戦士開眼シンフォギアゴースト   作:メンツコアラ

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 すいません。
 あの英雄の登場を心待にしていた方は多くいらっしゃったでしょう。
 しかし、自分の都合により、あの皇帝様ではなく、あの海賊に変更しました。

 次回には必ず出すので、何卒お許しください。



 それでは『潜入! フィーネのアジト!』後編スタートですッ!





潜入! フィーネのアジト! 後編!

 廃病院の一階廊下。数時間前までは、ただ静かに埃が舞うだけだった廊下の床には無数の槍が突き出ていた。それらは天井まで達し、見事に廊下を塞いでいた。

 

 スペクター変身を解除。セレナは、静かに踵を返す。

 

「まさか逃走するためだけに、これほどのことをするとは・・・彼ら、死んでいるかもしれませんよ?」

 

「一応、加減はしておきました。死んではいないと思いますよ? ・・・もっとも、今ので死んだのだとすれば、それまでの存在だったということです」

 

「おや・・・話で聞いたあなたとは、随分と印象が違いますね。それもあなたの中にある───」

 

 何かを言おうとしていたウェルの言葉は、セレナがガンガンハンドの銃口を向けたことで遮られた。

 

 セレナは『それ以上は言うな』と釘を刺し、廊下の奥へ歩いていった。ウェルもその後を歩いていく。

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 ゴーストたちに放たれた無数の槍。だが、それは分厚い氷の壁に阻まれていた。

 

「・・・か、間一髪」

 

 あの瞬間、ゴーストはすぐさまアナスタシア魂にゴーストチェンジし、迫る魔槍を氷壁で防いだのだ。

 

 なんとか助かったと安堵したゴーストは、氷壁を解除し、その場にへたり込む。

 

「死ぬかと思った・・・」

 

「だが、天空寺の咄嗟の判断のお陰で助かった」

 

「まぁたあの雪女の力に助けられちまったな・・・で、どうする?」

 

「どうするも何も追うしかないだろう。だが・・・」

 

 翼は塞がれた廊下を一瞥する。槍が四方八方から生え、向こう側を視認することが出来ないほど密集している。

 

「別のルートを探すしか・・・いや。恐らく、向こうもそれを考慮しているだろう」

 

「じゃあどうする? こうしてる間にもあいつらは逃げて行くぞ」

 

「だったら槍をぶっ壊して正面から───」

 

「却下。ここ、壁とかボロボロだから、融合している槍を下手に壊すと崩壊しかねないよ」

 

「なら「正面突破しよう」───え? 未来?」

 

 ネクロムの言葉に自身の耳を疑う響。ゴーストが先ほど『正面からはダメ』と言ったばかりなのにだ。

 

「あの、未来さん? 俺、今ダメって言ったよね?」

 

「だけど、時間をかける訳にはいかないでしょ? それに、あのドクター・ウェルって人。あの人は早く捕まえないと──治療が必要だからね」

 

「「「「・・・は? 治療?」」」」

 

 思わず聞き返したネクロム以外の四人。

 

「あの人は脳に異常があるのは間違いない。だから、今すぐに開脳手術が必要だね」

 

「しゅ、手術って・・・未来、医師免許とか持っているの?」

 

「そんなことを言っている場合じゃないよ。大丈夫。殺してでも治すから」

 

「待って、未来ッ! なんかナイチンゲール(話を聞かない人)さんみたいになってるよッ!」

 

 叫ぶ響を無視して、ネクロムは槍の壁と向かい合い、拳を構える。

 

「ちょッ!? 未来、ストッ───」

 

「───清潔ッ!」

 

 ドガァァンッ!!と、轟音が狭い廊下に響き渡る。ネクロムの掌底は見事に槍だけを粉砕し、槍の壁を貫通させて見せた。

 

 『さあ、行こう』と涼しい顔(マスクで分からないが多分している)で穴を潜っていくネクロムに、ゴーストたちは呆然とするしかなかった。

 

「・・・すまん。小日向はあれが本性なのか?」

 

「そ、そんなことはありませんよッ! ・・・多分

 

「あいつ・・・何かナイチンゲールみたいだったぞ?」

 

「多分、ナイチンゲールさんの意思とか精神力が眼魂を通じて、未来の性格に影響を与えているんだと思う」

 

「・・・風邪には気を付けよう」

 

 風邪を引いたら最後、下手したらナイチンゲールに殺されかねないと思った四人だった。

 

 

 

 

 

 

 数分後。ゴーストたちはネクロムに追い付き、そのまま病院の外に出る。

 

 すでにセレナたちの姿は無く、ただ深夜のひんやりとした風が吹いていた。

 

 彼女たちの痕跡がないかと辺りを探すゴーストたち。その時、了子からの通信が入った。

 

『みんな、聞こえてる? 敵は陸を抜けて、海に逃げているわ。すぐに追いかけてッ!』

 

「海ですかッ!?」

 

『今、弦十郎くんたちが仮本部を向かわせているところよ』

 

「だが、それでは間に合わないのでは?」

 

