IS~筋肉青年の学園奮闘録~   作:いんの

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・・・・・・アレ?何か気が付いたら一夏との戦闘が長くなってしまった。
もっと手短に済ませようと思ってたのに・・・。
きりが良いのでこのまま投稿します。



第5話 悔いの無い

 一夏はピットにて静かに待機していた。

 ピット内は一夏以上に静寂…と言う訳でも無く、僅かな機械音がそこら中から聞こえてくる。そんな小さい環境音に耳を傾けながら考えていることは無論、次の対戦者のことだ。

 

(次は昭弘が相手か…。けど流石に1戦目程の緊張は無いな。さっきの戦いで、白式(こいつ)の扱い方も何となく解ってきた)

 

 無論一夏は、昭弘に敵う等微塵も思っていない。

 昭弘の勝利の報は、一夏にもしっかり届いていた。あのセシリアに勝つのだから、少なくとも自分より格上の実力を持っていることは明白。

 それでも、やれるだけのことはやる。「まだ初心者だから」という言葉を言い訳にはしたくない。それに、どんな状況だろうと本気でやらなければ、今まで練習に付き合ってくれた箒や昭弘に失礼だ。何より“男”らしくない。

 

(…やってやるさ。オレは家族を…千冬姉を護れる男に…)

 

 最愛の家族を護る。それは果たして目標か目的か、それともただの願望なのか。

 それは不可解にも、一夏本人ですら解らない。

 

《織斑、向こうのエネルギー充填と武器・弾薬補充が完了した。いつでも行けるぞ》

 

 そんなことを考えていると、管制塔からの千冬の声がピット内の環境音を掻き消す。

 

「…了解」

 

 一夏は短くそう答えると、白式を展開し純白の装甲を身に纏う。

 

《織斑及び白式、発信準備完了。どうぞ!》

 

 管制塔からの通信を受け、ピットからフィールドを見上げる。

 

「織斑一夏、白式。行きます!」

 

 1対の非固定式の美しき機械翼を羽ばたかせ、一夏と白式はフィールドへと飛翔する。

 

 

 

 フィールド上には既にMPSを纏った昭弘が待機していた。

 ハイパーセンサーで敵機の名称や特徴等を確認すると、一夏は先程の試合とはまた違った緊張感を味わうことになった。

 

(アレが昭弘のMPS『グシオンリベイク』か…。武装は主に射撃兵装…なのかな?なんと言うかこう、フルフェイスって不気味だよな。表情が分からないのが不安感を煽るって言うか…。あとカッコいい、ツインアイの部分とか)

 

 今回昭弘は、最初からグシオンリベイクで出撃することにしたのだ。

 全体的な性能では、重装甲グシオンよりグシオンリベイクの方が上だ。敵機の情報がほぼ無い状況ならば、後者を選ぶのが妥当であろう。

 

《そんなに気張んな織斑。好きなようにやりゃいい。オレもちゃんと“本気”で行くから安心しろ》

 

「お、おうよ!オレも本気で行くぜ!!(生きて帰れるかなオレ!?)》

 

 緊張を解すために放った昭弘の一言は、一夏にとっては却って重荷となってしまった様だ。

 それでも一夏は不器用なりに自身のことを気に掛けてくれた昭弘に、重荷以上の感謝も感じていた。

 

(よし!最初は“アレ”で行くか!)

 

 一夏は、頭の中で最初に自身が起こすべき行動を既に決定していた。

 

 

ビーーーーーーーーー!!!

 

 試合開始のブザーが鳴る…と同時に。

 

バォンッ!!

 

 一夏が最初に取った戦法は、言うなれば“先手必勝”であった。

 まず一夏は、試合開始のブザーが鳴ると同時に瞬時加速を敢行。機動性と加速力に優れた白式の爆発的なスピードで、自身とグシオンとの間合いを一気に潰そうとする。

 それと同時に零落白夜を発動させる。

 

 その様はまるで隼だ。しかし、一夏の行動は昭弘に完全に読まれていた。

 グシオンも又、試合開始のブザーが鳴ると同時に大きく右方向へとスラスターを吹かした。直進しかできない瞬時加速の弱点を突いたのだ。これにより、一夏にとって渾身の一撃は空しく宙を斬る。

 白式が態勢を立て直している隙を昭弘が見逃してくれる筈も無く、先程のセシリア戦と同じように「M134B ビームミニガン」2丁と「炸裂弾頭搭載型滑腔砲」2丁による一斉射撃を行った。

 

ドゥゥゥリリリリリリリリリリリリリ!!! ダダォーーン!! ダダォーーーン!!

