IS~筋肉青年の学園奮闘録~   作:いんの

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今度はデリー視点です。
若干ですが、第四の壁突破注意。


第59話 来訪、カラフルマン

―――――7月7日(木)―――――

 

 空は雲を探す事すら難しい水色!黒い太平洋は宛ら星空の如く陽光を反射!絶好の取引日和!

 

 

 そんな中なーんで僕が貴重な時間を割いてまで、IS学園に来なきゃならないんですかね?

 とか言っても、もう肉眼でIS学園人工島が捉えられる距離まで来てしまいましたから、今更戻る訳にも行きませんけど。

 

 それに一応、自分で望んで選択した訳ですからね。

 ただまぁ、今の気分を例えるとアレです、超ヤバイジェットコースターの列に並んでる時の気分です。時間が経てば確実に訪れるスリル、反面、恐怖で逃げ出したくなるあの心境です。

 

 いや、そりゃあ僕だって仕事第一である部分は変わってませんよ?

 けど相手は女子高生ですよ?しかも超可愛い金髪美少女。更にその周りも美少女だらけなんですよ?皆さんだって生で見てみたいでしょう?お話したいでしょう?そして出来れば触…

 

 それに実際の所、子供が全く欲しくないと言われれば嘘になりますかね。

 若年層の気持ちが理解出来れば視野も広がりますし、それにより新たな需要を見出す事が出来るかもしれません。

 あと、いざって時僕の事色々と助けてくれそうですしね!例えば、紛争が減って需要が激減して会社が潰れちゃった時とか。なんせ親子なんですから!

 …まぁ、これらに関して「は」利己的な理由ですね。

 

 

 とは言え、やはり不安が拭えませんねぇ。この快晴の下、何故か人工島だけ綿雲によって影で覆われてますし、あー不吉。

 

 一昨日昭弘殿に訊いた限りですと、IS学園には織斑教諭の教育が行き届いているのもあって、そこまで女尊男卑に染まってはいないそうですが…来客の身ながら、本当に大丈夫なんですかねぇ?白い目で見られたりしないでしょうか。

 今僕と共にヘリに乗ってる百戦錬磨のSP3人だって、陰口までは阻止出来ませんし。

 

 そしてシャルロット・デュノア嬢。

 かの美少年シャルル・デュノア氏の双子の妹(姉?)で、性格は基本温厚で礼儀正しく、親しい相手には少し調子に乗る傾向がある…と昭弘殿からの情報。

 詳しくは聞けませんでしたが、かのアルベール氏からは中々に酷い仕打ちを受けていたとか。そう言えばあの時シャルル氏も、父親には反抗出来なかったと仰っていましたねぇ。

 

 今にして思えば、点々とした疑問が散見されますね。

 何故シャルロット嬢だけ僕の養子に?会社が倒産寸前で気が狂っている社長の元から、せめてISを動かせる娘だけでも解放する為?

 うーん天災科学者の考える事は解りませんねぇ。

 

 何はともあれ、そんな娘が見ず知らずの大人に心開いてくれますかね?

 はぁ…こんな事なら本人の心の準備を考慮して、もっと早めに連絡すべきでしたね。だってクソ忙しかったんですもん!

 

 ま、そんな訳で結構いやかなりシャルロット嬢との初対面を意識している僕は、彼女を威圧しない様服装も滅茶抑え目にしてあります。

 上下ワインレッドのスーツにYシャツは若草色、ネクタイはショッキングピンク。流石に地味すぎですが、これも彼女の為です。

 長年の付き合いである黒服のSPたちも「駄目だコイツ」って目をしてます。僕だってもっと派手にしたかったんですよSPの諸君。

 

 どうせヘリから降りて挨拶を終えればブレザーなんて脱ぎますから、関係無いですけどね。

 

 

 

 ってホラもう着いちゃいましたよぉ。緊張でお腹痛めるなんて、初めて紛争地域に顔出しに行った時以来ですよ全く。

 

 にしても、やっぱIS学園は異次元ですよねぇ。来客に備えてヘリポートまで用意してるんですから。

 

