IS~筋肉青年の学園奮闘録~   作:いんの

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 不味い・・・投稿ペースがどんどん落ちている・・・。というか今回めちゃくちゃ難産でした。
 文字はやたら多いのに話が全然進んでないように見えるのは、私だけでしょうか。


第4話 英国貴族の逆襲(前編)

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ーーーそういやさぁ、アキくんは平気なの?

ーーー何がだ?

ーーー背中の『阿頼耶識(ソレ)』隠さないで入学することになるけど、結構「変な目」で見てくる生徒もいると思うよ?私から頼んどいて何だけど。

ーーー・・・やっぱこの世界でも、()()()()()はあんのか?

ーーーまぁ、「差別」とまでは行かないとは思うけど、この世界における「普通の人間」は背中にそんなモノ付けないしね。

ーーー・・・・・・・・・平気かどうかは分からん、ただ・・・。

ーーーただ?

ーーーどの道オレは『阿頼耶識(コイツ)』を隠すつもりは端から無い。

ーーー・・・理由を聞いても?

ーーー阿頼耶識(コイツ)を付けていたのは、オレだけじゃない。鉄華団の大部分は、団長も含めて阿頼耶識(コイツ)を付けていた。そして、皆阿頼耶識(コイツ)に助けられていた。オレ達にとって阿頼耶識(コイツ)は、「誇り」とまでは行かなくても、大切な身体の一部なんだ。それを周囲の視線を恐れて隠すってのは、鉄華団(あいつら)に失礼だ。自分のことも皆のことも、蔑まれる対象だと認めてる様なもんだろ。

ーーー・・・やっぱアキくんて変わってるよねぇ~。

ーーーお前にだけは絶対に言われたくないんだが・・・。

 

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 1時限目開始の予鈴が鳴り響く中、昭弘が教室の引き戸に腕を伸ばすと、中から一人の女子生徒の声が異様にはっきりと聞こえてきた。それ程大声という訳でもないが、声質には多少の憤りの感情が乗っている様に感じられた。疑問に思った昭弘と箒は、戸を引いて教室内を伺う。そこには、一夏に詰め寄っている一人の女子生徒の姿があった。

 昭弘から見るその少女の外見は、髪色は金色で先端がドリルの様になっている髪を下に向けており、身長は高くも低くもないといった感じだ。服装は他の生徒のそれとは少々異なり、少し長めのスカートを穿いていた。青い瞳がよく目立ち、前頭部には青い飾り物のようなのを付けていた。顔は・・・恐らく美人?に入るのだろう。

 

「いや、そもそもオレ君が誰だか知らないし。」

 

「まぁ!このイギリスの代表候補生である『セシリア・オルコット』を知らないとおっしゃるのですか!?」

 

 先程から明らかに困惑の表情を見せている一夏。昭弘は、その巨躯をゆっくりと一夏とその少女『セシリア』の方へと向かわせる。その昭弘の動向を、周囲の女子達は不安気な表情で凝視している。

 昭弘としては、一夏とは仲良くやっていきたいと思っていた。折角の高校生活だ、男友達が一人も居ないなんて昭弘にとっても寂しすぎる。

 

「オイ、何があったか知らんが、予鈴も鳴ったろ?その辺にしとけ。」

 

 一夏を庇う様に、二人の間に割って入る昭弘に対して、セシリアは、一夏に対してのソレとは比べ物にならない程の険しい表情で、昭弘を睨みつける。昭弘からすると、最早「敵意」に近い表情だった。それでも昭弘は、普段の仏頂面を崩さない。

 数秒程経つと、セシリアがゆっくりと口を開く。

 

「・・・あらあら、誰かと思えば()()()()()でしたか。」

 

 昭弘に対する第一声がソレだった。それは、箒の耳にも確かに届いた。当然だが箒は、先程からセシリアに対して多少なりとも憤りを感じていた。自身の想い人である一夏に馴れ馴れしく近づいているかと思えば、やたら高圧的な態度で一夏を上から見下ろしている。

 それだけなら、まだ辛うじて我慢できた。しかし、昭弘に対しては最早「モルモット」呼ばわり。上から目線とかそういう次元ではない。先程から自身を何かと気にかけてくれている昭弘を、そんな言葉で貶したことが、箒は許せなかった。

