IS~筋肉青年の学園奮闘録~   作:いんの

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第46話 「奴ら」は今

―――――6月26日(日)―――――

 

 2人の眠れる機人が目覚め、打鉄弐式の完成計画も纏まると言う怒涛の一日が過ぎ去って早くも翌日。時刻は10時を少し回った所。

 

 この時間帯なら「彼女」は出てくれるだろうか。仮に出てくれたとして、その後果たして自分自身無事で居られるだろうか。

 と、昭弘は深緑色のスマホを右手に、目を瞑りながらそんな不安に駆られていた。

 

 自室の窓から斜めに差し込む朝日によって、薄暗く翳る液晶画面に表示されている名前は『クロエ・クロニクル』。

 成程確かに規則正しい生活習慣を身に着けているかの少女なら、既に起床、朝食、朝の身支度等を終えているであろう。

 更には、彼女の保護者であり監視者でもあろう『篠ノ之束』。比較的夜行性のきらいがある貴奴なら、この時間帯は寝ている可能性が高い。尤も、かの兎に睡眠を取る必要性があればの話だが。

 

 ただ電話を掛けるだけ。だのに何故昭弘がこれ程までに緊迫しているのかと言うと、当の天災科学者と“冷戦状態”にあるからだ。

 直接刃を交えはしないが、昭弘にとっての彼女は現時点では限り無く敵に近い。

 もしクロエへの通話が知れたら、何をされるか解ったものではないのだ。

 

 だが…

 

……トゥルルルル……トゥルルルル…

 

 悩む事こそ時間の無駄。昭弘は通話ボタンを押した。

 そして、時間にして3コールと少しだろうか。幼くも透き通る様な美声が、受話口によって昭弘の耳元へと届けられる。

 

《おはようございます。昭弘様》

 

 変わりの無い元気そうな声に、先ずは素直に胸を撫で下ろす昭弘。

 

「朝っぱらから悪いなクロエ。訊きたい事があってな」

 

《何なりとどうぞ》

 

 前回通話した時と同じく、知れた仲である2人は自然と会話を繋げていく。

 

「…単刀直入にいくぞ。束が今「何」を成そうとしているか、お前知らないか?」

 

 それを聞いた途端、クロエはか細い息を吞んだ。自身と同じ疑問を、昭弘が抱いていたが故の動揺だった。

 クロエも、束が何か巨大な事を成そうとしているのは分かる。だがそれが何なのかまでは知らない。その計画を通過した後の最終目的もだ。

 

 よって、昭弘にどう返答すれば良いのかどうにも解らない。

 かと言って「何も知らない」とだけ返すのも、束と昭弘の家族としては情けない話だ。ここはせめて、ちょっとした単語だけでも昭弘に送り届けたい所。

 

 そう、一つだけあった。大陸のホログラムが浮いていたあの部屋で、束がサラっとその口から漏らした小さな情報が。

 

《…気になる点でしたら1つだけ…アッ!》

 

プツッ プーッ…プーッ…プーッ…

 

 切れた。いや、クロエの声の上げ方からして束に取り上げられたと見ていい。

 だが、クロエを妹の次に溺愛している彼女の事だ。別に酷い仕打ちは繰り出していないだろうと、昭弘は考えた。

 

 それに解った事もあった。

 それは、束も所詮「人間」であると言う事だ。クロエとの通話を強制的に切り上げた事が、それを物語っている。昭弘に、延いてはIS学園の誰かに知られたくない何かがあったのだ。

 情報を恐れ、全知全能の神でもないならば、必ず付け入る隙はある筈。

 

 そんな風に頭で纏め上げた後、昭弘は深呼吸して自身の身体を軽く視線でなぞる。すると今度は、ゆっくりと部屋中を見回す。特に異常らしきものは見当たらない。

 これは束について尋ねた時、昭弘が例外無く行っている習慣…と言うより癖の様なものである。

 それだけ、束による「情報消去」を恐れているのだ。

 