 んで、コンクリートに手招きされ着地と。

 おっと?窓の外に見えるのはかの織斑千冬(ブリュンヒルデ)ではありませんか。美人っちゃ美人ですけど、僕女子高生しか異性の対象としていないので却下ですね。

 

 

 

―――11:00頃

 

 ヘリが生み出す強風により、髪を掻き上げられる千冬と榊原、そしてIS学園理事長。

 

 だがその風すらも射貫く勢いで、千冬はヘリから悠々と降りる七三分けの若い男に鋭い眼光を送る。

 

(こいつが『デリー・レーン』か…)

 

 かの強大な犯罪組織「亡国機業」と盛んに商取引を行っている…と言われている武器商人らしい。尤も、その確たる証拠は無いが。

 だが今、彼は“表の顔”として遠路遥々馳せ参じた来客。ここは失礼の無い様、威圧を抑えねばならない。

 

 いや正直な所、威圧を送る所ではなかった。理由はデリーが身に纏う、視界に入るだけで目が焼けてしまいそうな程のド派手な服装だ。

 上下紅の背広に黄緑のYシャツ、ピンクのネクタイなんて、学園祭のコスプレでも見た事が無い。

 ここまで突き抜けられると、失礼とかそう言う段階をも通過して感心すら覚える。

 

 そんな訳で千冬と榊原が「この男ヤバイな」とか放心気味に思ってると、既に目の前には理事長との挨拶を終えた変態が右手を謙虚に差し出していた。

 

「御初に御目に掛かります↑。私、義手義足の製造・販売業を担っております『T.P.F.B.』、代表取締役『デリー・レーン』と申します↑本日は宜しくお願い致します↑」

 

 少し独特な丁寧口調で我に帰った千冬は、動揺を隠しながら同じく右手を差し出す。

 

「IS学園の『織斑千冬』です。本日はお忙しい中御越し頂き、ありがとうございます。こちらこそ宜しくお願いします」

 

 そうして互いに握手を交わすと、回転翼が巻き起こす風圧に気を付けながら互いの名刺を交換した。

 

 その後、デリーは千冬や理事長と同じく必死に動揺を隠す榊原にも、丁寧に挨拶を済ませた。

 

 

 

 挨拶と言う必要最低限の礼節を終えた理事長と榊原は先に失敬し、ここからは千冬が一人で案内する事となる。

 早速デリーたちを先導する千冬は、ついでにSP3人の戦力を分析し終える。

 

(…成程、強いな)

 

 黒服の内側に眠る筋肉の密度、ネコ科の猛獣を彷彿とさせる安定した重心、サングラスの奥で忙しなく動く猛禽類の如き眼球、チラリと見えた手の甲の古傷。そして、世界最強の存在を前にしてもまるで臆さない胆力と自信。

 これなら、更識の部隊がデリーに触れる事すら出来なかったのも頷ける。

 

 そしてそんな猛者たちを連れてくるデリーも、澄まし顔でふざけた服装をしていながら余程警戒していると見える。

 

 

 

 デリーが最初に観るのは、1年1組の授業風景だ。

 

 デリーの訪問目的だが、正式には「昭弘及びグシオンの視察」と言う事になっており、養子への面会はあくまでそのついでだ。

 何せ超法規的機関であるIS学園。「娘に会いに行くから学園入ーれて!」なんて許される筈がない。

 どの道、表面上だろうと昭弘がT.P.F.B.所属のテストパイロットである以上、デリーはIS学園視察を以前から予定していた。

 故に授業の見学も、昭弘が受けている以上は視察の範囲内と言う事だ。それはつまり、昭弘と同じクラスであるシャルロットの様子も伺える事に他ならない。

 

 それと、無人ISの存在についてだが、当然デリーらには隠し通さねばならない。IS委員会・IS学園以外には公となっていない、機密性の高い情報だ。

 グシオンの戦闘データがT.P.F.B.に渡っている以上、デリーが無人ISの存在を知ってる可能性は高いが、どの道色々と疑わしい相手には余計な情報を与えないに限る。

 

 

