戦士開眼シンフォギアゴースト   作:メンツコアラ

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 今回はG編に入る前、ちょっとした閑話を挟みます。
 どんなものに成るかは、まあ、サブタイトルを見たらわかるでしょ。


番外編
閑話その1 劇的! 大天空寺のビフォーアフター!


 クリスと了子が大天空寺に住み始めてから1ヶ月がたった。その間に、武瑠たちは、新たに六人の英雄たちの眼魂を手に入れた。そして、武瑠や未来に力を貸す英雄たちは、大天空寺では実体化して生活しているため、その分、大天空寺はより賑やかになっていた。

 

 今日も大天空寺では───

 

 

 

「ゴォラアァァァァァァァッ!!」

 

 

 大天空寺の大広間に武瑠の怒声が響き渡った。その声の大きさに、その場にいた3人の英雄たちは目をギョッと見開いていた。

 

 そんな彼女らを余所に、武瑠は部屋を一瞥し、改めて、彼らを睨み付ける。

 

「武瑠、どうしたんだ? 急に叫んで───うわぁ・・・」

 

 クリスが武瑠の元に現れ、彼の前に広がる部屋の有り様に言葉を失う。それほどまでに、その部屋は散らかっていた。

 

 まず、部屋の3分の1を占めているのが大量の絵。その原因は筆を片手に持つ北斎。

 

 

 残りの内、50%を占めているのが空になったビール缶や酒瓶。顔に大きな傷痕を残した女性。

 名を『フランシス・ドレイク』。性別は史実と違うが、彼女は間違いなく、生きたまま世界一周を果たした、あのフランシス・ドレイクである。

 

 

 残りを占領しているのは大天空寺の内装や武瑠たちを写した大量の写真と一眼レフやデジカメ等。それを散らかしているのは、白雪を思わせる少女。

 真名を『アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ』。ロシア革命の激動に呑み込まれ、家族や召使い、ペットも共にイバチェフ館にて虐殺された少女。

 

 彼女たちは武瑠に力を貸す英雄だ。

 

「そうカリカリしなさんなって。その内、頭ハゲちまうよ?」

 

 そう言いながら、ドレイクは手に持った酒を呷る。

 

「余計なお世話ですッ! それよりも、部屋を片付けなさいッ!」

 

「別にいいじゃねぇか。体に害がある訳じゃないんだ「そんなことはありません」うおッ!? 急に現れるなよ、婦長さん」

 

 武瑠の後ろから突然現れた、赤い軍服姿の銀髪の女性に驚くドレイク。彼女の鋭い目付きが、ドレイクを捉える。

 

 その女性は看護師、統計学者、建築学者、看護学者など、様々な顔を持つマルチタレント。クリミアの天使、小陸軍省の異名を持つ女性。真名を『フローレンス・ナイチンゲール』。

 

 ナイチンゲールはズカズカと中に入り、ドレイクの目の前で仁王立ちした。

 

「ミス・ドレイク。私はあなたに飲酒を控えるように言った筈です。なのに、これはどういうことでしょう? なぜ、真昼から飲酒をしているのですか? それにこんなに散らかしては、踏みつけた際に転倒し、大きな怪我の原因となります」

 

「そ、それは・・・」

 

「───没収します」

 

「ちょッ、待ってくれよッ!」

 

 止めるドレイクを無視して、空き缶や空き瓶、まだ中が残っているものまで処分していく。北斎とアナスタシアもしぶしぶ片付けを開始。武瑠たちもそれの手伝いをする。

 

「まったく・・・。少しは周りを考えてください」

 

「そうは言うけどよ。これは俺らの趣味だぜ?」

 

「そうよ。趣味を周りに気を配りながらするなんて、肩身が狭いわ。・・・というわけで、自分専用の部屋を所望するわ」

 

 アナスタシアの要求に、武瑠は頭を悩ます。そんな彼に、アナスタシアは己の顔を近づけた。僅かな距離しか空いていない二人にクリスは顔を赤く染めるが、アナスタシアは無視して武瑠と話す。

 

「武瑠も知ってるでしょ? 私がどんな人生を送ってきたか。自由なんて無縁に等しい生活を送ってたのよ。ちょっとくらい聞いてくれないの?」

 

「い、いや、けどぉ・・・」

 

「ねぇ、武瑠───」

 

「なッ───!?」

 