 憤怒の表情を浮かべながらセシリアに迫ろうとする箒を、昭弘は左腕を翳して制した。

 

「・・・そいつはどういう意味か、聞いてもいいか?」

 

 当然の疑問を口にする昭弘。その疑問に、嘲笑しながら返答するセシリア。

 

「そのまんまの意味ですことよ。貴方、ニュース等ではT.P.F.B.に保護されたなんて発表されてますけれど、すべて偽りの情報ではありませんこと?」

 

 そう返されて、昭弘は表情を曇らせる。そう、確かにその情報は束とT.P.F.B.で考えたシナリオにすぎない。

 

「・・・証拠はあんのか?」

 

「そうだ!貴様の下らん妄想で、昭弘を貶めるな!!」

 

「ええ、確かに証拠はございませんわ。しかし、T.P.F.B.の黒い噂は私も聞いたことがあります。噂の中には、年端もいかない少年兵を使って、非道な人体実験をしてるなんていうのもございますわ。大方、貴方もその中の一人ではありませんの?」

 

 セシリアの言っていることは、証拠も何も無い、ただの噂にすぎない。しかし、事実であることに変わりはない(昭弘が施術を受けたこと以外だが)。昭弘も、これ以上口を出すつもりは無かった。昭弘は別に、自分がモルモットと言われたことは特に気にしていない。彼が気になったことは、セシリアがT.P.F.B.の「悪事」に関する証拠を持っていることだった。が、特に証拠を持っている様でもないので、後は自身への罵声罵倒を授業の本鈴まで聞いているつもりだった。

 ・・・・・・そう、それだけなら良かったのだ。それだけなら昭弘も特に思うことは無かった。この後、セシリアが去り際に発する「ある一言」さえ無ければ。

 

「まったく・・・もしそれが事実だとするならば、T.P.F.B.には憤りを通り越して、最早哀れみさえ感じますわ。背中にそんな薄汚いモノを施術してまで、ISに勝ちたいのかしら?」

 

 

 

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・コイツ今なんつった?)

 

 

 

 その一言で、箒は遂に我慢できずにセシリアに掴みかかろうとする。一夏も、憤慨しながら立ち上がり、セシリアに迫ろうとする。

 が、二人の行為は()()で終わることとなる。その原因は昭弘にあった。もっと正確に言えば、昭弘が纏っているその雰囲気にあった。普段から鋭いその目つきは更に鋭さを増しており、眉間の皺はこれ以上ない位深く刻まれていた。口は閉じたままだったが、歯を食いしばっているからか、その両脇にある頬筋は歪な形に浮き上がっていた。両掌には堅い拳が握られており、指と指の間からは、爪が掌に食い込んでいるからか血が滲み出ていた。そう、だれの目から見ても明らかな程、昭弘はキレていた。

 そんな昭弘の禍々しい威圧感に、箒や一夏を含めたクラス中が、凍てついた様に動きを止めていた。中には、小刻みに震えだす者や、涙を浮かべる者まで居る程に。こんな巨漢が暴れだしたら、どうなってしまうのか?想像するだけでも身の毛がよだつ様な光景が、クラスメイト達の脳裏を過る。

 

 

 

              キーン、コーン、カーン、コーーーーン

 

 

 

 授業の本鈴が鳴ると同時に、クラスメイトはハッとして意識を現実に引き戻す。その直後、千冬と真耶が入室してくる。

 箒が昭弘の席をチラリと見ると、そこには普段の仏頂面の昭弘が座していた。

 セシリアはと言うと、昭弘の威圧に気づいていない為か、高慢ちきな表情を崩さずに自席に座していた。窓際の最前列という、昭弘とは丁度対角に位置する席であった。

 

「さて、では早速だが1時限目の授業を始める・・・・・・・・・と言いたい所だが、実は未だ決めていないことがあったのだ。」

 

 今思い出したかのように、一旦授業を中断する千冬。

 

「『クラス代表』についてだ。」

 

 千冬が発したその単語に、一夏が反応を示す。

 

「ちふ・・・織斑先生、クラス代表って何ですか?」

 

「簡単に説明すれば、一般的な学校で言う、「学級委員」みたいなものだ。違う部分と言えば、その学級の代表として、ISによる『クラス対抗戦』に出場するくらいか。」

 

