テンポを良くする為にも、7000字以内を目安に頑張ってはいるのですが。
マドカを抱えたまま、付近の砂漠へと降りる箒と一夏。
柔らかい砂上に胡座をかくマドカに対し、早速一夏は見下しながら問い詰める。
《さっさとリモコン寄越しな。他にもあるんなら、とっとと吐いた方が身の為だよ》
「私のリモコンは渡すが、他のは担当の職員にしか分からない。悪いがどうにもならないんだ」
当然、一夏がそれで納得する筈がなかった。
《おおよその見当くらい付いてんでしょ?・・・思い出せるように骨でも折ろっか?》
そう言ってマドカの腕を白式のマニピュレーターで掴む一夏に、箒が割って入る。
《待て一夏!何もそこまで・・・まだ子供なんだぞ。本当に知らないのかもしれん》
《・・・ハイハイ》
幼馴染みに諭されたことで、一夏は渋々とマドカの腕を離す。
無論それらは演技であった。元々一夏は、自身らの脱出に乗り気ではない。昭弘を強制的に連れていける状況なら話は別だが。
だから箒に止めて貰う為、敢えて悍ましく演じて見せた。
《じゃあこっからどうすんの?箒ちゃん》
そんな本心を隠しては、一夏は箒に妙案を催促する。
箒は難しい顔をしながら、視線を落として考え始める。本音たちを安全に脱出させるには、シールドの保護が不可欠。それを解除されない為にも、やはり全てのリモコンは押さえなければならない。
《少なくとも、リモコンの操作範囲が広いとは思えない。つまりは私たちの監禁部屋の近くにある筈・・・そう言えば、部屋の向かいに職員たちの詰所があったような》
箒がそこまで独り言を零すと、マドカも助言するように情報を連ねる。
「そうだ、そこに職員が常駐している。全てのリモコンがそこにあるとは限らないが」
《ならやってみる価値はある。そこの職員たちを脅して、リモコンを可能な限り押収、本音たち4人を連れて脱出・・・これでどうだ?》
侵入経路や隊員たちの無力化等、未だ詰めるべき所はあるが、一先ずの大筋は立てた箒。
だが、決定的な要素が欠落しているのを見逃さない一夏は、黒い眼差しで箒にそのことを問う。
《・・・で?昭弘はどうする訳?》
敢えて目を反らしていた点を突かれ、箒は言い淀んでしまう。彼女自身、端から答えは決まっているのだが、そのことをとても口に出せなかった。
昭弘との決別。今それを口にすれば、一夏が何をしでかすか分からないからだ。もし昭弘を無理矢理でも連れていくと言うなら、箒はそれを全力で止めなければならない。此処に残るも、IS学園に戻るも、全ては昭弘が決めることなのだから。
皆を救出するその時、もし自分たちの監禁部屋に昭弘が居たなら、そこで最後の選択を聞こう。そして監禁部屋に居なければ、そのまま会わずに置いていこう。それが箒の考えだった。
寧ろ会わずに済む方が良いのかもしれない。もし会えば、きっと箒の覚悟も揺らいでしまう。時間も状況も忘れて、話したいことを話してしまう。
そう思っていたのに。
《!・・・箒、機体反応2つ。これはグシオンと・・・識別不明IS》
グシオン。その単語を聞き、箒の思考が漂白される。中に居る人間の姿を想像したが故に。
心の準備が何一つできていない。それは正しく、今の彼女を差すのだろう。
対する一夏は瞳を輝かせる、明るい未来を思い描くかのように。
昭弘がここに向かっている。その情報は不思議なもので、昭弘への疑念すら最初から無かったかのように消えていく。IS学園に戻ってくれる、と。
一夏の予定とは大きく異なる展開だが、そんなことはどうでも良かった。またあの時のように、3人で何気ない日常を過ごせるのなら。
夜間の砂漠に降り立った2機。
その片方であるオータムは、想定外の事態に混乱していた。
(予定と全然違うじゃねぇか!)
吐き出したい言葉を懸命に抑えながらも、オータムは座り込むMを見やる。侮蔑というより、ただ単に当惑した眼差しを。
「悪いなオータム。負けちまった」
謝罪するMだが、今のオータムはそれに構っている余裕などなかった。
この状況。IS学園の専用機が2機、そしてオータムの認識では、昭弘もまた学園側の人間だ。もしこの3機に徒党を組まれては、オータムに勝ち目は無い。
(状況の詳細を確認する為とは言え、近くまで降りたのはミスったなクソッ!)