 アナスタシアが武瑠の首に腕を回す。武瑠の顔が赤くなる。アナスタシアは止めと言わんばかりに小首をかしげて、

 

「───ダメ?」

 

「~~~~ッ、分かったよッ! どうにかしますッ!」

 

「フフッ。やったわ」

 

 了承を得たアナスタシアは武瑠から離れ、片付けを再開する。武瑠も小さな溜め息を吐いたあと、手を動かし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 30分後。片付けを終えた武瑠とクリスは居間で一息入れていた。

 

「・・・で、アナスタシアのお願いはどうすんだ?」

 

「どうしよう・・・」

 

「やっぱり、そうそう増築とかって出来ないのか?」

 

「まあね。それに、増築するってなると、周りの林を伐採しないといけないんだ。あそこ、結構思い入れがあるから、それは避けたいんだ」

 

「けどよ、アナスタシアの言うことも一理あるぞ」

 

「そうなんだよなぁ・・・はぁ」

 

 武瑠はお茶を飲み、クリスは饅頭を口にする。

 

 そんなときだった。

 

「お悩み中みたいだね」

 

「・・・おっちゃん。今日は何? 新しい眼魂の情報?」

 

「いや、違うよ。私は呼ばれたのさ」

 

「誰に?」

 

「私で~すッ♪」「私もいるよッ!」

 

 居間にある扉の一つから了子が、別の扉から『モナ・リザ』を思わせる女性が現れる。

 

 

 その女性、・・・いや。女性はおかしいだろう。なにせ、その人の本名は『レオナルド・ダ・ヴィンチ』。芸術や発明などで多くの功績を残した、あの『ダ・ヴィンチ』である。そんな彼が、なぜ女性なのか。本人曰く、『美』を追及した結果らしい。

 

 

「了子さんにダ・ヴィンチちゃん。おっちゃんを呼び出して、一体何のつもり?」

 

「別に? ただ、武瑠くんの悩みを素早く解決してあげようと思ってね」

 

「実は、結構前から自分の部屋が欲しい者が結構いてね。いい機会だし、その増築の手伝いを彼にしてもらおうと言うことさ」

 

「言っておくけど、私は面倒臭いことをするつもりは───」

 

 自分が手伝うことに意義を申し立てようとする魔術師に、了子が何かを耳打ちする。彼女が言い終わると、魔術師は先程のが嘘みたいに協力的な態度をとり始めた。

 

「了子さん。何言ったの?」

 

「大人の取引と言うやつだ。貴様にはまだ早い」

 

「こういうときだけフィーネにならないでくれます? ・・・それで、本当に増築が出来るんですか?」

 

「勿論だともッ! 我々を信じてくれたまえ」

 

「とりあえず、増築中は弦十郎くんの家に泊まってね。本人には話をつけてあるから」

 

「ちょっと待てッ!? まさか、あんたが電話したのかッ!?」

 

「そうよ?」

 

 それが何か問題?、と首を傾げる了子。彼女が電話をかけたとき、弦十郎の驚く声が近所まで響いたことは言うまでもないだろう。

 

 武瑠とクリスは内心に不安を抱えながら増築を彼女たち3人に任せ、御成を連れて弦十郎の家でお世話になることにした。念のため、武瑠は英雄眼魂を持って泊まりに行く。

 

 武瑠たちが訪ねてきたとき、弦十郎は、

 

「泊めてもいいのだが・・・大天空寺は大丈夫なのか?」

 

「超不安です・・・」

 

 

 

 

 

 

⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫

 

 

 

 

 

 そして、3日後。増築が完了したという連絡を受けた武瑠たちは大天空寺の境内へ続く階段の前にいた。武瑠の横には、大天空寺に住むクリス、御成の他に、今回のことを聞いた響と未来、翼もいる。

 

「大天空寺、どうなっているんだろうね? わたし、ちょっと楽しみッ!」

 

「拙僧もですぞ。大天空寺がどのような変化をしたのか、気になって仕方ありません」

 

 大天空寺の増築にウキウキしている響と御成。一方、武瑠は暗い顔でその場にしゃがみこんでいた。

 

「不安だ・・・かーなーり、不安だ・・・」

 

「ま、まぁ、気持ちは分かるけど、此処でじっとしてても仕方ないでしょ?」

 

「小日向の言う通りだ。早く行かないか」

 

「未来たちはあの2人がどんなものを作るか知らないから、そんなことを言えるだ・・・。あの2人が揃ったらとんでもないぞ・・・」

 

