IS~筋肉青年の学園奮闘録~   作:いんの

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大変申し訳ございません。
私のヘマかバグのせいで、4話後編のデータが丸々消えてしまいました。恐らく、今現在執筆中のモノが、そのまま上書き保存されたのかと。
今後なるべく早く直して行きますので、初めて閲覧された方には本当にご迷惑をお掛けいたします。
前編・中編・後編に分けます。

追記:4話すべての編集と再投稿が完了いたしました!
   皆さん大変お待たせしてしまい、申し訳ございませんでした。


第4話 英国貴族の逆襲(中編)

―――――4月8日(金) 5時限目―――――

 

 その時間は、ISの『最適化処理(フィッティング)」に関する授業だった。

 ISには最適化という機能が存在し、操縦者に合わせて文字通り機体を最適化させるのである。

 先ず操縦者がISを機動させている間、ISコアが操縦者の性格、体力、身体能力、体格、体重、血液型、五感、バランス能力等々読み取る。それらを情報としてIS側にフィードバックさせることで、IS側と操縦者側との間で生じている空中機動のズレを修復するのだ。

 この最適化処理を先に済ませておかないと操縦者の思う通りにISを機動させることが出来ず、その為の安全処置として出力も大幅に抑えられてしまうのだ。

 最適化処理後は機体の形状が変化するのだが、これを『形態移行(フォームシフト)』と呼ぶ。

 

 というのが、この授業の要約である。

 

 

 

―――放課後

 

 昭弘は映像資料室にて、セシリアの公式戦での試合映像に噛り付いていた。先程真耶に部屋の案内をされ、その後真耶に情報資料室での閲覧許可を貰ったのだ。

 機体名は『ブルー・ティアーズ』。中距離・遠距離特化型のISで、まるで大海原からそのまま切り取ったかの様な美しい群青色の装甲を両腕両脚に纏っていた。最大の特徴は4機の浮遊移動砲身「ビット」であり、操縦者からの脳波コントロールによって敵機を追い回し、四方から狙い撃つという恐ろしい兵器だ。

 

(…ビットの威力の低さと、ビットを操っている時はISを動かせないのが弱点か)

 

 心の中でそう纏めると、昭弘は映像資料室を後にする。

 

 そうして昇降口に向かって廊下を歩いている時だった。

 

「あっ!アキヒーだ~~。お~~~い」

 

「ちょ、ちょっとよしなって本音!」

 

 後ろから声が聞こえてくる。「アキヒー」…もしや自分のことだろうかと思いながら、昭弘は不愛想に後ろを振り向く。

 そこには比較的小柄な少女が立っていた。

 

(確か同じクラスの『布仏本音』…だったか?)

 

 僅かに茶色がかった桃色の髪は、両側頭部で小さく結ばれていた。全体的な髪の長さはミディアム程度だろうか。

 まだ話してすらいないが、どことなく小動物と似た雰囲気を纏っている様な気がした。

 

「ふ~やっと話しかけることができたよ~。アキヒーで最後ぉ~~」

 

 どうやらアキヒーとは、昭弘の渾名の様だ。

 

「最後ってのは、どういうことだ?」

 

「話しかけた相手~。今日一日でクラス全員とお話することが私の目標~。アキヒー教室に居なかったりお勉強してること多いから、最後になっちゃった~~」

 

 そんな事の為に自身に話しかけてきたのかと昭弘は思ったが、態々話しかけて来てくれたという嬉しさの方が遥かに大きかった。

 昭弘自身も、クラス中から怖がられているという自覚はあるのだ。よって、ぎこちなく笑いながらお礼の言葉を贈る。

 

「態々ありがとうな。…にしても凄いなお前。全員ってことはあのオルコットにも話しかけたって事だろ?」

 

「そだよ~。「媚び売りのつもりなら、私に構わないで貰えます?」って言われちゃったけど、めげずにもっともっとアタックしてみるよ~~」

 

 昭弘はそれを聞いて「奴ならそう言いそうだな」と思いながら、本音の更に後方へと視線を送る。そこには、明らかに自身に対して恐怖心を抱いている2人の女子生徒が震えながら立っていた。

 

「あれ~?2人共こっちおいでよ~~」

 

 本音にそう促され、2人は猛獣と相見えるリアクション芸人宜しく恐る恐る昭弘に近づく。すると、無理に引き攣った笑顔を浮かべながら名乗り出る。

 