 後は生徒と同じく学食で昼食を摂り、5時限目は実技演習を見学、そして放課後まで千冬と「昭弘・グシオン」について互いの見解やら近況やらを対談し、最後に昭弘から直接現場(学園生活)の実態を聞き入れて終了だ。

 

 以上のスケジュールを頭の中で復唱しながらも、口はまるで別の生き物の様にペチャクチャと蠢かすデリー。

 やれ三十路OKな生徒は居ないかだのやれ一番可愛い生徒は誰かだの、移動しながら延々と訊かれる千冬が段々可哀想になってきた。

 さっきまでの不安は何処に引っ込んだのかと、後ろのSPたちも其々呆れたり苦笑したりしている。

 

 教室への道のりがこんなに長く感じたのは久し振りだと思いながら、千冬は漸く1年1組前へと到達した事に心底安堵した。

 

 今は丁度、授業が始まって5分程度だろうか。千冬の代わりに授業を進めているのは真耶だ。

 

「では、教室の後方からどうぞ。事前にお知らせした通り、教室内まで同行可能なSPは一人まで、携帯はマナーモードに、そしてくれぐれも授業の邪魔だけはしない様に。尚、通話や便以外の途中退室は原則認められません」

 

「ハイ、承知致しました↑」

 

 SPに関しては、恐らく生徒が畏縮してしまうからだろう。

 説明されるまでもなくその位は察せるデリーは、3人の中で最も多くの修羅場を潜っていそうなナイスシルバーな男を選んで引き連れ、千冬の背中に従いながら教室へ入っていく。

 

 

 

 こっからはまた僕の一人称視点に戻りまーす!

 

 にしてもデカいですねー昭弘殿。周りが女子ばっかだからか、余計に目立ちます。まるで住宅街に建たされた高層ビルですねぇ。

 

 …うん?緑髪の巨乳先生が僕を見るなり、動きを止めてしまいました。すると直ぐに、慌てて逃げる様に授業へと戻りましたねぇ。

 他の生徒たちも、チラリとこちらを見た後何故か勢い良く二度見するんですよね。僕の入室は事前に通達されてる筈ですが…。

 はぁ…やはり女尊男卑の風潮は、例え織斑先生でも完全には拭えないと言う事でしょうか。よくこんな環境でやっていけますね昭弘殿。

 

 おや?昭弘殿まで僕を見て鈍重な溜息を吐きましたね。やっぱ流石に地味過ぎましたかね?服装。

 

 あ!セシリア殿!昭弘殿の隣なんですねぇ。

 ああ言うプライド高そうなお嬢様って、負けた相手にチョロっと惚れこんじゃいそうですよねぇ。

 おっと?確か以前彼女は昭弘殿に負けてる筈……あーハイハイ、そう言う事ですか。粋な計らいしますねぇ織斑先生!

 

 おお、あのポニーテールの娘も以前ISTTでお会いしました。確か篠ノ之箒さん…でしたっけ、多分ですけど天災の妹の。

 何となく主人公の幼馴染タイプって感じしますよね、堅物そうで黒髪ですし。好きな異性に対して素直になれなそう。あとおっぱいデカイです。

 

 あの同じく主人公の幼馴染っぽい凰鈴音(ツインテールっ娘)は何処でしょう?2組ですかね?

 

 あーアレが織斑一夏くんですかー。

 正直言って野郎とかどうでも良いですけど、いかにもラノベの主人公って感じですよねぇ。顔も髪色も髪型も普通だし、パッと見で朴念仁って判りますもん。

 

 おっ!あの銀髪の娘も性格キツそうだけど可愛いですねぇ。

 主人公からISの戦闘データを得る為学園に潜入するも、主人公の魅力に段々と心惹かれて行く。そして後に捨て駒であった事が判明し、しかし主人公に救われた事で遂には彼女の中に恋心が芽生え……失礼、妄想が過ぎましたね。

 

 

 ってそんなクラスメイトの分析してる場合じゃありません、シャルロット嬢を探さねば。

 