どの道スコールの命令上、昭弘が先行して降り立った以上、オータムもそれに続くしかなかった。
そうやって一人焦燥するオータムを尻目に、この不安定な現状はゆらゆらと進んで行く。
箒は止まった思考のまま、降り立ったグシオンを見詰めていた。青黒い星空を背景に、翠玉色のツインアイがじんわりと輝いていた。
今、昭弘がどんな表情をしているのか、箒には分からなかった。知ろうとするのも怖かった。
そうして先に口を開いたのは一夏であった。
《やっぱり来てくれると思っていた、昭弘。さ、早く皆で脱出しよ。そこの蜘蛛女を3人で片付けてさ。・・・福音戦の時みたいに》
一夏の煌めく視線を見て、オータムの焦りは更に加速していく。その様は、無意識な後退りとして表面化していた。
そして箒もまた、一夏の言葉により思考を誘導される。まさか、本当に自分たちを助けに来てくれたのかと。
心の何処かでは、そんな淡い期待がずっとあった。何だかんだ、グシオンでスッ飛んで来てくれるのではないか。最終的に、結局IS学園を選んでくれるのではないか。
箒の知るこれまでの昭弘が、誰かの為にいつも奮闘してくれる昭弘が、そう信じさせていた。
そんな2人の反応を見て、グシオンが近付いて来る。砂上をズサリズサリと、一歩一歩静かに少しずつ。
《箒、一夏》
目の前まで来て、そう2人の名前を呼ぶ昭弘。普段通りの、低くて落ち着いた声色だった。見慣れた仏頂面を容易に想像できるような。
つい安心してしまう重低音。そんな昭弘の声に、箒と一夏はいつもの如く心を許していた。
その声色のまま、次なる言葉を昭弘は放った。
《すまない》
2人の眼前から、グシオンがフッと消える。
超高速移動の衝撃で砂塵が舞い上がるよりも早く、それは起こった。
《え?》
箒の背後から、硬い何かが紅椿を包んだ。
何かに挟まれていると認識した瞬間には、既に手遅れだった。
―――紅椿 SE残量0
機械音声にそんな機体状況を告げられることで、漸く箒は幻想から絶望的現実へ叩き返された。
グシオンのシザーシールドに挟まれたのだと、昭弘が正式に鉄華団に寝返ったのだと。
一夏は呆然と立ち尽くしていた。既に砂塵によって何も見えないが、それすら認識の外だった。
愛する人からの、短き謝罪の言葉。その直後に起きた、愛する人からの攻勢機動。
そこから導き出される結論など、既に一つしかなかった。
ミシッ
そこに辿り着いた時には、グシオンハンマーが一夏の頭部へ振り下ろされていた。
―――白式 SE残量0
絶対防御が発動したことで、白式の残り少ないSEは底を突いてしまった。
砂塵が晴れた時には全てが終わっていた。
砂上には、既にISが粒子化し露わな姿となった箒と一夏が、砂を被ってへたり込んでいた。
虚ろな瞳をしたその様子は、最早気絶しているに等しいものだった。
何てことはない、それが昭弘の選択なのだから。いつかこうなると頭では解っていた、少し時期が早まっただけだ。
箒はそう自身に言い聞かせながらも、今の状況を直視できずに居た。
昭弘と最後の会話をすることは愚か、選択を聞くことさえできなかったという、この余りに虚しい現実を。
これでまた人質に戻れる、昭弘と箒と一緒に居られる。
一夏はそんな言葉で自身を慰めようとするが、最早無意味に等しかった。当の昭弘に、一緒に居ることを拒絶されたのだから。強制的に連れ出す為の白式という力も、既に静まり返っている。
一夏唯一の心の拠り所は、今や失われてしまったのだ。他ならぬ昭弘自身の手によって。
普段から冷静なMが、予想だにしなかった展開に口を開けていた。
《テメェ・・・どういうつもりだ!》
Mですらそうなのだから、オータムのそんな怒号は尤もだった。
白式と紅椿が無力化された為、オータムにとって寧ろ嬉しい展開なのだが、彼女はこういう予定外な事態が嫌いだ。主の命令に無いのだから。
そんなオータムの心境など梅雨知らず、昭弘は淡々と自身の行動について述べる。
《どうって・・・Mはもう無力化されてるだろうが。だったら次にやるべきことは、人質の確保だ。そして人質がISを纏ってるんなら、それも無力化する必要がある》
主のそんな要望も酌めないのか。遠回しにそう言われた気がしたオータムは、混乱も相まって頭を掻き毟る。
《何なんだよテメェは!さっきから訳わかんねぇことばっかりィ!!》
そんな中、追い打ちとばかりにレーダーに新たな機影が2つ。
《今度は何だよ!!》
苛立ちで噴火しそうになりながら、オータムは機体情報を確認する。
すると確認後、オータムの苛立ちは見る見る内に収まっていく。どうやら援軍らしい。
ズザァン! ズザザァァン!
