「......GO AHEAD」
俺の呟きと共に、ため息が一つ吐き出された。
「やはり『えーじぇんと』と言うものは頑固じゃのぉ。ここから去ってくれたら何もせんというのに」
エージェント? 何の事だ? 何故ここでエージェントの話が出てくる?
――まさか。
そう思った俺はほぼ直感だけを頼りに後ろを向く。
――そこには、過去の各国から派遣されてきたスパイであろう。その亡骸が幾つも残されていた。
「先程から言って居るが、この町で起ったことを何もなかった事にしてこの町から去るなら何もしない。じゃがのぉ、抵抗するというのならこちらもそれ相応の事はするからの?」
それは、人類を遥かに超越した鬼という"上位個体"からの最終警告であった。
普通ならこの警告に従って大人しく去るべきだが、ここで知りえた情報は必ず持って帰らないといけないという確信がある。
となると、答えは一択だ。
―――何としてでもここから逃げ切る...!
先ず俺は持っていた拳銃――世界的に使われているグロック17である――のトリガーを引く。
サイレンサーが付いたグロック17から聞こえる「パスッ」という音を聞きつつ、腰に付けてあったスモークグレネードのピンを外し、鬼の方に放り投げた。
流石にスモークグレネードは使われた事が無いらしく「ヴォ!?」等と言って驚いている。...という事は弾は外れたか。
正直スモークグレネードが効果なかったら詰みだなと思っていたが、ここは運が味方をしたようだ。
次にこの隙に出口を探そうと周囲を見回す。
だが、煙の中見にくくなってきているのもあり、出口らしきものはどこにも見当たらない。
周囲の環境をもうちょっと把握しておくべきだったと後悔するも、始まってしまったものはしょうがないと諦め、俺は一か八かで真後ろに向かって走り出す。
だが、鬼がその好機を逃す筈がなかった。
「ヴォ!」
突如、後ろでその声が聞こえたかと思うと――真横を豆ほどの大きさの小さい塊が飛び去って行く。
幸いにして命中はしなかったものの、飛んで行った先で爆音が響いていることから、威力がどの程度のものなのか、容易に想像できる。
そして、更に不幸な事に、さほど走らないうちに周囲が大分暗くなっている。
辺りを見回してみると、森林の様だ。
森林はその特性上、射線が通りにくいので、逃げるときは便利ではあるのだが....
そう思いつつ、ふと後ろを向くと、もう10mほどしか間が空いていない。
流石に初見のスモークグレネードに対してこんな短時間で対処するのはないだろ....とは思うものの、相手は人類を超越している存在。それぐらいは何ともないのかもしれない。
一応牽制程度にはなるだろうと思い、2,3発鬼に向かって撃ってから再度走り出す。
その時横目で見たのだが、銃弾手で受け止めてなかったか...?
――――
――――
何分走り続けただろうか。銃が牽制になっていなかったら今頃奴らに捕まっていただろう。
いつしか森は晴れていた。
もう気付けば鬼たちは追ってきていない。
AWPは無くしているが、幸いなことにまだグロック17は握ったままだ。銃も2弾倉分ある。
近くに町が見える。
もしかするとまだあの変な街かもしれないが、今の負われている状況よりかはマシだろう。あの鬼たちも街の中で暴れたりはしないだろう。
そう思い歩いていると、「プーン」と何やら変な音が聞こえる。
ふと後ろを振り返ってみると、どこから取ってきたのだろう。
―――鬼たちがガトリング砲を装備し、こちらに銃口を向けてきていた。
「What!? 一体どうなっているんだ!」
思わず叫んだ俺に構わず、「パパパパッ」と、マシンガンさながらの音を立てる。
だが、俺はすぐその違和感に気付いた。
「音が、軽い...?」
そう、音が軽いのだ。一般的な銃弾の音よりも圧倒的に。
疑問に思い、集弾率の悪い弾丸たちを見ていると、一つの事に気付く。
「これ、豆じゃないか....」
鬼だから豆。鬼は外。ほう、面白い。
では、それにちなんで賭けをした方が分がよさそうだ。
鬼たちにもこちらの文化は知れ渡っているのかと思いつつ、俺は鬼たちに大声で問いかけた。
「やぁ、鬼たち。一つ賭けをしないか?」
俺が急に喋りかけて来たことが意外だったようで、鬼たちはガトリングを撃つ手を止め、こちらに話しかけてくる。
「ほぅ。博打とな。どのような内容じゃ?」
よし、乗ってきた。
「俺が、その弾に当たらずに街に付けたら俺の勝ちって事で元の場所に戻してくれ。、町に着くまでに一発でも俺に当てることが出来ればお前らの勝ちだ。好きにすればいい」
「それは良いのじゃが....どうなっても知らんぞ? 若者よ、この銃は毎分1200発なのじゃよ」
――えぇ......ガトリング砲を"銃"として扱ってるの貴方達ぐらいですよ。実際は肩に担いで撃つものじゃないし。
という言葉が喉まで出かかったが、そこは堪えて次の言葉を続ける。
「それでいい。毎分1200発か何か知らないが、それで大丈夫だ」
何も、俺だって勝算が無くやっているわけじゃない。
先ほど見ていたのだが、毎分1200発と言っている割には、さっきの豆の弾、俺に一発も当たってないのだ。要するに、集弾率が悪すぎる。
「ほう、いいじゃろう。じゃが、手加減はせんぞ?」
俺は、その言葉にうなずくと同時に、街の方へ走り出した―――
一応、ガトリング砲の設定を。
コミュ内の方提案の銃を採用しています。
ノーペインガン(弾種:大豆)
プーンと砲身が回転して毎分1200発ぐらいの大豆が…
に準拠しています。