それではどうぞ。
デパートでの戦闘から数日。大天空寺の境内から出るクリスの姿があった。
(逃げ続けるのはもう終わりだ。あたしのことは、あたし自身でけじめをつける)
ふと、足を止め、背後にある大天空寺を見る。
「・・・世話になった」
そう呟き、彼女は階段を下りようとした。しかし、
「どこに行くつもりだ?」
上から声をかけられる。顔を上げると、そこにはロビンフッドが枝に座っていた。
「こんな朝早くから散歩ですかい?」
「どうせ分かってんだろ。なんで聞く?」
「確認のためですよ。で? あのフィーネて女の所に戻るのか? 俺はおすすめしねぇな」
「てめえには関係ないだろ。口出しすんな」
「・・・一応、忠告はしといたからな」
「へいへい。ありがとうございました」
そう言って、クリスは去っていった。ロビンフッドはそれを見ながら溜め息をつき、
「・・・さて、アイツはどうするかねえ? まあ、間違いなく追っかけるか。なら・・・」
ロビンフッドはあるものを懐から取りだし、階段を下りていくクリスに向ける。
「頼んだぜ、コンドルさんよ」
クエェッ!、と一鳴きしたコンドルデンワーはクリスの後を追い、ロビンフッドの手から離れていった。
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数十分後。クリスはフィーネが拠点としている館に来ていた。中世ヨーロッパを思わせるその外形は、内装もさぞかし優雅だろうと想像させる。
しかし、館内は地獄絵図と化していた。
「なんだよ、これ・・・」
辺りに転がった武装した男性の死体。その数は片手では数えきれないほど。さらには部屋の中心にある机や、その奥にある通信機器には真新しい血の飛び散った跡があった。
クリスはむせ返るような死臭に耐えながら死体を確認する。
(日本人じゃねえな。・・・まさか、フィーネと連絡をとっていた───)
そのときだった。クリスの背中に悪寒が走る。
「───ッ!?」
咄嗟にその場から飛び退くクリス。次の瞬間、先程までクリスがいた場所に鋭利な鎌が振るわれた。それを振ったのは黒いフードを被った長身の女性だった。クリスは一目でその女性・・・いや、その存在が何か分かった。
「シャドウノイズ・・・ッ!」
「・・・・・・」
シャドウノイズは静かに鎌を構え、クリスに襲いかかる。クリスは後ろに飛び退き、同時に聖詠を唄う。
「Killiter Ichaival tron・・・」
クリスの体を紅のシンフォギア『イチイバル』が覆う。彼女はアームドギアであるボウガンを握り、御返しと言わんばかりに乱射した。
しかし、シャドウノイズはそれら全てを叩ききる。
(ならッ───)
クリスは腰の装甲を展開し、搭載されたマイクロミサイルを放つ。その数は二十以上。シャドウノイズが隠れて見えなくなってしまうほどの量に勝利を確信したクリス。しかし、
「なッ────!?」
ほんの一瞬の出来事だった。シャドウノイズの瞳が光り、マイクロミサイル全てが石になった。ミサイルはシャドウノイズに届かず、その一歩手前で落ちてしまった。
予想外の出来事に目を丸くするクリス。そこにシャドウノイズの鎌が迫る。ハッとなったクリスは咄嗟にアームドギアで防ぐが、まるで豆腐を切るように容易く両断された。
(ヤバいッ! 一旦距離を取って体勢を───)
クリスが後ろに飛び退こうとする。しかし、シャドウノイズはそれを許しはしなかった。またシャドウノイズの瞳が光る。
(しまっ───!?)
そう思ったときには、もう遅かった。両足の感覚がなくなり、床に尻餅をつくクリス。彼女の足は完全に石になっていた。
「ウ、ウソ、だろ・・・」
彼女は知らなかった。このシャドウノイズに使われている聖遺物は『不死身殺しの鎌 ハルペー』だということを。それを知っていれば、彼女はミサイルが石になったときに分かっただろう。
ハルペー、石化の瞳。これに当てはまるものはただ一つ。見たものを全て物言わぬ石に変える、ギリシア神話の怪物『メドゥーサ』。
クリスの前に立つシャドウノイズはメドゥーサの力を持っているのだ。
「・・・・・・・・・」
シャドウノイズが冷たい笑みを浮かべ、動けないでいるクリスに近づく。クリスは恐怖に震え、後退りするしかなかった。しかし、すぐに壁にぶつかり、逃げ場を失う。
(あたしは、ここで死ぬのか・・・?)