「念のために聞くが・・・どんなものを作っているんだ?」

 

 翼の言葉に、武瑠は苦笑いしながら答える。

 

「若返りの薬、性別転換薬、火を吐く鍋、当てただけでどんな鍵も開ける飛行機のおもちゃ、振ると力が上がる小さなボトル、銃になる携帯電話とか」

 

「この前は自律稼働する虫のおもちゃを作ってなかった?」

 

「・・・いろいろ、アウトのように思うが、後戻りは出来ないと思うぞ。ほら───」

 

 翼は階段の方を指差す。その先には既に階段を上がり始めている響と御成の姿があった。

 

「武瑠、早くッ!」

 

「早く参りますぞッ!」

 

「あの能天気ども・・・」

 

 

 

 

 

 武瑠は不安を抱えながら大天空寺の境内へ向かう。階段を登りきったとき、大天空寺を見た武瑠たちの感想は、

 

「変わってなくね?」

 

「変わって・・・ないね」

 

 武瑠たちの言う通り、外見に変化は全く無かった。念のために内装も確認しておくが、特に手を付けられた様子は無かった。

 

 武瑠は居間にいた魔術師たちにこの事を言うと、

 

「うん。だって、()()()()一切手をつけてないんだもん」

 

「・・・ちょっと待って。ということは、地下を増築したのか?」

 

「そう言うこと。ついてきて」

 

 了子に連れられ、武瑠たちは大天空寺の地下の研究室へ行った。その部屋の奥には、今まで無かったスライド式の扉が一枚。横には下矢印のマークが着いたボタン。

 

「これって、まさか・・・」

 

「さぁさぁッ! そこのボタンを押したまえッ!」

 

 ダ・ヴィンチに言われるがまま、武瑠はボタンを押す。すると、扉が開き、エレベーターの一室が姿を現した。武瑠たちはそれに乗り、『B1』と書かれたボタンを押す。

 

 エレベーターが動きだし、5秒後。扉が開くと、

 

「なんと言うことでしょうッ!」

 

 御成がそんなことを叫ぶ。武瑠たちも声には出さなかったが、十分に驚いていた。

 

 目の前に広がるのは、崩壊した旧二課本部と瓜二つの廊下。左右の壁に設けられた扉の向こうは、一つ一つが英雄たちが希望した内装になっている。

 

 実体化した英雄たちはそれぞれに与えられた部屋を見て、歓喜の声を上げる。

 

「こりゃすげぇな。要望通りじゃねえか」

 

「防音もしっかりしているので、遅くまで自主トレをしても迷惑になりませんねッ!」

 

「まだまだッ! これで終わりじゃないよッ!」

 

 

 次に向かったのは『B2』の階。そこはトレーニング室。トレッドミルやエアロバイク、ラットプルダウン等のトレーニングマシンは勿論。奥には旧二課本部に設置されていたシミュレーション室まで設置されていた。

 

「次はもっと驚くわよ~」

 

 

 最後に『B3』の階。そこは大浴場。泡風呂や五右衛門風呂、さらにはスーパー銭湯のような流れるプールも存在している。なお、そのエリアは混浴なので、水着を必ず着用しないといけない。

 

「ちょっと待てッ! ここの水とか、電力とかってどうしてんのッ!?」

 

「そこら辺も問題ないッ! 電力には大天空寺の真下にある龍脈を使った魔力発電を使用ッ! 計算上、百万年以上は魔力が持つから問題なしッ!」

 

「魔力発電って何ッ!?」

 

「水は置換魔術を利用して、世界中の地下水を使用しているから、問題なしッ!」

 

「ち、痴漢だとッ!? なんと破廉恥なッ!」

 

「翼さんは黙っててッ! ・・・もうッ! やっぱり魔改造されていたぁッ!!!」

 

 

 

 

 こうして、大天空寺の劇的ビフォーアフターは幕を閉じたのでした・・・チャンッチャンッ♪

 

「チャンッチャンッ♪、じゃないッ!!」




 突然ですが、アンケートを一週間取ります。
 G編に突入するか、それとも閑話をもう1話挟むかのアンケートです。
 閑話になった場合、そのときは武瑠の学校生活、大天空寺での日常、英雄たちの内二人ほどの眼魂を手に入れたときのエピソード。以上のどれか一つをしようと思います。

 投票は活動報告で行いますので、投票よろしくお願いします。



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