 

 それらをモロに食らってしまった白式は、SEを大幅に減少させてしまう。

 一夏は自身の作戦を悔いるよりも前に、グシオンの変貌っぷりに驚愕の色を示していた。

 

(なんじゃありゃ!?腕が背中から更に2本生えてきたぞ!?)

 

 一夏が驚愕している間にも、グシオンの猛攻は絶え間無く続く。未だ戦闘経験の浅い一夏は、それらの攻撃を必死に避ける事しかできない。

 

 

 

 観客席にて、箒は2人の試合を固唾を吞んで観ていた。余りにも一方的な試合を。

 一夏は今もグシオンの猛攻を必死に掻い潜ってはいるが、いくら機動力に長けた白式でもあれだけ濃密な弾幕を全弾回避できる筈も無く、少しずつ白式の被弾数が増えていく。

 対するグシオンは、未だにスラスターによるものでしかエネルギーを消費していなかった。

 

 箒は、正直なところ2人の勝敗なんて求めてはいなかった。

 勿論、同じ剣術家であり想い人である一夏にできれば勝って欲しい気持ちはある。だがそれ以上に、互いに悔いの無い戦いをして欲しいのだ。

 しかしそんな儚い願望とは裏腹に、現実的な結果は箒にだって目に見えている。

 

 白式には射撃武装が存在しない。増してや一夏はほぼ初心者。そんな状況で昭弘の様な歴戦のパイロットにああも弾幕を張られてしまえば、最早攻め入ることなんてできない。

 セシリア戦では相手が油断していたというのもありビームを上手く無効化することで善戦できたが、今回は訳が違う。昭弘に油断や慢心なんて一切無いし、ビーム兵器とは言え速射能力の極めて高いミニガンが相手では零落白夜で弾くにも限界がある。しかもそれが2丁。更には実弾を搭載している滑腔砲まである。

 

 ここまで条件が揃ってしまえば、一夏の惨敗は最早決定事項と言っても過言では無い。

 箒は、自分はつくづく我儘な女だと己を責めた。何が悔いの無い戦いだ。初心者とは言え一夏は一方的な猛攻に晒され、昭弘は心を鬼にして嬲りたくもない一夏を嬲り続けねばならない。

 一体これの何処に悔いの無い戦いがあるというのか。そんなもの、自分の身勝手な願望でしか無いというのに。

 

 

 

(クソッ!シールド残量は…16%か。流石にもうキツイな…)

 

 ひたすらに前向きな一夏でも、この状況は最早絶望的としか言えなかった。否、考えが甘すぎたのだ。敵わないことは分かっていたが、それでもここまで一方的な試合になるなんて思いもしなかったのだ。

 慢心していたセシリア相手に多少善戦した程度で何を浮かれていたのだと己を責めようとする前に、昭弘から通信が届く。

 

《織斑。言っておきたい事がある》

 

 攻撃を続行しながら通信を入れる昭弘に、一夏は驚く。返す余裕なんて今の一夏には何処にも無いので、そのまま黙って聞くことにした。

 

《箒にいいとこ魅せてやんな》

 

 その言葉は、まるでこの瞬間の為にあるが如く一夏の心の奥へと急速に浸透していった。

 そうだ、いつもずっと一緒に居てくれたあの娘。苦言を呈しながらも、どんな時でも自身を支えてくれたあの娘。それは、此処IS学園に来てからも変わらなかった。

 そんなあの娘にせめてもの恩返しがしたい。喜ぶ顔が見たい。自身のかっこいい所を魅せてあげたい。

 あの娘に対して“悔いの無い”顔をしていたい。

 

(そうだ!未だ試合は終わってねぇ!!何かある筈だ!一矢報いることができる何かが!!)

 

 一夏は、何か使えるモノが無いかと回避を続けながら周囲を見渡す。すると、あるモノが自身の目に飛び込んできた。

 フィールドを囲む観客席のスタンド。そのすぐ外側から聳え立っている、フィールドを照らす照明だ。

 それを見た一夏は、心の奥底から叫んだ。

 

「ソレだぁァァァァァ!!!」

 

 叫ぶと同時に照明のある方角へと突っ込んでいく一夏。今までとは違い馬鹿正直に一直線な軌道だった為に、白式の被弾率はさらに上昇する。

 シールド残量は5%、もう零落白夜は使えない。

 

(けどっ!ならせめて一撃だけでもッ!!)

