私もね、色々忙しいんですよ。
テストだったり、バイトだったり、テストだったりで。
それでも頑張っていきますんで、応援よろしくお願いします。
喉かな雰囲気が流れる昼過ぎの街中。
そこに買い物袋を抱えた切歌、調。そして、セレナの姿があった。
「まったく……楽しい楽しい買い出し時間も、こう量が多いと面倒くさいデス」
「……仕方ないよ。LiNKERの副作用が抜けきるまで、わたしたちはおさんどん担当なんだから」
「だとしても、これの大半がマムやあのウェルの物になるんデスよ?」
彼女たちの持つ買い物袋の中身。その大半は御菓子と肉製品だった。
実はナスターシャ教授とドクター・ウェルはかなりの偏食家で、前者は肉類、後者は御菓子しか食べないのだ。
「……マムの具合が悪いのって、単に栄養バランスの偏りが原因だったりして」
「そう言われると、否定出来ない自分がいるデス。セレナはどう思うデスか───って、セレナ、大丈夫デスか?」
切歌が俯くセレナの顔を覗きこむ。その彼女の顔は青ざめており、額からも脂汗が滝のように流れていた。そんな彼女に調も気づき、切歌と同じように問い掛けた。
「……セレナ、大丈夫?」
「……大丈夫、ですよ。ちょっと、気分が悪いだけですから」
「だとしても一目見ただけで分かるなんて、結構異常デスよ」
「……合流地点の途中に工事が止まって、誰でも入れるようになっちゃった場所があるから、そこで休憩しよう?」
「……ごめんね」
「ノープログレム、デスッ! さあ、早く行くデスよ」
この時の切歌、調は思っても見なかっただろう。そして、後悔することにもなる。
セレナの状態をすぐさまマムたちに伝え、迎えに来て貰わなかったことに。
●●●●●●●●●
「はああぁぁぁッ!」
大天空寺地下室にある戦闘シミュレート室。
そこでホログラム相手にガンガンセイバーを振るっている武瑠。しかし、その戦い方は何時もとは違い、何処か焦っているようにも見えた。
出されていたホログラムの敵を全て殲滅させる武瑠。訓練を始めてから、すでに四時間が経過している。だがしかし、武瑠は訓練を止めようとはしなかった。
「武瑠。そろそろ休んだらどうだ? いくら肉体的な疲れがなくてもさぁ~」
「まだ…やれる……ッ!」
ガンガンセイバーを杖になんとか立ち上がっていられる状態。ユルセンも止めろと言うが止まらない。そのときの武瑠の瞳に写っていたものは怒りや恐怖。
「俺が……やらなきゃいけないんだ……俺しか、今響達を守れるのは……ッ!」
「……はぁ───チェストォォォッ!」
突如、ユルセンが急上昇からの急落下。そのまま武瑠の頭に強烈なパンチをくらわせた。
そのせいで地面とキスをしてしまった武瑠は恨めしそうにユルセンを見上げる。
「ユ、ユルセン…なに、を……」
「気負い過ぎなんだよ。ちょっとは肩の力を抜いたらどうだ?」
「そんなこと、してる暇なんて……」
「お前、『自分はどうなってもいい』って思ってるだろ?」
「ッ───……」
「思ってたなぁ~」
目をそらす武瑠に深い溜め息を吐くユルセン。
「……武瑠、ちょっと小話するぞ。
実は俺は……いや。
二年前、そいつは目の前の命を守るために命を落とした。自分はどうなってもいい。みんなを守れるなら。そう思っての行動だ。
結果、そいつは全てを守った。……だけど、全てを守ることは出来なかった」
「……どういう意味? 全てを守ったんでしょ? なのに、何で守ることが……」
「そいつは全てのその瞬間を守ることは出来た。だけど、全てのその後を守ることは出来なかったのさ」
ユルセンは語る。
───そいつの友人は自身を『無力』と責めた。
ユルセンは語る。
───その場にいた奴は濡れ衣を着せられ、周りから拒絶された。
ユルセンの言葉を聞いた武瑠は何故か響と翼の顔を思い浮かべていた。
「そいつがやったことは、そのときの最善だったかもしれない。だけど、後のことを考えてみると、もっと他にあったんじゃないか? そいつは今もそう迷っている」
「さっきから言っている『そいつ』って、お前の事なのか?」
「さあな。それは想像にお任せするよ」
一つしかない目を細め、ニヤリと笑うユルセンに、武瑠はあることを問い掛けた。
「……なあ。ユルセンって、元々人間だったりする?」
「だとしたら?」
「もしそうだったらさ、お前の真名ってあも───」
そのときだった。
シミュレーション室に取り付けられたスピーカーから了子の声が流れた。
『武瑠くんッ! 聞こえるッ!?
