すいません。武瑠が持った眼魂の数を6個から7個に変更させていただきました。
勝手ながらすいません。
鎧の少女との戦闘があった日の翌日、早朝。大天空寺の階段には、かなりのスピードで駆け上がる響の姿があった。
境内まで着くと、そこでは武瑠と武蔵が木刀で地稽古をしていた。
響は大声で叫ぶ。
「たのもおおおーッ!」
突然の大声に稽古を中断する武瑠たち。
「響ッ!? こんな朝早くからどうしたの?」
「武瑠、お願いがあるの。英雄さんたちの中から誰か一人を師匠として貸してッ!」
「・・・えっと、どういう意味?」
「昨日ハサンさんが言ってたんだ。大天空寺に来れば、力になってくれる英雄がたくさんいるって。わたしは守りたいものを守れるように強くなりたいの。だから───」
「ちょっと待ったあああッ!!」
突然、先程の響とは比べ物にならないほどの声が本堂から響き渡る。そこから出てきたのは赤いマントを羽織り、顔を隠すほどの兜を被った、パンツ(のようなもの)一丁のマッチョだった。
彼の姿を見た瞬間、響は悲鳴をあげ、マッチョから背を向ける。
「た、武瑠ッ! 大天空寺から変態がッ! というか誰ですかッ!」
「落ち着いて、響。あの格好は彼が生きていた時代なら普通だったからしているわけで。それと───」
「はじめましてッ! 私はスパルタ王レオニダス一世ッ! お嬢さん。あなたは守るために強くなりたいのですね? なら、私があなたを鍛えてあげましょうッ!」
レオニダス一世。ペロポネソス半島南部スパルティにあった都市国家『スパルタ』の王。後にギリシャにおいて『守護の英雄』として讃えられた存在。
響はそのことを知らなかったが、自分を鍛えてくれようとする彼の意思は感じ取っていた。しかし、
「すいませんッ! 鍛えてくれるのはありがたいんですけど、とりあえず、服を着てくださいッ!!」
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それから響の修行は始まった。学校を休んでの猛特訓。その間に響は何度も命の危機を感じた。
あるときは、
「さあ、響くんッ! 今から静謐殿の毒が塗られた鎖を振り子の要領で当てるので、それらを全て避けてくださいッ! 大丈夫ッ! 当たっても単に死ぬほど痛いだけですからッ! あ、あと百貌殿たちがそれと同時にナイフを投げつけるので、それも避けてください」
「いや、数が多すぎるんですけどッ!?」
あるときは、
「響くんッ! この70キロの重石を背負って、大天空寺の石段を十回ほど往復してくださいッ!」
「ちょっと待ってくださいッ! 大天空寺の石段って600くらいあるって武瑠が言ってたんですけどッ!」
「大丈夫ですッ! 私も一緒にやりますからッ!」
「そう言う問題じゃありませんッ!!」
あるときは、
「・・・あの、この子は・・・」
「熊です。武瑠くんに頼んで捕まえて来てもらいました。今からこの子と戦って貰います」
「いや、無理ですからいやあああああッ!!!?」
とまあ、一部の例を挙げてみたが、つい最近まで普通の女の子だった者に耐えられるわけがなく、1日が終わるときは決まって真っ白に燃え尽きていた。
だが、響は決して修行を止めることはなかった。
(わたしには守りたいものがある。それはとてもちっぽけなものかもしれないけれど。それでもわたしは守りたい。守るために、わたしはわたしのまま強くなりたいッ!)