砂上に着地した機体は、バルバトスと獅電であった。
《お待たせ》
《獅電、現着しました!》
その2機を見て、漸くオータムの中に安堵が芽生える。
《三日月にラッシュか。丁度良かった、一先ずグシオン叩きのめすぞ。コイツ急に学友襲い出すわで・・・多分イカれてんだわ》
そう言って構えるオータム。
しかし、帰ってきた反応は彼女の望むものではなかった。
《なに言ってんのオータム》
《あ?》
そう言いながら、アラクネの側へと近付くバルバトスと獅電。
未だオータムは状況が飲み込めてなかった。
《オレたちがスコールさんから受けた指令は捕縛任務です。捕縛対象は・・・オータムさん、アナタです》
《・・・へ?》
オータムが聞き返そうとした時には、獅電の槍先がアラクネの腹部へとめり込んでいた。
ビビビッ
刃から電流が放たれ、アラクネは麻痺したように静止する。
そんなアラクネの頭上に、今度はバルバトスのグレートメイスが振り下ろされる。
《ちょ、待っ―――》
重厚な鉄塊が直撃したことで、アラクネは地面へとうつ伏せに叩き付けられる。
混乱と衝撃で意識が揺らぐオータムに、三日月はトドメの一撃とばかりにアラクネの背部を踏み付ける。そして、踵からバンカーが打ち放たれる。
アラクネのSEは忽ち無くなり、そのまま粒子化してしまった。
夜の砂漠に、再びの静寂が訪れる。
糸が切れた人形のように座り込む、箒と一夏。そのすぐ側で静かに佇むグシオン。
倒れ込むオータムの側で、同じく無慈悲に佇むバルバトス。
少し離れたその距離のまま、両者は睨み合っていた。その威圧感は、次の瞬間にもそのままド突き合いかねないものがあった。
そんな雰囲気を緩和するように、ラッシュが言葉を割り込ませる。
《昭弘さん、お疲れ様です。アナタの鉄華団に対する働きぶり、見届けさせて貰いました。Mの生け捕り、人質2名を無力化した上での確保・・・見事な手際です》
《・・・ああ》
箒と一夏、2人へと視線を落としながら昭弘はそう短く返した。それはまるで、酷く俯きながら返事をしているようであった。
眼光が沈むグシオンを見て、三日月は歩を進めようとするが、それを遮るように通信が届いた。
《・・・うん・・・・・・うん、了解。昭弘、スコールから言伝。「昭弘の鉄華団入団が適切であると判断する」・・・だってさ》
三日月の言葉を聞き、再び顔を上げる昭弘。グシオンの眼光が、バルバトスの眼光と交錯する。
今度こそ三日月はバルバトスの歩を、グシオンの元まで進める。そうして両者が目と鼻の先で相対すると、三日月がバルバトスの右手を差し出しながら言い放った。
《“また”鉄華団にようこそ、昭弘》
その右手をグシオン越しに見詰めた後、昭弘もまた短く返した。
《ああ》
バルバトスの手は取らず、事務的にそう言いながら昭弘は三日月の真横を通り過ぎた。
三日月も、何事も無かったように右手を引っ込め、過ぎ去るグシオンへと振り返る。
そんな両者が、互いに素顔を見せ合うことは無かった。
見せるまでもないのか、それとも見せる気すらないのか。そのどちらなのかは、この場に居るラッシュにも判別できなかった。
トネードと共に、格納庫へと続く通路を行くスコール。
軽やかな足取りは、それだけで彼女の上機嫌さが伺えるものだった。
(これで邪魔だったオータムとMは消え、鉄華団も纏まりを強める)
IS乗りとして高い能力を発揮するM、工作員から何まで幅広くこなすオータム。だがその他者を見下すような性格もあり、少年兵たちからの評判は悪かった。
その不満は人が集まる毎に肥大化していき、やがては不信感へと繋がっていった。
その2人が人質を連れ出す為に共謀し、三日月と昭弘がそれを阻止する。団の結束を磐石とするのに、これほど相応しいシナリオも無い。