今、町外れの工事現場でイガリマとシュルシャガナの反応があったわッ! 恐らく交戦中ッ!』
「な───ッ!?(まさか、また響がッ!? そうじゃなくても、クリスや翼さんの可能性も───)」
そんな事を考え、武瑠はすぐに現場へと向かった。
●●●●●●●●●
町外れの工事現場。そこは、最早事件現場と呼ぶべき姿になっていた。
所々抉れた地面。車体がひしゃげたクレーン車や、最早見る影もない建設中だった建物。そんな中、武瑠はあることに気づいた。
(切断された痕がない?)
目の前に広がる惨状。そのどれもが強い力を加えられたようなものばかりだった。
了子は言っていた。『恐らく交戦中』と。
もし、目の前が交戦によるものじゃなかったら。
そう考えた時だった。少し離れた所から何かが地面に叩きつけられたような音が響き渡った。
武瑠はすぐさま向かう。
だが、その途中で音のした方角から二つの影が落ちてきた。見ると、それはシンフォギアを纏った切歌と調。しかし、彼女達の纏うギアは所々ボロボロになっていた。
そんな二人の状態に驚く武瑠に、切歌たちも武瑠に気づいた。
「天空寺 武瑠ッ!?」
「……こんな時に……ッ!」
「お前ら、その格好は───ッ!?」
「てめえに説明する暇はないデスッ!」
「……巻き添えをくらいたくなかったら、ここから去って」
「巻き添え? それってどういう───」
そのときだった。武瑠の言葉を遮り、
「RUuuuuaaAAAAaaaaッ!」
青い模様が描かれた二メートル以上はある黒い巨体。獲物を見定めるようにつり上がった瞳がある頭部には二本の角と頭の横まで裂けた口。
「なんだ、あれ……」
目の前の異形に目を見開く武瑠。そんな彼についてきたユルセンが冷や汗を流しながら言った。
「おいおいマジかよ……あれはスペクターだ」
「はぁ───ッ!?」
確かにスペクター要素はある。しかし、あの巨体はなんだ? あの異形はなんだ?
武瑠が疑問に思っていると、ユルセンがスペクターだという異形『ネフィリムスペクター』が切歌、調に襲い掛かった。
「───危ないッ!」
武瑠はすぐさまリ・ショブン眼魂を取り出し、仮面ライダーゴースト リ・ショブン魂に変身。ネフィリムスペクターにオメガドライブを放った。
《ダイカイガン!》
「百の奥義でなく、一の術理をもって、敵を打ち倒す。これ
李書文の宝具『无二打』。
自身の気で周囲を満たして形成したテリトリーで相手の『気を呑み』、相手の感覚を一部眩惑させ、緊張状態の相手の神経に直接衝撃を与えてショック死させる、武器ではなく極めた武術が宝具となった李書文の力。今回はさすがに死なせるわけにもいかないので気絶程度で済むように手加減はしてある。
だがしかし、ネフィリムスペクターは技に吹っ飛ばされただけで、気絶はしていなかった。
「なんだと……ッ!?」
だが、なんとか切歌達から突き放すことは出来た。
ゴーストは二人を背にしてネフィリムスペクターとの間に立つ。
「なんのつもりデスかッ!? てめえの助けなんか───」
「……つきさっきまでの俺は、お前達を助けるつもりなんてなかった」
「なら───」
「だがッ! ……だが、体が動いた。それだけだ」
「……あなたも偽善を」
「では、貴様らのやってることはなんだ? 月の落下を阻止しようと言いながら人を脅威に陥れる。それは正義なのか?」
「それは……ッ」
切歌達も思うことがあったのだろう。ゴーストの言葉に悔しそうに唇を噛んでいた。
「……じゃあ、本当の正義ってなんなのッ!? わたしたちが苦しんでいたときに、誰も助けてくれなかったッ! そんな奴らが正義だって言うのッ!?」
調の口から出てきたのは単純な怒り。そんな彼女に武瑠は、
「……そうかもな」
「「な───ッ!?」」
「───だけど、お前達のも正義だ」
「何……何、意味分からねぇこと言ってるんデスかッ!?」
「言葉通りの意味だ。結局、この世にたった一つの正義なんてない。
少し前、響が英霊の皆に問い掛けたことがあった。『本当の正義って何ですか?』、と。
みんななんて言ったと思う?