「ちなみにこのクラス代表だが、一年間そのクラス全体の「指標」となる。つまり、クラス代表の実力次第によって、そのクラスへの評価が変わるという訳だ。まぁ、これに関してはそんなに構える心配はない。そのクラスに合った指導方針が為されると思って貰えれば良い。」

 

「無論、自推・他推は問わん。まぁ私としては自推してほしいが、他推された者も基本的に拒否権は無い。」

 

 千冬の説明を聞き、しばらくクラス中に沈黙が流れるが、一人の第一声を皮切りに次々と挙手の波が起きた。

 

「はい!織斑くんが適任だと思います!!」

 

「私も!」

 

「私も一夏くんがいいと思う!」

 

「・・・・・・ってオレかよ!?」

 

 まぁ当然こうなるのも無理はない。一夏は、全世界から注目されているただ一人の男性IS操縦者(イレギュラー)。しかも俗に言う「イケメン」でもある。

 今のところセシリア以外のクラスメイト一人一人の実力が分からないのだから、他推となれば、自身の興味がある人物に指を向けるものだろう。

 因みに昭弘は、誰からも推薦されることは無かった。先程の一件で、クラスメイトからはすっかり怯えられている様だ。

 セシリアもまた、クラスメイトからの印象が余り宜しくないのか、同様に推薦されることは無かった。昭弘に対してあれだけストレートに差別発言をしたのだから、こちらも当然と言えば当然だが。

 

「お待ちくださいまし!納得が行きませんわ!!」

 

 抗議の声を上げたのは勿論、セシリアであった。千冬はセシリアの声に耳を傾ける。

 

「実力から言って、イギリスの代表候補生であるこのセシリア・オルコットが、クラス代表を務めるのは明白。それを偶然ISを起動させたに過ぎない男風情に、任せるわけには参りませんわ。まぁ『MPS』などという粗悪な紛い物を使うような実験動物(モルモット)よりは、幾ばくかマシかもしれませんが。」

 

 何故この娘は最後に余計な一言を発するのだろうと、クラス全員が思った。皆、恐る恐る昭弘の方を見るが、特に先程のような剣幕は無い。

 箒は、掴みかかりそうになるのを必死に抑えていた。

 

「・・・オイ、馬鹿にすんのはオレだけでいいだろ。アルトランドまで巻き込むなよ!」

 

 自身だけならまだしも、関係のない昭弘まで侮辱するセシリアに純粋な怒りの想いをぶつける一夏。これ以上は不毛だと判断した千冬が、ため息交じりに声を割り込ませる。

 

「そこまでにしておけお前ら。・・・ふむ、織斑が他推でオルコットが自推か。・・・ならシンプル且つ公正な手段として、ISによる模擬試合(バトル)でクラス代表を決めるとしようじゃないか。二人とも、それで異存は無いだろう?」

 

 本当にシンプルな方法であった。

 

「おう上等だぜ。クラス代表とかはよくわかんねぇけど、オレやクラスメイトのことまで馬鹿にされて、引き下がれるかっての!」

 

「私もそれで構いませんわ。クラスの皆様に、私の実力を示す良い機会ですわ。」

 

(はぁ・・・そもそも、クラスの「指標」を選ぶのが本来の趣旨なのだがな。)

 

 二人が了承したところで、千冬が締め切りに入ろうとする。

 

「良し。他に自推他推したい者はいないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、教室の右後方から大きな打撃音の様なものが聞こえた。クラスメイトが振り向くと、昭弘が両手を机に当てながら立ち上がっていた。掌からの出血は、もう止まっているようだった。その顔には、真剣な眼差しがあった。

 

「織斑センセイ、今更ながら、オレも自推してもいいですか?」

 

 その余りにも唐突な申し出に、クラス中が困惑の表情をみせる。

 

「・・・一応、理由を聞いてもいいか?」

 

 そう聞かれて、昭弘は自身の阿頼耶識を右手でなぞり、どうしたものかと頭を捻る。

 昭弘が自推した目的は、クラス代表になることではない。そのクラス代表を決める模擬試合においてセシリアを叩きのめし、先程のことを謝罪させることこそが真の目的である。

 昭弘は、あのプライドの塊のような女がそう簡単に頭を下げるとは思っていなかったので、どうすべきか先程からずっと考えていたのだ。そのことを考えていた矢先に、このクラス代表決定戦という提案が舞い降りてきたのだ。