 監視だけではない。間違いなく、此処IS学園には束の放った“見えないネズミ”が居る。

 最初にそう考えたのは4月の13日、それも放課後の出来事だった。

 本来コアの設定上『白式』しか扱えない筈の一夏が、訓練用の『打鉄』を起動させたのだ。

 コアが男性用に再設定でもされなければ、一夏がISを起動させる事は不可能。再設定が可能なのは天災ただ一人だが、彼女の性格を考慮すれば直接IS学園に潜り込むとも考え難い。

 

 そこまで行き着けば、束自慢の無人ISの仕業と言う答えが一番自然だ。

 シャルロットに関する書類を秘密裏に抹消し、束のラボに居た頃の昭弘とも少しだけ面識のある『鋼鉄のエージェント』たちだ。

 

 今もきっと、彼等はこの学園の何処かに居る。主にとって不都合なモノを、内々に処理する為。

 

 そんな事等、とうの昔から勘付いていた昭弘。

 

 だが、ある根本的な矛盾に気付いたのは正に今この瞬間であった。

 それは、ゴーレムの襲撃が終息した時点で自身を始末しないのはおかしいと言う事だ。

 

 無人IS等と言う超技術による強襲は、勘の良い人間なら「天災以外ありえない」と証拠が無くとも予想する。そして、千冬は昭弘と束が旧知の間柄と言う事だけは把握している。昭弘が聴取を受ける事は確実だ。

 昭弘の知る束は、ああ見えてどんな些細な事だろうと決して見落とさない性分だ。そんな彼女が、ごく0.1%でも昭弘から情報が漏れるリスクを放置するかと問われれば、答えは否である。

 

 情報を喋ろうとする直前に消す方法も、改めて考えれば非合理的だ。見張りの手間が増えるし、何より確実性に欠ける。

 なればこそ、事が終わってからさっさと始末するに限る。束なら猶の事だ。

 だが昭弘は今もこうして生きている。

 

 この現状から考えられる事は2つ。少なくとも昭弘の持つ情報は、例え他者に漏れようと束の計画には何ら支障をきたさない。或いは、昭弘に死なれたら計画に支障が出る。このどちらかだ。

 

(つまり逆を言えば織斑センセイと生徒会長、双方との完全な情報共有が可能…か)

 

 そう考えた昭弘は、本日の午後から行われる2度目の聴取と言う名の「密会」で、知っている事全てを話す決意を固めた。

 

 

 

 

 

―――正午過ぎ 地下研究室

 

 タロとジロが目覚めた事で日中は地上の格納庫へと移動している今、IS学園人工島の地中に存在する研究施設はほぼ無人に近い。

 それでも、千冬の権限があってこその貸し切り状態だと言う事を、昭弘も楯無も忘れてはいない。

 

 これから彼等は、「アフリカの情勢とそれに関わっているであろう組織」についての新情報と互いの見解を言い渡そうとしている。

 何故態々地下研究室(此処)なのかと言うと、何らかの「口封じ」から周囲への被害を少しでも抑えたいと言う思いからだ。

 現に一番消される可能性の高い昭弘は、分厚い強化ガラスの向こう側でパイプ椅子に座している。昨日まで、タロとジロが隔離されてた空間だ。

 

「お前だけ隔離する形になってしまった事、改めて謝罪しようアルトランド。周囲を巻き込む可能性が0ではない以上は…」

 

《ええ、オレも理解してます》

 

 千冬の謝罪と集音気が拾った昭弘の応答を皮切りに、楯無が進行を始める。

 

「じゃあ早速、話して貰うわよ?」

 

 

 それまでゆっくりと過ぎて行った時間は、昭弘の語りを追う様に駆け足気味で過ぎ去っていった。

 昭弘は言われた通り、束とT.P.F.B.について脳内に残留している情報を話した。

 但し、自身の出自については話さないでおいた。

 目覚めた直後束から聞いた「この世界と自分について」の話が本当なのかどうか、昭弘自身怪しくなってきたからだ。

 

 