シャドウノイズがクリスの首に狙いを定める。
(イヤだ・・・イヤだ・・・! 誰か、誰か助けて・・・!)
シャドウノイズが鎌を振りかぶる。
(パパ・・・!ママ・・・!)
クリスは目を固く瞑り、来るであろう死を覚悟する。
───そのときだった。
《ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!》
(え、今のは───)
聞き覚えのある音に目を開ける。すると、クリスの瞳に写ったのは鎌を構えたシャドウノイズではなく、床に着地する亡霊だった。
《ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!》
クリスに鎌を振り下ろそうとするシャドウノイズにオメガドライブを放つ武瑠。蹴り飛ばされたシャドウノイズは壁を突き破り、建物の外にぶっ飛ばされた。
「クリス、大丈夫───じゃなかったッ!? どうしたの、その足ッ!」
床に着地した武瑠はクリスに近寄る。
「お前、なんで・・・?」
「ロビンがコンドルデンワーを飛ばしてくれていたからね。監視みたいになっちゃってごめん」
「そうじゃねえッ! なんであたしを助けたッ!? あたしたちは敵同士だぞッ!」
「え、それは助けたかったからじゃダメかな?」
「てめえ、ふざけてんのかッ!」
クリスが武瑠の胸倉を掴み、睨み付ける。
「助けたかったから助けた? あたしはそう言うのが大っ嫌いなんだよッ! あたしのパパやママはそうやって死んでいったッ! 何でもかんでも助けられると思ったら大間違いだぞッ!」
「・・・確かに、そうかも。でも、俺は君を助ける」
「はあッ!? あたしの話を聞いてなかったのかッ! 寝言は寝て言───」
そのときだった。武瑠の後ろから響いた音がクリスの言葉を遮る。振り返ると、そこには片腕を失ったシャドウノイズが立っていた。フード越しから武瑠を睨んでいる。
「・・・クリス。俺の父さんが言ってたんだ。人を助けるのは、自分の手の届く範囲だけにしろってさ」
「はあ? 何を急に・・・」
「それってさ、言い換えると『人を助けたかったら、自分の手が届くようにしろ』って意味になるんだよ。だから、俺はクリスを助けるために手を伸ばす。それが俺の戦う理由だから」
武瑠はガンガンセイバーを召喚し、シャドウノイズと向かい合う。そんな彼にクリスは問う。『お前はなんなんだ』と。
「俺は、ゴースト。仮面ライダー、ゴーストだッ!」
そう叫んだ武瑠はシャドウノイズに向かって駆け出す。それと同時にシャドウノイズも飛びかかる。
ぶつかり合う刃。その度に火花が飛び散る。
数度刃をぶつけ合い、互いに距離をとると、シャドウノイズが鎖を召喚し、武瑠に飛ばす。武瑠はそれら全てを軽いステップで避ける。
尽く攻撃を避けられたシャドウノイズは唇を噛み、武瑠を睨み付ける。
「気をつけろッ! そいつの眼は───」
シャドウノイズの考えがわかったのか、クリスが叫ぶ。しかし、叫んだ時にはすでにシャドウノイズの瞳が光っていた。シャドウノイズの瞳には武瑠の姿が写っている。武瑠は抵抗する間もなく石化する
──────はずだった。
「はあああッ!」
「──────ッ!?」
ガンガンセイバーがシャドウノイズを切り裂く。消滅させることは出来なかったが、大きなダメージを与えた。
シャドウノイズが後ろによろける。その傷口からは血のようなものが流れていた。
「なんで・・・」
武瑠は幽霊だ。幽霊に実体はない。ゆえに石化するものがない武瑠にはメドゥーサの瞳は効かないのだ。
(よし、このまま───)
シャドウノイズに止めをさそうと、ベルトにガンガンセイバーの紋章をかざそうとする。しかし、後方から飛んできた鎖がその腕に巻き付き、動きを止めた。武瑠はすぐに鎖を叩き斬ろうとするが、もう片方の腕にも鎖が巻き付く。
それなら、と武瑠は霊体化して脱出を試みる。しかし、
(なんだこれッ!? 霊体化しても抜け出せないだとッ!?)