「よ、よよ宜しくお願い致しまする。『相川清子』でご、ございまする」

 

「た、たた『谷本癒子』でご、ございますっ!よ、よ…宜しくお願いしまする」

 

 朝の自己紹介とは偉い違いだ。上がり調子が過ぎる2人に、昭弘は苦笑いを浮かべながら名乗り返す。

 

「昭弘・アルトランドだ。さっきは教室でおっかない思いをさせちまって悪かった。気軽に話しかけてくれると嬉しい」

「さて、オレはそろそろ部屋に戻らないとだな。色々と()()ことがあるんだ。布仏もオルコットへのアタック、頑張れよ」

 

「ありがと~アキヒー。じゃあね~~」

 

 本音はそう言いながら、昇降口へと離れていく昭弘に10cm程余った袖をブンブンと振った。

 

「アキヒーって無口だけど優しいよね~。セッシーとも仲良くできればいいのに~。…アレ~?何で2人共座り込んで白目なんか向いてるの~~?」

 

 

 

 

 昭弘は茜がかった夕焼け空の下、寮へと歩を進めていた。胸の底から湧き上がる高揚感が、重たい昭弘の身体を前へ前へと突き動かす。

 

 寮へと近づくと、聞き覚えのある少女の怒鳴り声が聞こえてくる。

 

(箒か?)

 

 そう頭の中で声の主を予想すると、声が聞こえてくる寮の裏口へと進む。

 

 昭弘の予想通り、箒と一夏がそこには居た。一夏は芝生の上に腰を突き、箒がそれを見下ろしている形だった。

 

(アイツ達が着ている防具は確か…「ケンドウ」だっけか?あのフルフェイスメットみたいなので、頭部を護るのか)

 

 そんな風に頭を巡らせた後、昭弘は彼等に尋ねる。

 

「何してんだ?こんな時間に」

 

「おお昭弘。オルコットとの戦いに備えて、せめて一夏の武術面の勘だけでも取り戻そうと思ってな」

 

 一夏は早速訓練機の予約を1週間分職員室に申請しに行ったのだが、1週間でたったの30分しか訓練機借用の予約が取れなかったのだ。

 訓練機の借用には、IS関連企業への就職に備える為か2年生3年生が優先される。加えてIS学園には、訓練機も含めて精々30機程度しかISが存在しない。たった30分でも、1年生である一夏がこの時期に訓練機を借りれたのは最早奇跡に等しい。

 

「んで勿論、結果はボロボロさ。オレは昔箒と一緒に剣道やってたんだけど、中学じゃずっと帰宅部だったからさぁ」

 

「いい訳無用だ!」

 

 そう言うと、箒は一夏の頭を竹刀で軽く叩いた。

 

「イッ!しょうがないだろ!バイトやら何やらで色々と忙しかったんだよ!」

 

 その後、昭弘も意趣返しの様に箒の頭に軽く手刀を入れる。

 

「理由はどうあれ箒、人の頭を竹刀で叩くな」

 

「ムゥ…スマン昭弘」

 

「……いやオレにも謝れよ!?」

 

 そんなやり取りをしていると、昭弘がある提案を切り出す。

 

「武術面の勘か。確かにそれも大事だが、先ずは体力作りと「体幹」を集中的に鍛えるのもいいだろう」

 

 体力作りは当然として、どのスポーツでも体幹を使わない競技は無い。精密なバランス感覚を求められるISなら猶の事だ。

 

「成程、体幹か…」

 

 無論、今から1週間程度剣道や筋トレを繰り返したところで付け焼刃程度にしかならないだろうが、それでも何もしないよりはマシだ。

 

「毎日剣道もやるんなら、「筋トレスケジュール」みたいなのを組んだ方がいいかもしれんな」

 

「それじゃあ今から私と考えよう。一夏、お前はその間素振りでもしてろ!」

 

「あいよ!時間が掛かりそうなら素振りの後にランニングでもしてくるぜ」

 

「ああ、程々にな」

 

 最後にそう昭弘が母親の様に念を押す。

 

 こうして昭弘と箒による、一夏短期強化プランが話し合われた。

 

 

 そんな3人のやり取りを、寮の屋上から見下ろしている人影があった。茜色の夕日が、その人物の金色の髪を怪しく照らす。

 

「織斑一夏…」

 

 否、当の人物「セシリア」が見ていたのは3人のやり取りではなく、素振りをしている一夏であった。

 