 話を聞き終えた千冬と楯無だが、昭弘が思っていた程動じなかった。

 どうやら、彼女らの予想をピタリとなぞる結果となった様だ。

 

 一部の情報には、関心と言うか驚きを隠す事敵わなかった様だが。

 

「アナタの話通りなら、グシオンはMPSではなく実質的にはIS。そしてISは篠ノ之博士の手にかかれば、男でも操縦可能…って事でいいの?」

 

《…そうです。信じられないかもしれませんが》

 

 昭弘が嘘をついていない事は、類い稀な観察眼を持つ楯無には解る。

 

 それでも尚、あっさりと受け入れるには余りに事の大きい情報だった。

 本当は男性にもISが扱える等、仮に実証されればどれだけの武装勢力が蜂起するのか見当も付かない。

 

 元を辿れば、一夏がISを起動させた時点で察するべきだったのだろう。

 何故か女性にしか扱えない?開発者でもその原因が解らない?今思えばふざけるなそんな筈が無いだろうと言いたい。

 ISコア内がブラックボックスであるのを良い事に、開発者である束が好き勝手に弄っていると考える方が遥かに妥当だ。

 

「…この際、その一件は一先ず置いておこう。それより楯無、諜報部の成果はどうだ?アルトランドの情報を裏付ける様なものはあったか?」

 

 千冬が昭弘に向けていた視線を楯無へと流すが、楯無は変わらず晴れない表情のまま液晶端末の資料を千冬に見せる。

 

 先日事前に知らされずとも、楯無が日本の諜報機関「更識家」の当主であると言う事実に、昭弘はさほど驚きはしない。

 気配の自在な操作、達人級と思われる合気、昭弘の中では幾らでも「その筋」の候補があった。

 

「……証拠と呼べる様なものは何も」

「先ずT.P.F.B.ですが、本社及び支社近辺、義手義足の製造工場、入念な聞き込み調査、そしてそれらの場所から算出した推定位置にも、MPSの製造工場は見つかりませんでした。当然、MPSも少年兵も」

 

 本当に楯無は、勘が鋭いと言うか状況把握が早い。

 

 前回昭弘が楯無に話した内容は、束とT.P.F.B.の内通だけで詳細は何一つ教えていない。

 にも関わらず襲撃によるグシオン最大出力の開放、T.P.F.B.が持つ裏の顔、そして襲撃の黒幕であろう束。これらを掛け合わせ、「新型MPSの量産」と言う推論にまで漕ぎ着けたのだ。

 

 今回の諜報活動は、その決定的証拠を掴む事にあった訳だ。

 

 ここで楯無の「MPSも少年兵も居ない」発言に対し、昭弘は静かに物申す。

 

《ちょっと待って下さい。本社にも少年兵が居ないのはおかしい。オレが訪ねた時は、ちゃんと警備をしていた》

 

 昭弘は現在、T.P.F.B.の内情について何も知らなかった。

 実はT.P.F.B.と正式な契約を結んでいるのは束であり、昭弘ではない。

 よって彼等は例え昭弘から何か訊かれたとしても、勝手に答えてはいけないしその義務も無い。

 デリーとの個人的な電話みたく 、合間の雑談程度ならその限りではないのだろうが。

 

「じゃあ移動させたのよ。証拠が出ないようにね」

 

 楯無の諜報部隊も、その道のプロだ。実際に偽装し、社内まで潜り込んで調べ上げたが故の結果なのだろう。

 それで文書も履歴データすらも出て来なかったのならば、T.P.F.B.は白と言わざるを得ない。ならば、束との繋がりを示すモノも出ては来ない。

 常日頃から“表”と“裏”を使い分けてるだけあって、連中も「目」を欺く事に関しては一級らしい。

 

 ワンマン経営者であるデリーへの尋問も、楯無の表情を見るに失敗に終わったのだろう。

 常日頃からスパイを警戒してる男が百戦練磨のSPに護られ、本社・支社・紛争地帯を頻繁に行き来するのだ。指先一本の接触すら厳しい。

 