 しかし、昭弘はクラス代表になるためにこのクラス代表決定戦に参加する訳ではない。言うなれば、セシリアを叩きのめして謝罪させるために、この模擬試合を利用しようとしているのだ。だからこそ、昭弘は理由を聞かれてたじろいでしまう。

 がしかし、直ぐに頭の中の靄を振り払い、馬鹿正直に理由を述べた。

 

「・・・そこの高慢ちきなお嬢様をブッ飛ばしたいって理由じゃ、ダメですかね?」

 

 セシリアを指差した状態で、不敵な笑みを浮かべながら千冬を真っ直ぐに見据える昭弘。千冬も、昭弘を睨みつける様な鋭い視線で返した。・・・が、やがて千冬も不敵な笑みを零し、昭弘に返答する。

 

「フッ・・・いいだろう。その自推を認めてやろう。」

 

 無論、当のセシリアは猛反発する。昭弘と同様、机を両手で叩きながら千冬に物申す。

 

「織斑先生!彼の自推を取り消して下さいまし!!この男はただ、己の憂さ晴らしの為にクラス代表決定戦を利用しようとしているに過ぎませんわ!!クラス代表となる意志すら無い者に、自推する資格などありはしませんわ。」

 

 が、セシリアの物申しを嘲るかのように、箒が勢いよく手を挙げる。

 

「先生!私は昭弘を推薦します。」

 

「なっ!?貴女・・・どういうつもりですの!?」

 

「どういうつもりも何も、私は昭弘がクラス代表に相応しいと考えたまでだが?他推なら文句もあるまい?」

 

「ッ!・・・・・・・・・・・・」

 

 セシリアは、そう言われて反論することができなかった。何故なら、一夏もまたクラスメイトからの他推により、クラス代表になろうとしている。そして先程千冬は、他推された者も拒否権は無いと言っていた。

 箒はそのことを逆手に取り、敢えて昭弘を他推したのだ。昭弘には()()()()()()()の借りもある。それにこのまま昭弘がセシリアに言われっぱなしと言うのも癇に障る。

 昭弘は、微笑を浮かべながら箒に軽く会釈をした。

 

「・・・フンッ!まぁいいでしょう。どの道この私が勝利を手にすることは、最早自明の理。その無謀な挑戦、受けて差し上げますわ!!」

 

 こうして、1年1組のクラス代表決定戦が、1週間後に行われることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー一時限目終了後ーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーーーーー廊下にてーーーーーー

 

「・・・その、織斑先生、よろしかったのですか?」

 

「ん?何がだ?山田先生。」

 

 恐る恐る尋ねる真耶に、千冬は続きを促す。

 

「クラス代表決定戦のことですよ!確かにオルコットさんの言動には問題があったかもしれませんが、もしアルトランドくんが勝ち抜いたりしたら、クラス代表は彼ですよ?」

 

 真耶も、セシリアの昭弘に対する言動に憤りを覚えなかった訳では無い。しかし、私怨の為だけになりたくもないクラス代表に就任するというのは、誰の為にもならない。

 実際、今現在の1年1組の雰囲気は、決して良好とは言えない。セシリアと昭弘。良くも悪くも存在感があって我の強い二人が険悪な状況では、他のクラスメイトにとっても居心地は決して良くないだろう。

 

「・・・フフフフフ。」

 

 途端に、千冬は先程教室で見せた笑みを再度浮かべる。

 

「山田先生、私は何も「勝った」者をクラス代表にするとは一言も言ってないぞ?」

 

「では・・・何の為に・・・?」

 

 真耶が当然の疑問を口にする。千冬は少し考える素振りを見せると、再び笑みを浮かべて言葉を放つ。

 

「なに・・・お互いの認識を改めさせるのは、真っ向からぶつかり合うのが、一番なんだよ。」

 

 千冬だけは知っていた、あの『天災』に目を付けられることの重大性を。そして、1時限目が始まる直前、教室の外に居ても伝わってくる()()威圧感。MPSとやらがどれ程の性能なのかは千冬にとっても未知数だが、間違いなくあの元少年兵の実力は本物だ。