「唯一の…男性適合者…」

 

 ふと、そんな言葉を呟く。一夏の真っ直ぐな瞳に見惚れながら。

 

「…フン、まさか」

 

 セシリアはそう自身に言い聞かせて、今自分が一夏に対して抱いている想いを即座に否定する。「ただ珍しいから意識しているだけだ」と。

 そう無理矢理自身を納得させると、踵を返して部屋に続く廊下へと歩を進める。時折、屋上の手摺に惜し気な瞳をチラチラ向けながら。

 

 

 そんなセシリアの動向は、昭弘にしっかりと察知されていた。

 

「おい昭弘。ちゃんと聴いているのか?」

 

「ああ」

 

 セシリアが見下ろしていた理由を片手間で考えていた昭弘は、箒からそう注意される。

 

 昭弘と箒によるスケジュール作成は、思いのほか時間が掛かっていた。

 放課後における真耶の予習も踏まえて、筋トレの時間帯を細かく調整しているのだ。

 

 ある程度話が纏まったのは、既に一夏がランニングへと出た後だった。

 昭弘は自室に戻って「ある事」をヤロうと思っていたのだが、丁度箒に聞きたいこともあったのでそのまま一夏の帰りを待つ事にした。

 

「…一つ聞いて良いか?」

 

「む?何だ?」

 

「お前は織斑のどういう所に惚れたんだ?」

 

 その一言で箒の仏頂面は大きく崩れ、直後誰の目から見ても明らかな程に顔を乙女らしく赤く変貌させた。

 

「なっ!?な、な、何を言い出すんだお前はいきなりッ!?あんな朴念仁に誰が惚れるかっ!!」

 

 あくまで強がる箒に対し、昭弘は笑いを堪えながら答える。

 

「何も隠す事は無いだろう。それに、今は当の本人も此処には居ない。なぁに話の種ってヤツさ。無理に話せとは言わん」

 

 そう言うと、箒は頬の赤をそのままに口を閉ざしてしまった。

 昭弘が「やはり無理か」と思った矢先、隠せないと観念したのか箒はポツリポツリと言葉を紡ぎ出す。会ってまだ一日と経ってない、昭弘に対して。

 

「…あの時は未だ、小学校の低学年だったろうか。私は当時から武道の家柄もあって「男勝り」な性格をしていてな。よく男子から「男女」とか「リボン付けた男」とか言われて、馬鹿にされていたのだ」

「そんな時、私を庇ってくれたのが一夏だった。「女の子にそんな事言うな」と、その男子たちを追い払ってくれたのだ」

 

「…一目惚れって奴か?」

 

「いや。そんな出来事がある以前から、私は同じクラスメイトとして一夏を知っていたしな。私は多分、アイツの外面ではなく内面に惚れたのだと思う。そしてそれは、今でも変わらない。私のアイツに対する想いは…」

 

 何処までも一途な女である。無論、良い意味でだ。

 これだけの年月が経過して尚、彼女にとっての一夏はずっと「あの時」の一夏なのだ。昭弘は恋愛について未だ理解が少ないが、長い年月が経ってもずっと変わらない想いがどれだけ尊いモノなのかは良く解っているつもりだ。

 

 昭弘はそんな感想を抱いた後、自身の今の心境を語り出す。

 

「…そんだけ好きなら、尚更言葉に出して伝えないとな」

 

「そっ、それが出来たら苦労しておらん!!」

 

 箒が駄々っ子の様に喚くと、昭弘は神妙な面持ちとなって更に語る。

 

「だが言葉に出さなけりゃ何も伝わらない。相手が朴念仁の織斑なら尚のことだろう」

「それに…何だか勿体無い気がしてな。折角誰にも負けない位の強い想いを持っているのに、何時までも伝えられないってのはな。それは何と言うか…お前の気持ちが、お前自身が、酷く“不憫”だ」

 

「…フンッ。また御説教か昭弘」

 

「スマンな」

 

 そう少し反抗的な態度を取る箒ではあったが、本心では「その通りだ」と思っていた。

 それでも「余計なお世話だ」と言う思いが前面に押し出されてしまったのは、彼女と昭弘が出会ってから未だ1日しか経っていないからだ。もう友人と呼べる関係なのかもしれないが、心の玄関にズカズカ踏み込まれるのは未だ抵抗がある様だ。

 