 では肝心の工場は何処なのかと、昭弘が訊ねる前に楯無が答える。

 

「以上の事から考えられる工場の場所は恐らくアフリカの、それもコンゴかウガンダ、南スーダン辺りじゃないかしら」

 

 中央アフリカ。其処は、更識家が持つどの諜報網からも外れる地域だ。

 

「「最前線」と言う訳か。道理だな」

 

 納得する千冬だが、それだけではない。

 

 現状、中央アフリカにおける外部からの諜報網構築は難しい。

 

 先ず事前情報の乏しさである。

 何処にどの支部があるのか、組織構成はどうなっているのか、治安は回復したのか。それらが何も判らない以上、あの広大な地域一帯を片っ端から調査する羽目になる。

 また、SHLAの様な残忍な武装勢力の存在も視野に入れておく必要がある。

 他にも流れ弾や地雷原、アフリカならば蚊によるマラリアやツェツェバエが媒介する感染病、猛獣等、命を落とす要因が他の地域に比べて圧倒的に多い。

 

 そんな場所で本格的な諜報活動を行うとなると、いくら更識家でも金と時間と人員が足りない。

 日本政府の支援も、ISが世界の中心である今日では期待出来ない。彼等が態々動くには、中央アフリカは余りにISとの関わりが少な過ぎる。

 

 今回の諜報活動も、更識家の正式な任務に支障をきたさない必要最小戦力による非正規なものであった。

 

 と、そんなIS絶対思想に囚われた世界への憤りを隠す様に千冬は話を進める。

 

「私も中央アフリカの内情についてドイツ軍に協力を仰いで調べては見たんだが、ニュース以上の情報は得られなかった」

 

 『モノクローム・アバター』による「SHLA掃討作戦」が開始されたのは5月上旬。下旬時点で、既に全域での制圧が完了したらしい。

 

「亡国機業が今も中央アフリカで活発に動いているのは、間違いないと思います。以前から連中を監視している諜報員によりますと、掃討作戦以降人員が未だに戻って来ないそうですから」

 

 楯無の情報が正しければ、現地では未だ交戦状態が続いているのか、目的の為に戦力を結集させているかのどちからだ。

 

 ただ、やはり情報が余りに少なく、その後の情勢に関しては世界の知る所ではない。

 「知ろうとしない」と言った表現の方が正しいだろうか。ニュースに取り上げられる回数の少なさが、その現実をありありと目に浮かばせる。単にメディアへの規制が厳しい、と言う事だけが理由ではないのだ。

 

 何が言いたいかと言うと、それだけ人々の関心が薄れていると言う事だ。

 ISの無いたかが発展途上国の紛争等、昨今では誰も見向きもしない。

 例え裏では名の知れた犯罪組織『亡国機業』が紛争に介入していようと、自分たちの損益に関わらなければどうでもいい。関心を示しているのは、ごく一部の“例外”だけ。

 それは即ち話題性の乏しさに繋がり、なればメディアも危険を冒してまで探り入ろうとはしない。

 

「…これが今の世界だ。ISこそが第一で、その他は全て二の次三の次。ISへの行き過ぎた信仰が、中央アフリカでの紛争への無関心に更なる拍車を掛けてしまっている」

 

 重い溜め息を長々と吐き、千冬は額に手を置く。

 

《…兎も角今は、情報を元に篠ノ之博士の最終目的について考えるしかなさそうですね》

 

 昭弘の言葉によって、千冬は脱線していた己の思考を引き戻された。

 

「…そうだな、スマン。箇条書きで、今判っている事をを纏めてみよう」

 

――今現在、中央アフリカの何処かにMPSの生産工場がある

――従来のMPSを遥かに上回る性能を有する新型MPSが、現地で出回っている可能性大

――篠ノ之束が、それら新型MPSの量産に大きく関与している

――中央アフリカでは、未だ亡国機業が精力的に活動している

――先進各国はその事を知らないか、知っていて尚関心を示していない

 

 この5つに大別し、そして一つの糸へと絡まらずに収束させる為、昭弘たち3人は議論を続けた。

 