 そして、昭弘というまるで異なる価値観を持つ存在が、セシリアや一夏、その他のクラスメイトの視野を大きく広げてくれる可能性にも期待しているのだ。

 

「ま、模擬戦が終われば、君も解ってくれると思うぞ?」

 

 未だ納得しきれていない表情の真耶を、千冬はそう宥めた。

 

 

 

ーーーーーー1年1組 教室にてーーーーーー

 

「よっ!アルトランド!」

 

 昭弘が自席にて参考書を読んでいると、一夏が声をかけてきた。何やら清々しい表情をしているように思えた。

 

「おお、どうした?織斑。」

 

 改めて感じる昭弘の存在感に多少たじろぎながらも、一夏は未だ昭弘に伝えていない言葉を伝える。

 

「いや、アレだ・・・今更って思われるかもだけど、さっきは庇ってくれてありがとな。マジ助かった。」

 

「ま、実のことを言うと、オレもお前に話しかける切っ掛けが欲しかったんだ。だからそんな気にすんな。」

 

 昭弘の一夏に対する第一印象は、「掴みどころが無い」といった感じだった。昭弘が今迄出会ってきた、どの少年兵とも違う。織斑千冬(せかいさいきょう)の弟と聞いていたので、もっと途轍もない存在感を放っているのだろうかと思っていたが、そういう訳でもない。

 

「あっ!そう言えばオレも未だ箒に話しかけて無かった!!」

 

 一夏のその一言で、チラリと箒の席に目を向ける二人。すると、箒もこちらを見ていたのだが、慌ててそっぽを向いてしまった。

 

「そういや、箒と織斑は結構付き合いが長いのか?」

 

「おうよ!幼馴染だと自負するくらいには、付き合いが長いぜ。」

 

(その割には、織斑を話題に出すとつんけんどんな態度になるような・・・だが、さっきのSHR後は箒から話しかけようとしてたしな・・・・・・二人の関係性がイマイチ解らん。)

 

「取り敢えず、箒の席まで行って来たらどうだ。積もる話もあるんだろう?」

 

「ああ!また後でな昭弘!」

 

 そう言って、一夏は箒の席に向かっていった。

 二人の会話の内容が少々気になる昭弘は、そのまま自分の席から眺めることにした。

 

(そういやオレも、さっきの()()()()のお礼を言わないとな。まぁ、お取込み中だしな、後でいいか。)

 

(にしても・・・箒の様子がやはり変だな。顔も赤いし、どことなくあたふたしている様に見える。・・・・・・まさかとは思うが。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー昼休みーーーーーーーーーー

 

 

 

 IS学園の授業も4時限目までが終了した。

 昭弘は、束の指導のお陰で問題なく授業内容についていくことができていた。箒も特に問題は無さそうだが、一夏は現時点でもかなり厳しいようだ。何せ、ISに関する参考書を「電話帳と間違えて捨ててしまった」とか何とか。それが2時限目の授業で千冬にバレ、大目玉を喰らっていた。一応その後、新しい参考書を貰うことはできたが。

 

「まったく、何度も言うが、お前は本当に馬鹿だな。いくら参考書が分厚いとは言え、普通電話帳と間違えて捨てるか?」

 

「うるさいなぁ・・・もういいじゃねぇかその話は。」

 

「解らないことがあったら、オレや箒だけじゃなく、周りのクラスメイトやセンセイにもしっかり教えを乞えよ?オレ達だって、エリートって訳じゃねぇんだ。」

 

「うーん、やっぱその方がいいかなぁ。まぁ山田先生なら兎も角、千冬ねぇには頼りたくねぇんだよなぁ。」

 

(別に頼ってもいいと思うが。仲が悪い・・・・・・訳じゃないよな?さっきのやり取りからして。)

 

 昭弘は、箒と一夏と共に昼食を摂っていた。彼らが昼食を摂っている「学食」には、他にも大勢の生徒が詰め掛けていた。

 因みに、一夏と箒は「生姜焼き定食」なるものを券売機で選んでいたので、どんな料理なのか気になった昭弘も同じものを選んだ。

 今回は、一夏の周囲には不思議と箒以外の女子生徒が見当たらなかった。彼の真正面に、「元少年兵の強面の大男」が居るのだから、それも致し方ない。一夏としては、ゆっくりと食事ができてラッキーだと、心の中で昭弘に感謝した。