(全く、つくづく昭弘には調子を狂わされる。他人の恋路など、放っておけば良いものを)

 

 そう思いながらも、箒は心の何処かで何故か“安心”していた。その安心感の正体は解らないが、少なくとも今迄箒が感じたことの無いモノだった。

 まるで外側と内側を隙間なく包み込む様な頑強さと全てを委ねられる様な柔らかさ、その2つを同時に箒は感じ取った。

 

 すると丁度一夏がランニングから戻って来た。

 

 箒は当の本人が現れて慌てて意識を切り替えると、もう既に話が纏まった旨を伝えた。

 その後少しだけ今後の事を3人で話し合うと、その日はもう解散となった。

 

 箒と一夏に別れの挨拶を告げた昭弘は、これからスル事に対して大きく胸を高ぶらせていた。

 

 

 

 箒たちと別れて自室である「130号室」前迄来た昭弘。

 因みに箒と一夏は隣の「128号室」であった。

 

 普通なら、男性同士である昭弘と一夏が同じ部屋となるだろう。そうならなかった理由は、簡単に言えば束が国際IS委員会に圧力を掛けたからだ。どの様な方法を取ったのかは不明だが、昭弘をIS学園に入学させた時と同じ方法であろう。

 一人部屋であるならば束やT.P.F.B.と連絡が取り易くなるし、昭弘がこれからスル事にも何ら支障を来さない。一夏は女子と同部屋で大いに混乱していた様だが。

 

 自室の扉を開いた昭弘は部屋の大半を占拠している夥しい数の「筋トレ器具」を見渡し、この日初めて満面の笑みを零す。

 ダンベル、バーベル、ハンドグリップ、プッシュアップバー、チンニングラック、シットアップボード、バランスボール、ベンチプレス、各種プロテイン等々、見ているだけで息苦しくなってくるそれらが悠然と並んでいた。

 

 にしても、バランスボールは念のため2つ調達しておいて正解であった。一夏に貸し出せば、バランストレーニングの幅が増える事だろう。

 そんな事を考えた後、昭弘は直ちに意識を切り替えて自身の「趣味」に没頭していった。

 

 

 

―――4月9日(土)―――

 

 昭弘と箒による特訓は、土日も関係なく続いた。

 

「脇が甘いッ!胴ォッ!!」

 

「グォオ!?」

 

 

 

「ハァ…ハァ…織斑、あと1kmだ、頑張れ」

 

「ゼェハァ…ゼェハァ……おうよッ!」

 

 

 

―――4月11日(月) 放課後―――

 

「織斑。山田センセイの補修はどうだった?」

 

「ウーン何となく解ってきた…様な気がする」

 

「後でオレにもノートを見せてみろ。何か助けになれるかもしれん」

 

「サンキューな、アルトランド。…そういや箒は部活動見学とかいいのか?」

 

「大丈夫だ。どうせ剣道部に入ることは私にとって決定事項だしな。仮入部期間中の今なら多少抜け出しても問題はあるまい…多分」

 

「多分て…」

 

 

 

―――4月13日(水) 放課後―――

 

「どうだ織斑。『打鉄』を纏った感じは?」

 

《やばいな。静止しているだけなのにもう既にフラフラすると言うか…》

 

「最初はそんなもんさ。それじゃあ山田センセイ、後はお願いします。すんません、お忙しい中」

 

《いえいえ!可愛い生徒の頼みですもの!何のことはありません》

 

「むぅ、私も訓練機を借りれたらなぁ」

 

 

 

―――4月14日(木) 放課後―――

 

「良かったな一夏。専用機『白式』が間に合って」

 

「けどこれ、武装が「刀」しか無いみたいなんだけど大丈夫かな?」

 

「刀だけの方が、お前らしくて良いんじゃないのか?」

 

「箒…何か適当言ってないか?」

 

(唯一の男性操縦者だから、データ取りも兼ねて代表候補生でもない織斑に専用機って訳か。ISコアは束が男性用に再設定したのを、コッソリ摩り替えたってとこか?)