 そうしてとうとう、束が胸に秘めているであろう思惑が言葉となって表れた。

 それは余りにも滅茶苦茶な、去れど束ならやりかねない様な目的だった。

 

《…IS並に強化させたMPSを、自身の愛するISによって完膚無きまでに叩き潰し、ISをより中心的で絶対的な存在に昇華させる…か》

 

「その線が一番濃厚だ」

 

 世界の誰よりもISを至上の存在として位置付けているのは、他でもない篠ノ之束本人だ。

 

 だがここ最近、千冬の様に抑止力としてのISに疑問を抱く者も少なからず現われ始めた。

 ISを絶対視する束にとって、それは憤慨の極みだろう。

 

 そのテコ入れの為に、束にとっては粗悪品であるMPSを態々強化させ、それら全てをISによって破壊する。無論、生産工場もだ。

 そうすれば世界は今迄以上にISを信奉し、束が以前から忌み嫌っていたMPSも衰退していく。更には、束にとって不快害虫の様な存在であった亡国機業も纏めて一網打尽に出来る。正に一石三鳥だ。

 

 更に楯無が、この説の信憑性を増大させる一言二言を付け加える。

 

「確かにそれなら、世界が関心を向けない様にしてるのも納得です。準備が整った「完全なMPS軍団」を真正面から叩いてこそ、ISはより強固な信仰を得られるでしょうし」

 

 量産体制が未だ整っておらず、新型MPSが完全には普及されていない今攻撃しても、意味が無いと言う事だろう。

 或いはMPS側に先制攻撃させる事で、殲滅する為の大義名分を得る狙いもあるのかもしれない。

 

「それに、アメリカ・イスラエルで極秘裏に共同開発されてる最新型IS『福音』。時期的に考えても、今回の騒動に無関係とは思えません」

 

 イスラエルと言えば、宗教的な問題で国内や中東各国との軋轢が後を絶たない地域だ。

 

 コンゴ・ウガンダで活動していたSHLAも、宗教運動が前身となっている組織。

 これの壊滅により、中東でも何らかの宗教的影響を受けないとも限らない。鳴りを潜めていたテログループの再起も有り得る。昭弘が束からチラっと聞いたと言う、「中東勢力の活発化」とも一致する。

 

 故にこのタイミングでイスラエルの戦力増強を図っても、“表面上”は不思議ではない。

 

「束にとっては、IS側を確実に勝たせる為の新戦力…なのだろうか」

 

 

 こうして、束の目的は不思議な程奇麗に導き出された。余りに呆気なく。

 

 どう考えても、先に挙げた5つの箇条書きは「ISを更に上の次元へ昇華させる」と言う束の目的に行き着く筈。理に叶っている筈。

 昭弘自身今もこうして頭を凝らしているが、やはり同じ答えを辿ってしまう。

 

 だが、脳内に充満する噎せ返る様な白煙が払えない。その原因は、至極あっさりと答えが出てしまった事にある。

 あの予測不能な天災科学者を、果たして自分たちの様な常人に理解できるのか。そんな事を思ってしまっているのだ。

 

(…馬鹿かオレは。束がISを愛してる事は、分かり切ってる事じゃねぇか。だったら最終的にISを勝たせるに決まってる)

 

 そう自身に言い聞かせ、頭をクリアにせんと努める昭弘。考え過ぎは、時に行動を鈍らせる毒にもなり得る。

 

 

 どの道、ISとMPSが近い将来衝突すると言う点は変わらない。そうなれば、確実に多くの犠牲者が出る事だろう。

 それに繋がる確固たる証拠を世界に突き付けない限り、戦争を未然に防ぐ事は叶わない。

 

「…兎も角、今後も地道に調査を進めるしかない。クロエとか言う少女が、アルトランドに何を言い渡そうとしてたかも気掛かりだしな」

「私ももう少し、聞き込み対象の範囲を広げてみる」

 

 「何か新しい事実が判るかもしれない」と、最後に千冬はそう締め括った。


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