成す術もなく、ただもがくことしか出来ない武瑠。そんな彼にシャドウノイズは鎌を構える。
しかし、一発の弾丸によって、その鎌は床に落ちた。
シャドウノイズは貫かれた腕を抑え、叫ぶ。その間に二発の弾丸が武瑠を拘束する鎖を破壊した。解放された武瑠は弾丸が飛んできた方を向く。そこには武瑠の予想通り、ピストルに変形させたアームドギアを構えたクリスがいた。
「クリス、ありがとうッ!」
「うるせえッ! さっさと決めろッ!」
武瑠はクリスの言葉に『了解ッ!』、と答え、ベルトの瞳にガンガンセイバーの紋章を翳す。
《ダイカイガン!
ガンガンミナー!ガンガンミナー!》
武瑠の背後に瞳の紋章が浮かび上がり、それからエネルギーがガンガンセイバーに流れ込む。
「───命、燃やすぜッ!」
《オメガブレイク!》
紅い斬撃がシャドウノイズを両断する。シャドウノイズは断末魔の叫びをあげ、灰となって消滅した。
「ふぅ・・・」
シャドウノイズの消滅を確認した武瑠はクリスに駆け寄る。石化した彼女の足は完全に元通りになっていた。
「鎖から助けてくれてありがとう、クリス」
「礼はいい。あたしだって助けられたんだから」
元に戻った足に力を入れ、立ち上がろうとするクリス。しかし、前のめりに倒れてしまう。それを武瑠が抱き止めた。
「おっと・・・大丈夫か?」
「あ、ああ・・・すまねぇ・・・」
「・・・なあ、クリス。これからどうするんだ?」
「・・・さあな。どこも行く宛ないし、どうすればいいかなんてわからねぇよ」
「ならさ、大天空寺に来ないか?」
「でも、あたしはそこの住職に・・・」
「御成はクリスがやったって気づいてないから大丈夫だよ」
「でも、あたしは・・・」
「大丈夫。平気、へっちゃらだって。もしもの時は俺が説得するから」
「幽霊擬き・・・その、なんだ。ありがとな」
「俺の名前は幽霊擬きじゃなくて、天空寺武瑠。改めて、よろしくな、クリス」
武瑠はクリスに手を伸ばす。クリスは戸惑いながらもその手を取ろうとする。
『───そこまでにしてもらおうか』
「「───ッ!」」
突然、武瑠たちがいる部屋にあの女の声が響き渡る。瞬間、クリスが武瑠の手を支えに立ち上がり、二人は辺りを警戒した。しかし、姿は何処にもない。声は天井に貼り付けられたスピーカーから流れていた。
『クリスを始末するために放ったシャドウノイズをこうも容易く撃破するなんて。さすがは天空寺武瑠。死んでもなお戦い続ける、奇跡の塊と言ったところかしら?』
(え、死んでもって、どういう───)
『でも、カ・ディンギルが完成した今、貴方の存在もどうでもいい。だから・・・
───クリスと一緒に消えてくれないかしら?』
フィーネがそう言うと、部屋の奥にあった機械が光を放つ。それがどういう意味か理解した武瑠たち。
瞬間、二人は光に包まれ、館は大爆発を起こした。
仮面ライダーゴースト:オレ
武蔵、北斎、ロビンフッド、ビリー・ザ・キッド、アストルフォ、ハサン、レオニダス
仮面ライダーネクロム:ネクロム
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ユルセン「次回、戦士開眼シンフォギア・ゴーストッ!」
町に降り注ぐノイズの大群。
響「Balwisyall Nescell gungnir tron・・・」
翼「Imyuteus amenohabakiri tron・・・」
未来「───変身ッ!」
立ち向かう三人の戦士。
武瑠「お待たせッ!」
クリス「持ってけダブルだッ!」
助太刀する亡霊と魔弓。
そして───
「「「───夢幻召喚ッ!」」」
《ウキヨエアーティスト!》
《触れれば転倒!理性不機能!》
『集結! 五人の戦士!』
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長ったらしい次回予告になってすいません。あくまでも予定なので期待はしないでください。