そんなものは無い、だとさ。俺も初めは意味が分からなかった。だけど、レオニダスさんの言葉で『ああ、そういう意味なんだ』って分かったんだ」
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「いいですか、響くん。まず、君の正義は『困っている皆を助けたい』。それで間違いありませんね?」
「はい、師匠。その通りです」
「では、あのツインテールの女の子が言っていた『正義では守れないものを守るため』。これは正義じゃないと言い切れますか?」
「……いいえ」
「つまりはそう言うことなんです。正義とは一つではない。百人の人がいれば、百種類の個性があるように、正義も無数に存在するんです。その正義のどれもが本人からすれば正しく、他人から見れば間違っているように見えます。だからこそ、人はぶつかり合うのかもしれませんがね」
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「『正義は一つじゃない』。それが時代を生き抜いた皆の答えだ。もっとも、やり方は考えないといけないけどな」
(……正義は、一つじゃない)
(あのガングニールの人の正義も本物で、わたしたちの正義も本物……どっちも偽物なんかじゃない)
「そして、俺の正義は『目の前にある命を未来に繋ぐ』。だから、貴様らを助ける。それだけ……───と、これ以上話は出来ないな」
「Aaaa……」
ネフィリムスペクターはガンガンハンドに似た金棒を構えた。武瑠も拳を構え、ネフィリムスペクターに殴りかかった。
「……あの人バカだよ」
「調……?」
「……頼まれた訳でもないのに。……感謝されるわけでもないのに。絶対バカだよ」
「……そうかもデス。でも、なんかいいって思ってる自分がいるですよ」
「……同感。なら、わたしたちのするべきことは」
「もう決まってるデスッ!」
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「くッ……随分と変わりすぎだろうッ!」
振り下ろされる金棒を避け、ネフィリムスペクターの胴体に拳を叩き込むが、その巨体を支える筋肉の壁が衝撃を阻む。
ゴーストはスピードで勝負するが、大したダメージを与えることは出来ていなかった。
(なら、もう一度オメガドライブでッ!)
一旦距離を取り、ゴーストはベルトのトリガーに手をかけた。
しかし、そんな彼にネフィリムスペクターが金棒の先を向ける。そこにあったのは大きな穴。そして、そこから巨大な火球が放たれた。
(なッ!? 大砲になるのか───)
予想外のことに反応が遅れてしまう。
避けることは不可能。なら少しでもダメージを減らそうと、ゴーストは顔の前で腕をクロスさせ、防御体制を取ろろうとした。
そのときだった。
~BGM『獄鎌・イガリマ』~
「───警告メロディー♪ 死神を呼ぶ♪」
「いっけぇぇぇぇッ!」
ネフィリムスペクターに向かって放たれる無数の丸鋸と鋭利な鎌の刃が火球と衝突。
火球を防いだ彼女達は武瑠の隣に並びたった。
「……なんのつもりだ?」
「……助けるつもりなんてなかった。だけど───」
「体が動いた。それだけのことデス」
「そうかよ。なら───今回ばかりは共闘だなッ!」
三人は同時に駆け出す。
ネフィリムスペクターは火球を放つが、前に出た調が巨大な丸鋸のアームドギアを盾に防ぐ。
その隙に切歌。そして、リ・ショブン魂から闘魂ブースト魂となっあゴーストが左右に展開。切歌は三枚に展開した鎌の刃を飛ばす『
「なあッ! 今さらだけど、これで止まるのかッ!?」
「前に同じようなことがあったときはある程度ダメージを与えたら元に戻ったデスッ!」
「……だけど、ここまでしぶとくなかった。前よりもパワーアップしている」
「そうかよッ!」
放たれる火球を紙一重で避けながら、ゴーストは突破口を探すが、攻撃力が高い李書文の力でも大したダメージは入っていなかった。
なら、どうするべきか。そうゴーストが行き詰まった時だった。
突然、周りの時間や切歌達の動きがピタリッ、とほぼ同時に止まったのだ。
動いているのはゴーストだけ。
この現象に見覚えのあったゴーストはまさかと思い、辺りを見渡してみれば、彼のすぐそばに新たな第三者が立っていた。
青と銀のドレス甲冑に身を包んだ女性。凛と佇むその姿は、誰もを魅了しる美しさを持っていた。
「貴方は皆を導く者なのですね。敵であった彼女達すらも、貴方と共に戦おうとする。
……もし、彼女を救う手段を見つけ出すことが出来ないのなら、私も力を御貸ししましょう」
そう言った女性は一つの眼魂……あのとき、未来がセレナから奪い取った青い眼魂『アルトリア眼魂』となって、ゴーストの手に収まった。
再び動き出す時間。
ゴーストは再びゴーストチェンジを行った。
《カイガン! アルトリア!