 

 

 

 昭弘は照準を白式に合わせたまま、一斉射撃を続行していた。一瞬たりたも白式への視線を外さずに…しかし、それが却って仇となってしまった。

 白式が向かった先は、丁度照明とグシオンとの中間点に位置する空間だった。当然、白式から視線を外さなかった昭弘は白式の後方から光る照明をも視線に捉えてしまう。

 

(ッ!?しまった!逆光か!)

 

 突然自身の目を通じて脳内へ雪崩れ込んでくる膨大な光の束に、昭弘は反射的に右手を眼前に掲げてしまう。

 

《隙有りィィィィィィィッ!!!》

 

 その隙を一夏は逃すこと無く、ここぞとばかりに瞬時加速を使う。逆光を背に超高速で突っ込んで来る白式は、流石の昭弘でも正確な視認が困難であった。

 

(“迎撃”間に合わねぇ。“腰部シールド”間に合わねぇ。“回避”間に合わねぇ。…食らうしかねぇか)

 

 一瞬でそう判断した昭弘は、両腕の肘を曲げて眼前で交差する。更に両脚も同じように曲げて交差し、まるで蹲るかのような防御姿勢をとる。

 

ガゴォォン!!!

 

 一夏は、雪片弐型を袈裟懸けの要領でグシオンの真正面に叩き込んだ。

 最早捨身の突進の様な白式の斬撃に、後方へと大きく押し出されるグシオン。しかし、フィールドの区画シールドに激突するギリギリの所でどうにか踏みとどまる。

 白式は瞬時加速とグシオンに突撃した際の衝撃によって、遂にシールド残量が0という数値を迎えてしまう。それに呼応する様に、白式も青白い粒子へと形を崩していく。

 

 白式の展開維持が限界を迎え、落下しそうになる一夏を昭弘は右腕で優しく抱き止める。

 

《白式、SEエンプティ!勝者、昭弘・アルトランド!!》

 

 アナウンスと同時に、先の試合に負けない位の歓声と拍手が響き渡る。

 確かにシールド残量的には昭弘の圧勝だが、一夏による捨て身の斬撃は2年生3年生からも感銘の声が上がっていた。

 

「昭弘ッ!やった!やったぜ!?オレッ!」

 

 敗者であるにも拘わらず、まるで勝者の様な雄叫びを上げる一夏。その理由は正に“悔いが無いから”その一言に尽きるであろう。

 昭弘はそんな一夏に対し、フルフェイスマスクの中で優しく微笑み返す。例え一夏に見えなくとも。

 

《ああ、本当に良くやった。にしても無茶をする、最後の逆光からの突撃は流石に焦ったぞ》

 

 一夏の大胆な戦術をそう評価すると、昭弘はハイパーセンサーを使って箒の姿を探す。一夏に、箒に、今のお互いの表情を見せてあげたかったのだ。

 

「…お!居たぜ箒!昭弘のすぐ後ろ。区画シールドを跨いだスタンドの最前列」

 

 そう言われて振り返ると、満面の笑みでこちらに手を振っている箒がそこに居た。

 

「…箒があんなに笑うとこすげぇ久しぶりに見たな」

 

 そう言って、一夏も満面の笑顔で手を振り返す。

 

 

 

(…何だか、先程の自分が馬鹿馬鹿しく思えてくるな)

 

 箒は夢中で手を振っていた。先程の陰鬱な彼女は、もう遥か彼方へと吹き飛んでしまっていた。そう、ただ2人を信じて見届けていれば良かったのだ。

 

 そんな箒に気づいて笑顔を浮かべる一夏を見て、箒は嬉しさの余りはしたなくも手の振りを激しくしてしまう。

 

 対する昭弘は箒を見ているだけに留まり、マスクのせいで表情も見えなかった。

 

 箒は、そんな昭弘の静かな反応に一抹の寂しさを感じた。

 その感情は、幼い頃箒が一夏と離れ離れになってしまった時のモノと少し似ていた。

 

 

 

(折角の2人だけの時間だ。オレまで顔出して手を振るのは野暮ってもんだな)

 

 この時、昭弘は気が付かなかった。箒は一夏だけでなく、昭弘に対しても手を振っていたということを。

 

 

 

 

 

 こうして、短い様で長いクラス代表決定戦は幕を下ろした。




えっ?未だにMPSの説明も他のISキャラとの進展も無い?
次回から描写していける・・・といいなぁ・・・。
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