 

「にしても意外だよなぁ。箒とアルトランドが知り合い同士だったなんてさぁ。」

 

「昭弘とは、今日が初対面だぞ?まぁその・・・色々あって、仲良くなったのだ。」

 

「そうだったのか!?下の名前で呼び合ってるし、なんかすごい仲良く見えたから、てっきり・・・」

 

 一夏のその一言で、その先の言葉を予測してしまった箒は、慌てて否定の意志を示す。

 

「お、おい!言っておくが、私は別に昭弘と付き合っている訳ではないからな!?」

 

「いや、誰もそこまで言ってないんだが・・・。」

 

「まったく・・・お前と言う奴は、人の気も知らないで・・・。」

 

 箒は、先程と同じ様に顔を赤らめながら、聞こえるか聞こえないか程度の声量で呟いた。

 

「うん?何か言ったか箒?」

 

「な、何でもない!この馬鹿!!」

 

 そう言うと、箒は平手で一夏の頭を引っ叩いた。

 

「イッテ!なにすんだよ!いきなり!」

 

(やっぱ・・・そうだよな・・・惚れているよな?完全に。)

 

 昭弘は、先程からの箒と一夏のやり取りを見て、思わずそう感じずにはいられなかった。

 前世、三日月に対して想いを寄せている二人の女性が居たのだが、箒の一夏に対する表情はあの二人が三日月に向けるそれとよく似ていた。

 

 

「んで、話は変わるけどさぁ、・・・勝てるかな、オレ。オルコットに。」

 

「・・・まぁ、普通に考えて無理だろうな。」

 

「・・・なぁ箒、そこはせめて「現時点では難しい」程度に丸めてほしかったんだけど。」

 

 冷酷に事実を言い放つ箒に、一夏は軽く毒づいた。

 

「心配すんな織斑。そこら辺は、オレと箒で一週間しっかりとサポートしてやるよ。オレは「MPS乗り」だが、それでも教えられることはあるだろうさ。それに、たとえ勝てなくても、それで“死ぬ”訳じゃないんだ。一週間もありゃ、一泡吹かせられるくらいにはなるだろ。」

 

「お、おう。サンキューなアルトランド。けど、いいのか?お前だって模擬試合が控えてんのに。」

 

「ああ、そこんとこは別に気にすんな。」

 

 昭弘は、一週間やそこらで自身が劇的に進化するとは思っていなかった。一夏の場合は、未だ初心者同然なのだから、一週間で何かしらのコツのようなものを掴めるかもしれない。

 しかし、昭弘は束の下で2ヶ月間みっちりとMPSの機動訓練を受けてきたので、今更1週間猶予を貰ったところで、そこまで自身の実力が上がりはしないのだ。

 

(そういや、センセイから許可が下りれば、過去の試合のログを観れるんだっけか。後で山田センセイに頼んでみるか。)

 

 それでも昭弘は、対策はしっかり立てようと考えていた。昭弘にとって、今回の模擬試合は絶対にセシリアには負けられないのだ。鉄華団(かぞく)の名誉のために。

 

「・・・おっと、そうだ。なぁ箒。」

 

 思い出したかのように、箒に話を振る昭弘。

 

「ん?なんだ?」

 

「さっきはありがとうな。あの他推がなきゃ、多分却下されて終わってただろうぜ。」

 

「・・・それこそ、気にするな。これで、()()()だしな!」

 

「フッ・・・違いねぇ。」

 

 SHR後のことを思い出し、仏頂面から微笑を零す昭弘。

 

「・・・なぁ、いい加減箒とアルトランドの間に何があったのか、教えてくれないか?」

 

「・・・フンッ!お前にだけは()()()は死んでも教えん!!」

 

「なんでだよ!?増々気になるって!!」

 

(やっぱ、アレか?久しぶりに逢った想い人には、暗い顔見せて余計な心配させたくはないもんなのか?・・・乙女心っつうのは、イマイチ良くわからん。)

 

 そんなことを考えていた昭弘は、ふと頭の中を別の思考に切り替える。セシリアのことだ。

 

(それにしても、気がかりなのはやはりオルコットだな。何故あそこまでオレを目の敵にする?)