 ……あー居ました居ました!窓際の席に。

 忘れもしません、あのアニメキャラみたいなクリッとしたお目目に、羽毛の如く柔らかそうな黄金色の髪、スラッと着こなした制服―――

 

 アレ?男子の制服…横顔も少し凛々しい…シャルル殿ですねぇ。他にそっくりさんなんて居ませんし。

 

 ?…?…僕クラス間違えました?いやしかし、昭弘殿が授業を受けている以上1組で間違いない筈。いやいや、第一シャルル殿って何組でしたっけ?何も確認してない…。いやいやいや、と言うかここ間違いなく1組…。

 

 何やら混乱してきた様な自身の壮大な勘違いを悟った様な心持ちになった僕は、堪らず織斑先生に小声で確認を取ってしまいました。

 

「あの、織斑先生?シャルロットさんはどちらに…?」

 

「?…窓際の席で男装しているのが、シャルロット・デュノアですが?」

 

 はい出ましたー、全て勝手な思い込みだったイベントー。

 

「ええッ!!?じゃあシャルル君はシャルロットさんだったんですかァ!!!??」

 

「う・る・せ・ぇ・ッ!!」

 

 驚愕の余りつい大声を出してしまった僕の頭に、最後列の昭弘殿から怒りの平手が飛んで来ました。スパァンと淀みない音が教室中に響き、僕は頭の痛みで騒ぐどころではありませんでしたとさ。

 めでたくなしめでたくなし。

 

 ヘイSP。愉しげに微笑んでますが、今のは「大丈夫」と一瞬で判断したが故に敢えて防がなかったんですよね?ガチで反応すら出来なかった…なんてのじゃないですよね?長年の御供として信じて良いんですよね?

 取り敢えず次防がなかったらクビにしますからね?いやガチで。

 

 

 

 おーまだ痛い、頭が胴体に減り込むかと思いましたよ。

 あーあ、こりゃ女子生徒からの印象も最悪でしょうね。折角美少女だらけなのに…ポジティブな僕でも、流石に自身の失態を責めるしかないですねこれは。

 

 はーい!ネガティブタイム終了ー!

 

 にしてもIS学園の学習方法、中々独特と言うか先を行ってる感じがしますねぇ。

 ハイスペックデスクの端末に打ち込むだけじゃなく、古風ながらノートへの板書も可、終いには教本を開きながら先生の話を「聞いてるだけ」って娘も居ますねぇ。

 あっ、セシリア殿に至っては、液晶携帯で全く別の計算式を解きつつデスク端末に授業内容を入力してます。

 

 成程、学習方法ですら全て生徒に一任すると言う訳ですか。んでもって基本的に試験だけで成績を付けると。

 そうなれば課題は提出して内申点を得ると言うより、授業で収まらなかった部分を生徒に自己学習させると言った所でしょうか。

 

 頭の良い子しか入れない訳ですねぇ。逆に言えば、この子たちだからこそ可能な授業形態なんでしょうね。

 

 

 なーんて純粋にIS学園の勉学システムに感心してはいますが、正直言って僕自身、この後の御対面から意識を逸らしたいだけなのかもしれません。

 

―――

 

《兎に角だ、オレが知る限りお前は喋り過ぎる傾向があるから、基本的には聞き手に回れ。その方がアイツも本音で話せるだろう》

 

「は、はぁ…分かりました」

 

―――

 

 はぁ…昭弘殿から幾らか助言は貰ってますが、どうなる事やら。

 人間、常にアドリブで生きてますからねぇ。

 

 つまりは、これから娘になる相手へ何を伝えるべきかなんて、本来なら他ならぬ僕にしか分からない訳で。

 けどそれが自分でも分からないから、或いは分かっていても解ってはいないから、意識を向けたくないのでしょう。

 

 僕の中身の大部分を構成する、「利益追求」と言う最早欲望すら超越した一種の信仰。それとは構成からまるで異なる、ごく一部の小さな「何か」。

 普段接する事なんて先ず無いソレは、僕にとってこの上無く扱い難いものなんです。

 

 

 

続く(えーもういいじゃないですか終わりで…)




次の話は至って真面目ですのでご安心下さい。
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