「だったら、泳いで行けば間に合います」

 

「止めろッ! 冗談でも、今のお前はやりかねかいからマジでやめろッ!」

 

 海へ出ようとするネクロムを羽交い締めにするクリス。そんななか、ゴーストは言った。

 

「要は追い付けばいいんだろ? なら、あの人の出番だね」

 

「あの人?」

 

「この人だよ」

 

 そう言ってゴーストが懐から出した眼魂を見て、響たちは納得する。

 

 なぜなら、そのワインレッドカラーの眼魂は世界一周を生きたまま成し遂げた最初の偉人。星の開拓者。母国イギリスを、当時世界最強だったスペインを打ち破るまでに導いた海賊、『フランシス・ドレイク』の眼魂だったからだ。

 

「力を貸してくれッ! ドレイクッ! ワイルドハントの始まりだッ!」

 

 眼魂のスイッチを押したゴーストはすぐさまゴーストチェンジする。

 

《アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!》

 

《カイガン!ドレイク!

 落とすは太陽!いざ出航!》

 

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 廃病院から逃げ出したセレナとウェル。

 

 2人は万が一のために所持していたエンジン付きのゴムボートで沖に逃げていた。ゴムボートの上で、セレナは他の仲間たちと連絡を取る。

 

「はい・・・はい・・・分かりました。では・・・マムからの指示です。時間通りに到着する予定です。私たちは現状待機になります。」

 

「そうですか。それでは迎えが来るまで2人で夜景でも眺めましょうか?」

 

「寝言はほどほどにしてください」

 

 セレナはポケットからあるものを取り出し、ポリポリと食べ出す。ウェルは『冗談が通じませんね』と呟きながら星空を見上げる。

 

 ───その時だった。

 

「───ん?」

 

 星々の光を何かが遮る。一瞬雲かと思ったウェルだが、すぐにその考えを訂正した。

 

 何せ、その遮った物は船体が赤く染まった一隻の船だったのだから。

 

 空を飛ぶ船。明らかに普通ではない。それにセレナも気づき、咄嗟にガンガンハンドを構えようとする。しかし、飛んでいるのは一隻だけではなかった。前方、左右方向、斜め方向には茶色い木製の船がセレナたちを取り囲むように飛んでいた。

 

「これはッ!? もう追い付いたというのッ!?」

 

 

「───その通りッ!!」

 

 

 

「───ッ!」

 

 日の出前の海に男の声が響き渡る。

 

 セレナは自身を取取り囲む船の内の一つ、あの赤く染まった船に視線を移した。その船の船首に立つのは紅のトランジェントの上から裾の長いコートを羽織った、海賊の船長を思わせるパーカーを纏ったゴースト。フードはパイレーツハットを模しており、マスクには交差するカットラスとその交差点には髑髏が描かれている。

 

 

 その姿は『太陽を落とした者 フランシス・ドレイク』の魂と一体化した姿。

 

 その名も『仮面ライダーゴースト ドレイク魂』。

 

 

 ゴーストは船の上からセレナたちを見下ろす。その後ろにはネクロム。さらに後ろには響たち3人。

 

「やあやあッ! さっきぶりじゃないか、セレナ・カデンツァナ・イヴッ!」

 

「・・・ッ、天空寺武瑠ッ! 一体何のつもりですかッ!?」

 

「言うまでもないだろう? あんた達を捕らえようとしてんのさッ! さぁ・・・投降して貰おうか?」

 

「私たちが降参すると思いますか?」

 

「威勢がいいねぇ。嫌いじゃないッ! だが、人生には引き際ってもんがあるだろ? 無駄な抵抗は止めておいた方が吉だぜ?」

 

「それと、そこの頭に異常がみられる方をすぐに引き渡しなさい。至急、開脳手術を行いますので」

 

 完全に性格や口調が変わっているゴーストとネクロム。そんな彼らに、もう一人の幼馴染みは『早く戻って』と強く願った。もちろん、ゴーストたちはそれに気づかない。

 

「さぁて・・・それじゃあ、さっさとお縄について貰おうか。拒否権はないぜ?」

 

「・・・ッ」

 

 朝日が登り始める中。ゴーストとセレナの視線がぶつか合う。

 

 永遠にも思える静寂の後、セレナは大人しく両手をあげて降参した。

 

 

 

 

 

 日の出直前。セレナとウェルを拘束したゴーストは、弦十郎たちが此方に来るのを待っていた。ソロモンの杖とネフィリムの入ったゲージはセレナたちから少し離れた所に置いている。響たちは今にもウェルに飛びかかろうとするネクロムを取り押さえていた。

 

 そんな彼女たちを他所に、ゴーストはセレナにあることを質問した。

 

「さて・・・司令たちが来るまで時間がある。その間、ちょっと質問に答えて貰おうか?」

 

「答えるつもりなんてありません」

 

「即答かい? でも、今そんなことを言える状況じゃないって分かってるだろ?」

 

 ドレイクの眼魂を使っている為、少し口が悪くなっているゴースト。若干脅しに為っているのも仕方がない。

 