目指すは理想! 騎士の王!》
纏われるのは銀のアーマーが付いた青いパーカー。被さるマスクは剣を掲げる騎士を象った青いマスク。
その英雄はかの有名な『アーサー王伝説』で語られし、ブリテンの伝説的君主。選定の剣を抜き、不老の王となった騎士の王。
───アルトリア・ペンドラゴン。
だがしかし、もっとも知られている名は『アーサー・ペンドラゴン』。
その騎士王の魂を纏い、闇を打ち払わんとするゴーストの新たな姿こそ『仮面ライダーゴースト アルトリア魂』である。
「あの眼魂、セレナが持ってた───ッ!?」
「……セレナは使えなかったのに、なんでッ!?」
「説明は後だ。二人は一瞬でいいから、あいつの動きを止めてくれッ!」
ゴーストの言葉に二人は頷き、それぞれ別方向から攻撃を仕掛ける。
「切・呪リeッtぉッ!」
「……α式 百輪廻ッ!」
左右から放たれる鋭利な刃物の大群。そのどれもがネフィリムスペクターに突き刺さることは無かったが、ネフィリムスペクターの注意を引くには十分な効果を発揮していた。
その隙に、ゴーストはトリガーを押し込み、目の前に剣を掲げる。
「束ねるは、星の息吹き───」
解放するのはその剣の力。
ガンガンセイバーの表面がひび割れ、その奥から見せる黄金の光は大地を照らし、星はそれに答えるように光の粒子を放出する。
「輝く命の本流───」
光は剣に集い、今にも爆発しそうな程の力が荒れ狂う。
その剣こそ、アーサー王の代名詞。
人々の『こうあって欲しい』という願いが星の中で結晶、精製された『
その名を、
「
放たれた光の本流はネフィリムスペクターを飲み込み、天へ昇る。その光は昼間でありながらも太陽が霞むほどの物であり、それこそが星の持つ力であった。
光が収まると、先ほどまでネフィリムスペクターが居た場所にセレナが倒れていた。
切歌達は倒れる彼女に駆け寄り安否を確認するが、幸いにも気絶しているだけだった。
「大丈夫そうだな」
「……ありがとう。助けてくれて」
「お前が居なかったら、セレナを助けることが出来なかったです」
「……で? なんだったんだ、さっきの? なんでスペクターがあんな姿に?」
「……それは────」
「───その話、あたしらも聞かせてくれねぇか?」
「「「───ッ!?」」」
三人の知っている声が耳に入る。
見ると、そこにはシンフォギアを纏ったクリスと翼。そして、二課に所属している黒服の男達と弦十郎の姿もあった。
「……悪いが、君たちを拘束させてもらう」
「待ってください、風鳴さんッ! 彼女達は───」
だがしかし、それ以上の言葉が紡がれることはなかった。
ゴーストの影に一本の短剣が突き刺さり、翼の放った技『影縫い』がゴーストの動きを止める。
ゴーストはマスクの下から抗議の視線を向けるが、誰も気づかない。
やっと一つの戦闘が終わった工事現場。しかし、またもや一触即発の空気が流れた。
はい。今回はセレナを暴走させました。
なんかアナザーライダーのようになっちゃいましたけど、別にいいよね?
あと、ネフィリムスペクターの容姿モデルはヴェノムです。
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