その思いもあってか、響は驚くほどのスピードで力をつけていった。
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ある日、二課から武瑠たちに召集がかかった。
「どうしたんですか? 急に召集なんて」
「・・・数時間前、広木防衛大臣が殺害された」
「「───ッ!?」」
「現在、目下全力で捜査中だが、犯人は未だに分かっていない」
「実は、その広木防衛大臣からある極秘任務をもらっていたの。完全聖遺物『デュランダル』をここの最奥区画『アビス』から永田町最深部の特別電算室。通称、『記憶の遺跡』までの護送を私たちで受け持つことになったわ」
『デュランダル』。フランスの叙事詩『ローランの歌』に登場する英雄、ローランが持つ聖剣だ。
「任務遂行こそが大臣の弔いとなる。この任務を君たちに任せたい。頼めるな?」
「「はいッ!」」
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翌日の明朝。響は了子の運転する車で、武瑠はマシンゴーストライカーで護衛を勤めていた。了子たちが乗る車にはデュランダルが乗せられている。
(・・・まだノイズは見当たらない。だけど、気は抜けない───)
そのときだった。武瑠たちが走っていた鉄橋の一部が崩壊する。そこから護衛に同伴していた車が幾つか落ちてしまった。
「───ユルセンッ!」
「オッケーッ! 来い、キャプテンゴーストッ!」
空間に瞳の紋章が浮かび上がり、そこから緑色の足が生えた黒い幽霊船が現れた。
幽霊船『キャプテンゴースト』は空中を蹴って、転落した車を救出する。
橋を渡り、町中を走っても攻撃は止まらない。数分も経たないうちに残ったのは了子、響、武瑠だけになってしまった。
敵の攻撃が止まない中、武瑠たちは工場地帯に逃げ込む。
しかし、地面に張り巡らされたパイプを踏んでしまい、了子たちの車はひっくり返ってしまった。
「響ッ!」
バイクから降りた武瑠は響たちの元に駆け寄ろうとする。しかし、その間を遮るようにノイズが現れた。ノイズが壁となって響たちが見えなくなる。
「そこをどけッ!」
《カイガン! オレ!》
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「い、いたた・・・。響ちゃん、大丈夫? 車から抜け出せそう? デュランダルは引っ張り出せそう?」
「は、はい。なんとか」
ひっくり返った車から抜け出す響たち。響はすぐにデュランダルを引き出そうとするが、その重量は響が思っていたよりも重く、車から引っ張り出すだけでも一苦労だった。
「コ、コレ、重い・・・」
「なら、それを貰おうか」
響たちの前に鎧の少女が現れる。
響はデュランダルを放置し、了子を守るように前に出た。
「なんだ。あたしと殺り合うのか? 戦うことを恐れているお前が出来るとは思えねぇけどな」
(・・・確かに、戦うのは怖いし、わたしは弱虫だ。だけど───)
響は修行中に聞いたレオニダスの言葉を思い返す。
『いいですか、響くん。あなたに必要なのは弱きも強きも守るという確固たる信念です。それがあなたを確実に強くする』
「───わたしはもう諦めないッ!」
響は唄う。
己が戦うための力を、シンフォギアを纏うための唄、聖詠を。
「Balwisyall Nescell gungnir tron・・・」
瞬間、響の体を光が包み込む。その光は形を造り、
響は鎧の少女を見据え、歌いながら構える。
「~~~♪」
「そんなに遊んで欲しいなら遊んでやるよッ!!」
鎧の少女が響に向かって鞭を振るう。そのスピードはかなりのものだが、百貌のナイフを見続けてきた響にとっては止まってすら見えた。
鞭を素早く避けた響は瞬時に肉薄し、己の拳を突き出す。鎧の少女は防御するが、響の一撃は鎧の少女を易々と吹き飛ばした。
「ちっ、コレでもくらいなッ!」
なんとか姿勢を立て直した鎧の少女はソロモンの杖からノイズを召喚する。その中の小型に分類されるノイズ数体が響に襲いかかった。
前の響なら必死に逃げていただろう。しかし、
(熊さんやレオニダス師匠に比べれば怖くなんてないッ!)
半身を反らして回避すると同時に、肘鉄をくらわせる。空から襲ってくるものはローキックで、背後から襲ってくるものは裏拳で撃破する。数分も絶たないうちに小型ノイズはいなくなった。
残った大型ノイズが響に向かって、その巨大な腕を振るう。響は躊躇いもせず、ノイズに飛び掛かった。そのとき、右腕の装甲をスライドさせる。
(修行中、何度やってもアームドギアは出せなかった。なら、その分のエネルギーを直接ぶつけるッ!)
