オレ「できませんでした・・・(小声)」
昭弘「でしょ?じゃあオラオラ来いオラァ!!!(豹変)」
UA1500突破ウレシイ・・・ウレシイ・・・(ニチニチ)
お気に入り数が36・・・異常だな!(感涙)お気に入り登録してくださった皆さん、本当にありがとうございます。
その夜、昭弘はベッドに横たわりながら深い思考の渦に嵌っていた。今日初めてこの世界で目覚めた時と違い、天井の蛍光灯は純白の輝きを放っておらず、薄暗い部屋に溶け込むように輪郭を僅かに残していた。
時刻は既に0時を回ろうとしていた。日中からそれだけ時間が経過しているにもかかわらず、昭弘は未だに頭の整理ができずにいた。
時は少し遡る。
「『あいえすがくえん』?」
「そ!その名の通りISについてお勉強す場所☆「学校」ってヤツだよ。因みにISってのは『インフィニット・ストラトス』の略称ね!文字で表すとこう書くの!!」
学校と言う言葉は昭弘も聞いたことがある。鉄華団にも、妹や弟を学校に通わせたいと言っている団員がチラホラ居た。将来社会に出る為に必要なことを勉強する場であり、友達を作るための社交場でもあるとか。
「…オレがそこに行かねばならない理由を聞いてもいいか?」
「それは言えないなぁ~」
その束の即答から、雲行きの怪しさを昭弘は密かに感じ取った。
「…ISについては?」
「それも言えなぁ~い☆」
間を置かずにあしらう束に対し、少しずつ昭弘の表情が険しくなっていく。
「……もし、その申し出を断ったら?」
「アキくんには悪いけど、無一文で出て行って貰うかなぁ~」
束が普段と何ら変わらない口調で昭弘にそう言い放つ。それを機に、先程まで和気藹々としていた雰囲気は一変する。昭弘は眉間に皺を寄せ、静かに束を睨みつけていた。タロも万が一を警戒してか、束を庇うように位置を変える。
この取引は、昭弘に選択の余地など無いに等しいものであった。
そもそも昭弘はこの世界のことを何も知らないし、金銭も今現在は持ち合わせが無い。そんな状態で追い出されれば、路上で野垂れ死ぬのが関の山だ。場合によっては、それこそ前の世界で言う『
昭弘は、この取引という名の脅迫に対して「YES」と答えるしかないのだ。今現在、昭弘の生殺与奪の権限は彼女たちにあるということを、今更ながら昭弘は思い知ることになった。
だからこそ昭弘は、自身を脅してでも『IS学園』に入学させようとする束の思惑に強い警戒心を抱いていた。そこで自分に
暫くの間睨み合いが続いたが、やがて束の方が先に折れて口を開く。
「…一応言っとくけどさぁ、別にそこで「人殺せ」とか「何か盗んで来い」って訳じゃないからねぇ?」
昭弘は束の今の言葉を全面的に信用した訳ではないが、そう言われては警戒心を多少緩めるしかない。
「それにアキくんにもちゃんとメリットがあるんだよ?例えば背中の阿頼耶識」
そう言われて、昭弘は無意識に背中の阿頼耶識を指でなぞる。
「実はさっきアキくんの話を聞いて、束さん閃いちゃったんだよねぇ!その阿頼耶識を上手く使って、アキくんにいい思いさせてあげられるかもよ?」
まるでセールスマンの様に、束はそのまま続ける。
「それにそれにぃ!そこの教師には束さんの大親友も居るから、アキくんの助けになってくれると思うよ!!」
「………」
《………本当デスヨ?》
「オイゴラクソガキ。何だそのまるで束さんに友達がいること自体疑わしいみたいな目は。あとタロ、お前もアキくんの表情だけで察してんじゃねぇよ解体すんぞ」
まんまと己の心中を見透かされた昭弘。
束の交友関係は兎も角として、昭弘は今から束の条件を飲まなければならない。それしか選択肢が無い以外にも、昭弘は此処で一ヶ月間束たちに世話になっているのだ。その恩は返したい。
それに、束の言う「いい思い」というのは詳しくは分からないが、昭弘にもメリットがあるというのは確かな様だ。それでも昭弘は―――
「……スマン。丸一日考えさせてくれないか?」
「いいよぉ別に。どうせ答えは変わらないだろうし☆」
いくら選択肢がそれしか無いと言っても、昭弘も所詮は人間だ。この選択一つで自身の今後の生き方が決まってしまう可能性もあると考えてしまえば、「YES」と答えるにはどうしても躊躇いが残る。
それに昭弘自身も、今持っている情報と考えを整理した上で引き受けたいと思っていた。今は兎に角、頭を落ち着かせる時間が欲しい。
「じゃ、明日の朝までにね!決まっていなかった場合は「NO」と見なすね☆」
その後、束は他のゴーレム達や同居している盲目の少女『クロエ・クロニクル』を昭弘に紹介した。
束としてはどうせ昭弘は引き受けると思っているので、今の内に自身の
昭弘自身もゴーレム達と共に身体を慣らしたり、『昭弘式』の筋トレをしながら頭の中を整理していった。