結果としてオータムとMは使えなくなるが、構わなかった。工作員なんて幾らでも居るし、ISも今やこの組織には必要無い。
そもそも打倒ISを掲げているのだから、IS乗りの排除は寧ろ遅いと言えた。スコールも今後は極力ISに乗らないか、乗るとしても何らかの処置を施すつもりでいる。
(後はスミルとアネスをどう始末するかだけど・・・ま、決戦が終わってから考えましょうか)
その2人さえ抹殺すれば、今度こそ鉄華団は完全なる一枚岩となる。
「な?アタシの言った通りになっただろう」
この兄が余計なことをしなければ、だが。
「ええ、私のシナリオのお陰でね」
「冗談さ、感謝してるよ。・・・しかし、Mは天災への土産物としてまだ理解できるが、オータムは生かす必要あったか?」
途端、スコールの上機嫌に陰りが見え始める。
「下手に処刑すれば、野蛮な思想が蔓延するわ。疑うべきは殺せ・・・ってね。アンタだってちゃんとした組織運営を目指してるでしょ。・・・ただそれだけよ」
そう言い終わった時には、スコールは普段の澄まし顔だった。先程の上機嫌へと、強引に巻き戻すかのように。
そんな妹にトネードは労うような、若しくは哀れむような視線を向ける。感情を覆い隠すのは誰であれ苦しいものであり、それでいて美しい。大きいものなら尚のこと。
尤も、オータムに入れ込み過ぎたのは他ならぬスコールの失態だ。故に、自業自得と言えばそれまでなのだが。
兄妹でそんなやり取りをしていると、いつの間にか格納庫の入口へと辿り着いてしまった。
扉を開けた先には、作業員やパイロットたちによる拍手喝采が広がっていた。
その中心には、困惑気味にぎこちない笑顔を見せる昭弘と、もう慣れたとばかりにナッツを頬張っている三日月が居た。
「昭弘さん!鉄華団へようこそ!」 「紅椿と白式を瞬殺したってマジすか!?」 「今度強さの秘訣とか教えて下さいよ!」 「やっぱ三日月さんの相方は昭弘さんしかいねぇや!」 「これで鉄華団も不滅だな!」
群がる団員たちに対し、外側からスコールが声を上げる。
「ハイみんな!どいたどいた!アルトランドくんに渡すものがあるから」
スコールの言葉を聞いて、団員たちはおぉと別の歓声を上げながら道を開けていく。ミューゼル兄妹が何を手渡そうとしているのか、既に予想が付いているようだ。
そうして円の中心へと辿り着く、スコールとトネード。本日の主役である昭弘に対し、トネードは勿論、スコールですら融和な笑みを浮かべる。
「改めて、入団おめでとうアルトランドくん・・・いや、昭弘くん」
トネードはそう言うと、持っていた深緑色の布を昭弘へと手渡す。
「これは・・・」
色合い、そして手に取った感触だけで、昭弘はソレが何なのか分かった。
「早速着てみると良い」
「・・・」
そう勧めてくるトネードだが、昭弘は黙ってソレを見詰めたままだ。その様子には、少なくない躊躇いが見て取れた。
すると昭弘は、周囲を見渡すように告げる。
「まず最初に断っておくが、オレがお前たちに協力するのはあくまで一時的なものだ。それでも構わないか?」
「勿論構わな「それは具体的にいつまでかしら?」
トネードの言葉を遮り、スコールがそう確認を迫る。
昭弘は予め答えを用意していたように、特段考える様子も無く答える。
「ISとの決戦には協力する」
昭弘の解答を聞いて、スコールは悩む素振りを見せる。
この青年の意図は分からないが、決戦とは恐らくアメリカ・ドイツ混成IS部隊との戦闘を指している。実際、スコール的にはそこで共闘してくれるだけでも大いに助かる。
何より昭弘が、鉄華団の為に人質を奪還し、Mも命令通り生け捕りにしてくれたのは紛れもない事実。その最中に脱出、若しくは基地に大損害を与えることもできた筈で、わざわざ決戦時になって裏切る理由も無い。
何より昭弘は、今の世界の在り方に疑問を抱いている。元から鉄華団に近い思想は持っているのだ。