「───はああああッ!」
響の拳がノイズに突き刺さると同時にスライドさせた装甲が元に戻り、シンフォギアの武装『アームドギア』に形成されなかった分のエネルギーが大型ノイズに解き放たれた。
目の前で簡単に撃破された大型ノイズに、鎧の少女は驚きを隠せなかった。
(なんだ、今のッ!? あの威力、あの女の絶唱並みの───)
そのときだった。
工場地帯にバァンッ!と破裂音が響き渡る。見ると、デュランダルがケースを突き破って宙に浮いていた。その刀身には淡い光が宿っている。
「あれがデュランダルッ・・・! あたしがいただくッ!」
鎧の少女は飛び上がり、デュランダルに手を伸ばす。しかし、響がタックルして妨害。
「渡すものかあああッ!」
響はデュランダルを掴んだ。
───ドクン
「え───」
周りの空気が一変する。その状況に了子、そして、鎧の少女が驚くなか、響の中をある感情が埋め尽くしていった。
───壊せ。壊せ。壊せ。壊せ。壊せ。壊せ。壊せ。壊せ。壊せ。壊せ。壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセッ!
瞬間、響の意識は闇に染まった。
⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫
「□□□□□□□□□□□ッ!!!」
「なんだ───って、あれはッ!」
ノイズを倒していたなか、武瑠は狂獣のような咆哮を聞く。視線を向けると、そこには身体中が黒い影に覆い尽くされた響の姿があった。彼女が持つデュランダルからは膨大な光が放出されている。
(もし、あれが振り下ろされたら───)
武瑠の中で最悪の状況が考え出される。もし、武瑠の考え通りになれば、ここにいる全てがただでは済まないだろう。
武瑠はすぐさま前に行き、懐から黄土色の眼魂を取り出した。
「レオニダスッ!」
武瑠は『レオニダスゴースト眼魂』のスイッチを押し、ベルトの眼魂と交換した。
《アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー!》
ベルトから飛び出した赤いマントを靡かせ、大きなラウンドシールドを背負った黄土色のパーカー『レオニダスパーカーゴースト』は空中でポーズを取り、ベルトのトリガーを押し込んだ武瑠の元に行く。
《カイガン! レオニダス!
不屈! マッスル! スパルタ王!》
武瑠の体にレオニダスパーカーゴーストが纏われ、向かい合う戦士二人と盾を表した黄土色の模様が描かれたマスクが被さる。肩の装飾から靡く赤いマント。頭の部分にはマントと同じ色合いのトサカの装飾がついていた。
その英雄は三百の仲間と共に十万の敵を迎え撃った守護の英雄、レオニダス一世。その不屈の魂と守護せんとする思いを纏ったゴーストの新たな姿。
その名は『仮面ライダーゴースト レオニダス魂』。
レオニダス魂となった武瑠は背負っていたラウンドシールドを左手にも持ち、すぐさまオメガドライブをした。
《ダイカイガン! レオニダス! オメガドライブ!》
「我が思い、我が意思に答え、今こそ現れよッ!
瞬間、テルモピュライの戦いでレオニダスと共に戦った三百の戦士たちの盾が響と武瑠たちの間に展開される。
響は容赦なくデュランダルを振り下ろした。
光の一閃と300の盾がぶつかり合う。僅かな均衡の後、辺り一帯に衝撃が走った。
「□□□□□□□□□ーッ!」
「くッ・・・」
光と盾が競り合うなか、武瑠は焦りを覚えた。なぜなら、響の持つデュランダルが永続的に光を放出するのに対し、武瑠が発動している『炎門の守護者』は戦士たちの盾を300までしか出せない。
時間が経つにつれ、盾が一枚、また一枚と崩壊していく。
(このままじゃ───いや、響にそんなことはさせないッ!)
「はああああああああああーーーッ!!」
盾を持つ手に力を込める。数瞬後、武瑠の視界を光が覆い尽くした。
この作品では響の師匠をレオニダスにしてみました。そのうち、筋肉マッチョになっても責任はとれませんので。
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大天空寺
町外れの高台にある寺院。魔術師曰く、龍脈が何重にも重なる地点に建てられているため、他の場所よりも空間中の魔力量が多いらしい。そのおかげか、英雄たちは自由に実体化出来ている。