入口からやけに凛々しい声が…否、()()()()()()()()()()()かの様な声が聞こえてきた。

 

「2組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単に勝てるとは思わないことね」

 

 その“謎の人物”の姿を見て、一夏は目を丸くする。

 

「……鈴?お前鈴か!?」

 

「そう!中国代表候補生『凰鈴音』よ!!久しぶりね一夏」

 

 鈴音がそう決め台詞気味に返すと、一夏は苦笑いを隠しながら感想を述べた。

 

「そのキャラ全然似合ってないぞ?」

 

「う、煩いわね!」

 

 鈴音は一夏の感想に顔を真っ赤にしながら反応を返す。

 どうやらこちらの表情が、彼女にとってのデフォルトらしい。

 

 対して、箒は冷たい視線を一夏と鈴に送る。

 

「そろそろ2人がどういう関係なのか聞かせて貰えるか?」

 

 そう箒に凄まれ、一夏はおずおずと鈴音との関係を説明する。

 昭弘も一夏と親しい人間ということで興味があるのか、彼の話に耳を傾ける。

 

 話によると、鈴も箒と同じ幼馴染とのことだ。

 箒は小4の時に一夏の学校から他県へ引っ越してしまい、鈴は小5の時に箒と入れ違える様に一夏の学校へ転校してきたのだそうな。

 

 一夏が説明を終えると、鈴音は何故か得意げな表情を浮かべて箒に視線を送る。

 その箒にとって余りにも分かりやすい挑発に対し、彼女も負けじと嘲笑を浮かべながら左手を差し出す。

 

「篠ノ之箒だ。宜しくな、2 番 目 の 幼 馴 染 殿 ?」

 

「宜しくね~、遠 い 過 去 の 幼 馴 染 さ ん ?」

 

 両者はそう言いながら()()()()()()()()()と、引き攣った笑いを浮かべながら相手の左手を握り潰さん程に目一杯力を込めた。

 がしかし。

 

ゴスッ

 

「イタッ」

 

 昭弘が箒の頭に軽く手刀を入れたことにより、両者の睨み合いは一先ず中断される。

 

「初対面の相手に対してそれは無いだろう箒。()()で握手をし直せ」

 

「し、しかしだな昭弘」

 

「ホ・ウ・キ」

 

「…あーもう分かったよ昭弘!」

 

 昭弘に威圧され渋々右手を差し出す箒。鈴音もソレに倣って、半ば投げやりに右手を突き出す。

 両者が一瞬だけ握手を交わすと、昭弘は鈴音に弁明する。

 

「悪かったな凰。オレは『昭弘・アルトランド』だ」

「こいつもちと不器用なだけで、別に悪気は無いんだ。大目に見てやってくれ」

 

 昭弘がそう言うと、鈴音は顎に右手を当てながらまるで品定めするかの様に昭弘を見据える。

 

 昭弘・アルトランド。男性でも扱えるパワードスーツ『MPS』の(公式上では)最初の搭乗者。彼のIS学園入学が決定した時は、流石に鈴音も“不気味な何か”を感じた。IS至上主義の権化とも言われるあの国際IS委員会が、こんなにもあっさりとISの紛い物とその搭乗者の入学を認めるとは鈴音にはとても思えなかった。

 何か“裏”がある。根拠は無いが鈴音はそう睨んで、必然的に昭弘への警戒度も上げていた。

 

 しかし今の箒と昭弘のやり取りを見て、少なくとも彼がそれなりの良識を持っているということは分かった。

 

「へぇ~何か意外ね。アンタってニュースでしか見たこと無かったけど、もっと野蛮な人間かと思ってたわ」

 

「そんなことは御座いませんわ。野蛮人は所詮いつまで経っても野蛮人ですことよ」

 

「お前は黙ってろ“ヒネクレイジョウ”」

 

「お前も普段通り大人しくしてなさいなこの“筋肉ダルマ”」

 

 今度は昭弘とセシリアが不毛な言い争いを開始しようとする。当初ビリビリしていた龍虎も、今じゃまるで柴犬と三毛猫の小競り合いだ。

 

 段々と、鈴音は昭弘を警戒するのが馬鹿らしくなっていった。元々他人を疑うことが好きでない彼女は、「無理に警戒する必要も無い」とマイナスの思考を一旦切り離すことにした。

 

 

 

 鈴音が2組に去った後、昭弘は先の己の言動について考え込んでいた。

 

(…流石にお節介が過ぎたか?)