 セレナはそんな彼に言った。

 

「あなた、私たちを下と思っているようですね」

 

「なんだい、急に?」

 

「先日、あなたのお仲間である剣の装者がマリア姉さんに言ったそうですね? 『見下ろしてばかりだから勝機を見落とす』って。

 

 

 ───その言葉。今のあなたたちにぴったり」

 

「はあ? そりゃ、どういう意味だい?」

 

 

 

 

 

 

 

 ───その時だった。ゴーストに向かって一本の槍が飛ばされたのは。

 

 

 

 

 

 

 

『───ッ!?』

 

 咄嗟にバックステップで避けるゴースト。ネクロムと、ネクロムを取り押さえていた響たちも、突然のことに驚いていた。

 

 槍はそのままゴーストと対面していたセレナたちを拘束する縄を切り裂き、甲板に突き刺さる。

 

 

 そして、セレナたちを守るように、彼女が降り立った。朝日に照らされながら背で靡くマントは、さながら堕天使の黒翼を思わせていた。

 

「おいおい・・・主役の登場とでも言いたいのかい? マリア・カデンツァナ・イヴッ!」

 

「・・・・・・」

 

 ゴーストの言葉に、彼女・・・マリアは無言で返す。そんな彼女に言葉を投げ掛けようとしたゴーストだが、それはウェルの言葉に遮られた。

 

「いやはや。助かりましたよ───()()()()

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」

 

 たっぷり十数秒。そこでようやく再起動するゴースト。それは響たちも同じ。通信機越しに聞いていた弦十郎たちも似たような反応を示していた。

 

「あー・・・今、誰がフィーネだって?」

 

「彼女ですよッ! 彼女、マリア・カデンツァナ・イヴこそが我ら組織の象徴である存在ッ! フィーネなの「ちょっと待てッ!」」

 

 ウェルの言葉を遮り、ゴーストたち5人は集まってしゃがみこみ、声を潜める。

 

「なあ。今の話どう思う? フィーネの魂は大天空寺にいるから、次のフィーネが生まれることはないんだろ?」

 

「櫻井女史はそう言っていたはずだが・・・」

 

「嘘をついてる?」

 

「あの数千年行き遅れ年増女の名前を名乗る必要が何処にある?」

 

「武瑠、それ了子さんに聞かれたら殺されるよ?」

 

「取り敢えず、3人とも取っ捕まえてから考え───」

 

『お前たちッ! 敵に逃げられるぞッ!』

 

 通信機から聞こえた弦十郎の声に、ハッとなるゴーストたち。

 

 振り返ると、甲板にマリアたちの姿はなかった。

 

『上だッ!』

 

 弦十郎の言葉に、ゴーストたちは上を見上げる。そこには先程までいなかったはずのオスプレイに似た航空機がマリアたちを乗せて立ち去ろうとしていた。

 

「なんだ、あれッ!? いつの間にあんなもんが空にッ!?」

 

「ッ、逃がすかッ!」

 

 遠距離に長けたクリスが航空機を止めようと動く。

 

 クリスはアヘッドギアに精密狙撃用のスコープを装着。アームドギアをスナイパーライフルに変型させ、『RED HOT BLAZE』で撃ち落とそうとする。

 

 だが、次の瞬間。航空機は一粒の砂糖が水に溶け込むように姿を消した。

 

「なッ!? まさか、光学迷彩ッ!?」

 

「司令ッ! すぐに追跡をッ!」

 

 翼が弦十郎に頼んで、航空機の行方を探ろうとする。だがしかし───、

 

『反応が・・・ロストしただとッ!?』

 

『───ッ!?』

 

 弦十郎の言葉に、ゴーストたちは驚きを隠せなかった。

 

 普通、姿を消すには光学迷彩を使うだろう。しかし、光学迷彩はあくまでも視覚的に対象を消す技術。存在そのものを消すことはできない。しかし、マリアたちを乗せた航空機は霞に消える幽霊のように、その存在ごと消えたのだ。

 

「どう言うことだよ・・・一体・・・」

 

 ゴーストたちは、ただ呆然とマリアたちが消えてた空を眺めるしかなかった。

 

 

 

 

 こうして、フィーネのアジト突入作戦は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───おまけ───

 

 作戦から帰った後の大天空寺では───

 

「武瑠くん。ちょーーーーーーっといいかしら?」

 

「あの、了子さん? 何で、どこぞの奇妙な冒険漫画に出てきそうな『ゴゴゴッ』っていう文字を背に携えているのでしょうか?」

 

「───誰が『数千年行き遅れ年増女』だと・・・?」

 

「ちょっと待ってッ! あれは本心じゃなくて、ドレイクさんの精神が影響した結果というかッ! 無意識に口から出たものでッ!」

 

「ほう・・・? つまり、無意識にそう思っていたと言うことだな?」

 

「違いますッ! 断じて違いますッ! べ、弁護をさせてくださ───」

 

「問答無用ぉぉぉぉぉぉッ!!!」

 

「ギャアァァァァアアァァァッ!!!?」




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