故に、スコールの思考は短かった。
「いいでしょう。その条件で一時的な入団とします」
昭弘の前置きに対し、団員たちは最初こそ戸惑いの表情を見せていたが、次第に再びの拍手を巻き起こしていった。
彼等にとっての決戦が、如何に重要事項なのかが分かる。
そんな歓迎の拍手の中、昭弘は渡された深緑色のジャケットを再び見詰めた後、覚悟を決めたように勢い良く羽織った。
サイズも細かなデザインも、嘗ての世界と寸分違わぬ鉄華団のジャケット。IS学園の白い制服とは程遠い、団員としての象徴。
それに身を包む昭弘は、どこか不思議な顔をしていた。弛緩した表情は嘗ての鉄華団を懐かしむようで、何かに諦観しているようでもあり、そして満たされているようでもあった。
それに気付けたのは、この空間において三日月とラッシュだけだった。
既に2人は、昭弘を囲う人集りから少し離れた所に居た。
「昭弘が入団したって言うのに、あんま嬉しそうじゃないねラッシュ。安心しなよ、昭弘は嘘とか付けないから。本気でオレたちに協力する気だよ・・・決戦ではだけど」
そう保証する三日月に対し、ラッシュは苦笑いを携えながら返した。
「ああいや、勿論嬉しいですよ。あの三日月さんと昭弘さんが、肩を組んで戦うなんて・・・オレは勿論、皆も心待ちにしていたでしょうから」
けれどと、ラッシュは己の純粋な喜びに待ったを掛けるように、俯き気味になって続ける。
「あの人が為そうとしていることを、もう知ってしまっているので・・・。そんでもって、それで納得してしまっている自分も居るんです。だから今オレはこうなってるんです」
ラッシュの告白はそれだけだった。昭弘と何を密談していたのか、そこの部分を話すつもりは無いらしい。
「そっか」
三日月がそれ以上無理に訊くことはなかった。
ラッシュの鉄華団への忠誠は本物だが、三日月と昭弘に対する尊敬の念はそれ以上だった。そのラッシュが話すべきでないと判断したのなら、三日月はその判断を尊重するだけだ。
だから三日月は、その短い返答だけでその場から去ろうとする。
「三日月さん」
そうラッシュに呼び止められさえしなければ。
「教えて下さい。アナタはどうして、昭弘さんの鉄華団入りを喜べないのですか。アナタは一体・・・昭弘さんに何を望んでいるんですか」
「何を望むって・・・そんなの」
そう言って三日月は振り返る。苛立たせてしまったかとラッシュは身構えるが、それは杞憂だった。
三日月が見せた顔は、静かなる笑顔だった。
「
傍から聞けば、意図のまるで読めない答えだった。
しかし全てを知るラッシュは悟ってしまった。その言葉を聞いて、その表情を見て。
三日月もまた、昭弘が為そうとしていることに半ば気付いているのだと。そして三日月自身、それを望んでいるのだということも。
相棒だからこそ、背中を預けられるからこそ、同じ答えに行き着いてしまうのだろうか。
或いは相棒だからこそ、昭弘の答えを真正面から受け止めたいのかもしれない。それは大切な学友を裏切ってでも、為したいことなのかと。
ラッシュがそんなことを考えている中でも、昭弘を称える団員たちの声は止まなかった。それは正しく、鉄華団が一つになったのだと疑わない声だった。
その為に昭弘が支払った代償を知りもせずに。
その場から去る三日月の背中だけが、2人の真実を語っていた。
自身と昭弘、互いに納得できる終わりが近付いていると。
一応明記しておきますが、箒と一夏の出番がもう無いということは決してありませんのでご安心下さい。
あとこれも一応言っておきますが、決してオータムさんが嫌いな訳ではありません。寧ろ好きです、マドカと同じく話が回し易くなると言うか。
それと、次回からまたIS学園サイドに戻ります。
誰の話にするかはお楽しみで。