 

 当然だが昭弘は、今日という日を迎えるまでセシリアとは一切面識が無かった。何も、セシリアから恨まれる様なことをした覚えも無い。だから、昭弘はあそこまでセシリアに目の敵にされる覚えは無いのだ。

 それとも、単に差別意識が強いだけなのか。

 

 

 

 一方、セシリアも食堂にて一人で昼食を摂っていた。昭弘たちとは、中々に距離がある席だった。

 

(・・・・・・まったく、この方達はもう少し静かに食事ができないのかしら。マナーも何もあったものではありませんわ。)

 

 セシリアは、内心でそう苦言を呈していた。

 

(はぁ・・・こんなことなら、購買で調理パンでも購入して、屋上で食事を摂るべきでしたわ。)

 

 小さな後悔の念を抱きながら、セシリアは今回の2人の対戦者のことを思い浮かべる。

 

(織斑一夏・・・唯一の男性IS操縦者だと聞き及び、それなりに期待していたのですが・・・期待外れもいいとこですわね。品性の欠片も無いといいますか・・・まぁ確かに、ほんの少しハンサムかもしれませんが。)

 

 セシリアは、一夏に対してそんなことを考えていたが、次の思考に移った途端、セシリアの表情は泥の様に歪んだ。

 

(昭弘・アルトランド・・・私はあなたのような人間の屑に此処に居られるだけで、腸が煮えくり返りそうになるのですわ。あなたがた『少年兵』は、“あの時”私から両親を奪っただけでは飽き足らず、今度はMPSなどと言う紛い物で崇高なISを汚そうなどと・・・!)

 

 セシリアは、心の底から「少年兵」という存在を憎んでいた。

 セシリアの両親は、彼女が未だ幼い頃列車事故によってこの世を去っているのだ。その列車事故を引き起こしたのは、少年兵を中心とした武装テログループだった。

 しかし、セシリア自身も、頭では解かっているのだ。彼等少年兵は、何も自分たちの意思でセシリアの両親を殺した訳では無いということを。彼等少年兵に、選択の自由など無い。大人の命令に背けば、その場で銃殺されるのだから。

 無論、昭弘自身に何の罪も無いことだって、重々承知している。元少年兵だからと言って彼を侮蔑するのは、最早唯の逆恨みに過ぎない。

 それでも、心までは完全に制御すことはできない。少年兵という存在を許そうが許すまいが、彼女の両親はもう戻ってこないのだから。いくらその少年兵達に彼女の両親を殺す意思が無かったとしても、実行犯であるという事実に変わりはない。

 

 昭弘とMPSにしてもそうだ。

 両親亡き後、セシリアは自身の家を「金目当ての親戚共」から守るために死に物狂いで勉強した。休む間もなく。友人を作る間もなく。悲しむ間もなく。

 ISの適性検査も受けた。適性はA。適性最大値がSなので、これは極めて高い数値と言えた。IS操縦者としても、脇目も振らずに努力した。国家代表候補生という強力な肩書を得るために。そして、最終的には『国家代表』という絶大な地位を手に入れるために。

 そうしてとうとう、彼女は頂きに手が触れられる距離にまで近づいた。その証が国家代表候補生の肩書なのである。セシリアは歓喜した。自身の努力は無駄では無かったと。そして、自身を此処まで連れてきてくれたISという存在に、最大限の感謝の意を示した。

 それを・・・たかが拾われた、しかも少年兵が操る「MPS」などと同じモノにされてはたまったものでは無い。

 

 どんなに頭では理解していようと、そんなことで「人の憎悪」は消えはしないのだ。

 

(昭弘・アルトランド・・・1週間後の模擬戦では、もう此処IS学園には居たくないと泣きべそをかくまで徹底的に痛めつけて差し上げますわ。)

 

 英国貴族セシリア・オルコットは、改めて自身の心にそう誓いを立てた。ドス黒い炎を、そのコバルトブルーの瞳に宿しながら。




 という話でした。セシリアは、原作とは大分違う性格にしてあります(多分)。
 あと、ごめんなさい。もしかしたら次中編後編で分けることになるかもしれません。

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