キッチンkojira
それは変哲も無いただの洋食屋である。
この美食の街、コネコタウンでのランクは中の上であり、飛び抜けて旨い、という感じではない。
しかし、何故か人々はこの店に足を運んでしまう。
それは「暖かい味」と表現すればよいのだろうか。
旨い、では無くて美味しい。
疲れて帰って来た時に戴くと、じんわりと身体や心の芯に染み込む味…家庭の味なのである。
また、定番人気メニューのカレー、ハヤシライスには、隠し味に各種豆類や茸を使用している。これが人々の心を、知らず知らずの内に掴んで離さない。忘れかけた頃にまた食べたくなる要因の1つだ。
一人で切り盛りする店主は、実はこの街一二を争う料理店、「BUMP OF CHICKEN」のかつての料理長だった。
が、何故か今はこのこじんまりした店で、今までの経歴を隠して、訪れる客に、その辺の店と変わらない価格で料理を提供している。
「BUMP OF CHICKEN」では、料理人達は最高の料理を追求しながら、日々研鑽を積み重ね、互いに腕を競っている。
「出来立てのものを、最高品質でお出しする」を徹底出来ていないと、厨房に立つ資格すらない。
しかし、これがある意味おかしな方向に進化しているのだ。
厨房に立つ料理人はトップクラスであり、誰が何を作っても申し分ない出来栄えである。
では彼等の序列が何を以って決まっているのか。
それは「出来立て」…つまり調理から提供するまでの速度である。
「BUMP OF CHICKEN」で最高の料理が提供される理由は…
実はオーダーを受けた瞬間に、複数の料理人が同じものを作り、最初に作り上げられた料理しか出さない、というシステムがあるのだ。後の料理は全て廃棄される。
勿論、速さを追求するあまり、料理自体のクオリティを維持出来ない場合は、厨房から追い出される。
「キッチンkojira」の店主、いや元料理長は、この狂ったシステムを導入した張本人の一人であった。
が、今では何故か、効率度外視の、ある意味客を待たせて、店の雰囲気を味わって貰う為の時間を作る様に…一人で切り盛りしている。
何が彼をそうさせたのか…
今となっては伺い知る事は出来ない…
ただ、「キッチンkojira」で出される料理の数々は、他の店にはない、何かの煌めきが宿っている、という事だけはいえる。
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コミュニティにいるリレー小説に参加していない方が、自主的に書いてくださった短編小説となります。
状況把握に適していると考え、ご本人に許可を取って掲載する流れとなりました。