そうして現在に至る。
実際、昭弘の頭の整理は凡そ完了していたが、それでも昭弘は悩みが拭えなかった。自身が今何に悩んでいるのか、それすらも解らなかった。
しかし、その原因が束にあることは分かっていた。
「……オルガ」
悩む頭に誘われる様に、ふとそんな名前を昭弘は口にした。
『オルガ・イツカ』
前の世界で鉄華団団長を務めていた男であり、昭弘をヒューマンデブリという鎖から解放してくれた恩人でもある。
『決して止まらない男』。それが昭弘のオルガに対する人物像だった。
昭弘はそんなオルガを心から尊敬していた。常に
今思うと本当に凄い男だったんだなと、改めて昭弘は思う。何故ならその昭弘も今「悩んでいる」からだ。自身の悩みなんて一つしか答えの無いちっぽけなモノだ。それでも、独りで悩むことがこんなにも大変だなんて思いもしなかった。それをオルガは、いくつも答えがある中から何度も悩んで選び抜いてきたのだから、昭弘にとっては果てしないことだった。
だから昭弘は、無意識にオルガという名前を発したのかもしれない。「オルガの悩みに比べたら、自分の悩みなんてまるで大したことなど無い」と、自身を鼓舞する為に。
現にそれを機に、昭弘の脳内を這いずり回っていたモノは、塩をかけられた様にきれいさっぱり溶けて無くなってしまっていた。
(束の目的が何かは知らんが、それでも…)
一つ息を溜めた後、昭弘は普段の仏頂面を崩して静かな笑みを浮かべた。その目からは、この世界で生きていくことに対する揺るがない「志」が滲み出ている様にも見えた。
「
―――翌朝09:00―――
束は気分を高揚させながら、左右の肘を激しく振り猛ダッシュで昭弘の部屋に向かっていた。今回は一対一で昭弘と話したいという束の命令で、他のゴーレムたちは各々の持ち場に就いている。
―――早く教えたい早く訓えたい早く教えたい早く訓えたい早く教えたい早く訓えたい
そんな想いで頭を埋め尽くしながら、束は昭弘の居る部屋の自動ドアが開くより早く突き破る…かに思えたが、意外と律儀に開ききるまで待った後勢いよく入室する。
「アキくん!!オッハヤンベェ~~!!!さぁ!答えを聞かせて貰…ってウゥオォッ!!?」
自動ドアの向こうには、上半身裸で腕立て伏せに勤しんでいる昭弘の姿があった。
「フンッ…おおフンッ…束かフンッ…お早うフンッ…」
これは余談だが、束は男性の裸体にまるで慣れていない。
基本的に一日中自身のラボに籠りながら研究をしており、話し相手といえばゴーレムかクロエ程度しか居ないのだ。しかもよりによって、相手はハリウッドスター顔負けの鍛え抜かれた筋肉を持った昭弘だ。彼の裸体をなぞる汗という名の雫のオプション付きまである。
「フンッ…良し、こんなもんか。ん?どうした、何故隠れる?」
束は兎耳だけを覗かせながら、部屋に入ってこようとしない。
「ああえっとその…まぁうん、アレだ。今の君の姿は束さんの目に毒だから…さっさとシャワー浴びてきたら?」
「?…じゃあそうさせて貰うが」
昭弘は訳も分からないまま、部屋の奥に小さく潜んでいるシャワールームへ、ヒタヒタと素足を運んで行った。
―――15分後
「ほい!そんじゃ気を取り直してぇ!!答えは「YES」ってことでいいよね☆」
「ああ。入学するまでの間、宜しく頼む」
「こちらこそ宜しく!」
昭弘が右手を差し出すと束も右手を差し出して、二人は固い握手を結んだ。
昭弘の新しい生活、その始まりを告げる握手だ。
その後、束は早速ざっくりとではあるがISについて話した。
『
今現在ISは世界最強の兵器として台頭している。
ISが女性にしか扱えないというのもあって、世界には『女尊男卑』という風潮が蔓延している。
原初のISによって引き起こされた『白騎士事件』によって凡そ2000発もの弾道ミサイルが無力化され、核兵器の存在意義が極めて薄くなってしまった。
ISには夫々『ISコア』があり、それが全世界で467機しか存在しない。コアを作れるのは全世界で束だけだが、現在は生産をストップさせている。故に、とてもそうは見えないが束自身指名手配の身であるらしい。
そして、『少年兵』と呼ばれる兵士たちの変化。
「とまぁざっくり説明するとこんな感じ。何か質問ある?」
正直何を質問すればいいのかも分からない昭弘だったが、一つだけ思いついたことを質問した。
「女性にしか扱えないんなら、オレはIS学園に整備士として入学するのか?」
「よくぞ聞いてくれたッ!結論から言うと、アキくんもIS乗りとして入学して貰うよ☆」
それを聞いて昭弘は細く懐疑的な目を束に向けるが、一先ず最後まで聞くことにした。
「アキくんの阿頼耶識を通じて、アキくんにしか扱えない『トンデモIS』を創り上げてあげるよぉ!!」