 

「まぁ兎も角、先ずは最適化処理だな。どうにか明日までに間に合わせるぞ」

 

「「分かった!」」

 

 

 

 こうして、彼等3人の長くも短い1週間は過ぎて行った。

 

 

 

 

 

―――――4月15日(金)―――――

 

 放課後、4つのアリーナの1つである『アリーナA』にて『1年1組クラス代表決定戦』が行われようとしていた。

 観客スタンドには思いの外大勢の生徒が集まっていた。

 今回の模擬試合は、特例で部活動中の生徒の観戦も認められているのだ。何せ「一国の代表候補生」と「世界初の男性IS操縦者」と「世界初(公式上)のMPS操縦者」という滅多にない対戦カードだ。試合を見学するだけでも得られる物は大きいだろうという、学園側からの粋な計らいだ。

 

 

 場所は変わってアリーナAのピットには既に千冬、昭弘、一夏、セシリアの4人が集まっていた。既に昭弘たち3人は、ISスーツにその身を包んでいた。

 

 千冬が説明した試合のルールはこうだ。

 先ず試合は1対1で行い、シールドエネルギーの枯渇若しくは操縦者の戦意喪失(気絶等も含む)により、勝敗を決める。

 3回に分けて戦い、1回戦目で勝った者が2回戦目で3人目と戦う。もし2回戦目で3人目が勝てば、3回戦目でその者と1回戦目敗者が戦うという仕組みだ。しかしもし3回戦目で1回戦目敗者が勝ったとしても、その時点で今回のクラス代表決定戦は切り上げとなる。他の2年生や3年生の為にも、それ以上アリーナAを貸切る訳には行かない。

 そうなった場合は、クラスメイトからの推薦が最も多かった一夏がクラス代表ということになる。

 

 千冬は粗方説明を終えると、試合の順番を決めるべく話を進める。

 

「試合の順番で何か希望はあるか?ピットからは管制塔の遠隔操作が無ければ試合映像が観れないから、順番で優劣が決まることは無いが」

 

「私は特にございませんわ」

 

「右に同じく」

 

「オレは…1回戦目がいいかな。少しでも昨日の感覚を覚えている内に、試合に臨みたいし」

 

「では先ず、織斑が1回戦目で相手は…オルコットで良いだろう。クラス代表に一番意欲的なのはお前だ。お前が最初に出ておいた方が、クラスメイトからの心証も良い」

 

「分かりましたわ。ではその様に」

 

 順番が決まると直ぐに、千冬は管制塔に続く道へと消えていった。

 

 その後、セシリアが一夏に対し鼻息吹かして啖呵を切りに来る。

 

「織斑さん?私に負けた時の言い訳、今の内に考えておいた方が宜しくってよ?」

 

 そんな風に言いながらも、セシリアの瞳は何処か輝いている様に見えた。まるで気になる相手についちょっかいを掛けてしまったみたいな。

 

「そっちこそ、こんな初心者相手に苦戦なんかするなよな?代表候補生殿?」

 

 負けじと、一夏もセシリアに挑発で返す。

 セシリアはそんな挑発を鼻で軽く嗤うと、今度は昭弘に視線を移す。

 

「…」

 

 無言。

 一夏とは対照的に、唯々濁り切った憎悪の眼差しを向けるだけであった。

 昭弘はそんなセシリアに動じること無く、普段の仏頂面を貫き通す。

 

 

 セシリアが反対側のピットに移動した後、昭弘は一夏に激励の言葉を贈った。

 

「大丈夫だ織斑。オルコットは明らかに慢心している。きっと良い試合運びができる」

 

「ああ!…ありがとなアルトランド、今迄色々と」

 

 まるで今生の別れの様にそう返す一夏に対し、昭弘は無言の微笑みで軽く頷いた。

 

 昭弘の微笑みを見て腹の底から安心した一夏は、早速フィールドに飛び立つべく右手首に嵌めてある「白い腕輪」に意識を集中させる。忽ち青白い粒子が一夏の全身を包み込み、その粒子が純白の装甲へと変わっていく。

 

 いつ見てもISとは不思議な存在だ。あんな小さい腕輪に、一体どういう原理であんな馬鹿デカい装甲を捻じ込んでいるのだろうか。

 

《織斑及び白式、発進準備完了。どうぞ!》

 

 そんな今更どうでもいい事を考えていた昭弘は、管制塔からのアナウンスで我に返る。

 

《んと…それじゃあ。織斑一夏、白式、行きますッ!》

 

 そう言った後一夏は昭弘に対して右手の親指でサムズアップをし、1対の巨大な機械翼を羽ばたかせながらフィールドへと飛び立っていった。




とてつもなく後になりますが、第46話に何故一夏が打鉄を操縦出来たのか、その理由を描写しておきました。

ごめんちゃい

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