 

 昭弘は、先程箒に行った叱責を思いの外気にしているのだ。「いつからお前はそんなに偉くなったんだ」と。

 

 しかし、それだけ昭弘が箒のことを心配しているのもまた事実だ。正直な所、彼女は昭弘や一夏、本音位しかクラスで話せる相手が居ない。本音も様々なクラスメイトと交流している為、普段から箒と一緒に居るわけでは無い。そう考えると実質的には、昭弘と一夏しか話相手が居ないのだ。

 先程の鈴音や先日のパーティにおけるセシリアへの態度からも判るように、箒は一夏に近寄る女子を快く思っていない。それは即ち、1年1組の大半のクラスメイトを快く思っていないということになる。

 

 クラスメイトたちも箒からそんな風に思われていては、嫌うとまでは行かずともいずれは悪い印象を抱くだろう。例え箒がそれで構わなくても、友人である彼女が皆からそう思われるのは昭弘だって嫌なのだ。

 

 自分がやっている事はきっと余計なお節介なのだろう。それでも、だからと言ってこのままの状態を傍観する訳にも行かない。

 

(難しいもんだな、此処での人間関係ってのは)

 

 そう。此処での人間関係は鉄華団の様な“家族関係”とは違う。

 何処まで行っても“自分”と“他人”。その間には好意、悪意、尊敬、侮蔑、哀れみ、恐怖、関心、無関心、困惑、嫉妬、様々な“感情”が犇めいている。他人に対するそれらの感情は、ふとした切っ掛けでたちまち「変化」していくモノなのだ。良い方向にも、悪い方向にも。

 

 

…ヒロ……………キヒロ………オイ昭弘!」

 

「!?」

 

 一夏の呼びかけによって、漸く思考の世界から脱した昭弘。

 

「スマン、何の話だったか?」

 

「だから鈴の事だよ。この時期に転入っておかしいなって話」

 

「…確かにな。何故入学式に間に合わなかったんだ?」

 

 それは中国の政略にあった。

 中国政府は本来、鈴音をIS学園に入学させるつもりは無かった。中国でテストパイロットとして育成した方が、ISに関する技術開発面でも代表候補生である鈴音の育成面でもメリットが大きいと判断したからである。

 しかし男性初のIS適性者である一夏の存在が知れ渡ってからは、態度を一変する。少しでも男性適性者に関する情報を一夏とその専用機から得る為に、国際IS委員会に対し急遽鈴音の入学を認めさせようとしてきたのだ。鈴音を新入生として選んだ理由も、一夏とは旧知の間柄でより情報を得やすいと考えたからだ。

 

 余りにも急な申し入れの為、1度目はどんなに多額の“資金”を積んでも断られた。IS委員会内にも各国のパワーバランスがあるのだ。無茶な要求をあっさり呑んでしまうとそれを機に委員会内での中国の発言が強まり、パワーバランスが一気に崩されかねない。

 

 そんな中国の眼前に現れた一筋の希望の光こそが、昭弘とMPSの存在だ。

 「MPS操縦者の入学は認めるのに何故IS操縦者の入学は認めないのか」と、中国はIS委員会にとって痛い所を突いてきたのだ。これによりIS委員会に対する悪評を恐れた各国は、渋々了承したのだ。

 ただし前回提示した資金と各費用はあくまで中国が支払い、IS学園理事長の説得やその他調整により、早くても入学は4月下旬になるといった条件をIS委員会は提示した。

 

 上記のような各国のやり取りにより、鈴音は4月20日という非常に中途半端な時期に転入する羽目になったのだ。

 

「大方お国絡みでしょう。何れにしろ、IS操縦者である私たちが深く考えた所で時間の無駄かと」

 

「それもそうか?」

 

「そうだ!一々あんな奴のことを考えるな一夏!」

 

「お前どんだけ鈴のこと嫌いなんだよ…」

 

 一夏たちがそんなやり取りをしている中、昭弘は再び思考の渦に沈んでいく。

 

(凰…一夏関連で妙なトラブルが起きなきゃいいんだが…。さっきの箒との一件もあるしな)

 

 そんな不安を抱えながら、昭弘は箒の不機嫌そうな横顔を見つめる。その横顔を見て更に不安になったので、今度は窓の外に広がる雲一つ無い青空を見上げる。

 

 しかし昭弘の中に渦巻く不安と心配は、いくら青空が美しくても拭えることはなかった。




あの「最強」の生徒会長も、そろそろ出そうかと思っております。
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