確かに昨日、束は阿頼耶識の話を聞いて何か閃いたとか何とか言っていた。阿頼耶識を利用すれば、女性にしか扱えないISが昭弘でも使えるようになるとでも言いたいのだろうか。
昭弘はそんな風に半信半疑で聞くが、次の質問に移ることにした。
「何故ISは女性にしか扱えない?」
「束さんがそう設定したからだよ」
それを聞いて昭弘は「理解に苦しむ」と更に目を細めて訴えかける。それはつまり、束ならいくらでもコアを男性用に設定し放題ということではないか。
「…何故?」
「別に大した理由は無いよ?ただこの世界では長きに渡って「男尊女卑」の風潮が続いていたから、そろそろ女性が世界に台頭してもいいんじゃないっていう短絡的な考えですハイ」
束はそう言うが、昨日からのフザけ具合を見るとどうにも信じられない。失礼ながら「単に面白そうだからそうしてる」と言われた方が、遥かに説得力がある。
「因みに無人のISを作ることも余裕だよ!」
まぁそれは、タロたちを見れば一目瞭然だ。昨日昭弘も、タロたちの中に誰も入っていないことは確認済みだ。
だが、昭弘の頭にもう一つの疑問が一直線に浮上してきた。
「じゃあ何故態々オレの阿頼耶識を使う?コアを男性用に設定すれば済むだろう」
昭弘の質問に対して、束は怪しい笑みを浮かべながら得意げに返した。
「フッフッフ☆実はアキくんの阿頼耶識、束さんの考えが正しければISと直接繋ぐことで爆発的な性能を引き出せるかもなんだよねぇ!」
束のその言葉で、昭弘は背中から生えている二本の阿頼耶識をまたもや無意識に触る。
昭弘にとって、この阿頼耶識は自身の“分身”と言っても過言では無かった。阿頼耶識があったから鉄華団を守れた。阿頼耶識があったから自分自身を守れた。阿頼耶識があったから最後まで戦い抜くことができた。
昭弘は、最初は無理やり埋め込まれた阿頼耶識をいつしか誇りに思うようになった。だからか、また
「そいつは…嬉しいな」
その後はIS学園の話に切り替わった。
「そういやアキくんは大丈夫?IS学園は女の子しか居ないけど、抵抗とかない?」
「問題無い。前の世界では女ばっかの船団とも交友があってな」
「あっ、えっ、その…アキくんてやっぱり…」
束は顔を真っ赤にしながら、とんでもない勘違いを口にしようとする。先程の動揺っぷりも相まって、まるで男子中学生だ。
「…いや違うからな?」
さすがの昭弘も、束の反応を察して念を押しておいた。
その後はIS学園にいるという束の友人や、自身の最愛の妹について束が長々と話した。
特に妹の話はそれはもう長く、殆ど妹の自慢話みたいなモノだった。そのご清聴は何と言うか、いつ終わるとも分からない砂漠を無心で歩き続けるみたいだった。そういう訳で段々うんざりする昭弘を
「そうそう!実はアキくん以外にもう一人男性IS操縦者が見つかってるんだった!その子、ISの試験会場に偶然入り込んで偶然発動させちゃってさぁ。んで何故その子が動かせたかっていう理由はその…お恥ずかしい話なんだけどね…」
「コアの初期設定を間違えちゃった☆」
それを聞いて砂漠から解放された昭弘は大袈裟にズッこける。
全く頭が良いんだか馬鹿なんだかよく判らない科学者である。「馬鹿と天才は表裏一体」みたいな言葉があるが、これもそれに当て嵌まるのだろうか。
昭弘との話が一段落した束は、ラボの人気の無い廊下をタロと一緒に歩いていた。結局束は、自身の『目的』までは最後まで昭弘に話さなかった。
それでも、これから昭弘には頑張って貰わねばならない。束の『計画』を実行に移す為にも。昭弘と阿頼耶識は、束にとってはそれだけ重要な「キー」なのだ。
暫く歩いていると、タロが束に話しかける。
《束様…ヨロシイノデスカ?“真実”ヲ伝エナクテ…》
「んー?いいよアレは伝えなくて。その方が束さんにとって都合いいし」
束はこの『計画』を必ず成功させねばならない。自身の夢である『ISを宇宙に羽ばたかせる』ことを実現する為に。
今のISはただの兵器に過ぎない。束はそんなことの為にISを創ったのではない。そんなことの為に白騎士事件を起こした訳ではない。束はそんな今の世界が、憎くて憎くて仕方がなかった。だから―――
「必ず成功させるよ。この計画を」
束のその目は、昭弘がこの世界で生きていくと決心した時と同様、いやそれ以上の「覚悟」が滲み出ていた。
それこそ、「どんな犠牲でも払う」と言わんばかりの。
めっちゃ長くなった・・・。多分毎回これくらいの長さになるかと思われます。
クロエとの絡みは、別の話で過去回想みたいな感じで出したいと思います。少年兵云々についても同様です。
束さんの企みについても、凡そ考えが纏まっておりますので、乞うご期待ください。
そしてやっと次回からIS学園入学です。・・・長かった・・・。皆さん是非楽しみにしていてください。